グーグルとスピード概念
以下はグーグル「村上憲郎元名誉会長の下記の2つの玉稿」を資料とし、清家が「グローバルスピード経営」を構築するための資料作成を目的に私見と私観「スピードは早い・速い・疾い(清家彰敏)」でまとめたものです。これを受けて次のステップ「構造化」を試みたいと思います。
皆様ご意見をお持ちしています(^^)。
村上憲郎「INFOPRO2010特別講演 Googleの切り開く情報の世界 プロフェッショナルの仕事とは The world of information spearheaded by Google The work of professionals」『情報管理』53(12),651-664, doi:10.1241/johokanri.53.651(http://dx.doi.org/10.1241/johokanri.53.651)
村上憲郎「グーグルから見た日本ICT産業への苦言」電子情報通信学会誌Vol.94, No.1, 2011
グーグルとスピード概念
① 仕事の速さ 検索(索引)の速さ・・・ビジネス
② 成長の速さ(13年間)1998年
③ ベンチャーキャピタリストはグーグルへの投資は早い。
④ グーグルの起業の速さ(若い学生・ガレージ創業による小規模事業)起業の時期時代のタイミングはヤフーよりは早くない(1995年のヤフーより3年遅い)ヤフーは目次をつくりグーグルは索引を作った。
⑤ 「世界中の人が世界中の情報を整理してアクセスできて使えるようにする」スピード×人数×情報量
⑥ 意思決定の早さ・・・・選択と集中が2重に ミッションステートメート(レゾンデートル:投入の決定の早さ)×課金しない(ビジネスモデル:過程の決定の早さ)――>産出の2重の決定の早さ
⑦ コンテンツを保有しない 過程の決定を早くしている
⑧ 決定が早いということがグーグルのパートナー企業となる条件である。決定が早いグループは事業を早く行うことができる。Googleブックス。決定が遅い日本企業は参加できない。日本企業がいないと決定は早い?
⑨ 将来の検索を速くするために現在へ投資する Gmailは将来のメール検索の速度を速くできるようにと考えた準備的な事業でもある。
⑩ 検索速度は、検索対象量の増大と逆の相関を示す。この速度は検索対象量の増大を優先させながら加速させる(Googleブックス)。Youtube(1分に35時間分の動画が増え、未来永劫保存しなければならない)
⑪ Googleエディション 顧客の読書(情報獲得)を早める(明日まで待っていられない)
⑫ クラウドコンピューティングによる早さ 社内文書をデータベースにきちんと整理するより、情報や文章を全文検索したほうが早い。
⑬ 複数人で文章を作る場合に、同一のファイルを共有しながらコラボレーションで作っていくと便利(早い・速い・疾い)
⑭ どのようなデバイスでもどこででもプレゼンできる(早い・速い・疾い)クラウドコンピューティング年間社員一人当たり50ドル
⑮ コンピュータの速さは、ムーアの法則では18ヶ月から2年で半分になる=2倍に速くなる。
⑯ 1990年ごろのコンピュータが今(2010年)は1000分の1の価格で買える。速度は1000倍?
⑰ Internet of Things物がインターネットに常時接続状態になる。スピード化?物が人間とコミュニケーションを始める。(―――>清家:ロボット経済)
⑱ Googleパワーメーター:ドイツのスマートメーターはツイッターで「電力使いすぎ」とつぶやく。消費電力の見える化は、それだけで消費者側での省エネ意識の向上と実際の電力料金の具体的な提言につながっているという。社会の意思決定が早まる、疾い決定ができる。発電した電力が余ったAさんと電力が足らないBさんとの電力の売買を仲介するサービス。
⑲ Googleは、ケイタイからスマートフォンへの拡張に今一番注力しています。疾い。情報を探したくなるのは机の上だけではありません。今われわれがモバイルに非常に注力しているのはそれが理由です。
⑳ ITの世界の早さ=米国の早さ=オプトアウト社会
(21)ITというのはドッグイヤーと言われる進歩を遂げます。IT社会:犬は1年で人間の7歳分歳を取る。(7倍速社会)
(22)Webの上でも最終的には民主主義が機能する。民主主義(多数決他?)は決定が早い?
(23)動画検索“速い”今はオリジナルの動画をいただければ、その断片でも入っていた場合は削除できます。多少いじった程度の動画まで発見できます。つまり動画の検出がある程度可能になってきている。
(24)製品の部品が次々壊れようとも全体機能が何の支障もなく動かせるかどうかが、技術水準を決める。「ブレード型のサーバの数枚が次々と壊れようとも、データセンタ全体は何の支障もなく動かせるかどうかが、技術水準を決める」ムーアの法則ではハードウェアの性能は3,4年もたてば4倍になる。ハードウェアは4,5年働けばいい、4,5年ごとに取り替えたほうがいい。ハードウェアを4,5年かけて壊しながら使う。そういう技術が要請されている。最先端は壊しながら機能させる技術?
