2024年1月6日土曜日

世界スマートシティ政策の連続性とトヨタ自動車 ――AI・ブロックチェーン・暗号化などの視点からー-

 

世界スマートシティ政策の連続性とトヨタ自動車

――AI・ブロックチェーン・暗号化などの視点からー-

 

○清家彰敏(富山大学/ハリウッド大学院大学),清家大嗣(東京大学)


序論

欧米と中国のスマートシティ政策のパラダイムの相違は大きく、大きく異なった政策は欧米、中国それぞれで連続性を持っている。インフラ投資、リノベーション、AIとブロックチェーン、暗号などのデジタル技術の進展は、過去の成果に拘束され連続性を持たざるを得ない。欧米のスマートシティ政策は自由と民主を旗頭にし、中国のスマートシティ政策は共産党指導により情報は管理監督されている。

欧米と中国のスマートシティ政策はそれぞれ欧米、中国ともに政策として連続性を持っている。またトヨタ自動車の経営戦略も連続性を持っている。欧米、中国におけるスマートシティ政策の下でのスマートシティ建設にトヨタ自動車がどのように貢献できるか、それがグローバルサウス各国でのスマートシティ政策への貢献に繋がるか、試論を展開する。また、トヨタ自動車は欧米中の自動車政策の共通の敵と見做されている可能性がある点についても留意する。トヨタ自動車の連続性はスマートシティの顧客から始まる。スマートシティの顧客からの学習から始まり、トヨタグループの系列企業が加わる。また欧米、中国ともに、スマートシティにおいて、EV開発、普及が急速に進んでいる。特に中国においては、スマートシティ政策は共産党指導による権力集中で、監視、暗号化などの技術が進展しており、世界でもっともデジタル化が進んでいると言われている。中国でのデジタル主導でのEV普及は、無人運転におけるソフトウェアの進化が著しい。

 

2.欧米と中国のスマートシティの概観

都市は、新幹線計画、高速道路、地下鉄、高層建築などの建設といった重厚長大の都市インフラ投資と自動車・家電などの巨大消費市場開拓で、過去成功してきた。これは現在も発展途上国などにおける政策の成功モデルと考えられる。世界の多くの途上国の政策に影響を与えている。それに対して、スマートシティ開発は日米欧にもモデルが存在しえない開発である。中国でのスマートシティ開発は、北京市・雄安新区では百度、杭州市ではアリババ、深圳市ではテンセント、合肥市ではアイフライテックなどのデジタルをコアビネスとするプラットフォーマーが中心となっており、多くのパートナー企業が内外から参加している。スマートシティは、プラットフォーマーごとに異なるモデルとならざるをえない。病院はスマートシティの最大のパートナーであり、スマートシティの核となる。

世界において、スマートシティは、かつては交通の制御やエネルギーの効率利用が多かった。現在は、都市の行政サービス機能を統合するプラットフォーム構築は巨大IT企業プラットフォーマーが提供する。このプラットフォームによるエコシステムで多くの企業がビジネスを行う。スマートシティのプレイヤーは市側とプラットフォーマー(デジタルプラットフォーマ―、多くは巨大IT企業)とパートナー(多くは内外の企業)と市民の4者である。プラットフォーマーは覇権競争を、パートナーは横展開と全国展開、海外展開を期待する。環境対策、環境負荷の低減はスマートシティの大きな主眼である IoTはスマホ、監視カメラ、自動車などのセンサ(五感)を世界中のスマートシティに溢れさせ、このセンサはAIを内包する。

スマートシティではデータドリブンでのビジネスが、ボトムアップで展開される。経営者、従業員はAIと連携する作業を要求される。生成AI利用では、企画が誰でも作れ、ソフト開発、コンテンツ作成は技術が無くてもできる。機械学習や深層学習を使った画像解析やアルゴリズムの開発が行われる欧米、中国において、市民の教育水準の向上、権利意識の高まりなどで、近未来、スマートシティは、Web3.0の分散型都市になる可能性が大きい。Web3.0で、ブロックチェーン技術がスマートシティに与えるインパクトは大きい。ブロックチェーン技術により、データの改ざんが困難なシステムを安価に構築できる[1]。ブロックチェーンは、ビットコインを実現するために生まれた技術であるが、暗号技術を用い、P2Pでデータを共有し、管理者が必要ないため、スマートシティの未来Web3.0時代の基幹技術と考えられている[2]スマートシティの官僚は、統合的決定能力は高いが、専門的関心が薄く、専門的判断能力は低い。中国では、市政府とプラットフォーマーで情報の非対称性が存在するが、日米欧でも市側とプラットフォーマーとの間で情報の非対称性は問題となる

