1.都市インフラ建設加速の同時並行化とモジュール化
中国において製造業のモジュール化が急速に進んだ結果、製造業は東南アジア他へ容易に工場を移転できるようになった。モジュール化はビジネスモデルを標準化、専門化、単純化させ、規模の経済を達成しやすくする。また企業は、工場移転の際の金利負担が軽減する。ビジネスモデルの単純化は産業におけるリードタイムを短縮させる。各産業が加速する。日本では段階的に起こったことが、韓国では同時並行的変化が増え、時代がオーバーラップし、中国ではさらに同時並行的になり、東南アジアでは大きく時代をオーバーラップさせる。同時並行加速市場への製品供給は簡単ではない。
2.金融と情報産業は速い
特に金融と情報産業は速い。他産業はすべて遅い。金融と情報のスピードを活かせている国家、企業は米英のみである。あとは軒並みスピード負け組である。特に欧州と日本のスピード負けは酷い。
中国は国家が米英に対抗する。情報障壁により竹のカーテンでグーグル他を弾き返し、情報企業を温室栽培し、育ったアリババ他を米国へ送り込む。なぜ、中国が対抗できるか。鉄鋼、家電、豚肉など世界の消費の半分は中国である。電子コマース市場も世界の半分をやがて中国市場が占める。鉄鋼で、新日鉄住金が価格主導権を失ったように米国企業の情報覇権の時代はやがて終わる。しかし、金融はまだまだ米英が強い。
3.東京オリンピックと国内建設投資
東京オリンピック2020年までは、東京は世界の建設投資の焦点である。現在建設分譲されているビル、マンションは、既に取得済みの建設資材で建設されており、絶対的にお得と思われている。品川など都心のビルは、近未来、株価上昇、税金のがれ高級車、マンションブームに海外投資家の参加もあって高騰する。アルミニウム産業にとって、ドア、窓他の重要は大きい。次に、都心が上がれば、売った土地の税金対策で周辺が上がるというバブル再燃の可能性もある。
英国は、ロンドンオリンピックで、数年かけて準備し、世界のVIP(VVIP)3000人に対してオリンピックの前日から18日間17のコンファレンス(国別、業種別)を開いた。キャメロン首相他全大臣参加など150名が、世界のVIP(VVIP)を歓待、オリンピック観戦チケットを手渡しした。
300人にはキャメロン首相自らが電話をした。このようにして、電力、商業、電機等への投資促進を行い、連動して英国企業の海外展開も加速させた。この結果、ロンドンオリンピック後のほうがそれ以前より投資が増えたとも言われている。特筆すべきはロンドン以外の地方への投資のほうが、ロンドンより伸びが大きかった。これは地方創世の時代にふさわしい。
アベノミクスの先鋒としてオリンピックによる海外投資受け入れを考えるなら、日本人が考えるより英国政府の官僚、コンサルタントに参加してもらったほうが上手くいく。
4.TPPは大圏直線国家連合 日本海側港の時代
TPPは太平洋周辺国家連合ではない。「大圏直線国家連合」である。TPP加盟が見込まれる国を世界地図でみると、太平洋をはさんで2つに分散して見える。太平洋の西岸ニュージーランド、オーストラリア、シンガポール、マレーシア、ベトナム、ブルネイ、日本、そして、太平洋の東岸のカナダ、米国、メキシコ、ペルー、チリである。しかし、地球儀を、北極を上にして、鳥瞰して見下ろしてみよう。シンガポール、マレーシア、ベトナム、ブルネイ、日本、カナダ、米国、メキシコはほぼ一直線に並んでいる。直線航路大圏コースである。この直線航路は世界最大の貿易航路、「直線航路」である。コンテナ船は最短距離で移動する。
この直線最短航路上の始発が東南アジア、終点が南北アメリカ、中間が東アジアである。中間に位置する日本、中国、韓国のうち、TPPに加盟が予定されているのが日本である。上海、釜山と米国を往還するコンテナ船は対馬海峡、日本海、津軽海峡、アリューシャン列島を航行する。
子供ときから見慣れているメルカトール図法の地図は、太平洋を挟んで日米が対峙している。戦後日米貿易が中心になった結果、太平洋側が発展したと思い込んでいた。ところが、北極を中心に地球儀を見れば、米国までの距離はむしろ日本海側が近い。中国上海、韓国釜山にとって確実に米国は日本海通過が近い。太平洋側港は、世界最大級直線航路から外れる。日本海側港の優位は明らかである。TPPで有利にビジネスを行いたい上海羊山港、釜山港の工業団地の企業は、日本海側港に立地を移す可能性さえある。
