2019年12月22日日曜日

大蔵省(現財務省+現金融庁)主計官機能の変遷と経済成長についての史的考察 経営史学会全国大会2019年(慶應義塾大学)研究報告


大蔵省主計官機能の変遷と経済成長についての史的考察

――相沢英之元大蔵(現財務)事務次官・矢野俊比古通商産業(現経済産業)事務次官等オーラルより

清家彰敏(ハリウッド大学院大学教授・富山大学名誉教授・元財務省財務総合政策研究所)

本研究では元国務大臣・元大蔵事務次官相沢英之氏(1)に対し、2009年~2013年まで34回×2時間のオーラルを行った(伊藤隆東京大学名誉教授と2人で行い、今後国会図書館憲政資料室に永久保存の予定である)。オーラルの目的は日本の過去の経験が新興国などの今後の発展に役に立つのではないか、との国際知識移転の考えに立っている。

本報告は、特に大蔵省(現財務省+現金融庁)主計局主計官と日本経済の成長、イノベーションに関わる部分についてのみ限定し、経営史の視点での分析を進め、末尾にて今後の日本経済における提言も行う。

1945年後~1970年代まで

相沢氏によると、昭和20年代主計局が予算、財投、銀行融資を全部掌握していた。主計官は、戦後から高度成長期、安定成長期にかけて、産業競争力に関わるプロジェクトに、必要資金(原子力発電所なら1兆円にものぼる)を予算(金利ゼロ)、財政投融資(低金利)、銀行融資(市中金利)、民間投資から供給すべく査定を行った。

この査定によって、プロジェクト、企業の債務などの返済の負担が大きく変わってくる。それは高度成長のエンジンである企業経営者、管理者の挑戦意欲と行動に大きな影響を与えた。主計官の査定は、通商産業省(現経済産業省)など各省庁の原課の要求を通じて産業をドライブし、競争力を形成してきた。プロジェクトの規模総額を大きくするには、返済義務のある融資・借入の比率を増やせば大きくなる。その査定が戦後の産業競争力形成に繋がった。

最先端技術、最有望市場を狙ったインフラ、設備投資は、主計官の査定において好印象となる。主計官は、投融資ミックスで、返済義務のない予算、金利の安い政府系銀行の財政投融資の比率を高くし、プロジェクト、企業の返済負担を減らす。これが、主計官が日本の産業競争力を作り上げることに貢献してきた構図である。

相沢氏によると、主計官は多能化し、柔軟な組織構造、職務割り当てがなされているなど、その制度と機能は、組織論、組織間関係論で説明できる可能性がある。財政民主主義で憲法、法律、政令などに縛られる官僚組織の中で、主計官の柔軟な職能が効果的に機能した。

主計官の職能は、柔軟なだけでなく、相互にオーバーラップするなど職務の境界が曖昧になること、職務において代替性を持っている。現在世界の民間企業などに見られるプロジェクト組織、マトリックス組織、ネットワーク組織にも対応しうる柔軟さで特長づけられる(参照:清家彰敏著『進化型組織』同友館)。

また代替性は、「職務の多能化、汎用化は競争をもたらす」につながり、主計官の相互の競争による職務レベルの向上にも繋がった可能性がある。民間企業などに比較して、憲法、法律、政令の縛りがあるため職務が硬直的になると考えられてきた中央官庁局課の査定において、上記の柔軟な職能を持った主計官制度が果たしてきた役割は再評価されるべきである。硬直的な各省庁を柔軟な主計官が査定する。これは絶妙な補完関係となった。

伊藤隆名誉教授と、通商産業省の元事務次官矢野俊比古氏(2)へのオーラル第1回20091112日~422012127日まで時間84時間を行った

矢野氏によると主計官と通商産業省産業資金課長は連携した。産業資金課長の職務は、通商産業省の原課が補助金、出資となると一般会計に要求し、主計局へ持って行く。金利が付いてもいいような事業。融資は日本開発銀行(現日本政策投資銀行)などから行う。「借り手」である企業から通産省の産業資金課がまとめて大蔵省の理財局資金課に持っていく。銀行はより高い金利であるが、財政投融資がついた段階で融資を行う。

「開銀がいいのなら、政府がいいと言っていれば俺も安心だとやった。自分たちの銀行審査権を放棄しているということなんです。(矢野オーラルより)」。カウベル効果である。