スマートシティの中で、トヨタ自動車はConnected(コネクティッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)といった「CASE」と呼ばれる新しい領域で技術革新を進め、クルマの概念は大きく変わる[3]。トヨタは、モビリティに関わるあらゆるサービスを提供し多様なスマートシティの市民のニーズに応える「モビリティカンパニー」として、未来のスマートシティの建設に貢献する。

 

3.トヨタ自動車の任天堂からの学習

 欧米と中国のスマートシティ政策の分断を考えれば、トヨタ自動車は、経営戦略で、中国のスマートシティ政策の下では任天堂から学ぶ、欧米のスマートシティ政策の下ではソニーグループから学ぶべきではないか、という仮説を立て、以下論じたい。トヨタ自動車のウーブン(Woven)・プラネット・ホールディングスとウーブン・コアとウーブン・アルファ(以下ウーブン、ウーブングループと略記)はCASE対応が求められソフト開発の多様性を持った異質な人材、チームで構成されてきた。トヨタ自動車の戦略部門であり、自動車のデジタル化、スマートシティ戦略の先鋒となってきた。トヨタ自動車やマツダ、スズキ、メルセデスベンツ、フォード、フォルクスワーゲン、デンソー、パナソニックはLinuxを中心としたオープンソースソフトウェアのもとでソフトウェアを開発している[4]。音声認識でAmazonAlexaで使われている音声認識モジュールを提供している。全ての開発プロセス、意思決定は公開の場で行われ、透明性が確保されている。ソースコードを公開して競争しながらも協力を惜しまない。

日本企業である任天堂からの学習については以下である。ことづくり、ソフトで任天堂が世界制覇できた理由はゲーム業界においては世界のことづくり、ソフトづくりのデファクトスタンダードは日本が作っていたからと考えられる。同様にトヨタの成功もトヨタ生産方式が世界のものづくりとハードのデファクトスタンダードになったからである。任天堂はことづくりとソフトにおける同質化競争で世界制覇し、トヨタはものづくりとハードにおける同質化競争で世界制覇を果たした。組織文化として、トヨタ自動車と任天堂は類似していると考えられる。中国のスマートシティは日本的な厳しい品質管理、安全管理でのビジネスが、望ましい。したがって、スマートシティでの品質管理は任天堂のビジネスが望ましいと思われる。任天堂は①ハードと一体化したことづくり、②ソフトづくりを監督、ソフトの品質保証が厳しい、③ネットワーク内のソフト会社に開発競争(同質化競争)させ、④日本的なことづくりとソフトの競争力で世界覇権をとってきた。その典型がマリオから「あつまれどうぶつの森」などである。

この戦略から学習すれば、トヨタ自動車は、①ハード(スマートシティ対応のトヨタ車)と一体化したスマートシティでのことづくり、②ウーブンのソフトづくりを監督、厳しく品質保証する、③ネットワーク内のソフト会社に開発競争(厳しく標準作業をさせる=同質化競争)させ、④日本的なことづくりとソフトの競争力で安心安全のスマートシティづくり、を行っていくである。その際における、組織の失敗の危険は、④日本的なことづくりとソフト開発、特にウーブンシティなどによる日本人のおもてなし感覚のスマートシティが世界でガラパゴスになる可能性が高い点である。任天堂はことづくりとソフトにおける同質化競争で世界制覇し、トヨタ自動車はものづくりとハードにおける同質化競争で世界制覇を果たした。ことづくり、ソフトで任天堂が世界制覇できた理由はゲーム業界においては世界のことづくり、ソフトづくりのデファクトスタンダードは日本が作っていたからと考えられる。日本において、ことづくり、ソフトづくりでの世界覇権企業はソニーと任天堂に代表される(清家,1999)。

 

4.トヨタ自動車のソニーからの学習

欧米のスマートシティ政策は、スマートシティ建設において、世界の多くのプラットフォーマー、関連企業、ベンチャー企業にオープンである。トヨタ自動車が欧米のスマートシティに関わるなら、トヨタ自動車の自動車とシステムは、世界の多くの異なった企業を集めるプラットフォームとなることが望ましい。近畿運輸局によると、現在の民営・公営を平均した路線バスのコスト構造は、車両費が約7%なのに対し、人件費が6割程度を占める[5]。欧米の都市においても、大都市圏周辺を除く地方では、運転手の担い手がいないなど人材確保が難しいという課題もある。こうした課題を自動運転の普及が解決する。