清家彰敏
富山大学経済学部・大学院MBA教授・中国社会科学院(政府)特別高級研究員。
メールseikeakit@aol.com 携帯09024351152seikeakit@ezweb.ne.jp
ブログhttp://seikeakit.blogspot.com
北京大学客員教授、財務省財務総合政策研究所特別研究官、経済産業省ロボット政策研究会委員、科学技術庁科学技術政策研究所客員研究官などを歴任 名古屋大学、北陸先端科学技術大学院大学,法政大学講師併任
2011年4月30日土曜日
物流大動脈日本海航路と北陸新幹線の夢
物流大動脈日本海航路と北陸新幹線の夢
経済学部・大学院MBA教授 清家彰敏
1.中国から米国への最短コースは日本海航路
上海・釜山発のコンテナ船は対馬海峡を通り日本海へ、津軽海峡を抜け米国へ向かう。日本海航路は太平洋岸を通る航路に比べて1日から2日短縮される。地球が丸いためこれが最短距離である。その結果、日本海は中国、韓国にとってもっとも重要な海となった。富山沖を通るコンテナ船は増える一方である。
それに対して日本のコンテナ船はほとんど日本海を走らない。2010年の輸出入の実態をコンテナ数によって全国64港を調査した(清家彰敏・北陸先端科学技術大学院大学研究員清剛治)。米国へのコンテナ輸出入はほとんどが太平洋側である。中韓への輸出でさえコンテナの84.5%が太平洋側から出港、輸入も83.6%が太平洋側へ入港していた。
工業団地も太平洋側へ偏り日本海側軽視である。1971年「農業地域工業導入促進法」1972年「工業再配置促進法」80年代テクノポリス構想で、インフラの多くは太平洋側に偏った。さらに現在工業団地の造成をおこなっている多くが太平洋側である。日本にとって日本海側は存在が薄い。
さて、現在、キヤノン、本田技研工業の海外売り上げ比率は80%に達し、トヨタ自動車など大手企業の売り上げの半分は海外に依存している。戦後の日本では製品製造プロセスは国内で完結し、最終製品が米国へ輸出された。しかし、21世紀日本の海外での競争力は最終製品だけではなくなった。日本の強みは基幹部品・最先端材料輸出となりつつある。新日本製鉄、村田製作所、コーセルなどに代表される。世界的な中堅企業も多い。日本発の基幹部品は中国、韓国などで最終製品となりコンテナ船が仕立てられ米国へ輸出される。このとき最短距離の日本海を通過する。
ところで、上海、釜山より米国に近い日本海側の港でコンテナ船を仕立てると燃料消費をより削減できる(中央大学理工学部助教鳥海重喜氏)。そうなれば、日本海航路は米中貿易において太平洋側を通るより1割%近い燃費と日数の削減をもたらし、省エネ効果はさらに高まる。
さて、製品創造プロセスは企画・開発・部品生産・組立・販売の5プロセスである。グローバル化の現在このプロセス内に世界の無数の企業、工業団地はいやおうなく組み入れられる。このプロセスは流通大動脈となり、アジア、米国、欧州の3地域を繋いでいる。スエズ運河、パナマ運河、マラッカ海峡、と並び日本海は重要ルートである。しかし日本政府の意識は低い。
また温暖化により将来北極回り航路が形成されると日本海航路の使用はさらに増える。中国・韓国と欧州間は北極海航路が拓かれるとベーリング海、日本海を通過、スエズ運河を経由せず距離は半減する(日本経済新聞2010年12月27日9面「経営の視点 ハブ港奪回の最後のチャンス(竹田忍編集委員)」)。米国東海岸行きも日本海、北極海航路によってパナマ運河を経由せず大幅短縮となる。
さて、中国、韓国から見て、アメリカへの商品輸出は帰り船の積載率が悪い場合がみられる。米国には売る商品が無いという中国の経営者さえいる。アメリカの特産品である「ソフト」はコンテナに積む必要がない。したがって、帰り船を満載にするには、なるべくアジアの沢山の国の注文を取って回りたい。そして、帰りは出来るだけアメリカの商品を積載して、日本、韓国、北朝鮮、ロシア、台湾の顧客へ分散して届けるスタイルを取ると帰り船の積載率が上がる。日本海航路の途上に港(京都舞鶴、富山伏木、新潟など)を完備し、各国の集荷に加え、日本の各地を加え積載率を上げるのが自然である。
日本の各地と結ぶ日本海側の港として浮かびあがってくるのが、①北海道・青森地域(津軽海峡・首都圏輸送)、②舞鶴(日本海中心位置・関西圏/中部圏輸送)、③北九州地域(関門海峡・九州圏輸送)、である。日本海側においては、北海道と青森は大規模な工業団地が空いており、日本海航路を活用する最適地である。福岡・北九州は韓国釜山とともに良い立地であるが、現在工業団地の空きは少ない。
2.北陸新幹線からの夢
日本海航路の港湾、工業団地などを陸上で結ぶ幹線が日本縦断新幹線であると思われる。これは地震等の大災害対策ともなる。北陸新幹線は日本縦断貨物新幹線の一部として構想可能である。北海道から九州まで貨物新幹線が開通すれば1日配送圏は飛躍的に広がり、グリーンツーリズムからいってもトラック輸送の激減でもメリットは大きい。高齢化している日本では長距離トラック網の維持は困難である。東海道新幹線を旅客輸送に特化させ、日本縦断貨物新幹線は、北海道、東北、大宮、北陸、大阪、中国、九州となるのがもっとも妥当と思われる。貨物新幹線は世界への輸出産業ともなる。
ところで中国は土地が国有で社会資本の建設は極めて速い。金沢に新幹線が来る前に中国中に新幹線網が完成しかねない。ロシアも同様である。日本の社会資本建設が遅れると東アジアで取り残される可能性大である。
3.太平洋側社会資本の日本海側への移転