5.中国都市開発集団黄丹青副総裁からの未来提言 輸出・現地法人・現地投資
2014年11月中国の代表的都市開発企業である融汇集団黄丹青副総裁とYKKAPの最大の品川ショールームを見学した。黄さんは30歳の優秀な女性経営者である。融汇集団は香港、福州、重慶、安徽省、山東省などで大規模都市群、温泉リゾート群、化学会社を展開している。融汇集団は上海からYKKAP製品を購入している。しかし、黄副総裁は見学しながら感嘆の声を上げた。このドア、窓を輸出して欲しい。彼女は日本製で、日本のキメ細かな消費者に鍛えられたYKK製品を欲しがっている。
黄さんの言葉は日本のアルミニウム産業の未来を予見している。メイドインジャパンを輸出し、現地生産とセグメント分けすべきである。さらに低価格の現地企業へ30%程度投資し、経営は任せて低価格品市場もリードすべきである。
アルミニウムは100%再利用が可能な製品であり、ドア、窓など都市開発の基礎材である。自動車へも展開しつつあり、航空機、新幹線とあらゆるインフラに使われる。アルミニウムは樹脂と組み合わされビル、マンション、住宅のドア、窓を作りあげていく。
世界で成功するには、工場への投資から都市ビジネスへの投資へ転換すべきである。日立製作所、石川島播磨、東芝、三菱重工、三菱電機、GE、シーメンスなどの時代であり、パナソニックも都市ビジネス、住宅産業へ転換しようとしている。
6.日本国内が海外インフラ企業に荒らされる?
2014年、巨大企業「中国国有中央企業上海電力」が日本に進出して、メガソーラーを関西に建設予定である。今後、海外から日本の都市ビジネスへ次々進出してくる可能性がある。超加速都市ビジネスで成功した企業が、次々日本へ進出してくる。
モノづくりは、高齢化、国内成熟、海外進出、ロボット化、インターネットによる仮想化等を受けて、都市づくりのスピード技術経営へと進化する。情報は加速の武器である。ものづくりに、顧客ソリューション、ビッグデータ解析、シミュレーション、センサ、人工知能などが付加されたビッグデータスピード経営を目標にする時代である。
また組織はビジネスの数に比例して細分化される。経済の成熟化によって、欧米日の企業はビジネスの成功率が低下しており、成功率の低下に逆相関してビジネスの数を増加させなければならない。したがって、ビジネスを担う組織において少人数化を行わないと企業の採算性は急速に悪化する。
7.海洋開発型新港へも挑戦、アルミニウム企業へのアドバイス
最後に、温暖化で北極海航路が拡大すれば、上海、釜山と欧州、ロシアを往還するコンテナ船、資源運搬船も日本海を通過する。日本海側港の太平洋側港に対する優位は明らかである。港湾インフラを日本海側港に分業し、旧い港湾機能は廃棄、更新していく。
近未来この港湾は、東シナ海、日本海、オホーツク海の資源開発を隣国と共同で行える際の海洋プラットフォーム群建設とその支援インフラ、生活物資供給の新機能を備える。「海洋資源開発港」都市が生まれる。これはアルミニウム企業の新たな挑戦となる。
アルミニウム企業の社長は①ビジネスを加速、②世界の都市インフラ最終製品メーカーへの営業で世界シェア半分を目標とし、③事業を小規模化、少人化、多数事業体制へ移行、④TPPと海洋資源開発港への対応、⑤やがて殺到する海外企業との国内競争準備が、責務となる。
やがて、そのノウハウでもって、アルミニウム企業は人類最後の挑戦となる太平洋開発へ向かうのが21世紀の後半である。そのときは、太平洋側港をリニューアルし、地球の3分の1を占める太平洋に向かうことになる。未来の日本のイメージは人口500万人の海洋資源国ノルウェーである。日本の将来は、人口20数倍の資源大国「大型ノルウェー」かもしれない。ノルウェー並みに海洋資源開発などが進めば日本のGDPは現在の約2倍以上になる。さて、ノルウェーの海洋資源開発港都市の変化は今後注目である。