ソニーはプレイステーション(8)で、①高性能低価格のハードづくり、②コトづくり、ソフトづくりを社外に依存(異質化競争)、③モノづくりでも強みがないが、④コンテンツによるコトづくりに強みを求める、で世界覇権をとってきた。トヨタ自動車がスマートシティこの戦略から学習すれば、トヨタ自動車は①高性能低価格の自動車で世界市場の覇権をとっているので、②コトづくり、ソフト作りを社外に依存(異質化競争)し、③電気自動車によってものづくりによる強みが消えていく中で、④スマートシティに関するコンテンツによるコトづくりを強みにするために、世界のコンテンツをソニーのように積極的に購入していく、戦略である。④コンテンツ獲得に関しては、SFGs、スマートシティにおいては医療データ、環境データからスマホの生活データまで膨大である。世界でトップのコンテンツ獲得の成否がスマートシティでの成功をもたらす。トヨタ自動車がスマートシティで、経営戦略立案の際に、ビジネスの場におけるプライヤー間の競争の原理が、異質化競争であるか同質化競争であるかによって成功する戦略が変わる。ソニーから学ぶときは参加するプレイヤーが異質化競争を起こすことにより、戦略は成功を収める。任天堂から学ぶときはプレイヤーが同質化競争を起こすとき戦略は成功する。

 

5.トヨタ自動車の戦略と連続性

トヨタは学習組織としても知られており(1995a)、現在もその組織文化は継続しており、それが戦略の連続性となっている。元町工場で大野耐一氏がトヨタ生産方式、新郷重人氏がシングル段取りを確立し、1970年代80年代とグループ全体が学習していった。次いで80年代~00年代メルセデスベンツの学習が起こり、レクサスの誕生となった。トヨタ自動車が欧米と中国のスマートシティへの経営戦略を構築する際に、トヨタ自動車の自動車とシステムが作るプラットフォームに参加するサプライヤー企業間の競争の原理が、異質化競争であるか同質化競争であるかによって成功する戦略が変わる(清家,1999)。CASEにおけるビジネスでは供給側のサプライヤーだけでなく販売側のプレイヤーの異質化競争、同質化競争による戦略を構想しなければならない。また世界に視点を移して、異質化競争の戦略を、中国、米国などのプレイヤーと連携して構想すべきである。なお本稿の競争概念はハイエク(1945)に依拠する。

今井賢一他(1982)、ウイリアムソン(1986)は組織間関係、組織における市場化における競争を日本企業の強みとした。一般に強制力が働くときは、構成員を同質化しようとする傾向があり、その場における競争の性質は同質化競争と規定できる。それに対して個人は自由に発想、行動し、そこから競争優位を獲得しようとする傾向があり、個人間の競争の性質は異質化競争と規定できる。この規定から考えると、共産党指導下の中国のスマートシティ政策の枠内で、トヨタ自動車の自動車とシステムが作るプラットフォームに参加するサプライヤーは同質化すると思われる。トヨタ自動車が任天堂を模倣する経営戦略が合理性を持つと規定しうる理由である。

スマートシティのプラットフォームは、ものづくりとことづくりのサプライヤーを参画させる機能が必要である。ものづくりは同質化競争とそのマネジメント(清家,1995a)で論じられ、現在もその傾向が強い。それに対して、ことづくりは異質化競争によってイノベーションを起こし、競争優位を獲得する。情報通信・AI支援でのビジネスを行う一人企業(清家,1999)は、世界において異質化競争を繰り広げている。中国のスマートシティ政策は強制力を現在強めており、異質化競争に参加するサプライヤーは今後、減少していく可能性が高い。トヨタ自動車の中国のスマートシティでの経営は、トヨタの系列企業への依存が高まると考えられる。

競争は自由と拘束の中間で起こる。拘束は理念、投入、態度、過程、産出、効果のどれを固定するか、で異質化競争と同質化競争に分かれる。異質化競争では、理念、態度、過程については個人の自由に任せることになるため、異質化競争のマネジメントは投入、産出、効果を拘束する。同質化競争は理念、態度、過程が標準化し、投入、産出、効果について経営者は強く責任、契約遵守を厳しく問うことは難しい。中国のスマートシティ政策は強制力を現在強めており、中国のスマートシティにおける自動車とシステムのプラットフォームでは競争は弱くなり、管理は難しくなる。

トヨタ自動車はサプライチェーンにおいて市場化による競争を強化することで、同質化での競争維持とグループ経営の効率化を実現した[6]。サプライチェーンの市場化である。

清家の規定したサプライチェーンにおける戦略的ローテーションも重要である(1995b)。トヨタ自動車のボディローテーションはピジネスの移動によって同質化競争を行おうとする。トヨタ自動車はグループ内の複数企業のデザイン、開発、生産過程を細分化、単位化し、戦略的にローテーションする。単位化は互換に繋がり、同質化した互換単位はグループ内での仕事の争奪をめぐり競争を行う。トヨタ自動車は単位のコスト、品質を比較し仕事の配分を決める。豊田英二元トヨタ自動車会長のいう「うちでやった方がお得ですよ」は、すなわち魅力的な単位“にならなければ敗者になる。