伊藤大一は大蔵省内という同一組織内に歳出の主計局と歳入の主税局が存在し、情報を独占し、情報の非対称性によって大蔵省が他省庁、政治家に対してアドバンテージを持ったとしている。これは大蔵省主計官の自律性を高め、その結果、上記の投融資ミックスを可能とした。伊藤太一は通産省が業界との産業ネットワークからの情報をもち、大蔵省が銀行からの金融ネットワークからの情報を持っていたと指摘し、主計官はその2つのネットワークからの情報の結節点であり、2つの情報を統合できる存在であったとしている。

しかし、相沢オーラルでは、銀行局は主計官の査定に関してオブザーバーでしか参加していない。

1980年代以降、

政府によって、予算作成機能の大蔵省からの分離が唱えられた(このような考えは戦前からあった)。1980年代以降ベンチャー投資ブームが起こった。

これ以降、成長への投融資ミックスにベンチャーキャピタルが加わった。この主役は通商産業省である。この結果、成長先への投融資ミックスは予算・低利融資・高利銀行融資・ベンチャー投資の4つとなった。

その決定において、投融資ミックスの決定権限の一部が、大蔵省主計官から通商産業省へ移った可能性がある。

その1つの事例が産業基盤基金である。産業基盤基金はNTTの民営化による発生した株式売却収入を原資として、産業投資特別会計が出資して1986年設立された特殊法人で、通商産業省はこの基金を利用して研究開発等への出資を行った。
並行して、大蔵省が解体され、護送船団方式への内外の批判と行政改革により、財務省、金融庁に分離し、予算・財投と銀行融資の分離が起こった。

上記の主計官から経済産業省への投融資ミックスの決定機能の変遷は、

1.新興国の

今後の政府構造の企画、将来変化の予測に、役に立つのではないか

2.日本政府の

将来の意思決定システムの構造を企画する資料になる

と思われる。

(1)相沢英之氏:

 1954年主計局主計官、総務課長-近畿財務局長-主計局次長-経済企画庁長官官房長-理財局長-主計局長-1973年大蔵事務次官-197612月衆議院議員-19902月国務大臣経済企画庁長官-2000年国務大臣金融再生委員会委員長。相沢氏は、田中角栄元総理大臣と同年齢でオーラルの近現代史的価値は極めて大きい。

(2)矢野俊比古氏、

 東京大学法学部政治学科卒。同年商工省に入り、基礎産業局長、産業政策局長を経て、19801981事務次官、19831989年参議院議員〈自由民主党〉。

2019年3月29日金曜日

ロボット消費経済


ロボット消費経済
                           清家彰敏

未来成功する国家はどこだろうか?その研究開発助成先は?

1.ロボット・人工知能が消費をする(注1)。
2.自動株売買ロボット(カブロボ)の消費について考えてみよう。
3.銘柄分析ロボットから、情報をカブロボは購入するとしよう。
4.これはカブロボが銘柄分析ロボットから情報を買うという消費行動である。
5.当然、ここで支払いが生じる。
6.この支払は、カブロボが支払う。
7.しかし、カブロボはお金が無い。
8.だれが払うのだろうか?
9.支払者としては、3人考えられる。
10.      カブロボの開発者(親)、カブロボの所有者、カブロボの受益者である。
11.      カブロボの開発者はカブロボの所有者に対価を払って売却している場合が多い。
12.      したがって、所有者が支払いをする。所有者はカブロボの受益者からお金をもらう。
13.      カブロボは稼いだお金を所有者に受け渡し、所有者はその中から銘柄分析ロボットに支払う(消費)。
14.      このとき、消費者はカブロボの所有者である。
15.      この消費において、消費決定者と消費者は同じであるかどうか?
16.      銘柄分析ロボットから情報購入すれば、カブロボはより多くの収益を上げうる。
17.      情報購入を最初に決定したのは、カブロボの所有者であるとすると
18.      最初の消費は、消費決定者、消費者が同じである。カブロボ所有者。
19.      カブロボと所有者の関係について考えてみよう。
20.      カブロボはプログラム株取引を行う。
21.      日本の株式市場は1000分の1秒単位で注文を処理できる(HFT)。
22.      人間が1秒に1回注文を処理できるとします。
23.      もし1000分の1秒に1回カブロボが注文するとすると
24.      1秒につき、999回はカブロボが、1回だけ人間が注文する?消費する。
25.      1秒につき、999回はカブロボが銘柄分析ロボットを利用する。消費する。
26.      1秒につき、人間は1回銘柄分析ロボットを利用する。消費は1回だけである。
27.      毎秒、999回の消費は、決定者はカブロボ、支払い=消費者は人間。
28.      毎秒、1回の消費のみ決定者は人間、支払い=消費者は人間。
29.      このとき、人間が消費者であることは、経済的に合理的であろうか?
30.      ノーベル財団の資産を運用して、永久にノーベル賞を継続するならば、銘柄分析ロボットへの消費者は人間より、カブロボであるべきかもしれない。
31.      ノーベル財団は人間で構成されているが、将来はカブロボ化し、銘柄分析ロボットに対して自分で消費する。
32.      カブロボノーベル財団は「銘柄分析ロボットに対して消費者」である。
33.      カブロボ=自動株式売買ロボットは消費する。
34.      世界中の財団はカブロボ化して人間に代わって消費するようになる。
35.      ビル&メリンダ・ゲイツ財団もビル・ゲイツが亡くなれば、ゲイツの知識をAI化したカブロボ化する。
36.      ロックフェラー財団、アメリカ国立科学財団もカブロボ化(消費ロボット化)する。
37.      他に消費ロボット化するものは?
  あなたの周りの全てのものである。
  家電も、
  自動車も、
  マンションも、
  住宅も自分で勝手に(笑)、

