2025年11月13日木曜日

中国デジタル製造の世界奔流とトランプ大統領の米国ファースト

 中国デジタル製造の世界奔流とトランプ大統領の米国ファースト

――世界サプライチェーンの混乱の中での漁夫の利――

 

目次

1.欧州の対ロシア臨戦態勢までの史的仮説

2.中国は世界最大のデジタル実験場

3.中国は道を作る

4.トランプ大統領の登場

 米国は挑戦者に容赦ない。サプライチェーンの分断

5.日本の戦略

 日本企業はどう漁夫の利を得るか?

6.今後の未来仮説

 

1. 欧州の対ロシア臨戦態勢までの史的仮説

第二次世界大戦後のドイツ、日本のモノづくりの世界展開

欧米のモノづくり力の低下

中国のモノづくりの世界被覆化(G7の生産移転)

さらに欧米のモノづくりの空洞化

中国のGXの世界進出(太陽電池・蓄電池・EV

ロシアの資源ビジネスの未来が暗いとのプーチン政権の判断?

旧ソ連の復活の野望?(ロシア軍ウクライナ侵攻、カザフスタン等の併呑の可能性?)

欧州の臨戦態勢、ここで、G7の戦闘能力の低下が顕在化

 

2. 中国は世界最大のデジタル実験場

食料から材料、商品、製品は中国が世界シェアの半分を占める。

中国の全てのモノ等が、今後10年、世界のスタンダードになる。

例えば、世界の総合病院の半数が中国になれば、医療機器のスタンダードが中国仕様になる。

製品はデジタル化でサービス製品へ

 

中国デジタル政府がデジタルハイテク産業を作る。工業情報化省等が主導する。

 

自動運転車、ロボット、AIは急増、世界へ。

自動運転車はEV技術をもとに、中国の路上で走行テストを行い。無人タクシーの料金は有人タクシーの半額である。

高度1千メートル以下でのドローン、空飛ぶクルマなどの活用が進む。

ロボットは産業ロボットからサービスロボットまで開発が奨励される。ロボットの「手」の量産、大幅低価格販売へ。今後、人型ロボットの各部位の量産化、大幅価格低下が進む?

AIは、全国全産業での利活用が進む。

 

中国製品デジタル化の驚くべき近未来

大学の先端研究、企業の先端技術は20代だけで、中国はどんどん進めています。

中国企業など、先端技術テーマを社長が見つけたら、社内ではなく、有名大学の修士に求人をかけて、三年で実現させます。

情報が飽和している北京、広東、浙江省などは、年長者を超える能力の極めて若い人材が次々登場して、その業界の世界を変えてしまう。

それをさらに加速するのが、生成AIで、小学生、中学生に凌駕される分野が中国では今後続出する可能性がある。

(上記は、今後世界のどこででも起こる現象かもしれない)

 

太陽光発電は世界最大、原子力も世界最大へ。5万基の人工衛星で地球を覆うデジタル製造計画が進む。

GXの中心となる太陽光発電の大半は中国製である。

東南アジアのGXは中国の太陽光発電と蓄電池によって、実現される。現在ベトナムなどは中国からの電力送電に頼っている。

原子力発電は世界最大の規模になる。技術はフランス、ロシアとの連携である。グローバルサウスの国にとって、原子力と核武装は夢。

人工衛星などの宇宙、そして海洋はフランスとの関係が強い。

中国の理系のトップ校清華大学は大学院生が37千人(2021年)。東京大学は1万2千人の3倍である。

修士課程は2万人、東京大学の修士課程の6千人の3倍。

博士課程は17千人、東京大学6千人の3倍。

学部生は1万6千人、東京大学1万2千人の1.3倍。

北京大学は大学院3万人(2024年)、修士課程17千人、博士課程13千人。

 

太陽光パネルは中国が世界の8割を生産する。

 

世界の需要に対して太陽光パネルの生産能力は2.5

タクラマカン砂漠など、新疆ウイグルは、空前の規模の太陽光パネルが敷かれている。

最近は農地に、太陽光パネルを組み合わせても置くなど工夫も見られるが、

某中国太陽光パネル生産の大企業は、原発16基分の太陽光パネルを生産。国内の広大な砂漠などに敷くなどしても内需は30%、世界へ70%は輸出。

太陽光パネルの価格急落での政府の需要創出は、国内での激烈な競争を生じ、中国人経営者は疲弊

 

太陽光パネルの輸出単価は急激に下がり、中国以外の海外企業は太刀打ちできない。

 

将来5万基の人工衛星でグローバルサウスをも覆う。米国との人工衛星競争。

衛星インターネット通信網を構築する中国の計画

GW(国網)        12,992    中国衛星網絡集団             国有      

G60(千帆星座) 15,000      上海垣信衛星科技             国有      

Honghu-3(鴻鵠)             1万基 上海藍箭鴻擎科技             民営      

(出所:中国航天科技集団の発表などからジェトロ作成)

宇宙と海洋開発はフランスとの協力

広東省、浙江省をデジタル実験場にして、ハイテク技術と合わせて、東南アジアへ、そして世界制覇を狙う。

 

まとめ

AIの価格は安い。日本より一桁安い。日本なら導入に数千万円かかるのが、中国では数百万円で驚く。

食料から材料、商品、製品は中国が世界シェアの半分を占める。

原子力はフランスとロシア、宇宙、海洋はフランスの協力

中国製品が世界のスタンダードにならないのは不思議である。

広東省、浙江省をデジタル実験場にして、ハイテク技術と合わせて、東南アジアへ、そして世界制覇を狙う。

 

3. 中国は「道」を作る
 中国では、金持ちになりたければ、道を作れ

中国のデジタル製造の製品は、東南アジアへ「道」を作って、運ばれる。

 

海外デジタル製品奔流の先兵が広東省と浙江省に?