サプライチェーンにおける情報共有も重要である。サプライヤーはトヨタ自動車と同じ部門を作り、情報を共有しており、人材教育の共通の場(会議体)を持っており、人材はトヨタ自動車と交流しながら共に成長していく。

トヨタ自動車は、中国のスマートシティ政策のもとで、自動車とシステムのプラットフォームに参加させるサプライヤーに対して、「市場化」、「戦略的ローテーション」、「情報共有」で経営を行う。

トヨタ自動車はスマートシティにおける自動車ビジネスで、任天堂、ソニーの戦略から学習して、戦略を立案すべきである。戦略立案の際に、ビジネスの場におけるプライヤー間の競争の原理が、異質化競争であるか同質化競争であるかによって成功する戦略が変わる。任天堂から学ぶときはプレイヤーが同質化競争を起こすとき戦略は成功する。ソニーから学ぶときはプレイヤーが異質化競争を起こすことにより、戦略は成功を収める。ソニー、任天堂といった日本企業に関わらず世界に視点を移して、戦略を、中国、米国などと連携して構想すべきである。

欧米と中国のスマートシティへのトヨタ自動車の経営戦略として、欧米のスマートシティ政策対応の経営戦略、中国の共産党主導のスマートシティ政策に対応した2つの戦略が望ましいと考えられる。トヨタ自動車は世界の自動車覇権を今後の10年は握る可能性が高い。資金力が極めて大きい。この10年間に、トヨタ自動車のウーブンは、任天堂模倣を行い、中国のスマートシティ政策に対応、ソニー模倣して欧米のスマートシティ政策に適合する経営戦略を実行することが望ましい。

ソニーと任天堂はマイクロソフトの参入を阻止できた。その理由はソニーと任天堂という2つの異なるタイプのゲーム企業2社があり、世界市場が3番手を必要としなかったとの見方もできる。今後10年間、トヨタ自動車がスマートシティにおいて、欧米と中国で大きく貢献できることの意味は大きい。トヨタ自動車の欧米スマートシティでの成功が世界へ広がり、中国での成功からグローバルサウスへパラダイムが広がり、トヨタ自動車のスマートシティへの貢献が、浸潤すれば、トヨタ自動車のスマートシティにおける世界での覇権は長く続く可能性がでてくる。

 

結語

欧米と中国のスマートシティ政策のパラダイムの相違は大きく、大きく異なった政策は欧米、中国それぞれで連続性を持っている。インフラ投資、リノベーション、AIとブロックチェーン、暗号などのデジタル技術の進展は、過去の成果に拘束され連続性を持たざるを得ない。欧米のスマートシティ政策は自由と民主を旗頭にし、中国のスマートシティ政策は共産党指導により情報は管理監督されている。

欧米と中国のスマートシティ政策はそれぞれ欧米、中国ともに政策として連続性を持っている。またトヨタ自動車の経営戦略も連続性を持たなくてはならない。

欧米、中国におけるスマートシティ政策の下でのスマートシティ建設にトヨタ自動車がどのように貢献できるか、それがグローバルサウス各国でのスマートシティ政策への貢献に繋がるか、試論を展開した。トヨタ自動車は欧米と中国の自動車政策の共通の敵と見做されている状況を変えるには、欧米と中国のスマートシティでのトヨタ自動車の戦略を、異ならせることによって、共通の敵でなくなる可能性についても論じた。

欧米、中国におけるスマートシティの建設にトヨタ自動車がどのように成功を納めていけるか、それがアジア・アフリカのグローバルサウス各国でのトヨタ自動車の成功に繋がるか、どうか。トヨタ自動車の戦略について分析、欧米の提案を行った。トヨタ自動車はスマートシティにおける自動車ビジネスで、ソニーからサプライヤーの異質化競争による戦略を、任天堂からサプライヤーの同質化競争による戦略を学習する。CASEにおけるビジネスでは供給側のサプライヤーだけでなく販売側のプレイヤーの異質化競争、同質化競争による戦略を構想した。世界から欧米、中国のスマートシティにおけるトヨタ自動車の自動車とシステムのプラットフォームでの競争戦略を構想すべきであるとの提案も行った。

 

参考文献

(1)  https://www.tesla.com/ja_jp(2021年3月10日検索)

(2)  https://www.woven-planet.global/jp/homehttps://www.tesla.com/ja_jp(2021年3月10日検索)

(3)  https://global.toyota/jp/mobility/case/(2021年3月10日検索)

(4)  ソニー広報センター編(1996)『源流』ソニー創立50周年記念

歴史・ソニーJapanhttps://www.sony.co.jp/SonyInfo/CorporateInfo/History/(2021年3月10日検索)

(5)  https://www.nintendo.co.jp/(2021年3月10日検索)

(6)  https://www.woven-planet.global/jp/woven-core(2021年3月10日検索)

(7)  https://www.woven-planet.global/jp/woven-alpha(2021年3月10日検索)

(8) https://www.playstation.com/ja-jp/ps5/(2021年3月10日検索)

(9) https://www.nintendo.co.jp/character/mario/(2021年3月10日検索)

(10) https://www.nintendo.co.jp/switch/acbaa/index.html(2021年3月10日検索)

日本語

今井賢一他(1982)『内部組織の経済学』東洋経済新報社.

