米中新冷戦への日本企業三つの技術戦略
ロシアのウクライナ侵攻の視点を加えて
富山大学次世代スーパーエンジニア養成コース
実践技術経営特論MOT 2022年4月9日13時30分~15時
http://www3.u-toyama.ac.jp/manabina/
富山大学名誉教授・ハリウッド大学院大学教授
(元北京大学客員教授他)
清家彰敏
1.技術経営の構造
技術は4者に支配される。
顧客・経営者・投資家・融資者である。
顧客は情報・営業に支配される。
情報は国家によって分断される。
自由圏MGAFA・中国BATH
営業は総合商社・インフルエンサーがエージェント。
経営者はコンサルタント・ストライカーに支配される。
投資家はSDGsと軍事に支配される。
プライベートエクイティ会社・国家・公的投資機関
融資者は銀行・ノンバンク等
技術は仮想化メタバースへ進化している。
2.三つの技術戦略
A型 総合商社など大企業(営業部隊)主導の技術戦略
資源・市場は海外、技術は日本
三菱重工業米国水素ビジネス2400億円
IHI・JBIC米国小型原子炉ビジネス
B型 コンサルタント(欧米連携)主導の技術戦略
日本企業をストライカー型(挑戦型)に変える。
若手米国コンサルタント会社出身者が社長の決断を支援する。
C型 海外主導の技術戦略(北京大学MBA社長が訪日)
海外の投資とコンテンツで、日本の技術・市場を組み替える。
企業、技術を買う。売った日本企業、日本人には高額の資金。
3.世界の軍事化
• 世界から俯瞰しよう
富山に中国の洋上風力発電3基
3.1 ロシアの焦り 中国の変化
• 世界の再生エネルギー技術と投資によって、ロシアの石油・天然ガスの市場価値の長期低落が始まるまでに、何をなすか?
• 世界の産業におけるソフト化が進むと世界の工場中国の成長は鈍化する、それまでにハイテク化、ソフト化を進める。
• 中国株・債券2022年1~3月7400億円流出
3.2 四大プライベートエクイティ
世界で数百社支配100万人以上雇用。
• ブラックストーン8810億ドル
• アポロ・グローバル・マネジメント4980億ドル
• KKR4710億ドル
• カーライル・グループ3010億ドル
3.3 ロシアウクライナ侵略から
ロシアの脅威からの世界の防衛費の拡大
防衛費の増加に対応した世界経済へ
• 世界で防衛産業の急拡大が起こる。
• ロシアのウクライナ侵略で、日本の国防費が2倍へ?
• 国防費2倍は規模の経済で軍事力は3倍になる?
• 国防費2倍+在日米軍5万人(世界最大)はロシアへの東からの圧力を欧米から期待される?
3.4 今後のロシアへの経済制裁と日本企業
• 「制裁措置」と「対抗措置」の影響による経済的損害の回復に向けた対策。
4.米中激突
• コロナ以前は頻繁に訪中し、現在はオンラインで交流しているが、中国は重工業の東北三省が不況、ハイテク・金融の上海、広東が好景気と対照的である。
4.1 中国の胡錦濤政権の失敗
• 胡錦濤内閣1期2002年秋-2007年秋2期2007年秋-2012年秋から習近平内閣1期2012年秋-2017年2期2017年秋-2022年秋へ輸入の増加で輸出額から輸入額を引いた純輸出額のGDP比率が2008年リーマンショック7.6%、2009年4.3%となった。
• リーマンショック後の純輸出額の急減などへの対策としてGDPに対する投資率は2009年以降それまでの30%台から40~45%と上昇した。
4兆元の影響
• 胡錦濤第2期。リーマンショック後の4兆元の大規模投資が起こった。
• 27の省など31の地方政府の書記が、銀行融資などを各地方の国有企業、政府と人脈がある民営企業などへ分配した。胡錦濤内閣は中央政府のテクノクラート(共青団など)中心による経済自由化国有企業から民営企業中心への転換、人治から法治、個人から組織へ転換という、欧米型経済への移行を進めていた。
4.2 習近平政権の政策
• 習近平内閣の2期は一帯一路での成長は可能であるが、国内の経済停滞が起こる。国内の経済停滞の中で国家の安定を求めると成長を担ったアグレッシブな多くの人材は国内ではもう不要。
• 安定成長のためには、アグレッシブな人材の3分の2を海外へ排出するのが望ましい。中国のインフラは鉄道、高速道路、電力、通信、港湾、船舶は国有企業が、スマホ、情報、メディア、コンテンツ、生配信は民間企業のアグレッシブ人材が建設、一帯一路へは国有企業と民営企業の2種類のアグレッシブ人材を中国政府は海外へ排出する。排出が進めば国内は安定する。