 

中国はデジタルでサービス向上させ、品質向上、太陽光パネルでGX。それを東南アジアへ「道」を作って送る。

世界を覆う数千、数万基の人工衛星の通信網の下、道の途中の東南アジアの各都市では、人々が、毎日スマホ、EV、パソコンを使う。

その電力は、GX支援に繋がる「世界シェア8割の中国製太陽光パネル」である。

また、中国の電力は東南アジアへも送電されている。

 

中国造船は世界の半数を超え、道(海路)を作る。陸路は高速鉄道と高速道路が作る。

 

まとめ

中国は、道を作る。

造船、高速鉄道、高速道路

道案内の人工衛星

中国デジタル製造は東南アジアから世界へ大奔流となる。

 

4. トランプ大統領
 米国は挑戦者に容赦ない。サプライチェーンの分断

製造業からデジタル産業への移行が必然との考えと、先進的との考えは、ロシアのウクライナ侵攻で大きく変わった。

ドローンなどのモノづくり+デジタルAI。モノの量産力が戦争の勝敗を決める。

過去80年間、戦争における製造業、モノづくり力の意味は、第2次大戦後の世界では徐々に低下していっていた。

米国、欧州における製造業のウエイト低下は、現在大きな問題となっている。

ロシアの物量戦によるウクライナ侵攻で、現代戦におけるモノづくり力の再評価が世界中で起こっている。

航空機生産のみしかG7は優位がない。

陸戦での戦車などのエンジンは自動車生産力が支えである。日本とドイツだけ。

海軍では、G7で造船能力のあるのは日本だけである。

米国の第7艦隊は近未来、空母の建造も、修理もおぼつかなくなる。

4つの政治主導の断絶

中国におけるコロナ経済断絶

ロシアにおける侵略軍事断絶

イスラエルによる宗教政治断絶

米国による関税ビジネス断絶

 

G7のキーワードはモノづくりと物量

 

戦争経済への道 欧米等の国家予算に占める防衛費は19557.5%が現在2%に減少した。健康医療等費は3%から10%に増加した。

米中以外の市場はモノづくりとデジタル製品の2種のサプライチェーンに覆われる?

米欧は、戦争体制づくりのために、モノづくり体制のためのモノづくりサプライチェーン作りが課題となる。

米国は、ドイツ、日本、韓国に米国内モノづくりサプライチェーンを作らせ、米国の戦争体制を早急に作る。

欧州は、ドイツを中心とした戦争体制のモノづくりサプライチェーンを作ることが、課題となる。

中国は、デジタル製品の海外輸出、海外進出を支えるサプライチェーンの強化を進める。中国のデジタル製品のサプライチェーンは「道」に沿って作られていく。

 

トランプ政権1期では米国で設備投資が起こり、主要先進国で最高に伸びた。2期はどうなるか?

 

トランプ大統領はモノづくり派?

トランプ大統領はモノに関心が。

日本とドイツの応援団は実はトランプ大統領?

英米の金融の応援団は、実はイスラム?

マスク氏の関心も実はモノづくり。デジタル化時代こそモノづくりで勝てる?

マスク氏の逆張りビジネスは日本にとって参考になる?

マスク氏のゼロベース官僚組織改革は、各国、特にG7の官僚組織ゼロベース変革になる可能性がある??日本にも?

米国は1930年代に平均59%の関税をかけ、他国の報復関税で、貿易黒字にはなったが、失業率が25%になった。

 

さて、大所高所に立ってみましょう

2000年からの25年で日米は輸出が1.9倍に増加した。中国は7.8倍に増加した。

 

世界の株式時価総額で米国は一人勝ち(ルチル・シャルマ氏)

世界の貿易量で米国の占める割合は15%、GDPでは25

世界の株式時価総額で米国は70

 

トランプ大統領の世界への影響力の根源は米国の株式時価総額

米国が世界での圧倒的な存在感は株式時価総額が世界の7割。

もうGDPより貿易より、株式時価総額が米国大統領こそが「世界を守る」の裏付けになる?

米国大統領は米国籍を持っている人を守るのが第一義。

米国籍の人たちの株式の時価を高めるのことを優先するのが米国大統領。

超富裕層の株式の時価を、超富裕層と相談して高めると米国の競争力が高まる。

その結果、世界の多くの課題を、超富裕層の支持のもと米国大統領が解決できる?

 

株式>GDP>貿易 ここから関税政策?

株式時価総額が大きいのが米国のパワーの根源

それが、トランプ政策では?

中国の株式時価総額を大きく落としたのが、米中対立だった?

それなら、関税で、他国の株式時価総額を大きく落とすことが狙い?

バイデン民主党のグローバル化は貿易、GDPを拡大することで、世界の繁栄を、との・・・はずだった?(20世紀の英米の論理)

しかし、実はそれは虚構で、実際は資産拡大、「株式時価総額勝負」だった。世界近現代史では、資産増加にGDP増加は追い付けない。(英米経済学者の嘘?)。

トランプ関税政策はそれへの答えでなくても、気づき、再研究の要請となった。経済学者、経営学者、政治家の目覚めのきっかけ。

トランプ関税政策は、世界経済を動摩擦化するトリガーである。また、過去80年の経済理論研究における、理論研究の静止摩擦状態を、動摩擦化し、世界的討議を起こすことに意味がある。

 

変われない過去になろうとしている経済理論の悲しみ?

自由貿易の旗手・米国、突然の「戦略的鎖国」宣言 戦後秩序に転機

崩れる自由貿易 80年目のリセット

トランプ米政権が関税の壁を築き、世界に戦略的、背を向け始めた。自由貿易を軸にした共存共栄という米国主導の戦後秩序は、80年目にして転換点を迎えた。米国の戦略的ディールに、世界各国の対応は場当たり、G6は米国とのつなぎとめ、連携が難しくなるなか、世界は多国間の枠組みを守り続けるのか、保護主義の時代に突入するかといった簡単な選択肢ではない、不確実かつ複雑な戦略的岐路に立つ。

米国トランプ政権は半年ごとに関税を見直す?

 

まとめ

米中以外の市場はモノづくりとデジタル製品の2種のサプライチェーンに覆われる?

米欧は、戦争体制づくりのために、モノづくり体制のためのモノづくりサプライチェーン作りが課題となる。

米国は、ドイツ、日本、韓国に米国内モノづくりサプライチェーンを作らせ、米国の戦争体制を早急に作る。

欧州は、ドイツを中心とした戦争体制のモノづくりサプライチェーンを作ることが、課題となる。

中国は、デジタル製品の海外輸出、海外進出を支えるサプライチェーンの強化を進める。中国のデジタル製品のサプライチェーンは「道」に沿って作られていく。

株式株価総額が大きいのが米国のパワーの根源

 

5. 日本の戦略
 日本企業はどう漁夫の利を得るか?

円安は最大の機会

円安を生かすには、輸出企業、輸出事業を増やす。

円安の恩恵は、ドルで持つ海外資産で巨大。

インバウンドでかつてはOTC薬、家電の爆買いがあった。

今はEコマースでOTC薬が売られ、家電は中国製で間に合う。

輸出に繋がる製品を持つ企業に助成をすべきである。

日本企業は輸出営業能力、経験のある人材を採用、育成し、大幅増すべきである。

当面は海外の優れたビジネスマンに営業の牽引を委ね、逆張りモノづくりをして、東南アジア、中国、インドからアフリカへ輸出すべきである。

 

日本は米国の最大の投資国 米国の株式時価総額の拡大に貢献するか?