日本の太平洋側の鉄道・道路・橋梁・港湾・空港・工場団地の中核は1960年代、70年代を中心に作られ老朽化・陳腐化が問題となっている。東日本大震災が2011年3月11日に発生、原子炉災害も加わり未曾有の災害となった。津波災害対策に社会資本の再建、再配置を考えるとき、世界的物流の大動脈となりつつある日本海側への社会資本の分散は意味を持っている。
日本が主役で最終製品、基幹部品を作っている限り、太平洋側から輸出しようが日本海側から輸出しようが大きな差は無い。相手が待ちわびているからである。しかし、今後新興国の技術が向上し、グローバル化が進むとそうとばかりは言っておられない。流通の大動脈の中に社会資本、工業団地を位置づけないと置いていかれる。裏通りでは仕事が来ない。そうなっていない工業団地は滅ぶ。
工業団地の役割は世界経済のサービス化への対応、スマートシティ建設プロセスの分業拠点と今後大きく変化しつつある。また国内のボーダーレス化が進む未来はメイドインジャパン化の拠点、海外商品・サービスの導入拠点としての意味も大きくなる。ますますリニューアルが必要となる。
さて太平洋側の工業団地は今後その重要性が急速に低下する。その環境不適応を工場立地政策にどのように反映させるべきか。日本の政策課題は「日本海航路周辺への社会資本の移転」である。東日本大震災、大規模な社会資本の更新・修繕の時期をとらえ、主要な工業団地および道路や港湾等の社会資本を日本海側に構築(移転)・整備することによって、急成長する東アジア、日本海航路に合わせた流通(貿易)⇔製造(工業団地)の新しいシステムを創造していくことが望ましい。
経済学部・大学院MBA教授 清家彰敏
1.中国から米国への最短コースは日本海航路
上海・釜山発のコンテナ船は対馬海峡を通り日本海へ、津軽海峡を抜け米国へ向かう。日本海航路は太平洋岸を通る航路に比べて1日から2日短縮される。地球が丸いためこれが最短距離である。その結果、日本海は中国、韓国にとってもっとも重要な海となった。富山沖を通るコンテナ船は増える一方である。
それに対して日本のコンテナ船はほとんど日本海を走らない。2010年の輸出入の実態をコンテナ数によって全国64港を調査した(清家彰敏・北陸先端科学技術大学院大学研究員清剛治)。米国へのコンテナ輸出入はほとんどが太平洋側である。中韓への輸出でさえコンテナの84.5%が太平洋側から出港、輸入も83.6%が太平洋側へ入港していた。
工業団地も太平洋側へ偏り日本海側軽視である。1971年「農業地域工業導入促進法」1972年「工業再配置促進法」80年代テクノポリス構想で、インフラの多くは太平洋側に偏った。さらに現在工業団地の造成をおこなっている多くが太平洋側である。日本にとって日本海側は存在が薄い。
さて、現在、キヤノン、本田技研工業の海外売り上げ比率は80%に達し、トヨタ自動車など大手企業の売り上げの半分は海外に依存している。戦後の日本では製品製造プロセスは国内で完結し、最終製品が米国へ輸出された。しかし、21世紀日本の海外での競争力は最終製品だけではなくなった。日本の強みは基幹部品・最先端材料輸出となりつつある。新日本製鉄、村田製作所、コーセルなどに代表される。世界的な中堅企業も多い。日本発の基幹部品は中国、韓国などで最終製品となりコンテナ船が仕立てられ米国へ輸出される。このとき最短距離の日本海を通過する。
ところで、上海、釜山より米国に近い日本海側の港でコンテナ船を仕立てると燃料消費をより削減できる(中央大学理工学部助教鳥海重喜氏)。そうなれば、日本海航路は米中貿易において太平洋側を通るより1割%近い燃費と日数の削減をもたらし、省エネ効果はさらに高まる。
さて、製品創造プロセスは企画・開発・部品生産・組立・販売の5プロセスである。グローバル化の現在このプロセス内に世界の無数の企業、工業団地はいやおうなく組み入れられる。このプロセスは流通大動脈となり、アジア、米国、欧州の3地域を繋いでいる。スエズ運河、パナマ運河、マラッカ海峡、と並び日本海は重要ルートである。しかし日本政府の意識は低い。
また温暖化により将来北極回り航路が形成されると日本海航路の使用はさらに増える。中国・韓国と欧州間は北極海航路が拓かれるとベーリング海、日本海を通過、スエズ運河を経由せず距離は半減する(日本経済新聞2010年12月27日9面「経営の視点 ハブ港奪回の最後のチャンス(竹田忍編集委員)」)。米国東海岸行きも日本海、北極海航路によってパナマ運河を経由せず大幅短縮となる。
さて、中国、韓国から見て、アメリカへの商品輸出は帰り船の積載率が悪い場合がみられる。米国には売る商品が無いという中国の経営者さえいる。アメリカの特産品である「ソフト」はコンテナに積む必要がない。したがって、帰り船を満載にするには、なるべくアジアの沢山の国の注文を取って回りたい。そして、帰りは出来るだけアメリカの商品を積載して、日本、韓国、北朝鮮、ロシア、台湾の顧客へ分散して届けるスタイルを取ると帰り船の積載率が上がる。日本海航路の途上に港(京都舞鶴、富山伏木、新潟など)を完備し、各国の集荷に加え、日本の各地を加え積載率を上げるのが自然である。
日本の各地と結ぶ日本海側の港として浮かびあがってくるのが、①北海道・青森地域(津軽海峡・首都圏輸送)、②舞鶴(日本海中心位置・関西圏/中部圏輸送)、③北九州地域(関門海峡・九州圏輸送)、である。日本海側においては、北海道と青森は大規模な工業団地が空いており、日本海航路を活用する最適地である。福岡・北九州は韓国釜山とともに良い立地であるが、現在工業団地の空きは少ない。
2.北陸新幹線からの夢