清家彰敏(1995a)『日本型組織間関係のマネジメント』白桃書房

清家彰敏(1995b)「自動車産業の高度成長とプロセス・イノベーション」野中郁次郎・永田晃也編著『日本型イノベーション・システム』白桃書房

清家彰敏(1999)『進化型組織』同友館

清家彰敏(2002)『顧客組織化のビジネスモデル』中央経済社

英語

Hayek,F.A.(1945)”The Use of Knowledge in Society”,American Economic Review,Sept.

Hippel,E.(1988)The Source of Innovation,Oxford Press,NY.

MIT Commission on Industrial Productivity (1989)The U.S.Automobile Industry in an Era of International Competition: Performance and Prospects, Working Paper prepared by James P.Wormack.

Williamson,O.E.(1986) Economic Organization:Firms,Markets and Policy Control,Wheatsheaf Book Ltd,1986.



[1] 世界の官学、日本の経済産業省なども20164月にブロックチェーンに関する報告書を発表している。

https://www.meti.go.jp/main/infographic/pdf/block_c.pdf

[2] 清家大嗣はオフチェーン技術を含くむブロックチェーン開発・利用効率向上、コスト低減、セキュリティ向上の研究を行っている。

清家大嗣『スケーラビリティに基づくブロックチェーンインフラストラクチャーの数学的分析 Mathematical Analysis of Blockchain Infrastructure based on Scalability』(東京大学博士論文)、2023

[3] https://global.toyota/jp/mobility/case/

[4] https://response.jp/article/2022/07/07/359443.html

[5] https://dcross.impress.co.jp/docs/column/column20201012/003119-3.html

[6] ウイリアムソン(1986)は取引コストで理論化を試みた。

2023年11月28日火曜日

           ビューティライフ産業における人材マネジメント

 

      ハリウッド大学院大学教授・富山大学名誉教授

              清家彰敏

          日本文化経済リサーチセンター

               清家由加里

序章

本研究は、美の視点から全ての生活を考える時代を想定して、美の視点から生活に貢献する産業をビューティライフ産業と規定する。21世紀の日本は成熟社会になり、生活の質を向上させる、人生100年時代できるだけ健康寿命を長くし、若々しく生きたと願う人が多くなっている。全国津々浦々、できるだけ若さを保つことが価値になってきている。お若いですね、が最高の褒め言葉となってきた。体質の若さを問うビジネスは、医食同源で語られる。外見の若さを保つビジネスを担うのは美容、化粧品、美容医療などでありトータルビューティビジネスと言われる。ビューティライフ産業の中核として、医療とトータルビューティビジネスは位置づけられ、美容医療が、ビューティライフ産業のリンクピンになると考えられる。本研究は美容師と美容医療がビューティライフを外面、内面でマネジメントするビューティライフ産業について考察する。

2.ビューティライフ産業における個人化

インターネット上に情報が溢れる現在、経験豊富な美容師、美容医療の医師といった熟練者にとっては、集団による調整と合意獲得は煩わしい作業である。集団は熟練者が苛立ちを感じるだけである。革命的な技術以外は集団からの情報も必要ない。SDGsと新型コロナウイルスの影響で顧客はビューティライフ産業の対象である美容習慣や商品の購買は適切なのか、見直し始めた。その結果、顧客、従業員、経営者自身も仕事を見直す作業が始まっている。その際の有力な手法のひとつがデータサイエンスであり、企業と個人の対応の差が顕著となっている。化粧品業界では、データ処理能力によって従業員に格差が生まれ、組織内にコンフリクトが起こっている。それに対して経営者が対応を誤ると、顧客満足と従業員満足の統合を基盤とする日本型の強みが失われる可能性がある。新型コロナによる巣ごもり仕事では、個人として自立できている社員にとって、居心地の良い場が作られる。逆に個人としての自立ができていない社員にとっては苦痛である。美容医療の医師、看護師、美容師は個人営業が多い。

