AI進化を超えるキーエンスとソニーグループの卓越戦略
1.
序章
AIが急速に普及し、人間を支援・代替していく。AIが進化しても、人間における「心理」と「感動」は最後までAIが到達できない機能であると思われる。経営は、AIが成功の基準、計画、市場、組織型、製品、サービス、販売方法を提案し、人間の役割は選択と決定になる。消費・購買側もAI支援で、製品、サービスの購入選択を行う。しかし、責任はAIがとれない。顧客の「意思決定回避者」「決断疲れ」などへのキーエンスの営業は顧客の心理がキーワードで、AIで代ることが難しい。また未来社会は、生産者、サービス提供者、消費者の境界が無くなる。プロシューマへソニーグループは感動を与える。AIが理解できないソニーの感動ビジネスについて論じる。
2.世界市場の変化とキーエンスとソニーグループ
現在、世界市場は、VUCA(ブーカ)、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)、で語られ、目まぐるしく変転している。世界市場は、VUCA時代を迎えて、世界情勢の変化も激しく、予測困難な状況となりつつある。キーエンスは代理店を使わず直接販売を行い、市場の変化に対応しやすい。顧客は、自身が意思決定回避、合意形成回避の状態のときに、キーエンスの営業から、タイミング良く、最適なソリューションとしてのセンサを紹介されると、購入を決定する。この顧客の心理を読むことが、キーエンスの心理ビジネスである。
それと並行して産業において、進行しているのが、コモディティ化である。20世紀に、トヨタ自動車は自動車産業において、顧客価値QCDS、品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)、安全(Safety)を追求して、効率的な運営の下に顧客満足を創造し、サプライヤーへのアウトソーシングで、世界覇権を達成した。21世紀に入り、マイケル・ポーターの競争戦略では、効率的な運営、アウトソーシング、に加えて、顧客満足度重視、組織のエンパワーメントを追求するようになった。星野リゾートの星野佳路代表はこの追求が進んだ結果、現在コモディティ化が進み、差別化できなくなった、「似ている商品やサービスが大量に誕生し、それらが最適な生産性で生産され、効率的に消費者に届けられることで、どの企業も競争優位を維持できない状態[1]」になった、とコモディティ化を語っている。
コモディティ化の中で、顧客満足重視がさらに強調される。トヨタ自動車がスマートシティ[2]の中で顧客のニーズからの顧客満足を考え、コモディティ化を超えようと試みるのに対して、ソニーグループの顧客満足は、顧客への「感動」による顧客価値の創造であり、エンターテインメントから金融まで幅広い事業をソニーの個性的と思われる顧客満足感動によるマネジメントによって、商品・サービス提案を試みている。
3.データ至上主義とAI時代における企業の変化
データ至上主義の時代は、ユヴァル・ノア・ハラリらによって論じられ「人類には自由な意思など無い」ともいわれる。データがビジョンを描く。データドリブンの時代に経営者、社員は機械学習と連携する作業を要求される。機械学習や深層学習を使った画像解析やアルゴリズムの開発が職務を支援する。
データドリブンによるデータサイエンス革命がビジネスで起こっていると規定できる。データサイエンスの出力はバーチャルリアリティ(virtual reality=VR)と拡張現実(augmented reality=AR)が使われる。
販売員は、スマートフォンなどを顧客にかざすと、QRコードを読み取り、百貨店の販売員は、髪型・メーキャップにもっとも合うとお勧めできる服装を選び提案することができる[3]。ポイントビジネスでは、ギフトカード交換、アーティスト向けリワード、プリペイドカード、リワードトークンにブロックチェーン技術が利用される。
企画部員、技術者は、生成AI利用では、企画が誰でも作れ、ソフト開発、コンテンツ作成を技術が無くてもできる。
購買部門・DX部門は、顧客企業に対してもシステムの開発を行っており、企業を超えた共通の情報インフラは、データを集約・蓄積し、その結果を分析してグラフなどに落とし込み可視化している[4]。
営業部員、営業支援部門などにおいては、データドリブン経営は、①グローバル・販売データを、②データサイエンスにより、データ収集・蓄積・整形、分析、レポーティングを行い、③ユーザーの分析・意思決定に生かす[5]。