一帯一路
• 海外で大きなトラブルの原因になり、海外特に欧米の利権との対立が増える。その中で3つの変化が国内で起こる。
• 海外排出は海軍強化に繋がる。海軍は革命を起こすことはあり得ないので、海軍重視は政権維持の視点からも合理性を持つ。
4.3 世界の半数を中国が占める
• 新幹線から食料まで、中国が世界の半数以上を占める。
• 米農務省によるとトウモロコシなど主要穀物の世界在庫量の過半が、世界人口の2割に満たない中国に積み上がっている。中国の巨大な食欲が穀物の高騰や貧困国の飢餓拡大の一因になっているとの見方もある。
• 中糧集団
•
国有企業の食糧大手、中糧集団(コフコ・グループ)が持つ中国最大級の食糧貯蔵庫(サイロ)だ。国内外から集めた大豆などを備蓄し、鉄道や船で全国に運ぶ。
•
三菱商事で清家は中糧集団へも経営講義を行いました。
4.4 マンションが買えない
• 不動産シンクタンクの易居不動産研究院によると、主要50都市の住宅価格は20年に平均年収の13倍となり、15年の10倍から高まった。広東省深圳市は40倍、上海市は26倍など大都市ではもはや市民の手に届きにくい。
4.5 米中 激突
•
米中はSDGs政策・技術標準で協調、しかし軍事対立と技術囲い込みで新冷戦になりつつある。米中の政策は難しい。中国の雇用者の3人に一人は、欧米などの外資勤務、最大の貿易相手は欧米、へたな政策はお互い返り血を浴びる。
• 米中摩擦
•
2020年の世界全体の純資産は510兆ドル(約5京7630兆円)で、2000年(160兆ドル)の約3倍に膨らんだ。国別では中国は120兆ドルと同17倍に拡大した。シェアは中国が首位の23%で、米国の17%(89兆ドル)、日本の7%(35兆ドル)と続いた。中国の国富は13年に初めて米国を抜き、20年には米国の1.3倍に達した。
• 中国の雇用は、3分の1は外資、3分の1は民資、3分の1は国資。
•
中国のGDPは3割が不動産業、これは国資が主導、民資が加わる。
•
中国、韓国はASEAN特にベトナムへ輸出、ベトナムは欧米へ輸出。
•
中国の最大の貿易相手はASEAN。
• 東北三省の長期不況はどうするか?
4.6 中国の世代交代
•
中国でも習近平世代の文革下放を経験した世代が定年し、海外留学を経験した世代へと転換している。日本への中国人留学生は、誰でも留学できる豊かな時代になり、優秀な留学生が急増している。教育省によると、1978年から2019年の間に650万人以上の中国人が海外留学したが、90%近くが卒業後に帰国しており、新しい指導層が生まれる可能性がある。
5.日本の戦略
5.1 日本と中国は代替的、
歴史をみると中国が悪いと日本が良い。
• 米英と組んだときは成功
• 米中対立は、中国が悪くなると日本が良くなる(日本の輸出)中国と日本
• 日本は30年の停滞でストックが増えた、その解放フロー化
• 解放フロー化を行う人材は米英中をバックにする。
5.2 日本は全てがミニチェア
巨大コンテナ船が入港できる港がない国家。
• 日本の輸出入の99.6%は海運
• 超巨大コンテナ船は欧米中韓シンガポールには入港できて、日本の港には規模が小さく入港できない
• 47の小規模投資国家。企業も全て小さい。
• 世界企業以外は全て小さい。
5.3 会社を売れない日本は、
余剰資金を持て余す個人が少ない。
• 世界から見ると競争的に購買したい知財が日本には多い。
5.4 製造業の進化 主人公はまだ日本人(^^)
藤本隆宏東京大学名誉教授等から清家の理解。
• 日中賃金差は3倍に。これなら勝てる。
• バーチャル(消費層はGAFA 生産層日本が強い)、生産層のプラットフォームを占有しよう。インテグラルな生産。
• サプライチェーンの安定と品質は日本が強い。
• 顧客との協働力を磨け。
5.5 生産層のプラットフォーム案
製造業仮想化とメタバース
メタバースでBMW30%のコスト低減
6.三つの無責任
• 米英コンサルタント会社、そこを退社した若い日本人が操る企業が増加している。戦略の無責任
• コンサルタントトップダウン企業
• 急速に海外との競争にさらされ、コンサルタントに頼るしかない。
• ベンチャー企業に頼った研究開発、新事業。イノベーションの無責任。
• 無責任IT企業に頼ったDX。データサイエンスの無責任。
7.日本の強みを生かす世界戦略
• 日本の自動車はASEAN9割、インド過半、中国では外資トップ。自動車主導のスマートシティは日本が主導できる。トヨタのウーブン?