 

日本の自動車の米国輸出への影響
米国内生産比率はトヨタとマツダ以外はGMより高い

 

米国とモノづくりサプライチェーンでの日本の漁夫の利 

米国は、ドイツ、オランダ、日本、韓国、台湾などに米国内モノづくりサプライチェーンを作らせ、米国の戦争体制を早急に作る。日韓台は人口2億人、米国35千万人、EU5億人。

 

欧州、特にドイツは、日本との連携が最優先となっている。

 

米国の中小企業との連携、買収、投資は日本が主導できる?

米国の中小企業は従業員500人未満で、33000社。従業員数6160万人。買い手がない7割(米国中小企業も大変ですね)

 

中国ビジネスのデジタル製造サプライチェーンでの漁夫の利連携

中国は、デジタル製品の海外輸出、海外進出を支えるサプライチェーンの強化を進める。中国のデジタル製品のサプライチェーンは「道」に沿って作られていく。

中国国内の消費は低迷し、厳しい安売り競争が起こっており、悲惨な競争からの逃避として、東南アジア、ロシアでのビジネスへ向かう。そして世界へ。中国製品の奔流である。

インドネシア人口38000万人などは3割の人しか銀行口座を持っていない、次のキーワードはスマホからのデジタル化である。

 

東南アジアのイスラム国のインドネシアなどは反米

インドネシア、マレーシアの反米の理由は、イスラエルのガザ攻撃以来、イスラエル、米国、ユダヤ教徒、キリスト教徒に対する非難の高まりである。

マレーシアはイスラム金融の中心であるが、反米

道(空港・高速道路・高速鉄道)ができれば、中国電気自動車、家電、デジタル製品が雪崩れ込む。その支援が太陽光発電などの中国DXである。通信は、人工衛星に支援される。

中国ビジネスマンに営業を任せて、日本は富裕層、中間層に受け入れられる製品開発、優れた部品作りに徹するも戦略かと?

 

AIの価格は安い。日本より一桁安い。日本なら導入に数千万円かかるのが、中国では数百万円で驚く。

清家が北京大学発ベンチャーのカメラ検査AIの海外展開を相談されたときも、日本の某企業に相談し、そう感じ、その後、北京大学の教授との会話でも同様の印象だった。

日本の使う現場に対する豊富な経験、きめ細かな配慮と中国の安いAIの組み合わせが望ましい(中国工業情報化省の課長の話、日本視察を計画中、彼は、ドイツは行ったけど日本はまだ行っていないとのこと。中国の官僚は海外視察の機会が誠に少ない。外務省が全官僚のパスポートを預かっている)。

デジタル製造サプライチェーンでの中国と日本の連携は民間主導で行う。

 

まとめ

円安は最大の機会

円安を生かすには、輸出企業、輸出事業を増やす。

かつての輸出企業、輸出事業は海外進出、海外投資を行っていて、円安の恩恵は、ドルで持つ海外資産の効果のみである。

海外に営業を委ね、逆張りモノづくりを

輸出に繋がる製品を持つ企業に助成をすべきである。

 

6. 今後の未来仮説

米国のモノづくり力強化のモノづくりサプライチェーン作りを、ドイツと連携して、全面協力する。日本の世界最大級の海外純資産の政府指導による戦略的活用、世界最大の米国債の保有をさらに進める。在日ドイツ企業のアンケートでは、日本企業の経営が最近10年積極的になってきており、日独の海外での連携の機会を期待していると。

北極海航路の拡大は、日本海航路の拡大に繋がる。欧州のモノづくりの強化をドイツと連携する。モノづくりサプライチェーン作りを支援する。

中国と連携して、東南アジアのイスラム国などにおけるハイテクDXデジタルサプライチェーン作りを、進める。

海外企業と連携して、国内ビジネスの拡大を図る。


2024年12月31日火曜日

VUCA時代におけるキーエンスの顧客駆動の経営品質

 

VUCA時代におけるキーエンスの顧客駆動の経営品質

    ーーセンサ・ソリューションの世界展開ーー

 

         清家彰敏

 

序章

世界市場は、VUCA(ブーカ)、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)、で語られ、目まぐるしく変転している。世界市場は、VUCA時代を迎えて、世界情勢の変化も激しく、予測困難な状況となりつつある。予測困難なVUCA市場においては、直接顧客に密着する顧客駆動の経営品質が有効と思われる。キーエンスは代理店を使わず直接販売を行い、市場の変化に対応しやすい。また新製品を標準品としてソリューションをつけて販売することは、規模の経済で有利になる。上記観点より、予測困難なVUCA時代におけるキーエンスの戦略と将来の可能性について考察する。

キーエンスの製品は7割が新製品であり、世界に顧客駆動のソリューションを提供している[1]。キーエンスは、全世界30万社へ営業し、海外売上が50%を超える。自社で企画・開発した製品を外注生産し、それを販売するというビジネスモデルで成功を修めてきた。

キーエンスは、世界市場において、直接販売による顧客駆動のソリューションによって、規模の経済を達成している。直接販売は代理店制度に比較して、販管費が減るため、利益率は上がるが、売上は減少し、規模の経済的には不利になる。しかし、キーエンスは、製品生産において、30万社の可視化されたデータを持って30万社とコラボレーションする機会があり(交流チャンスの市場化)、それは製品の開発に有効であるだけでなく、販売においてその30万社の可視化されたデータによって、顧客駆動のソリューションによる規模の経済を発揮している。

キーエンスは仕入債務の支払いサイトが短く、無借金経営である。キーエンスは、自己資本比率は95%を超え、9000億円を超えるキャッシュ、8000億円を超える投資有価証券(大部分は信用度の高い公社債など)を保有、売上高5381億円の3倍を超え1.7兆円に達し、過去10年間の海外事業の平均成長率も20%超である[2]

キーエンスは、従業員1人あたり売上高6400万円、従業員1人あたり営業利益3200万円(20213月期)である[3]。連結従業員数10,580名(20233月現在)、事業内容はセンサ、測定器、画像処理機器、制御・計測機器、研究・開発用解析機器、ビジネス情報機器である。顧客は、キーエンスからの製品納品後4ヵ月は支払わなくて良く、キーエンスはサプライヤーへは、自社の製品納品から約1ヵ月後に支払う[4]。キーエンスが大量の在庫を保持し、販売機会を逃さず顧客のニーズに即応することは、サプライヤーの在庫負担を軽減している。