日本海航路の港湾、工業団地などを陸上で結ぶ幹線が日本縦断新幹線であると思われる。これは地震等の大災害対策ともなる。北陸新幹線は日本縦断貨物新幹線の一部として構想可能である。北海道から九州まで貨物新幹線が開通すれば1日配送圏は飛躍的に広がり、グリーンツーリズムからいってもトラック輸送の激減でもメリットは大きい。高齢化している日本では長距離トラック網の維持は困難である。東海道新幹線を旅客輸送に特化させ、日本縦断貨物新幹線は、北海道、東北、大宮、北陸、大阪、中国、九州となるのがもっとも妥当と思われる。貨物新幹線は世界への輸出産業ともなる。
ところで中国は土地が国有で社会資本の建設は極めて速い。金沢に新幹線が来る前に中国中に新幹線網が完成しかねない。ロシアも同様である。日本の社会資本建設が遅れると東アジアで取り残される可能性大である。
3.太平洋側社会資本の日本海側への移転
日本の太平洋側の鉄道・道路・橋梁・港湾・空港・工場団地の中核は1960年代、70年代を中心に作られ老朽化・陳腐化が問題となっている。東日本大震災が2011年3月11日に発生、原子炉災害も加わり未曾有の災害となった。津波災害対策に社会資本の再建、再配置を考えるとき、世界的物流の大動脈となりつつある日本海側への社会資本の分散は意味を持っている。
日本が主役で最終製品、基幹部品を作っている限り、太平洋側から輸出しようが日本海側から輸出しようが大きな差は無い。相手が待ちわびているからである。しかし、今後新興国の技術が向上し、グローバル化が進むとそうとばかりは言っておられない。流通の大動脈の中に社会資本、工業団地を位置づけないと置いていかれる。裏通りでは仕事が来ない。そうなっていない工業団地は滅ぶ。
工業団地の役割は世界経済のサービス化への対応、スマートシティ建設プロセスの分業拠点と今後大きく変化しつつある。また国内のボーダーレス化が進む未来はメイドインジャパン化の拠点、海外商品・サービスの導入拠点としての意味も大きくなる。ますますリニューアルが必要となる。
さて太平洋側の工業団地は今後その重要性が急速に低下する。その環境不適応を工場立地政策にどのように反映させるべきか。日本の政策課題は「日本海航路周辺への社会資本の移転」である。東日本大震災、大規模な社会資本の更新・修繕の時期をとらえ、主要な工業団地および道路や港湾等の社会資本を日本海側に構築(移転)・整備することによって、急成長する東アジア、日本海航路に合わせた流通(貿易)⇔製造(工業団地)の新しいシステムを創造していくことが望ましい。
2011年4月25日月曜日
新成長戦略と4倍速経営への挑戦
はじめに
日本の産業政策、経営学の研究者にとって国内研究が以前は中心であった。スピードについての議論も国内と海外の比較といった視点が中心であった。産業政策でも財務省・金融庁や経産省など国内に対して海外との比較研究をし、提言を行うことが多かった。ところが現在は日本以外の政府にアドバイスをし、他国の企業を指導する機会が増えてきた。本田技研工業、キヤノンなど海外売り上げが8割を超えようという企業にとって、国内、海外が一体となったスピード研究が必要になる。現在、組織の規模と境界がスピードに与える影響について研究を行っている 。
著者は10年ほど前に中国国務院(政府)のプロジェクトに参加したのをきっかけに、以降中国政府で、多くの産業政策のアドバイス、国有企業などの行政指導をしている 。東南アジアでもアドバイスを行う。また多くの課題を抱えるインド企業にとって日本の経営学者の指導は貴重である。
中国の企業経営者と会っていると、40代が中心で、30代も非常に多い。日本でいえば係長からようやく課長になる年齢である。中国政府と経営者比較研究を8年続けているが、経営者の平均年齢は40歳前半、取締役層が30代後半であり、中核社員は若い 。
日本の60代の経営者は中国の若い経営者と話をしていると、父と子どもが会話をしているような感覚になってくる。中国の経営者からみると欧米の若い経営者と話し一緒にビジネスを行うほうがはるかに楽しい。中国の経営者、中核社員は非常に意思決定のスピードが速い。日本企業の3倍早いのではないかと直感的に感じている。経営者の仕事が意思決定で、中核社員の仕事が企画、開発などであるなら、スピードが3倍早いということは、彼らは日本の経営者、中核社員より3倍多くの仕事をこなすということである。
日本の経営者、中核社員たちは、こういう若くてスピードの速い経営者、幹部社員たちと今後世界で戦っていかなければならない。走るスピードが3倍違うサッカー選手が対戦しているゲームを想像して欲しい。現実にも走力で100メートル1秒差があればゲームにはならない、まして走力が3倍違えば勝敗は明らかである。これは日本企業の経営者と幹部社員の大きな課題であり、挑戦すべきテーマである。
日本企業はスピードが遅いと多くの国際的な場でいわれる。経営指導の折、幾度と無く海外と日本企業の商談の仲介をした。成功率は低い。日本企業の経営者は結論を半年1年延ばしても平気である。中国などの新興国の経営者にとっては日本の半年は1年半、1年は3年経過したとの意識である。とても待てない。商談がダメになる例は枚挙にいとまがない。一般に意思決定が遅いから経営のスピードが遅いといわれる。しかし、遅いといわれているのは意思決定だけなのか、それとも別の要因があるのか、これをまず考えてみたい。
中国の政策担当者の興味関心事を見ていると、日本の高度経済成長期の末期からの政策を勉強している 。高度成長から安定成長に移行する政策を考えている。中国は10%成長が30年も続いているので、そろそろ成長のスピードが低下すると政府(国務院発展改革委員会、発展研究中心 )は考えており、そのときにどのように国有企業が変わっていくべきか、が研究課題となっている。日本政府・企業が1970年代何をやっていたのかは重大な中国政府の関心である。