  しかししっかりものの消費をするようになる。
  
  消費ロボットビジネスの時代である。

38.成功する国家はどこだろうか?
39.経済は生産と消費で語れる。
40.生産ロボット研究開発へ助成する国家だろうか?
41.消費ロボット研究開発へ助成する国家だろうか?
end(^^)

おまけ(^^)ちょっと難しい《笑》

1.その未来、

  消費ロボット化をビジネスととらえ、ロボット消費ビジネスで世界の大富豪になるひとは、だれだろうか?

2.ロボット消費ビジネスを行うベンチャー経営者だろうか?
3.それともロボット消費ビジネスを行うベンチャー経営者を支援するロボット消費プラットフォーマだろうか?
4.21世紀ロボット消費ビジネスを行うベンチャー経営者は20世紀の石油採掘業者?
5.21世紀ロボット消費プラットフォーマは20世紀のロックフェラー?(笑)
6.ロボット消費プラットフォーマは、まったく新しいコンシューマたちの中から登場するだろう。

7.21世紀に入って世界の消費の中心は東アジアへ急速に移動し始めた。同時に消費のプラットフォーム(<=消費セット)も欧米型から東アジア型に変化し始めた(注2)。
8.21世紀中国経済の成長により、2019年現在世界市場の過半を中国が占める(注3)。
9.アマゾン、グーグル・・・のプラットフォーマのモデルは中国市場への参入を窺うためとロボット消費化との2つで変化を余儀なくされつつある。
9.その中国のプラットフォーマ、アリババ、テンセント・・・も覇権国家米国の挑戦により、プラットフォームの変化を余儀なくされると思われる。
10.消費ロボットプラットフォーマは中国市場、ロボット消費化、米国の挑戦の3つの渦の中で企画される。
10.さてさて、新しい富裕層はだれだろうか?(^^)

注1)ロボット化する経済について仮想労働・ロボット政策について2004年論じた。
清家彰敏・馬淑萍・張一弛「世界経済を拓く中国と日本 産官学連携での新しい世界創造」『ファイナンス』財務省、Vol.39.No.10(2004年)
注2)清家彰敏・馬淑萍・張一弛「世界経済を拓く中国と日本 東アジア消費経済化とコンシューマ経営」『ファイナンス』財務省、Vol.38.No.11(2003年)
注3)清家彰敏ブログ「日米欧市場ガラパゴス化時代 中国が世界市場の半数を超える製品・・・」2016年9月13日)

ロボット経済化の未来経済予測2035


         ロボット経済化の未来経済予測

      ハリウッド大学院大学教授(東京六本木ヒルズ)
      富山大学名誉教授・元北京大学客員教授
        元財務省財務総合政策研究所特別研究官
               
             清家彰敏


 史観1
フランス革命以前19世紀まで、王のためのインフラを作った国家、人が成功者であった。20世紀から現在 大衆のためのインフラを作った国家、人が、成功者になった。
未来は、ロボットのためのインフラを作る国家、人、?が成功者となる。?とは?