キーエンスの先行研究は井村直恵が2004年に探針型モデルによるキーエンスの成功モデルを論じた[5]。井村の探針型モデルを受けて後学は、延岡健太郎[6]など、成功要因を、キーエンスの内部組織、人的資源について中心に考察している。また、キーエンスの社内理解、多くのキーエンス解説も内部組織、人的資源についての説明が多い。本研究は、キーエンスの主な成功要因を組織間関係、社外の人的資源の状況に求める。キーエンスは世界企業で、株価総額は20兆円に達しようとしている。キーエンスなどの世界展開での成功に、本研究の成功要因が参考となると考える。

 キーエンスの成功要因は、組織間関係にある顧客およびサプライヤーの構成員の行動原理が、意思決定回避、合意形成回避、フリーライドなどを起こしていることが、キーエンスの大きな成功要因となっている。

 

2.意思決定回避者へのキーエンス営業

意思決定回避については、人間はケンブリッジ大学のBarbara Sahakian教授の研究によると、1日に最大35,000回の決断をしているとの説がある[7]。人が一日に決断できる上限は決まっているようで、決断をするたびに少しずつ疲れてしまう。この負担から人間は行動、特に業務をルーティン化する。このような状況は、キーエンスの営業を行う技術者に優位に働く。

合意形成回避については、集団の中で合意を必要とする仕事をできるだけ回避し、後日の責任を回避しようとする。また過去の前例によって、集団への説得を容易にしようとする。

ネットの中にも無数のアイデアがあり、匿名のネット内のアドバイザーがいるため、思考から逃避して、フリーライドすることが習慣化している。ネット上の他者の意思決定を採用し、採用者が自身の意思決定として表明することが起こっている。意思決定はネット上で選ばれた不特定他者が主に行い、意思決定者はその意思決定の選択とそれを表明する存在でしかない。主体としての意思決定貢献者は不特定多数である。今後、世界の顧客企業において、生成AIなどAIは、人間以外の人工の意思決定主体になり、AIが主体となり、組織で人間は従になる近未来が登場する。

このような状況の顧客企業の従業員にとって、潜在的に持つニーズを発見するのは困難な課題である。従業員にとって、急速に発展し複雑化している多様な技術のほとんどを知ろうとすることは負担である。また技術的に可能となるイノベーション、改善の範囲が曖昧であり、自らが潜在的にもっているニーズを認識し、他者に要望として明示的に表現するのは困難である。暗黙知であれば、責任を問われることも、仕事に関与されることもない。形式知化に対する拒否感、逃避の心理さえある。

仕事でも決断することは多々ある。取引先になんて返信しようか、上司にはなんて報告をしようか、部下にどのように接しようか、考えればきりがない。工場や物流倉庫にセンサを設置するときにも、実は多くの決断をしていて、無意識のうちに決断疲れに陥っている[8]

決断疲れについては、クネビンフレームワーク[9]という考え方がある。キーエンスの顧客の多くの人は「単純 = simple:やるべきことがわかっているけど決断できない」、「面倒 = complicated:どの選択肢がいちばんいいかを決断できない」、「複雑 = complex:予測できないことだから決断できない」、「混沌 = chaotic:答えがないから決断できない」という状況におかれている。キーエンスの営業は、顧客が、その場その場で最善の決断が下せるよう導く。顧客のおかれている状況を可視化することによって、顧客の決断を支援する。顧客が、議論するまでもないくらい状況が明確なのに迷っている場合は、怠慢からくる先送りが多い。単純 = simpleな状況では、やるかやらないかの決断のルールを顧客と可視化すれば、顧客は自動的に意思決定ができる。

顧客の状態は、面倒 = complicatedは、上司にどんな提案を持っていけばいいのだろうか、と悩んでいるようなときである。複雑= complexの状態は、判断のベースになるはずの因果関係が安定せず、変化する可能性が高い状況で、センサを導入したいけど、本当に投資対効果がでるか、分からない状態である。混沌= chaoticは、原因と結果の因果関係もよくわからず、最適な答えもない状態であり、将来に向かって工場の中のセンサ群の配置を進めるにあたって、将来的に的確なセンサ設置手順はどういったものか、であるとかである。

キーエンスの営業は、顧客の状態が、混沌= chaoticであるを、複雑= complexの状態に、複雑 = complexな状態を面倒 = complicatedに、面倒 = complicatedな状態を単純 = simpleにと、最終的に単純 = simpleの状態まで持っていく。顧客が、単純 = simpleな状態になれば、決断をしないのは、ただただ怠慢でしかないので、決断のルールを顧客と可視化すれば、顧客は自動的に意思決定ができる。上記のような単純 = simple化が、キーエンスの営業の手順かどうか、は定かではないが、類する手順と決断のルールの可視化がキーエンスの営業手法になっていると推定している。

顧客は、キーエンスの営業から、タイミング良く、最適なセンサを紹介されると購入を決めやすい。キーエンスの営業は、顧客が衝動的な決断をしやすいタイミングで、目の前に登場する。キーエンスの商品開発担当の江守航輝氏は「商品開発の真っ只中。どうすればお客様にとって使い勝手がより良い商品になるのか、営業担当にとってお客様にPRしやすい商品になるのか、お客様や営業担当の視点を想像しつつ、開発中の商品に接しています。そして発売後は、江守さんが担当したからこんなに進化した、と評価されることを夢みている」と語っている[10]

顧客を、単純 = simpleな状態に移行させ、決断のルールを顧客と可視化すれば、顧客は自動的に意思決定ができる。顧客の状態を単純 = simpleの状態に持って行く、キーエンスなりの手順が、工夫されていることが、キーエンスの成功の要因となっていると考えている。

 

3.キーエンスに支援された日本の部品企業の世界覇権

 1990年代に入ると、キーエンスは海外に拠点をつくって、米国、ドイツ、英国など、他国に少しずつ展開を始めた 。この頃はまだ直販と販売代理店をハイブリッドで使っていた時代で、海外シェアは2割程度だった。2000年代に入り、キーエンスでは、海外で売り上げの基盤を構築できるマネジャーの育成をするステージに入った。さらに2010年以降は本社と各現地法人が一体となり、海外市場に対する育成チームが構築された。