海外営業部門では、ソーシャル・バンキング、海外送金などがブロックチェーンで行われ始めている。
財務部門、ベンチャー財務などでは、資金調達、アーティストエクイティ取引、クラウドファンディングなどでもブロックチェーンが利用される。商流だけでなく、バックヤード業務の契約、決済、稟議などもブロックチェーンで行われ、安全が保証される。
企業におけるデータサイエンス研究は、分散型社会への基盤となる理論になると思われる。ブロックチェーン技術が社会経済に与えるインパクト[6]は大きい。ブロックチェーン技術[7]は、データの改ざんが困難なシステムを安価に構築でき、暗号技術、P2Pでのデータ共有、管理者が不要なため、世界の未来Web3.0時代の基幹技術と考えられている[8]。近未来、生産者、サービス提供者、消費者の境界がなくなり、全ての人が
プロシューマになる。生産から保証までの商流情報が全てのプロシューマに共有され、プロシューマサプライチェーンが形成されると予測されている。
4.経営管理のAI支援
経営計画は、構成員とAIに成功までの評価基準を決めることから始まる。この評価基準は、経営者が決めることも、伝説的な経営者の言葉、例えばカーネギー氏とか松下幸之助氏から受け売りすることから作られる。それであれば、AIに評価基準を決めさせることができる。次に、投資額と戦略が市場を決める。その市場の組織を考え、製品を決め、売り方を決める。人事は、組織に投入する人材を考え、採用、育成を行う。実行(目標管理)、PDCA、改善のQC7つ道具、トヨタ生産方式などはAIのほうがうまくやれる。
AIが進化して、計画(経営計画)・戦略から組織、人事・実行・改善は、AI支援、AIによる自律によって行われるようになる。しかし、人間の心理と感動は、AIで達成できない卓越した人間の「機能」で、競争優位を企業に与えると思われる。AIが勝ち基準を提案し、計画案を複数提出、計画案の選択・承認を社長が行う。戦略で戦う場所を決める。AIが市場を選択し、提案し、社長が承認する。その市場の組織を考え、製品を決め、売り方を決める。組織の形をAIが提案し、市場に合った提供する製品、サービスを提案し、販売方法を提案する。担当者の役割は選択と決定。人事は、組織に投入する人材を考え、採用、育成を行う。社長は人材に対する信念をAIに命令し、AIは採用、育成案を提出。担当者の役割は選択と決定となる。
実行(目標管理)PDCA 人間にやらせるか、ロボット、アバターにやらせるかになる。改善はQC7つ道具+トヨタ生産方式が手法として使われる。AIコンサルタントによるアドバイスが有効と思われる。
AIは、組織に投入する人材を考え、採用、育成を行う。職務記述書の決定、修正後、企業が完成される。実行は、目標管理、PDCAで、人間にやらせるか、ロボット、アバターにやらせるかを決める。ロボット実行の増加が今後起こると思われる。人間の時間と機械(ロボット・AI)の時間を分けて考える。
ロボット、AIが仕事をしている間、人間が見ているだけなら、それはその人は仕事をしていない[9]。
5.産業のAI化 AI、ロボットの増加
人間の経営管理、仕事の時間はAI、ロボットに比べて長くかかる。秒単位、AI、ロボットは短時間で仕事を行える。ナノ時間単位で行われる経済がAI経済である[10]。将来は自動運転車のAIはナノ時間単位で危険を感知し回避する。秒単位でしか危険を感知できない人間が運転することは危険となる。
自動運転車と自動運転車間で危険情報、効率運転情報を交換しあい、安全で地球にやさしい自動車社会を実現するとき、人間は乗っているだけになる。産業におけるAIによる生産側の人間の変化
AIに支援されて、経営管理、職務の実行をする人間の増加が今後急速に起こる。AIの指示が的確になっていくので、人間は、「AIを超えた創造を行える人間」と「AIの提案を選択・決定できる人間」、「標準的な職務をAIに指示される人間」に三分される。人間の能力は記憶力、理解力、創造力の3つと考えられる。過去、記憶力はグーグルの検索システムで支援された。理解力はAIの提案を選択、決定するのに重要で、理解力が優れた人材が企業において、リーダーシップをとっていくことが予想される。創造力はAIが最後までに代替できない能力であると思われてきたが、多くの創造作業と思われてきたことのかなりな作業がAIに代替されるとの意見もある[11]。