           
1.21世紀はロボットの時代である(注1)
  グーグル・フェースブック・アマゾン・アップル・ウイチャット・アリババ・・・ソニー上で稼ぐ秘書ロボットの級数的増加(グーグルホーム・アレクサ・・・・ハロー)理論は村上陽一郎の「文明のブルトーザー効果」
  あなたの周囲に情報が溢れ、どこででも情報が手に入り、入力も自由自在そんなユビキタス環境の中であなたがたはロボットと共生する(注2)
2.優れた人間の「得意技の代行=秘書ロボット」で稼いで、「あなたの収入」を増やす。営業代行は営業成績向上、収入増。人事代行は人材派遣成績向上、収入増。教育代行は講義+通信、収入増。
3.「秘書ロボットによる得意技の代行」で、優れた人間以外でも副業が急増。
  政府のロボット研究投資は消費支援型へ重点投資
  「生産支援型ロボットへの政府研究投資は失業増、消費支援型ロボットへの政府研究投資は雇用増へ」
  個人が「誰でも秘書ロボットで収入増」になる支援ソフト開発販売が世界で急拡大
4.秘書ロボットを従えた一人企業(注3)が急増。人員削減分があなたの収入増加の原理。これは数字で証明できる。一人企業化は営業、人事、教育、経理の代行をする秘書ロボットで起こる。
5.一人企業化、秘書ロボットで、企業グループの売上が急増、GDPが急増。論文1
6.超分散社会一人企業時代の到来。
7.日本中が一人企業になる。大衆生産大衆消費型の日本経済は一人企業化が進展しやすい風土。トヨタ生産方式の多工程持ち理論(トヨタ自動車元副会長大野耐一氏写真)。秘書ロボットを多工程持ちする一人企業。
8.企業数は数十倍に増加する。
9.大企業は一人企業の集合体になる。
10.      最も一人企業化が進行するビューティビジネス。ハーバード大学ジョーンズ教授写真とインタビュー。
11.      超分散社会・ブロックチェーンの大活躍。論文2
12.      一人企業世界制覇
13.      世界に一人企業が進出
14.      世界の大企業(労働集約型)VS 日本の一人企業経済
15.      日本の一人企業経済が世界を支配
16.      日本のGDPの急増。世界のGDPの30%が日本になる。
17.      世界の一人企業経済化
18.      世界のGDPの急増。日本のGDPが世界の5%に下がる。
19.      世界の人口80億人のセレブ化。ビューティビジネス。
20.      人間の役割のクリエーティブ化
21.      ロボット独立化時代 移民の経済学(教授 写真)
22.      ロボット間の優劣の始まり
23.      優れたロボットほど増加(ロボット進化論:自然淘汰)
24.      優れたロボット型がマジョリティになる。大量生産・自然淘汰・ダーウイン
25.      最初は効率が高いロボットが生き残り
26.      やがて、情報多消費型ロボットが生き残る。
27.      GDPの70%は消費。したがって、情報多消費型ロボットが優位。
28.      哺乳類型ロボットが優位。人間進化長谷川眞理子教授
29.      ロボット消費の時代
30.      情報多消費はロボットによる大量情報購入によってもたらされる。
31.      ロボットの大量情報消費に情報供給するロボットが大量に生産される。
32.      カンブリア爆発 写真
33.      多様な情報購入に対応するために多様な供給ロボットを生産するために、ロボットの多様化が起こる。
34.      多様化するために、ロボットの知財の合体が効果的、ロボットに雌雄が生まれる。
35.      供給側が多様化するのに合わせ、下流も多様化、多様化のためにロボットに雌雄型、すべての情報のロボット化(情報の知能化=生命化=「情報生命」)が生まれる。
 
 「すべての情報のロボット化は、検索側からの検索の限界。被検索側からの知能検索の増加によって起こる」これが情報生命化現象。

36.      ロボット経済の時代到来 2035年
 
もうひとつの史観がある。
成功者のうち、最終成功者は常に大衆に奉仕した国家、人であった。
遺伝子からみた進化論からいって、人類という種でもっとも成功者させたいのは、数を70億人まで増やした大衆であって、1%の富裕層ではない。さて、遺伝子は大衆を成功させるためにロボットを成功させる意図を持っているだろうか?それともミームについて、考える場を人類は持たなければならないのだろうか?

注1)エージェントネット経済について論じロボット経済化を2001年予測し、ロボット経済学の試論とした。
清家彰敏「エージェントネット経済とビジネスモデル」『情報系』オフィス・オートメーション学会,Vol.22,No.1(2001年4月)それから19年その折の予測の多くは実現した?
注2)清家彰敏「ユビキタス環境とロボット経営」『オフィス・オートメ―ション』オフィス・オートメーション学会,Vol.23,No.3(2002年9月)それから18年その予測は?
注3)清家彰敏『進化型組織』同友館,1999年。進化する組織構造の究極の形態としての自律性の高い情報装備「一人企業」について論じた。