キーエンスの海外における主な営業対象は日本の現地法人からであったと思われる。2021年度末における日本の現地法人数は25,325社(製造業が1902社、非製造業が14,423社)である。2021年度末における現地法人の従業者数は569万人、2021年度の現地法人の売上高は303.2兆円、前年度比+25.9%となり、業種別にみると、卸売業、輸送機械などで増加となった[11]。地域別にみると、アジア、北米、欧州がいずれも増加となり、現地法人の経常利益は17.1兆円(前年度比+72.9%)、当期純利益は14.2兆円(同+104.6%)となった。現地法人(製造業)の研究開発費は9,075億円、前年度比+27.7%となり、また、現地法人(製造業)の設備投資額は3.7兆円、前年度比+14.0%となった。

2023年現在、中国は国家的挑戦として、全産業のハイテク化=科学技術化を行っている。その結果、世界は米中日独の科学技術開発競争の時代に突入している。下図は、米国と中国のストライカー型リーダーと、それと連携する日本とドイツの構図と、考え作成した。

米国のシリコンバレー、中国の深圳のベンチャー経営者はストライカー型リーダーである。米中のストライカー型リーダーは、関係するモジュールをゼロベースで評価し、意思決定、事業を行う。

米中のストライカー型リーダーに対して日本とドイツは組織で対応している。例えば、ストライカー型リーダーであるジョブズのアップルに、多くの日本の部品製造企業が組織間関係で対応したのが日本である。日本の部品企業という「ミッドフィルダーがパスを繋ぎ、ゴールへシュート」をジョブズがゴールを決めた。その部品製造企業にキーエンスは、顧客駆動のセンサを主力商品とするセンサ・ソリューションを展開した。そのソリューションは汎用化し、標準的に多くの部品製造企業で行われ、経営品質を向上させた。

キーエンスは生産の多くを協力工場に委託するファブレス体制[12]による生産を行っており、商品の企画から開発、設計および生産に関わる部材調達はキーエンスが行い、生産は国内外の協力工場で行い、キーエンスの生産技術や生産企画、品質管理部門が協力工場と連携し、組み立て図面の提供や部材の支給も行うなど、生産に深く関与することで高品質な商品を製造する体制を構築している。生産した商品はキーエンスの国内にあるロジスティクスセンターから、国内は直接、海外は現地の物流拠点を経由して、全世界の顧客に供給している。

キーエンスは、部品製造企業の顧客駆動でソリューションを構築した。ソリューションは、新製品が7割を占める標準化されたセンサなどの商品にともなって行われた。キーエンスの顧客駆動のソリューションは、世界において、日本の部品製造企業の世界覇権を支援した。

また、キーエンスは、ファブレスで、商品開発において、サプライヤーである協力企業の知財を組み替え、顧客へのソリューションを作り上げ、経営品質を向上させてきた。特に、センサを主としたセンサ・ソリューションは世界の多数の顧客のソリューションで、広く営業に使える。キーエンスの中で最も汎用的で、どの業界のモノづくりの現場でも必要となるFAセンサがその主力となる。FAセンサ群は、キーエンスの商品の付加価値の高さを知ってもらうための、入口のような役割を持っており、物流、スマートシティなどへ応用されている。

日本におけるキーエンスの競争企業は、受注型で資産としての大規模工場を持っている。また手作りの規模の経済が発揮できない受注型の弱小工場、小規模企業も多い。受注は厳しい条件で行われ、収益が上がらず、研究投資もできない。それに対して、キーエンスは大企業であるがファブレスで、営業員は強い立場で交渉[13]し、多くの利益が得られる。その商品が新製品で汎用性を持てば、さらに規模の経済を世界で発揮できた。

キーエンスだけでなく、顧客、サプライヤーである協力企業において、能力の共進化が起こっている。キーエンスの進化の中で、顧客は汎用品を使うようになり、顧客のビジネスは標準化へと進化し、並行してキーエンスの営業員はより規模の経済化を加速できる人材へと進化している。

キーエンスは、世界において、さらに拡大するには、日本法人以外の海外企業へ、顧客駆動のセンサ・ソリューションを展開することが想定される。

 

4.キーエンスの海外展開

キーエンスの営業は日本法人以外の海外企業にも成果が出ると思われる。その理由は、欧米に多いストライカー型リーダー がもたらす、多くの追従者の存在である。キーエンスの海外における顧客は追従者である可能性は大きく、キーエンスの営業に依存する可能性が高い。ストライカー型リーダーは無批判にモジュールとして人材を扱う傾向がある。追従者をストライカー型リーダーは好み、海外企業には、追従者が満ちている。追従者はストライカー型リーダーの即決的意思決定に即応することを求められる。それに対して、キーエンスは、高付加価値商品開発を企画、開発して、顧客に直販・コンサル提案営業で届け、ファブレス即納で顧客の要望に応えることができる。キーエンスの顧客ソリューションが世界市場で有効であると考えられる。

ストライカー型リーダーは自身が理解しやすい商品を即座に導入することを期待しがちである。センサを工場に導入する際に、キーエンスの営業からセンサ・ソリューションについて、説明を受け、その情報を借用し、あたかも自身が意思決定したかのように振る舞い、ストライカー型リーダーに接する。そのことは、次もキーエンスを選んでいただけるようなサイクルを世界でつくっていけることに繋がる。追従者がキーエンスの営業の決定を採用した結果、信頼できる優れたセンサが導入され、顧客ソリューションが実現できれば、そのことがさらに広く世界へ、キーエンスを進出させることに繋がる。

この構図はストリカー型リーダーの追随者に対して、キーエンスの営業がセンサ・ソリューションを世界展開する構図である。米国、日本、ドイツの知財の中には、成功に繋がりそうな知財が無数に存在し、キーエンスはそれを商品化することができる。キーエンスの商品開発の大堀宏海氏は「キーエンスの事業はグローバルであり、世界の製造現場の困り事の共通解を見つけ出せれば、強力な拡販力・影響力のある汎用商品を生み出せるはずである」と語っている[14]

米国シリコンバレーのストライカー型リーダーの目標・評価・フィードバックは、かつてジョブズがアップルで行ったような市場創造である。中国深圳のストライカー型リーダーの目標・評価・フィードバックは商品・事業企画である。ストライカー型リーダーの意思決定は速いから、追従者とキーエンスの営業は成果を出しやすい。

世界においても、多くの従業員は上記の心理状態にあり、キーエンスがソリューションの世界展開を行うとき、内部組織、人的資本が主要な役割を果たさなくても、ビジネスは成立する。キーエンスの販売促進グループの海外担当は、海外現地の商習慣や市場特性、常識を含め実態を詳細に把握し、どうしたら営業担当が効果的な営業活動を行えるか、実態把握の手法を試行錯誤し、導き出す。現状活況な特定業界に対しての販売の成功事例を世界中から集約し、実際の工場での使用状況を具体的にバーチャル空間で再現した営業ツール[15]を制作し、世界中に再度展開する。