6.キーエンスの心理ビジネス
世界市場は、VUCA(ブーカ)、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)、で語られ、目まぐるしく変転している。予測困難なVUCA市場においては、直接顧客に密着する顧客駆動の経営品質が有効と思われる。
キーエンスは代理店を使わず直接販売を行い、市場の変化に対応しやすい。また新製品を標準品としてソリューションをつけて販売することは、規模の経済で有利になる[12]。キーエンスの製品は7割が新製品で、全世界30万社へ営業し、海外売上が50%を超える[13]。自社で企画・開発した製品を外注生産し、それを販売する。自己資本比率は95%を超え、過去10年間の海外事業の平均成長率も20%超である[14]。キーエンスは、従業員1人あたり売上高6400万円、従業員1人あたり営業利益3200万円(2021年3月期)である[15]。連結従業員数10,580名(2023年3月現在)、事業内容はセンサ、測定器、画像処理機器、制御・計測機器、研究・開発用解析機器、ビジネス情報機器である。
キーエンスの心理ビジネスの成功要因は、組織間関係にある顧客およびサプライヤーの構成員の行動原理が、①意思決定回避、②合意形成回避、③フリーライドなどを起こしていることが、キーエンスの大きな成功要因となっている。キーエンスは生産の多くを協力工場に委託するファブレス体制[16]による生産を行っており、商品の企画から開発、設計および生産に関わる部材調達はキーエンスが行い、生産は国内外の協力工場で行い、キーエンスの生産技術や生産企画、品質管理部門が協力工場と連携し、組み立て図面の提供や部材の支給も行うなど、生産に深く関与することで高品質な商品を製造する体制を構築している。「AIの選択に依存して購買する人間」の不安感、責任回避をどう解決するか?それが、キーエンスの心理ビジネスである。
フリーライドは、知恵の借用である。顧客企業の従業員にとって、ニーズの発見、急速に発展し複雑化している多様な技術を熟知するのは負担である。ネットの中にも無数のアイデアがあり、匿名のネット内のアドバイザーがいるため、思考から逃避して、フリーライドすることが習慣化している。
意思決定回避については、人間はケンブリッジ大学のBarbara Sahakian教授の研究によると、1日に最大35,000回の決断をしているとの説がある[17]。人は決断をするたびに疲れてしまう。技術的に可能となるイノベーション、改善の範囲が曖昧であり、自らが潜在的にもっているニーズを認識し、決定するのは苦痛である。
合意形成回避は、集団の中で合意を必要とする仕事をできるだけ回避し、後日の責任を回避しようとする。他者に要望として明示的に表現し自己責任で説得するのは困難である。
暗黙知であれば、責任を問われることも、仕事に関与されることもない。形式知化に対する拒否感、逃避の心理さえある。
仕事でも決断するは多々ある。取引先になんて返信しようか、上司にはなんて報告をしようか、部下にどのように接しようか、考えればきりがない。工場や物流倉庫にセンサを設置するときにも、実は多くの決断をしていて、無意識のうちに決断疲れに陥っている[18]。
決断疲れについては、クネビンフレームワーク[19]という考え方がある。多くの人は「単純 = simple:やるべきことがわかっているけど決断できない」、「面倒 = complicated:どの選択肢がいちばんいいかを決断できない」、「複雑 = complex:予測できないことだから決断できない」、「混沌 = chaotic:答えがないから決断できない」という状況におかれている。キーエンスの営業は、顧客が、その場その場で最善の決断が下せるよう導く。
顧客の状態は、面倒
= complicatedは、上司にどんな提案を持っていけばいいのだろうか、と悩んでいるようなときである。複雑= complexの状態は、判断のベースになるはずの因果関係が安定せず、変化する可能性が高い状況で、センサを導入したいけど、本当に投資対効果がでるか、分からない状態である。混沌= chaoticは、原因と結果の因果関係もよくわからず、最適な答えもない状態であり、将来に向かって工場の中のセンサ群の配置を進めるにあたって、将来的に的確なセンサ設置手順はどういったものか、であるとかである。
