円安でのメイド・イン・ジャパン急成長と経済復活
1.円安での外国人観光客関連売上2.3倍近く 為替1ドル80円が120円へ
日本の円はドルに対して、この2年間で80円から120円になった。円安効果で海外外国人観光客がもたらす国内観光収入は1.5倍近くになる。何もしなくても国内観光業者は1.5倍近い売り上げ増であり、売り上げが1.5倍近くになると通常利益は数倍になる。
その上観光客数も増加する。円安によって、海外の旅行代理店は「大喜び」である。日本への旅行は費用が3分の2「35%引きの大安売り」である。その結果、円安当初の2013年1月46万人が、円安が定着した2014年1月は73万人と60%増になった。誘客構造の変化で観光客数も1.6倍となれば、2.3倍近い観光収入がもたらされ、空前の売上、利益をもたらしている。
海外からの観光客数は、国別に見ると、2014年台湾がトップで、2位韓国、3位中国、4位に米国となっているが、もっとも来日数が伸びたのが中国で1~9月の累積で前年同期から79.8%も伸び、7月以降は国別でトップに躍り出た。円安によって、海外の旅行代理店は、「35%引きの大安売り」キャンペーンを積極的に行う。観光業の盛況は、海外各地の外国人営業員の努力による部分が大きい。
2.輸出爆発
外国人観光客への円安効果の次は輸出である。為替の予測や世界の政治・経済の動向は予測出来ないが、今後2年間はドル高=円安として話を進める。円安輸出の効果で、日本の製造業のバージョンアップともいうべき躍進が起こる。これはかつて1995年から米国がドル安効果で経済が回復したのと似ている。このとき永岡氏(注参照)は、ジャック・ウェルチGE会長へインタビューを行った。ウェルチは、為替がドル安に振れば、米国経済は復活すると予言し、周知のとおりその後米国経済は復活を遂げた。
日本において、過去20年不況6重苦の中では円高是正が全ての経営者の期待であった。円安によって、日本の輸出額は2012年の64兆円が2013年70兆円となり2014年は約80兆円になろうとしている。
2012年の1ドル80円時代と2015年現在120円がまったく同じ輸出構造であると仮定してみよう。日本企業が輸出しドルを稼ぎ、国内に持ち帰って円に換え、売り上げに計上すれば、2012年の輸出額64兆円は1.5倍約100兆円に相当する。何もしなくてもあと20兆円の伸びしろがある。また円安で、輸出品は何もしなくても売り上げが1.5倍になった。海外の輸入業者はメイド・イン・ジャパンが大安売りで「大喜び」である。その結果、輸出構造の変化が起こり世界への輸出ドライブが起こり、その遥か上の空前の輸出「爆発」が起こる可能性さえある。前出したように観光業では誘客構造の変化で、観光収入1.5倍近いに加えて、観光客数も1.6倍となっている。2.3倍近い観光収入である。輸出高も同様に、観光業なみに2.3倍近くとまではいかなくても、2倍上百数十兆円という数字になる可能性がある。
3.日本企業は輸入依存度が低い
日本の輸出品の主力は、高付加価値(ハイブリッド自動車はじめ工作機械、鉄道、部品・素材)商品である。研究開発投資はGDP比3%強で世界1位、2位の投資を行っている成果である。日本の輸出企業は輸入依存度が世界でもっとも低い。韓国企業が多くの輸入部品に依存するのとは異なる。世界で円安効果がもっとも好業績に繋がるのは日本企業である。
日本で輸出部門が戦略部門となったのは四半世紀25年ぶりである。担当部門の興奮が分かる。この間海外への工場進出・輸入担当部門が戦略部門であった。
4.なぜすぐメイド・イン・ジャパン急上昇とならないのか。
日本企業はジョブローテーションがあり、課長クラスは3年ごとに異動する。例え輸出部門の課長が適任でなくても、3年間は異動することは難しい。したがって、輸出部門の課長に最優秀な人材を抜擢しようとしても3年経たないと抜擢できない。1,2年で配置転換されることはその人材の汚点となる。輸出に向かない人材を課長に据えていても待たなければならない。