しかし、2010年代の中国のスピードは日本の1970年代より3倍速いといった印象を持っている。
1.4倍のスピード開発と日本型モデル
今回の議題を、スピード目標「4倍」としたが、中国と日本の経営では、前出のように3倍のスピード差を体感している。では、スピードが遅いと何が問題になるのかというと、若手の経験が蓄積しない。遅いと若手が若いうちに経験できることが少なくなる。が、日本のようにスピードが遅いと新入社員は2つか3つのプロジェクトを経験しただけで定年になってしまう 。若手に成長の機会と場を与えられないのである。
中国、インドなど新興国では、今後10年以内に10億戸以上の住宅建設が予定されているとの見方がある。10億戸の住宅用に、自動車、家電、日用品が売れる。このとき、10億戸の住宅用に新幹線、高速道路、スマートグリッド、水ビジネスなどで多くのプロジェクト、膨大な投資が起こる。このプロジェクトの受注においてもスピードが鍵になる。
新興国では、開発投入と資金回収でスピードが求められる。中国では、新幹線を数年で輸入代替、内製化した。既に新幹線は中国の新ビジネスになっており、今後、国内新幹線の総延長は日本の2倍以上になり、海外受注が焦点となっている。
私見ながら日本企業の経営者がサムスンと競争するには2倍くらいのスピードが必要だが、中国相手では3倍以上必要で、上海での3年間勤務は日本の9年から12年分と同じである。日本本社でプロジェクトを慎重に1年検討して中国へ回答すると中国の感覚では3年以上経っていて、もうすべてのプロジェクトは終わっていて、遅れての回答にあきれられる。これを私は「浦島太郎現象」と呼んでいる。浦島太郎現象が日本と海外のあらゆるところで起こっている。
では、日本型モデルはなぜ遅いかを考えてみると、組織構造の違いが原因の1つであることがわかる。図表1は、食品関連業界における日米比較である。米国については穀物メジャーであるカーギル社を中核にした事例を構造化し、日本については総合商社を中心とした構造を図示し、企業名も一部取り上げている。
図表1 日米企業の組織構造の違い(表示されないね(^^))
日本の組織間関係は米国穀物メジャーのような上流が下流を支配し、トップダウン的に戦略を決めるという構造になっていない(図表1)。
米国カーギルは年商10兆円近い穀物メジャーであるが、日本の総合商社を中心とした組織間関係と比較すると、トップダウン型の組織になっていることがわかる。米国の穀物メジャーを中心とした構造は上流支配で、優秀なトップが決定する。経営陣が意思決定権を持ち、戦略・研究所・大学と企画し、下流を従属させ目標を一気に実行させる。トップとマーケットの間は一直線であり上流で戦略商品が決まると下流は従う。強みは戦略部門である。
これに対し、日本の場合は下流が強い。顧客に対してどういう食品を提供していくかについて現場のリーダーが主導して商品を開発、改良していく。下流は、①顧客に対して安全で衛生的、高い品質の商品へと工程を改善する生産技術、②顧客が好む食品を営業の中から開発し、提供する開発営業(開発型営業)に優れる。下流の生産技術者・開発する営業担当者の中でリーダーシップをとる現場リーダーが強い。
下流勝負の日本に対して上流勝負の米国という構図が図表1である。日本の総合商社を中心とした構造は、下流部門の多くの企業(中小企業が多い)の技術者、営業員などが顧客に個別的に対応する。下流部門は多くの企業、個人で構成されており、各個が自己組織的に顧客最適化を目指す。そのため、全体最適化を目指す経営層はコントロールが非常に難しくなり、必然的に意思決定スピードは遅くなる。特に、下流の現場リーダーの数は多く、上流の経営者の数は少ない。下流の多くの現場リーダーが顧客に忠実に状況に合わせ商品開発を行うと、上流の経営者によるコントロールは非常に難しくなる。
また、図表1で、日本では下流部門だけでなく、その下流を支援する中流部門にも多くの人がいてそれぞれの立場で意思決定に関与し、構造全体として、スピードを遅くする原因となっている。特に日本の中流には中間管理者が多く、経営に時間がかかる原因となっている。
2.仮説と検証
ここで、4つの仮説を提示したい。
1 スピードには「早い・速い・疾い」の3種がある。
2 情報通信ソフト、クラウドコンピューティングなどでどこまでスピードが上がるか。
3 トヨタ生産方式などの経営手法でどこまでスピードが上がるか。
4 ビジネスプロセスを「内段取り」、「外段取り」に分けスピードを上げる。
将来課題として「第5仮説インフラとプラットフォームでスピードを上げる」ことを研究しているが、まだ途上であり、今後の課題としたい 。
(1)スピード3型
「早い」企業の代表はグーグルである。「速い」企業はプロセスが優れているという意味で、シーメンスや多くの日本企業がこれに対応する。ドイツ型は計画、日本型は実行ともいえる。ドイツ人は計画に強い。それに対して日本人は、計画はなかなかしっかりした計画は作れないが、実行段階では凄い。日本型の速さは実行部分を中心とするものである。また、トヨタ生産方式も「速い」といえる。1980年代に日本の自動車産業が世界にデビューし、この時代日本企業は速かった。
「疾い」企業は例えば営業の「切れ味」といった表現が適当である。三菱電機など多くの企業の現場における特定の個人などにみられる。重厚長大の企業であっても、判断と状況を掴んだスピード感覚を身につけているとスピードは疾い。「早い」は天の時、「速い」は人の和、「疾い」は地の利とでも言えるかとも思う。状況をどう見極められるかということである。
(2)情報通信・クラウド・トヨタ生産方式