美容師を志す高校生、美容医療を志す医師、看護師の現状について考察してみよう。現代社会の様相を表す言葉として「個人化」ないし「個体化」individualizationという概念が用いられる[1]。乾彰夫は1990年代からの新規学卒就職の崩壊および若年労働市場の不安定化と格差化によって、生徒・学生から就職し、社会人となり親の保護からはずれた存在となるという青年期の枠組みが解体したと指摘している[2]1990年代から始まった企業組織における「個人化」の現象は美容師、美容医療の医師、看護師において顕著である。 

3.ビューティライフ産業における一人起業

現在、起業はビューティライフ産業で、盛んに行われており、特に美容医療の多くは経営者個人の能力から起業しており、一人起業が多い。スマートフォンは個人が起業するインフラとなっている。成熟社会となった21世紀においては社会、集団内での自己実現の場は少なく、ゲームによって個人は仮想の自己実現をするようにもなっている。起業は、コンフリクトの解消だけでなく自己実現を現実に達成することを助ける。一人起業・一人企業化によってコンフリクトが解消され従業員満足が得られる。また、個人営業はコスト競争力も向上する。ここで、個人営業を支援する人材マネジメントと情報システムが必要となる。 

データサイエンスと美容師の個性を生かす人材マネジメント

ビューティライフにおけるデータドリブン、データサイエンスについて考察してみよう。美容師は一人企業の典型である。また化粧品企業の美容部員も個人の美的センスが問われ、一人企業と言える。SDGsと新型コロナウイルスの影響で顧客は習慣や商品の購買は適切なのか、見直し始めており、ビューティライフは顧客、従業員、経営者自身の健康・美容・容姿・服飾・仕事・生活・趣味遊戯について、データで見直すところから始まる。

 データ至上主義の時代は、ユヴァル・ノア・ハラリらによって論じられ「人類には自由な意思など無い」ともいわれる。ビューティライフ産業では、データがビジョンを描く。データドリブンの時代に経営者、美容室の店長、企業、化粧品企業の社員は機械学習と連携する作業を要求される。機械学習や深層学習を使った画像解析やアルゴリズムの開発を行う支援業者が現れている。この支援業者の人材をマネジメントすることが、ビューティライフ産業発展の鍵である。

データドリブンによるビューティビジネスにおけるデータの裏付け、データに裏付けられたビューティ理論の構築が求められ、製品・サービスと顧客の仕事・生活・趣味遊戯の関係の実証的研究が行われている。人体の研究:美容において人の皮膚計測などの医学的研究、化粧品の使用効果を人の皮膚で評価していく研究など多くのテーマが、研究課題となっている。データドリブンによるデータサイエンス革命がビューティビジネスで起こっていると規定できる。データサイエンスの出力はバーチャルリアリティ(virtual realityVR)と拡張現実(augmented realityAR)が使われる。スマートフォンなどを顧客にかざすと、過去の顧客の画像と美容カルテが現れる。QRコードを読み取ると、スマートフォンのカメラを通じて現実の顧客に重なって次々現れ、もっとも好ましい髪型・メーキャップを選ぶことができる。

フェースブックでは、不適切な写真をAIが監視、自殺防止にも役立ている。テキストデータ、画像データを使った転移学習の事例である。フォースブックは、1日に投稿される100億枚の画像から、不適切な画像をAIで摘出している。人間にはいくら時間があってもできないような作業が必要な場合、AIは有効である。フェースブックはこのAIのアルゴリズム(転移学習)をフェースブックAIで解説している。画像からインサイトを抽出したいときの参考になる。データサイエンティストがビューティビジネスで、フェースブックのAIIBMAIワトソンを使うことも考えられる。

IBMAIワトソンは医師のカルテから世界中の症例を検索し、患者に最適な治療法の候補を医師に提示し、医師は治療を行うことができる。この技術とIBMAIワトソンを使えば、顧客の顔写真の3D画像から世界中の多くの髪型でもっとも適した髪型候補を探しだし、美容師が顧客にもっとも適した髪型を選ぶことができる。データドリブンのビューティビジネスは、データや統計技術を用いてエビデンスを提示する。データの形式が同じであれば,全て同じような現象が起きていると期待したくなるが、結局のところデータを生成した背景は千差万別であり、その都度データの裏にある現象を解析する必要がある。データドリブンの時代においては社員の個性が多様であるほど、データサイエンスの手法が生かされると思われる。データサイエンスと従業員の個性を生かす人材マネジメントが実現可能である、

医療技術は多くの研究データと内外で発表される論文によって、次々新しい施術が最先端機器と共に登場してくる。美容医療において、データサイエンスの利活用が懸案と考えられる。美容治療は保険がきかない施術が多く、広告費や内装費などのコストを抑えた。医療機関だからこそできるレーザー脱毛・シミ治療を多くの方に提供、シミ・くすみ・肝斑・ニキビ跡などに効果的で、機器は最新機器を揃えている。若返りビューティライフ産業である。