顧客は、キーエンスの営業から、タイミング良く、最適なセンサを紹介されると購入を決めやすい。キーエンスの営業は、顧客が衝動的な決断をしやすいタイミングで、目の前に登場する。キーエンスの商品開発担当の江守航輝氏は「商品開発の真っ只中。どうすればお客様にとって使い勝手がより良い商品になるのか、営業担当にとってお客様にPRしやすい商品になるのか、お客様や営業担当の視点を想像しつつ、開発中の商品に接しています。そして発売後は、江守さんが担当したからこんなに進化した、と評価されることを夢みている」と語っている[20]。
顧客を、単純 =
simpleな状態に移行させ、決断のルールを顧客と可視化すれば、顧客は自動的に意思決定ができる。顧客の状態を単純 = simpleの状態に持って行く、キーエンスなりの手順が、工夫されていることが、キーエンスの成功の要因となっていると考えている。
1990年代以降30年間、日本企業は大胆な投資を行わなかった。その30年間に世界の多くの企業は大胆な投資を繰り広げた。日本企業の中で多くのアイデア、知財は大胆な投資対象とならず、30年間埋まっている。その中には、成功に繋がりそうな知財が無数に存在し、キーエンスはそれを商品化することが今後可能である[21]。
キーエンスの営業は日本法人以外の海外企業にも成果が出ると思われる。その理由は、欧米に多い強いリーダーがもたらす、多くの追従者の存在である。キーエンスの海外における顧客は追従者である可能性は大きく、キーエンスの営業に依存する可能性が高い。強いリーダーはモジュールとして人材を扱う傾向がある。追従者を強いリーダーは好み、海外企業には、追従者が満ちている。追従者はリーダーの意思決定に即応することを求められる。キーエンスは、高付加価値商品開発を企画、開発して、顧客に直販・コンサル提案営業で届け、ファブレス即納で顧客の要望に応える。キーエンスの顧客ソリューションは世界市場で有効である。
強いリーダーは自身が理解しやすい商品を即座に導入することを期待しがちである。センサを工場に導入する際に、キーエンスの営業からセンサ・ソリューションについて、説明を受け、その情報を借用し、あたかも自身が意思決定したかのように振る舞い、強いリーダーに接する。次もキーエンスを選んでいただけるようなサイクルを世界でつくっていける。追従者がキーエンスのセンサ・ソリューションを採用した結果、優れたセンサが導入され、顧客ソリューションが実現できる。その結果、広く世界へ、キーエンスが進出する。
米国のリーダーの目標・評価・フィードバックは市場創造が、中国の強いリーダーの目標・評価・フィードバックは商品・事業企画に特徴がある。米中の強いリーダーの意思決定は速いから、追従者とキーエンスの営業の果実も速い。その支援ツールは、海外現地の商習慣や市場特性、常識を含め実態を詳細に把握し、実態把握の手法を試行錯誤し、導き出す。販売の成功事例を世界中から集約し、実際の工場での使用状況を具体的にバーチャル空間で再現した営業ツール[22]を制作し、世界中に再度展開する。
7.産業におけるAIによる消費側の人間の変化とソニーグループ
感動はAIが与えることが難しい。「AIを超えた購買嗜好を行う人間」に感動を与えて購買させるソニーの感動ビジネスである。ソニーグループは、大衆に対して、大きな感動を与える。Web3.0の未来社会は、生産者、サービス提供者、消費者の境界がなくなり、全ての人が プロシューマになる。大衆はプロシューマであり、そのプロシューマたちにソニーは感動を与える。ソニー・ミュージックエンタテインメントは2020年、YOASOBIの大ヒット曲『夜に駆ける』で、小説を基にしたオーディオドラマで、エレキ事業のオーディオ技術を活用した360度立体音響技術を採用[23]し、音楽におけるプロシューマである顧客に感動を与えた。その後もYOASOBIは『推しの子』で世界的大ヒットを飛ばした[24]。
またゲームなどのマニアな顧客、彼らもプロシューマである。世界発信は、プレイステーションプロダクションズで、人気のPS用ソフトのアンチャーテッド、ゴースト・オブ・ツシマ、ザ・ラスト・オブ・アスなどの映画化が進められており[25]、世界において、ゲーム産業におけるプロシューマたちを感動させ、感動の顧客価値を創造している。世界に拡がることと感動をキーワードにすることで、ソニーグループはプロシューマが先導する世界の顧客に感動を発信しようとしている。