また、情報通信、クラウドなどで実際どれくらいスピードが上がっているのかの検証や、トヨタ生産方式という、日本が世界に広めた「最強ブランド」が、スピードの向上という点でどれくらいの効果を上げているのかも検証したい。
(3)ビジネスプロセスの分割
最後にビジネスプロセスにおける内段取りと外段取りを検証する。日本企業は内段取りにあたるプロセスが長すぎ、処理に時間がかかっていると見られるが、プロセスからかなりな工程を、外段取りに出すことでスピードが上がると予想できる。
おわりに
日本の企業はトップダウンの早い意思決定はできないが、現場リーダーは非常に優秀である。実際、優れた新商品が多く生まれている。新商品を出すのは、欧米ではエリート層の仕事なのだが、日本では多くの現場リーダーが開発している。例えば、コンビニなどの食品業界全体で数万人という人が顧客の好みを考えて工夫、改良、新アイデアを付加し、新商品を出している。この多くの商品が、顧客を満足させ、安全な商品を提供していくという組織間の構造は日本型の特徴である。
この長所を保持したままスピードを上げて行くにはどうしたらいいのかを考えていきたい。
日本の産業政策、経営学の研究者にとって国内研究が以前は中心であった。スピードについての議論も国内と海外の比較といった視点が中心であった。産業政策でも財務省・金融庁や経産省など国内に対して海外との比較研究をし、提言を行うことが多かった。ところが現在は日本以外の政府にアドバイスをし、他国の企業を指導する機会が増えてきた。本田技研工業、キヤノンなど海外売り上げが8割を超えようという企業にとって、国内、海外が一体となったスピード研究が必要になる。現在、組織の規模と境界がスピードに与える影響について研究を行っている 。
著者は10年ほど前に中国国務院(政府)のプロジェクトに参加したのをきっかけに、以降中国政府で、多くの産業政策のアドバイス、国有企業などの行政指導をしている 。東南アジアでもアドバイスを行う。また多くの課題を抱えるインド企業にとって日本の経営学者の指導は貴重である。
中国の企業経営者と会っていると、40代が中心で、30代も非常に多い。日本でいえば係長からようやく課長になる年齢である。中国政府と経営者比較研究を8年続けているが、経営者の平均年齢は40歳前半、取締役層が30代後半であり、中核社員は若い 。
日本の60代の経営者は中国の若い経営者と話をしていると、父と子どもが会話をしているような感覚になってくる。中国の経営者からみると欧米の若い経営者と話し一緒にビジネスを行うほうがはるかに楽しい。中国の経営者、中核社員は非常に意思決定のスピードが速い。日本企業の3倍早いのではないかと直感的に感じている。経営者の仕事が意思決定で、中核社員の仕事が企画、開発などであるなら、スピードが3倍早いということは、彼らは日本の経営者、中核社員より3倍多くの仕事をこなすということである。
日本の経営者、中核社員たちは、こういう若くてスピードの速い経営者、幹部社員たちと今後世界で戦っていかなければならない。走るスピードが3倍違うサッカー選手が対戦しているゲームを想像して欲しい。現実にも走力で100メートル1秒差があればゲームにはならない、まして走力が3倍違えば勝敗は明らかである。これは日本企業の経営者と幹部社員の大きな課題であり、挑戦すべきテーマである。
日本企業はスピードが遅いと多くの国際的な場でいわれる。経営指導の折、幾度と無く海外と日本企業の商談の仲介をした。成功率は低い。日本企業の経営者は結論を半年1年延ばしても平気である。中国などの新興国の経営者にとっては日本の半年は1年半、1年は3年経過したとの意識である。とても待てない。商談がダメになる例は枚挙にいとまがない。一般に意思決定が遅いから経営のスピードが遅いといわれる。しかし、遅いといわれているのは意思決定だけなのか、それとも別の要因があるのか、これをまず考えてみたい。
中国の政策担当者の興味関心事を見ていると、日本の高度経済成長期の末期からの政策を勉強している 。高度成長から安定成長に移行する政策を考えている。中国は10%成長が30年も続いているので、そろそろ成長のスピードが低下すると政府(国務院発展改革委員会、発展研究中心 )は考えており、そのときにどのように国有企業が変わっていくべきか、が研究課題となっている。日本政府・企業が1970年代何をやっていたのかは重大な中国政府の関心である。
しかし、2010年代の中国のスピードは日本の1970年代より3倍速いといった印象を持っている。
1.4倍のスピード開発と日本型モデル
今回の議題を、スピード目標「4倍」としたが、中国と日本の経営では、前出のように3倍のスピード差を体感している。では、スピードが遅いと何が問題になるのかというと、若手の経験が蓄積しない。遅いと若手が若いうちに経験できることが少なくなる。が、日本のようにスピードが遅いと新入社員は2つか3つのプロジェクトを経験しただけで定年になってしまう 。若手に成長の機会と場を与えられないのである。
中国、インドなど新興国では、今後10年以内に10億戸以上の住宅建設が予定されているとの見方がある。10億戸の住宅用に、自動車、家電、日用品が売れる。このとき、10億戸の住宅用に新幹線、高速道路、スマートグリッド、水ビジネスなどで多くのプロジェクト、膨大な投資が起こる。このプロジェクトの受注においてもスピードが鍵になる。
新興国では、開発投入と資金回収でスピードが求められる。中国では、新幹線を数年で輸入代替、内製化した。既に新幹線は中国の新ビジネスになっており、今後、国内新幹線の総延長は日本の2倍以上になり、海外受注が焦点となっている。