美容医療は個人の美的センスが鍵となる一人企業である。医療脱毛と肌治療とアートメイクは悩み・コンプレックスを解消する。特に美容皮膚科が提案するメディカルアートメイクは中核の医療技術となっている。メディカルアートメイクは、落ちないメイクである。皮膚の浅い層に専用のニードルを使用して色素を着色、タトゥーとは違い表皮部分に着色するので新陳代謝と共に徐々に薄くなり消えていくため抵抗感は少ない。

4.アートメイク

アートメイクは医療行為であり医師の管理の下、医療従事者がアートメイクを行う。施術は、①医療脱毛、②わきが・多汗症治療に加えて、③スレッドリフトはメスを使用せず、溶ける糸でたるみを改善、糸は体内に吸収される。NMN点滴はNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)は加齢に伴い体内での生産量が減る。NMNを摂取することで、身体の見た目や機能を回復する。⑤マイヤーズ・カクテル点滴は、米国自然療法医の定番で治癒力を高める点滴療法であり、ビタミンとミネラルの栄養素を多量に投与して、治癒力を高める。ヒアルロン酸は、シワの溝や凹みで影となっている箇所にヒアルロン酸を注入し、ボリュームアップすることでシワやたるみを改善する。ほうれい線・シワ取り注射による、ヒアルロン酸治療は、無表情でも目立ってきたシワ・笑うとできる小ジワなど、肌に刻まれた気になるシワを簡単に改善させる。HIFU HIFUリニアは、超音波高密度集束加熱により肌たるみの引き上げができる。⑨ダーマペン4は、ニキビ跡やクレーター、小ジワ改善。16本の超極細針を電動振動させ皮膚に微細な穴を無数に開け、皮膚の創傷治癒効果で肌質や瘢痕を改善する。

 施術における眉アートメイクは女性だけでなく、男性に人気である。眉によって表情は大きく変わり、自身のイメージに合った、例えば男性的な強い印象を与える眉にして欲しいといった希望も多い。眉アートメイクでは看護師としての経験、医療知識に加えて美的センスが求められる。ストローク(3D・毛並み)11本毛並みを描き上げることで、ナチュラルな眉を実現させる。オーダーメイド(4D・毛並み+パウダー)は、ストロークで毛並みを施した後、パウダー眉の技術を用いて陰影を部分的につけていく。地毛となじみが出て、より自然な眉となる。この施術は男性が急増しており、男女ともに美容医療がトータルビューティへ革命的な変化をもたらす可能性がある。理想の眉毛 男性顔の印象を変えたい。

医療データを解析し、病院長は最先端機器の導入と顧客情報から施術環境を向上させている。看護師は、優れた顧客とのユーザー・サプライヤーインタラクション(Hippel,E1988))によって知恵を創造し、新しい施術を工夫し、技能の向上を計る。データドリブンと個性の両立が成立している。

5.営業において個性が輝くのは生配信

顧客サービスは対面とオンラインがある。対面の減少はサービスの標準化、マニュアル化を進める。企業から顧客へのオンラインによるサービスは顧客それぞれに対応するよりは、生配信によるインフルヱンサーに依存するほうが合理的で、効率も高い。規模の経済も期待できる。インフルエンサーの生配信による顧客の囲い込みが起こり、顧客を多く持っているインフルエンサーの獲得数が成功の鍵になる。

インフルエンサーは仮想空間内の集団で、商品・サービスでリーダーシップを取るようになっている。感染症でリアルな交流が遮断されると、仮想集団におけるインフルエンサーの影響が強くなる。営業はインフルエンサーのビジネスプラットフォーム作りであり、インフルエンサーの選定、育成を間違えると売上が大きく下がる。インフルエンサーの生配信を支援する方策として以下の2つが企画される。AIを使ったロボット営業、ロボットアフターサービスも感染症下では盛んになる。対面サービスができなくなることは、化粧品、アパレルの完成度の向上に成功した商品が市場で勝利することになる。インフルエンサーの生配信による顧客の囲い込みが起こり、顧客を多く持っているインフルエンサーの獲得数が成功の鍵になる。

化粧品生配信とインフルヱンサー3

インフルエンサーは、顧客の行動変容、デジタルなどの関連技術導入、新しい社会、都市インフラの変容、海外との交流の状況的変化、投融資環境の変化等に対応し生配信する。インフルヱンサーには3型ある。「顧客が選ぶインフルエンサー」、「カリスマ的なインフルエンサー」、「組織が設計するインフルエンサー」の3型である。インフルエンサーは「従来の商品・サービス、文化をも壊すもの」と「新しい商品・サービス、文化を生みだすもの」と 「従来の商品、サービス、文化を前提にするもの」との3種類に分類できる。