• 中国はデジタル政府で形而上学DXが実現する。米国の挑戦、中国政府模倣、民資追従。中国の閉鎖DX実験を途上国が模倣。中国全産業のDX化、世界のスタンダードへ。
• 中国の全産業が世界の過半を占める。世界のスタンダード化。
• 中国民資DXは国資化。
• 中国とジョイントベンチャー、中国全土へ普及、世界のスタンダード確保。
• 中国製造業の売上の2割は欧米へ。
• トヨタ生産方式で日本は世界に負けた?
トヨタ生産方式の世界への普及で世界が改善を学び、日本と世界の差が減った。
• トヨタ生産方式は顧客から始まるフラット組織である。
トヨタ生産方式で世界の組織はフラットになった。
それなのに日本は階層組織が残った。
• 世界にトヨタ生産方式が受け入れられた理由は、世界はフラットになりつつあった。トヨタ生産方式はフラット方式で、世界の潮流に合った。
8.シェアサービスは日本の強みになる?
勤続年数が長いとシェアサービスに有利
越境ECは日本が強い。勤続年数の長さは商品の信用に繋がる。
9.革命 主人公を変える技術戦略
A型 総合商社など大企業(営業部隊)主導の技術戦略
主人公は商社マン
資源・市場は海外、技術は日本
三菱重工業米国水素ビジネス2400億円
IHI・JBIC米国小型原子炉ビジネス
30年の日本経済を低迷させてきた「弱気の営業」の転換期にきている。多くの企業ではバブルとバブル崩壊後を経験した経営者、管理者のほとんどが定年を迎え、世代交代が進み、強気の営業を求める経営者が増加している。
B型 コンサルタント(欧米連携)主導の技術戦略
主人公はコンサルタント
日本企業をストライカー型(挑戦型)に変える。
若手米国コンサルタント会社出身者が社長の決断を支援する。
営業部門が弱気で経営陣がコンサルタントに依存する企業もみられる。有名大学を出てコンサルで鍛えられた若手コンサルタントの指導を受ける企業では、30歳前後のコンサルタントに社長が指導を受けている場さえある。
コンサルタント会社では30歳で年収1千万円を超える。商社、銀行の経営指導とはひと味違うコンサルタント指導を求める企業では外資系コンサルタントの人気が高い。
C型 海外主導の技術戦略
主人公は外国人
海外の投資とコンテンツで、日本の技術・市場を組み替える。
企業、技術を買う。売った日本企業、日本人には高額の資金。
日本企業の強みを生かす技術戦略のひとつは世界との連携である。海外某社はコロナでも日本製品を世界で販売するために訪日し、技術の強い複数の日本企業を紹介し交渉中である。
10.ストライカー型リーダー
経産省がまとめた20年度の大学発ベンチャーの数は東大が323社。19年度の268社と増加、コンサルティング会社も起業家も徹底した実力主義で、安定を捨て、チャレンジングな仕事に挑む優秀な学生が増えている。
• リーダーにはマネジャーとストライカーがいる。バブル崩壊でストライカーを抹殺した日本は、世界と若者からストライカーを迎えないと
• もはや、日本人ストライカーリーダーは期待できない。世界からストライカーリーダーを、迎え、30年のストックを一緒に世界に解放し、鎖国開国世界展開
明治維新から学ぶ
• 日本は江戸時代の停滞200年の素晴らしいストックを使って、欧米のリーダーシップを外圧として導入し、明治維新を起こした。外圧革命が日本型で、それはこれからの10年(^^)
• 明治維新は欧米が、海外のストライカーと坂本龍馬など薩長の若者ストライカーを使って起こした。
11.激変する世界市場と未来の人材
ASEANに投資が集まる
中国・韓国・台湾はスマート養老
未来の子供は何が好き?
大金持ちと貧乏人は世界を変える
最後に中国の新型コロナは?
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