したがって、3年経たないと円安輸出ドライブを行うのに、最適な人材を揃えた組織にならない企業も多い。しかし、円安は2年が経過した。円安3年目の今年には各企業の優秀な人材が輸出部門に揃ってきたと思われる。日本企業、メイド・イン・ジャパン急成長は加速される。
5.日本人は営業がダメになった。外国人の営業力に期待
日本人は長年の豊かな生活に慣れて、企業においてもハングリーな営業活動は出来なくなっている。輸出とはいっても自社の海外工場への企業内輸出が1990年代以降中心であった。企業内輸出では営業力は必要ない。また新興国輸出は製品製造において日本の先端部品を必要とし、売り手市場が多く営業の苦労は少ない。日本企業の8割は自社の日本国内用の製品を輸出していることを見ても日本先端部品・素材などの競争力への自信は明らかである。その結果、日本企業において、海外輸出部門の組織能力営業力低下は、顕在化しなかった。多くの日本企業自身も自社の営業力低下の自覚が無いかもしれない。
外国人観光客増、輸出増は、海外の外国人旅行業者、外国の製造業者、部品・素材販売業者のハングリーな営業員の貢献が大きい。今後も円安効果による観光客増、輸出増は、日本のノウハウ・技術が基礎ではあるが、海外の営業員の努力との相乗効果によって達成されると思われる。
6.日本銀行総裁黒田東彦氏の任期があと3年。この間円安は続く?
円安は2015年から2018年まで続く。その理由は以下である。日本銀行総裁の任期は5年であり、昨年までの2年間円安為替政策を続けた。あと3年間の任期中は、円安政策を継続する可能性が高い。安倍政権は4年後の衆議院議員選挙まで続く可能性がある。したがって、安倍政権の後ろ盾を得て、黒田総裁は3年間円安政策を続けると思われる。
7.メイド・イン・ジャパン急成長
トヨタ自動車は資本余剰金が10兆円近くあり、上場企業だけで資本余剰金は約300兆円ある。特に上場企業の現預金などは、手元資金だけで176兆円ある。大企業に加えて、日本の中堅・中小の製造業の技術力は世界で最強である。これらの企業の輸出部門に優秀な人材が揃うことに加えて、海外製造業から部品販売業などによるメイド・イン・ジャパン製品購入のアプローチが起こる。海外企業の外国人営業員は、日本製品は3分の2の価格で買えるお買い得品である、とPRする。営業の目玉商品となる。世界へのメイド・イン・ジャパンの輸出ドライブが起こり、その遥か上の空前の輸出「爆発」が起こる可能性がある。メイド・イン・ジャパンは復活する。
輸出促進は、製造業の国内回帰などで、国内経済を劇的に変化させる。また日本のロボット技術は世界トップであり、ロボットによる代替で、世界でもっとも人件費を日本は低減させる可能性もある。これも成長を加速させる。
8.日本企業に対抗できるのはドイツ企業のみ
海外での評価では、日本企業の競争企業はドイツ企業のみである。世界はメイド・イン・ジャパンとメイド・イン・ジャーマニーが対峙する。日本企業の輸出競争力は海外の外国人の協力で発揮される。メイド・イン・ジャパンの急成長は、「日本のノウハウ・技術と海外各国の外国人営業員の努力」との相乗効果で達成される。
円安効果による成長は輸出増、観光客増によってもたらされる。海外の外国人の旅行業者、製造業者、部品・素材販売業者のハングリーな営業によって急加速される。特に日本の近隣中国人、東南アジア、世界の華僑、華人の営業力は世界最強である。
日本人と中国人が世界的視野で、お互いの真の能力を知る時代が来た。
注)法政大学教授永岡文庸氏(元日本経済新聞社論説委員・編集委員)。本稿はデータなど円安経済効果については永岡氏と一致し、今後の討議・ご指導を楽しみにしている。なお本稿の結論など、文責はすべて清家にある。
日本人と中国人が世界的視野で、お互いの真の能力を知る時代が来た。
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