近未来、キーエンスの営業は、海外企業のストリカー型リーダーに対する追随者に、センサを主力商品にして、センサ・ソリューションを世界で展開していくことが、合理性を持つのではないか、と考えている。

 

結章

世界市場は、VUCA(ブーカ)、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)、で語られ、目まぐるしく変転している。キーエンスは、そのVUCA市場において、顧客駆動の経営品質を展開してきた。そのキーエンスの成功要因は、先行研究における探針型モデル、内部組織、人的資本だけではなく、先行研究で取り上げられていない、組織間関係にある顧客およびサプライヤーの構成員の行動原理が、①意思決定回避、②合意形成回避、③フリーライドなどを起こしていることであることについて、論じた。

特に顧客は、自身が意思決定回避、合意形成回避の状態のときに、キーエンスの営業から、タイミング良く、最適なソリューションとしてのセンサを紹介されると、購入を決定する。その際に意思決定回避の顧客の状態を、最終的に単純 = simpleの状態まで持っていく営業活動が行われているのではないか、と試論を展開した。

次に、キーエンスのセンサ・ソリューションの世界展開の今後について考察した。海外企業はストライカー型リーダーに従属する人材が多く、従属する人材は意思決定回避の状態と考えられることを論じた。キーエンスが世界に展開していくほど市場のVUCAは強まる。キーエンスは代理店を使わず直接販売を行い、市場の変化に対応しやすい。また新製品を標準品としてソリューションをつけて販売することは、規模の経済で有利になる。予測困難なVUCA時代におけるキーエンスの環境適応能力は高いと思われる。

キーエンスの顧客駆動の経営品質は、海外の日本法人から海外企業へとソリューションを展開するにあたって有効であることについて論じた。



[1] https://www.keyence-soft.co.jp/group/businessmodel/

[5] 井村直恵は、京都大学博士論文、経営情報学会「技術的知識の移転における探針型モデルの活用」などでキーエンスの直接営業のプロセスについて詳細に分析し、キーエンスをオムロンとの比較なども含めて論じ、キーエンス研究を先行し、後学に大きな影響を与えた。

[6] 延岡健太郎『キーエンス 高付加価値経営の論理 顧客利益最大化のイノベーション』日本経済新聞出版,202339

[7] https://stak.tech/news/9661。人が1日に使用する単語の数は約16,000語(アリゾナ大学とテキサス大学の合同研究)。食べるものや場所といった食事に関する事柄だけで、人は1日に2,267回の決断をしている(コーネル大学のジェフェリー・ソバル教授らの調査)。車を1マイル(1.6km)運転するにつき、人は200を超える決断をする(米国労働安全衛生局)。

[8] 心理学者のジョナサン・レバーブ氏とシャイ・ダンジガー氏が行なったもので、両氏は刑務所の判事の決断疲れについて調査した。その結果、なんと午前中から1日の終わりに向かって衝動的な決断が多くなり、決断の先送りも増えるということがわかった。また、同じ調査で肉体的な疲労と違って、決断疲れは自覚するのが難しいということも明らかになっている。レバーブ氏によれば、衝動買いも決断疲れが引き起こす現象だという。

[9] DaveSnowden教授が、システムで起こる問題を分類した。クネビンフレームワーク(Cynefin Framework)とは、問題の種類をその性質によって分類し、それぞれの分類に対してどのように考え、行動するか、を示した。1999年にDaveSnowden(デイブ・スノーデン)がIBM Global Services社で働いていた際に提言。

[10] https://www.keyence-jobs.jp/work/interview/emori.jsp

[11] 回収率 74.8%、集計対象(操業中)企業数 本社企業 7,152社、現地法人 25,325

[12] https://www.keyence.co.jp/company/sustainability/compliance/

[13] 若いうちからさまざまなビジョンを持った社長や、一流企業の部長と対話できるのは営業職の醍醐味、https://www.keyence-jobs.jp/work/interview/kondo.jsp

[14] https://www.keyence-jobs.jp/work/interview/ohori.jsp

[15] 販売促進グループは、新商品の立ち上げ、販促ツールの作成、営業担当の営業力・技術力育成、技術サポートなどを行う。さらに、営業所・営業担当ごとの売上や営業プロセスの進捗。最終結果のデータを分析し、次の販売戦略の立案も担っている。

https://www.keyence-jobs.jp/work/interview/imada.jsp

世界の中の中国2024と日本企業

 世界の中の中国2024と日本企業


清家彰敏


世界はロシアの軍事侵攻以降、相次ぐ動乱の時代に向かっている。

米中ロ大冷戦、動乱の中で、グローバルサウスへ中国企業の進出は進み、世界のサプライチェーン争奪が起こっている。

中国の国内生産は空洞化を始め、中国の経営者はグローバルサウスに展開している。

中国はグローバルサウスに中国型AIデジタル都市サプライチェーンを建設している。

その都市は、中国の部品輸出を受けての生産に適しており、そこから日米欧に輸出。


1.中国の現状と今後 旅行と貯金と教育が大好き


2022年、陸銘「中国の都市化が直面する問題と当面の改革」https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcems/6/1/6_3/_pdf/-char/ja

「第7回人口センサス」中国の都市化率は64パーセント。

都市部の常住人口のうち、約3分の1は住んでいる都市の戸籍を持っていない。

いくつかの大都市では、外来人口の半数以上はその都市の戸籍を持たないまま5年以上在住、20パーセントは在住期間が10年以上。


都市の外来人口消費は16%から20%低い

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcems/6/1/6_3/_pdf/-char/ja

外来人口の消費額は地元の都市戸籍を持つ人口より平均で16%から20%低い。

過去10数年の間に、中国における都市部の平均人口密度は約半分に低下した。

低密度の都市建設はサービス業の発展にとって非常に不利。

人口流出地域での市街地から遠い大規模ニュータウン建設、平均面積は100㎢超え、計画人口40万人以上、旧市街までの距離は25㎞以上で離れ過ぎ。


中国の都市の整理

都市化率は10年ごとに10%上がっていて64%。

都市住民の3人にひとりは戸籍がない出稼ぎのなどの人

ある大都市では、出稼ぎなどの戸籍のない人の半数が5年以上住んでいる。20%の人は10年以上住んでいる。

出稼ぎなどのその都市の戸籍のない人の消費は低い。

計画人口40万人以上の低密度・交通不便のニュータウンが建設されている。


2023年1月16日人民中国

http://www.peoplechina.com.cn/zlk/40/202301/t20230116_800318658.html

大学進学率57.8%(2012年約30%)