ソニーグループは、ゲーム・ネットワークサービス・音楽・映画・金融の事業を中心の経営戦略を構築した[26]。10年でソニーの全体の売上高に占めるエレクトロニクス事業の比率は、約6割から2割へと大きく下がった[27]。ソニーは過去より、企業内を分社化していく戦略をとってきた[28]。ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)や音楽、映画、エンターテインメント・テクノロジー&サービス(ET&S)、イメージング&センシングソリューション(I&SS)などで円安によるプラス効果などから大きく増収となった[29]。ゲーム&ネットワークサービス2兆7千億円、エンタテイメント・テクノロジー&サービスが2兆3千億円の売上高で、合計5兆円と、売上高10兆円の半分に達した[30]。
ソニーグループの事業活動の軸、価値創造の基盤となるのが多様な「人」の存在であり、全ての事業のベースにあるテクノロジーの力に加えて、非常に多様な人材を強みとし、人材の多様性を生かした感動の価値創出を目指す[31]。ソニーグループの多くの業務にクラウドが関わっており[32]、世界中に営業できる海外に開いた国際的な人材が揃っている。
ソニーグループはハリウッドのメディア産業と連携している。ソニーグループ出資の米エピックゲームスが開発したゲームエンジンを使用した「バーチャルプロダクション」は大型LEDディスプレーに映像を映し、演者は現地でロケをしているような映像を作ることができた[33]。ソニーグループのプレイステーションの人気ゲームは、映画製作会社ソニーピクチャーズ・エンタテイメントの手で映画化を進め、ソニーグループとハリウッドとの関係は強化されている。
8.結語
顧客は、自身が意思決定回避、合意形成回避の状態のときに、キーエンスの営業から、タイミング良く、最適なソリューションとしてのセンサを紹介されると、購入を決定する。この顧客の心理を読むことが、心理ビジネスである。暗黙知が意味を持つとも思われ、AIにとって、難しい作業と思われる。
キーエンスだけでなく、顧客、サプライヤーである協力企業において、能力の共進化が起こっている。キーエンスの進化の中で、顧客は汎用品を使うようになり、顧客のビジネスは標準化へと進化し、並行してキーエンスの営業員はより規模の経済化を加速できる人材へと進化している。共進化のパートナーがAIにできるか、またAI相互の共進化が行われるか、が今後のAIの発展で問われる。
AIが進化しても、人間における「心理」と「感動」は最後までAIが到達できない機能であると思われる。経営は、AIが成功の基準、計画、市場、組織型、製品、サービス、販売方法を提案し、人間の役割は選択と決定になる。消費・購買側もAI支援で、製品、サービスの購入選択を行う。しかし、責任はAIがとれない。顧客の「意思決定回避者」「決断疲れ」などへのキーエンスの営業は顧客の心理がキーワードで、AIで代ることが難しい。また未来社会は、生産者、サービス提供者、消費者の境界が無くなる。
AIが急速に普及し、人間を支援・代替していく。GDPの6割以上を占める個人消費を考えると、AI開発の主眼は「消費支援のAI」である。今後AIに支援されて、製品、サービスの購入の選択をする人間が増加する。AIの指示が的確になっていくほど、人間は、「AIを超えた購買嗜好を行う人間」と「AIの提案を選択・購買決定できる人間」、「AIの選択に依存して購買する人間」に三分される。「AIの提案を選択・購買決定できる人間」、「AIの選択に依存して購買する人間」は安定的顧客であり、それを対象とする企業は多い[34]。「AIを超えた購買嗜好を行う人間」がソニーを喜ぶ顧客であると思われ、そのキーワードが「感動」である。プロシューマへソニーグループは感動を与える。AIが理解できないソニーの感動ビジネス、それがソニーの存在であり、課題であり続けると思われる。
[1] 経営者、従業員にとって、頑張ったメリットが得られていない。その典型例として、今はどのホテルに泊まっても不満がない、最終的には価格とロケーションで決める、としている。
[2] トヨタの顧客満足はクルマ社会を超えた新しい都市生活のイメージ作りhttps://global.toyota/jp/newsroom/corporate/39070301.html