市場はビジネスプラットフォームという集団の積

生活水準によって、階層が自然または人為的に生じている。また生活文化の「衣・食・住・遊」によって縦の障壁が生じる。この生活水準と文化の平面と障壁によって市場は立体的に分割され構成されている。縦横分割はリアル、仮想によって集団が形成される。この集団は今井賢一のプラットフォーム概念を拡張してビジネスプラットフォームと規定できる(清家彰敏,1998a)。つまり,市場はビジネスプラットフォームという集団の積で構成されている。集団の大きさは生活水準の階層とその文化に関わる人口に相当する。集団ごとに網羅的にすべての物、知識、行動、用語が異なっている。

6.市場=産業=生活水準=文化=ビューティライフ

市場は,ある完結した知識群(文化という概念)に対応している。市場=産業=生活水準=文化なのである。文化は知識の集まりである。この文化を抜きにして,商品・サービスは成立しない。インフルエンサーの3種類「従来の商品・サービス、文化をも壊すもの」と「新しい商品・サービス、文化を生みだすもの」と「従来の商品、サービス、文化を前提にするもの」は、文化破壊商品・サービス,文化創造商品・サービス,文化支援商品・サービスを上記各集団に提供するリーダーである。

インフルエンサーは,各集団の従来の文化、商品、サービスを次々破壊、創造、支援し,急成長した。多くの大衆は,旧い文化,阻習にうんざりしており、インフルエンサーによって破壊される文化、社会習慣に喝采をおくった。多くの大衆は,文化創造商品・サービス,文化支援商品・サービスでインフルエンサーに熱狂している。

新型コロナで,文化、生活習慣が次々破壊され,多くの大衆は、新しく商品・サービスに付随した知識が脈絡なく周辺に溢れると人間は落ち着かなくなって、インフルエンサーにさらに依存するようになる。インフルエンサーは仮想空間内の集団で、商品・サービスでリーダーシップを取るようになっている。感染症でリアルな交流が遮断されると、仮想集団におけるインフルエンサーの影響が強くなる。

営業はインフルエンサーのビジネスプラットフォーム作りが新しい仕事となる。インフルエンサーは少数の長者インフルエンサーと赤字ビジネスを行いながら長者インフルエンサーを夢見る大多数のインフルエンサーに分かれる。この比率、中間層をどの程度の比率にするか、は営業のビジネスプラットフォーム設計の手腕にかかっている。SDGsと新型コロナウイルスの影響で顧客は美容習慣や商品の購買は適切なのか、見直し始めた。ビューティライフ産業は顧客、従業員、経営者自身を見直すところから始まり、データドリブンのビューティビジネスは、データや統計技術を用いてエビデンスを提示する。

終章

本研究は、美の視点から全ての生活を考える時代を想定して、美の視点から生活に貢献する産業をビューティライフ産業における人材マネジメントについて考察した。成熟社会における、生活の質を向上させる、人生100年時代において、体質の若さを問うビューティライフ産業は、外見の若さと内面の若さを保つビジネスである。そこで、リーダーシップを、データドリブンでとる美容師、美容医療の医師、看護師の仕事について論じた。本研究は美容師と美容医療がビューティライフを外面、内面でマネジメントするビューティライフ産業について試論を展開した。



[1] 日本社会学会の『社会学評論』Vol.54No. 42004年3月)は,「『個人化』と社会の変容」 の特集を組んでいる。

[2] 乾彰夫「<戦後的青年期>の解体-青年期研究の今日的課題」(『教育』国土社,2000年3月号所収。)

[3] ウルリヒ・ベック『危険社会』東廉/伊藤 美登里訳,法政大学出版局,199810,p138

[4] 同上,p168

[5] 渋谷望「<参加>への封じ込めネオ・リベラリズムと主体化する権力」(『現代思想』青土社,1999年5月,p95。)

[6] 竹内常一『子どもの自分くずしと自分つく り』東京大学出版会,1987年7月。

[7] 澁澤透(2011)「社会の「個人化」と教育学的発達研究の課題 -人格発達論と自己形成論との架橋-」Journal of The Human Development Research, Minamikyushu University 2011, Vol. 1, 43-55

[8] 新興企業買収額海外勢が過半にhttps://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC221ID0S1A920C2000000/(2021年1017日)

[9] 清家彰敏(1999)『進化型組織』同友館の「一人企業」概念である。この概念は企業から外へ出て、組織間関係を多くの企業と連携して形成しビジネスを行う一人だけで活動する企業について、その合理性で説明した。

[10] https://compass.labbase.jp/articles/69320211019日検索)