高等教育機関在学数4430万人


中国の現状

7割の人の、月収は約4万円以下

消費者物価が上がらず、卸売り物価が下がる。

都市化率は64%。10年ごとに10%上がる。

都市の3人に一人は出稼ぎなどの外来人口

若者失業率は15%。

大学進学率は6割、過去10年で2倍に。

不動産はまだ低調 前年比1~3月 開発投資9.5%減 新築販売面積19.4%減


買い替え需要の活性化

ハイテク製造業への国家投資の急増

2024年春節の旅行昨年の34%増加で、飲食娯楽は盛況


2.中国型AIデジタル都市

自動運転やAI、ブロックチェーンといった最新技術の街。

公害や空気汚染などの環境問題にも対処する「グリーン発展」。

低炭素、情報化・スマート化が進んだ「社会主義現代化都市」。

中国では金持ちになりたいなら道を造れ、とも言われる。

新幹線・高速道路が中国のAIデジタル都市を連結

グローバルサウスも、中国と陸と海の道で繋ぐと人々が豊かになる。

中国型AIデジタル都市をグローバルサウスにも建設。

中国の人工衛星、原子炉、自動車、家電、スマホ、新幹線、高速道路がグローバルサウスで売れる。


AIデジタル都市の情報管理と低軌道衛星

スペースX社のStarlinkは低軌道衛星による高速・低遅延インターネット接続サービス提供。2024年1月5250機以上の衛星を運用。当面の目標として1万2000基の衛星。https://uchubiz.com/article/new36871/

軌道上の衛星は現在の9000基から2030年には6万基へと急増する。 https://forbesjapan.com/articles/detail/61605

人工衛星の寿命は数年。

 https://www.zakzak.co.jp/article/20230526-YPMDBH4JGRMZ7DHQ4O3KS7CDHM/

中国政府宇宙白書、今後10年間で1万2000基以上の人工衛星を打ち上げ。https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM072760X00C23A8000000/)

中国の宇宙と航空産業はフランスと連携


世界における中国の影響2024年

モノと情報の世界の半分は中国。

鉄鋼生産の53.9%https://japanese.cri.cn/2023/10/16/ARTIxdvaIPA5SbGsiBofsu3k231016.shtml

2018年携帯電話生産は世界9割、コンピュータは9割、テレビは7割以上。https://spc.jst.go.jp/news/190402/topic_3_03.html

野菜の48.9%、豚肉の43.6%、水産物の35.9%を消費する。https://honkawa2.sakura.ne.jp/0300.html

2022年世界のEC市場シェアは50.4%https://ecact.jp/china_ec/


まとめ

中国型AIデジタル都市は情報管理に人工衛星(フランスと連携)、安定電源に原子炉(フランスと連携)、将来は水素エネルギー(ドイツと連携?)欧州は中国と近しい?

中国型AIデジタル都市をグローバルサウスでも建設していくと、

中国の人工衛星、原子炉、自動車、家電、スマホ、新幹線、高速道路が、AIデジタル都市と共にグローバルサウスで売れる。

モノと情報の世界の半分は中国。

世界の社長が売りたい、買いたい、作りたい、その半分は中国と連携しないとだめ?

欧州の大統領、首相の中国訪問へ。


3.中国の都市部の若者

新しい都市部の若者の登場

 祖父母は中国の急成長でビジネスで活躍 

 父母はビジネスで成功した。          

 モノや金より、芸術に関心を持つ都市部の若者たち

中国は美術大学が少ない。日本の美術大学への留学希望が急増

中国国民は2018年ごろまでは、中国でのビジネスに魅力を感じて、海外から戻ってくる中国留学生も多かった。

2024年現在、経済的に成長している海外で活躍したいという都市部の若者が増えてきている。


中国国内の成長が減るとアグレッシブな若者は国外が魅力的、

中国にとっても国内の経済安定に繋がるか。

中国が、1990年代以降の日本のように海外拡大すると、日本の2022年の対外純資産が418兆円(財務省発表)なので、経済規模の大きい中国は1000兆円以上の対外純資産を持つ可能性もある?


4.日本企業の挑戦 

中国型AIデジタル都市を建設している国家へ参加

欧米へ輸出するグローバルサウス企業への参加

海外からドルを日本に持ち帰ると1.5倍。

海外投資受入れ

 東京、北海道、九州への海外からの投資が急増 

(シンガポールから日本企業を16億円で買いたい、との話が清家まで来ています。)


2024年12月27日金曜日

高度成長期の日本企業と通商産業省基礎産業局長の連携 ――元通商産業事務次官矢野俊比古氏オーラルからーー

 

        2024年度 経営史学会第60回全国大会(東京大学)自由論題

高度成長期の日本企業と通商産業省基礎産業局長の連携

         ――元通商産業事務次官矢野俊比古氏オーラルからーー

                                清家彰敏            

緒言

高度成長期の日本企業の史的先行研究について、通商産業省基礎産業局長矢野俊比古氏[1]のオーラルをもとに史的考察を行う[2]

日本の第二次世界大戦後の通商産業政策を概観すると、1947年の臨時金利調整法で金利の最高限度が規定、資金不足の企業へ復興金融公庫からの低利融資が行われ、1949年のドッジライン以降、復興金融は貸出が禁止され、1951年日本開発銀行(政府全額出資:現日本政策投資銀行)が設立され、日本興業銀行、都市銀行などと産業インフラ、企業への融資を行い、高度成長期が始まった。この融資はインフレ率より金利が低い低利融資であった。

この成長の牽引役となったのが通産省、大蔵省であった。通産省産業資金課長からの情報をもとに、大蔵省が予算をつける。矢野俊比古氏は通産省産業資金課長を経て、基礎産業局長になった。基礎産業局長になった1974年、鉄鋼業の生産量は頂点に達した。ここで、矢野局長は、2つの選択肢があったと思われる。業界の増産体制の加速か、ストップか、の2択である。本オーラルは今回その点について考察する。

2.通産省と大蔵省

通商産業省産業資金課長の情報をもとに、大蔵省主計官は、産業競争力に関わるプロジェクトに、必要資金を、予算と投融資ミックス(低金利政府系金融、高金利銀行融資、民間投資)を考慮し、査定を行った[3]。査定によって債務返済負担が変わるため、経営者の挑戦意欲に大きな影響を与えた[4]