[3] フェースブックは、不適切な画像をAIで摘出してもいる。フェースブックはこのAIのアルゴリズム(転移学習)をフェースブックAIで解析している。
[6]世界の官学、日本の経済産業省なども2016年4月にブロックチェーンに関する報告書を発表している。
https://www.meti.go.jp/main/infographic/pdf/block_c.pdf
[7] ブロックチェーンは暗号技術の利活用で、数理、情報理論で検証される。
[8] 著者清家大嗣は、オフチェーン技術を含んだブロックチェーンの開発効率、利用効率を向上し、コストを低減し、セキュリティを向上させる研究を行っている。参照:清家大嗣博士学位論文(東京大学)『スケーラビリティに基づくブロックチェーンーーインフラストラクチャーの数学的分析 Mathematical Analysis of
Blockchain Infrastructure based on Scalability』 (東京大学情報学環)
[9] トヨタの自働化は、止めることを自動で行うようにする。
[10] 株式のAI取引はナノ時間。人間は株取引はAIに任せるしかない。
[11] 小説家、脚本家、画家、作曲家の作業の多くがAIに取って代わられる可能性がある。
[12] 直接販売は代理店制度に比較して、販管費が減るため、利益率は上がるが、売上は減少し、規模の経済的には不利になる。キーエンスは、製品生産において、30万社の可視化されたデータを持って30万社とコラボレーションする機会があり(交流チャンスの市場化)、製品の開発に有効で、販売でも30万社の可視化されたデータによって、顧客駆動のソリューションによる規模の経済が発揮できる。
[13] https://www.keyence-soft.co.jp/group/businessmodel/
[16] https://www.keyence.co.jp/company/sustainability/compliance/
[17] https://stak.tech/news/9661。人が1日に使用する単語の数は約1万6,000語(アリゾナ大学とテキサス大学の合同研究)。食べるものや場所といった食事に関する事柄だけで、人は1日に2,267回の決断をしている(コーネル大学のジェフェリー・ソバル教授らの調査)。車を1マイル(1.6km)運転するにつき、人は200を超える決断をする(米国労働安全衛生局)。
[18] 心理学者のジョナサン・レバーブ氏とシャイ・ダンジガー氏は刑務所の判事の決断疲れについて調査した。1日の終わりに向かって衝動的な決断が多くなり、決断の先送りも増える。
[19] DaveSnowden教授。クネビンフレームワーク(Cynefin Framework)とは、問題の種類をその性質によって分類、どのように考え、行動するかを示した。
[20] https://www.keyence-jobs.jp/work/interview/emori.jsp
[21] キーエンスの商品開発の大堀宏海氏は「キーエンスの事業はグローバルであり、世界の製造現場の“困り事の共通解”を見つけ出せれば、強力な拡販力・影響力のある汎用商品を生み出せるはずである」と語っているhttps://www.keyence-jobs.jp/work/interview/ohori.jsp
[22] 販売促進グループは、新商品の立ち上げ、販促ツールの作成、営業担当の営業力・技術力育成、技術サポートなどを行う。さらに、営業所・営業担当ごとの売上や営業プロセスの進捗。最終結果のデータを分析し、次の販売戦略の立案も担っている。
https://www.keyence-jobs.jp/work/interview/imada.jsp
[24] https://ichigoproduction.com/
[27] (出所)『週刊東洋経済』7月12発売号「ソニー
掛け算の経営」(2021年7月)https://toyokeizai.net/articles/-/440105?page=2
[28] 清家彰敏『進化型組織』同友館、1999年でソニーの分社化について考察した。その分社化の傾向はソニーのもつ組織の体質とも思われる。
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