私見ながら日本企業の経営者がサムスンと競争するには2倍くらいのスピードが必要だが、中国相手では3倍以上必要で、上海での3年間勤務は日本の9年から12年分と同じである。日本本社でプロジェクトを慎重に1年検討して中国へ回答すると中国の感覚では3年以上経っていて、もうすべてのプロジェクトは終わっていて、遅れての回答にあきれられる。これを私は「浦島太郎現象」と呼んでいる。浦島太郎現象が日本と海外のあらゆるところで起こっている。
では、日本型モデルはなぜ遅いかを考えてみると、組織構造の違いが原因の1つであることがわかる。図表1は、食品関連業界における日米比較である。米国については穀物メジャーであるカーギル社を中核にした事例を構造化し、日本については総合商社を中心とした構造を図示し、企業名も一部取り上げている。
図表1 日米企業の組織構造の違い(表示されないね(^^))
日本の組織間関係は米国穀物メジャーのような上流が下流を支配し、トップダウン的に戦略を決めるという構造になっていない(図表1)。
米国カーギルは年商10兆円近い穀物メジャーであるが、日本の総合商社を中心とした組織間関係と比較すると、トップダウン型の組織になっていることがわかる。米国の穀物メジャーを中心とした構造は上流支配で、優秀なトップが決定する。経営陣が意思決定権を持ち、戦略・研究所・大学と企画し、下流を従属させ目標を一気に実行させる。トップとマーケットの間は一直線であり上流で戦略商品が決まると下流は従う。強みは戦略部門である。
これに対し、日本の場合は下流が強い。顧客に対してどういう食品を提供していくかについて現場のリーダーが主導して商品を開発、改良していく。下流は、①顧客に対して安全で衛生的、高い品質の商品へと工程を改善する生産技術、②顧客が好む食品を営業の中から開発し、提供する開発営業(開発型営業)に優れる。下流の生産技術者・開発する営業担当者の中でリーダーシップをとる現場リーダーが強い。
下流勝負の日本に対して上流勝負の米国という構図が図表1である。日本の総合商社を中心とした構造は、下流部門の多くの企業(中小企業が多い)の技術者、営業員などが顧客に個別的に対応する。下流部門は多くの企業、個人で構成されており、各個が自己組織的に顧客最適化を目指す。そのため、全体最適化を目指す経営層はコントロールが非常に難しくなり、必然的に意思決定スピードは遅くなる。特に、下流の現場リーダーの数は多く、上流の経営者の数は少ない。下流の多くの現場リーダーが顧客に忠実に状況に合わせ商品開発を行うと、上流の経営者によるコントロールは非常に難しくなる。
また、図表1で、日本では下流部門だけでなく、その下流を支援する中流部門にも多くの人がいてそれぞれの立場で意思決定に関与し、構造全体として、スピードを遅くする原因となっている。特に日本の中流には中間管理者が多く、経営に時間がかかる原因となっている。
2.仮説と検証
ここで、4つの仮説を提示したい。
1 スピードには「早い・速い・疾い」の3種がある。
2 情報通信ソフト、クラウドコンピューティングなどでどこまでスピードが上がるか。
3 トヨタ生産方式などの経営手法でどこまでスピードが上がるか。
4 ビジネスプロセスを「内段取り」、「外段取り」に分けスピードを上げる。
将来課題として「第5仮説インフラとプラットフォームでスピードを上げる」ことを研究しているが、まだ途上であり、今後の課題としたい 。
(1)スピード3型
「早い」企業の代表はグーグルである。「速い」企業はプロセスが優れているという意味で、シーメンスや多くの日本企業がこれに対応する。ドイツ型は計画、日本型は実行ともいえる。ドイツ人は計画に強い。それに対して日本人は、計画はなかなかしっかりした計画は作れないが、実行段階では凄い。日本型の速さは実行部分を中心とするものである。また、トヨタ生産方式も「速い」といえる。1980年代に日本の自動車産業が世界にデビューし、この時代日本企業は速かった。
「疾い」企業は例えば営業の「切れ味」といった表現が適当である。三菱電機など多くの企業の現場における特定の個人などにみられる。重厚長大の企業であっても、判断と状況を掴んだスピード感覚を身につけているとスピードは疾い。「早い」は天の時、「速い」は人の和、「疾い」は地の利とでも言えるかとも思う。状況をどう見極められるかということである。
(2)情報通信・クラウド・トヨタ生産方式
また、情報通信、クラウドなどで実際どれくらいスピードが上がっているのかの検証や、トヨタ生産方式という、日本が世界に広めた「最強ブランド」が、スピードの向上という点でどれくらいの効果を上げているのかも検証したい。
(3)ビジネスプロセスの分割
最後にビジネスプロセスにおける内段取りと外段取りを検証する。日本企業は内段取りにあたるプロセスが長すぎ、処理に時間がかかっていると見られるが、プロセスからかなりな工程を、外段取りに出すことでスピードが上がると予想できる。
おわりに
日本の企業はトップダウンの早い意思決定はできないが、現場リーダーは非常に優秀である。実際、優れた新商品が多く生まれている。新商品を出すのは、欧米ではエリート層の仕事なのだが、日本では多くの現場リーダーが開発している。例えば、コンビニなどの食品業界全体で数万人という人が顧客の好みを考えて工夫、改良、新アイデアを付加し、新商品を出している。この多くの商品が、顧客を満足させ、安全な商品を提供していくという組織間の構造は日本型の特徴である。
この長所を保持したままスピードを上げて行くにはどうしたらいいのかを考えていきたい。
2011年4月24日日曜日
スピード経営語録 最速は一人企業?
以下は、単元ごと、ゼミ生で詳しい内容を知りたい人は清家まで質問してください。
1.企業(自治体)どうように顧客も組織(清家彰敏『顧客組織化のビジネスモデル』中央経済社)を持っている。顧客まで含んだ組織設計は経営を「加速」させる。
2.顧客と企業は一人対一人でソリューションするのがもっともスピードが早く・速く・疾い。
3.一人企業(情報装備一人企業:清家彰敏『進化型組織』同友館)は最速を追求できる。
4.一人企業が最速の理由は組織における「調整作業」「調整コスト」がもっとも小さくなるからである。
5.調整コストへの対応として日本では中間管理職が大きな役割を持っている。中間管理職の役割の設計は、変化する顧客組織と企業組織との調整コストを最小にすることにある。
6.企業の危機は、急激な顧客と顧客組織の変化と急激な技術の変化の結果であり、日本は前者に強く欧米企業は後者に強みを持っている。
7.危機の前兆は人材の変化とイノベーションの動向から分かる。
8.イノベーションは技術においては周知のごとく発明、発見から起こる。
9.イノベーションは社会においては宗教、思想、事件(たとえば東日本大震災)、戦争などによって起こる。
10.人材の変化は育成の失敗、移民、革命によって起こる。
11.急激な顧客の変化に対して、組織は小規模組織化することによって対応すべきであり、その究極が一人企業である。
12.10年後情報装備一人企業は人工知能の進化によって、ナノ単位のビジネスモデル設計へと進化するだろう。
13.一人企業は内部組織、社外(組織間関係・社会)において重複投資と過当競争を招く。
14.重複投資、過当競争にならない共通インフラ(プラットフォーム)設計によって一人企業化のベクトルは組織を加速させる。
15.技術の急変、例えば電気自動車などは、企業(自治体)組織、顧客組織に変革を迫り、それに対応できなかったら滅びる。
16.技術の急変をリーダーが先取りして”早く”対応勝利する事例が欧米企業(自治体)には多い。
17.技術の急変に対して、リーダーが短期的機会主義的成果より長期的利益を優先させ、長期的な視点で組織再編を行う企業(自治体)が日本には多い。これは短期的には”早い”を犠牲にするため”速い”組織へと転換させなければ敗者となる。事例としてトヨタ自動車など。
18.グーグルはミッションステートメントを発して、技術変化、社会変化を先取りして少数のリーダーによって起業された。ミッションに共感する同士の集合が組織であり、「決定のプラットフォーム」ができているためて”早い”決定ができる。
19.ミッションを達成すればグーグルは社会的使命を終え消えると社内外が信じている限りにおいてグーグルは将来的にも”早い”決定を継続できる。
20.グーグルの起業は「固定費ゼロ・変動費のみ」で説明できる。
21.常に後発起業は先発起業に比べて固定費を大きく節約でき、少ない投資で成功できるというのが情報通信化の原理
22.情報通信化は内部知識より外部知識の量的増加が著しい。
23.外部知識とは、主体(個人、組織)以外が保有する知識であり、級数的に増加している。
24.外部知識の利用によって起業の固定費がゼロに近づいていく。
25.さて、グローバル化によって起業の固定費は節約されるのか増加するのか?
26.情報通信化によって固定費が節約できるということは仕事(活動)においても投資額を低減させる。
27.起業の固定費が無くなることは固定費をめぐる作業を省略できることを意味し起業が”加速”する。
清家研究室前期 月曜日法政大学経済学部 水曜日夜経営組織論 金沢高岡
以下は2011年前期「ビンボウ暇なし状態の清家」を確実に捕獲できる予定です。社会人の方どんどん参加してください。
毎週
月曜日15:00~18:00過ぎは法政大学経済学部222演習室で2年3年4年生ゼミを行っています。社会人参加OK
水曜日16:05~21:00過ぎ富山大学経済学部301教室で「経営組織論」講義(北陸の代表的経営者、経営幹部の講演を2回に1回開催)、その後大学院のゼミを開いて10時過ぎまで議論しています。社会人飛び入り参加OK(事前アポイントメント不要)
木曜日13:00~14:30富山大学大学院MBA経営組織特殊研究(409演習室)大学院生・研究生20人程度と議論、社会人飛び入り参加OK(事前アポイントメントは不要)
16:30~18:00富山大学経済学部ゼミ(308演習室)3,4年生(ゼミの運営は3年生主体)社会人飛び入り参加OK(事前アポイントメントは不要)
上記以外に
金沢 北國新聞文化センター(「もしドラ」からドラッカー経営学の清家解釈)
毎月第4木曜日19:00~20:30
高岡 富山新聞文化センター(「もしドラ」からドラッカー経営学の清家解釈)
毎月第1木曜日19:00~20:30
これは参加費が要りますね(^^;)
毎週
月曜日15:00~18:00過ぎは法政大学経済学部222演習室で2年3年4年生ゼミを行っています。社会人参加OK
水曜日16:05~21:00過ぎ富山大学経済学部301教室で「経営組織論」講義(北陸の代表的経営者、経営幹部の講演を2回に1回開催)、その後大学院のゼミを開いて10時過ぎまで議論しています。社会人飛び入り参加OK(事前アポイントメント不要)
木曜日13:00~14:30富山大学大学院MBA経営組織特殊研究(409演習室)大学院生・研究生20人程度と議論、社会人飛び入り参加OK(事前アポイントメントは不要)
16:30~18:00富山大学経済学部ゼミ(308演習室)3,4年生(ゼミの運営は3年生主体)社会人飛び入り参加OK(事前アポイントメントは不要)
上記以外に
金沢 北國新聞文化センター(「もしドラ」からドラッカー経営学の清家解釈)
毎月第4木曜日19:00~20:30
高岡 富山新聞文化センター(「もしドラ」からドラッカー経営学の清家解釈)
毎月第1木曜日19:00~20:30
これは参加費が要りますね(^^;)
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