産業資金課長の職務は矢野氏オーラル第26回によると「通商産業省の原課は補助金、出資となると一般会計から要求する。金利が付いてもいいような事業、融資は日本開発銀行などから借りる。通産省の産業資金課がまとめて大蔵省に持っていく。銀行はより高い金利であるが、財投がついた段階で融資を行う。日本開発銀行がいいのなら、政府がいいと言っていれば、俺も安心だとやった。」である[5]

3.基礎産業局長

矢野氏は産業資金課長から官房審議官などを経て、基礎産業局長1974- 1976年に就任し、企業経営者と直接連携し、産業政策のリーダーシップをとれるようになった。鉄鋼業界、石油業界などの経営者をリードして日本産業の経営を主導する立場である。

基礎産業局長として矢野氏オーラル第30回~35回は、中曽根康弘通産大臣との対応、鉄鋼凍結価格引き上げ状況、チッソ(株)日本開発銀行融資、新日鉄役員人事問題、平電炉対策の提案、鋼材価格引き上げの承認、レアメタル備蓄協会への出資、鉄鋼設備投資調整の流れ、神戸製鋼加古川3号炉、川崎製鉄(株)千葉6号炉に係わる港湾使用拡大、石油化学業界エチレン設備投資調整の流れ、石油化学業界在庫適正化ガイドライン構想(化学肥料)、石油価格受入の攻防、洗剤値上げ、苛性ソーダ業界水銀法転換問題、ダウケミカル社のソーダ工業進出構想、化学肥料業界台湾輸出問題、アルコール業界価格凍結問題などを経て、通商産業局長就任した。

鉄鋼業界の生産量は12千万トン、矢野基礎産業局長のとき頂点となった。このとき、矢野局長が、鉄鋼設備投資調整を行っておれば、その後の業界の未来は大きく変わったと思われる。

鉄鋼業は、最新技術を追求した大規模設備と投融資における借入の比率の大きさが産業競争力と企業間の激烈な競争の原因となった。高い操業度でなければ利益が出ない。操業度を上げるために、最先端技術を追求、最有望市場の開拓を優先する。企業は最有望市場へ戦略を柔軟に変えうるように、同質な組織になっていく。同質な企業は棲み分けができないから猛烈な競争を繰り広げる。造船、自動車、石油化学、電機業界、建設業などにも見られ、日本産業の特徴との論が多い。

矢野オーラルでは、特に鉄鋼業界において、別の視点が見られる。競争による二重投資を避けるために下記の鉄鋼業界内の協調が行われた。以下、矢野オーラル第30回である。伊藤「今日は基礎産業局長のお話です。〔昭和49年(1974)6月就任〕基礎産業局長の基礎は何を指していますか。」矢野「基礎産業という概念で、言えば、鉄鋼、石油です。石油化学はありますが、本来は石油です。要するに日本の基礎資材という意味です。」

私が〔新日鉄㈱副社長〕斉藤英四郎さんから「省として返事をしてください[6]」と言われたら、大臣のところへ行って説明する[7]。「よかろう」と言われたら、帰ってきてから、これは上げていくべきか、大臣の判断かというのは自分の判断です[8]。鉄鋼の仕事は私に任されている[9]。」

「鉄鋼業務課長には取締役は〔話をしても〕いいとか、部長ならいいとか(中略)鉄鋼業界にはルールがあって、局長に会えるのは常務以上になっている。それを飛び越して、例えば平取締役が会うというようなことは〔できない〕。役所から叱られるのではないんです。」

「永野〔重雄〕さんとか稲山〔嘉寛〕さんは偉い人ですよね。特に、稲山さんは私ども商工省の大先輩です。だから、やっぱりそこと話すときに〔呼び付けるのはいかがなものか〕と思っていた。(中略)鉄鋼業界の申し合わせというのは、いわゆる五社〔新日本製鉄・川崎製鉄・日本鋼管・住友金属・神戸製鋼〕だと思います(中略)平電炉メーカーは中小企業が多いんですね。(中略)それはみんな社長さんが来ます」

清家「新日鉄は、他の高炉四社とある程度談合ではないですが、このぐらいで通産のOKをもらうよという打ち合わせはあったでしょうね」「それはあったと思います。」

「新日鉄が圧倒的なリーダーだということは認識していますけど。独禁法もありますから、露骨にはできないと思いますが、新日鉄も心得て、あらかじめ新日鉄のデータを流して意見を聞くぐらいなやり方をすると思います。みんな集まってしまうと完全な談合ですが、一対一でしゃべるのはいいんですから。」「在庫調整と称して実際には生産調整をやったのですが、(中略)公取も通産法設置法に基づくと言われれば、それはしょうがないな。だけど、それは談合のもとになりかねない。だから俺たちは反対だと言う。じゃあ、談合のもとにならなければいいでしょう。〔談合にならないように〕チェックしてくださいと言えば、向こう(公取)は言いようがないんですよ。」。また「鉄鋼業界にはルールがあって、局長に会えるのは[五社]の常務以上になっている。」。このように鉄鋼業界では、通商産業省基礎産業局長による業界協調連携が公取との調整のもと成立していた事例である。「天下りの場合はやっぱり合意ですからね。(中略)次官が神戸製鋼を考えた。結局はどうも〔うまくいかない〕。(中略)会社としては天下りの断りをするには、「当社の社風には合いません」と」言うのです。(中略)あの人は〔嫌だ〕とは言えないわけです。だから、社風に合わないというのが大概の断りです。」

第31回オーラル、「私たちの時代は、官房審議官くらいまでは、全くないとは言いませんが、大体芸者さんが入らない接待でした。局長になって呼ばれると芸者さんが入る、いわゆる料亭という世界になるわけです。」

4.鉄鋼の設備投資調整

鉄鋼業界では、昭和499月の産構審の意見具申「産業構造の方向に」における添付資料に鉄鋼の長期需給見直しが説明され、昭和55年需要16200万トン、昭和6017800万トンと明。・記された。昭和48年度の生産量12000万トンを遥かに凌ぐ見直しで、先行きを強気に読む関西メーカー[10]から高炉建設の声が上がった[11]。鉄鋼の高炉建設については、影響が大きいので官民協調して調整に当たるとされていた[12]

30回オーラル「鉄鋼の設備投資調整は明らかに河本さん〔通産大臣昭和49年(1974)12月9日~51年(1976)12月〕に呼ばれました。国会の質疑があったあと、しばらくして河本さんにちょっと来てくれと言われて、「設備投資調整なんて必要か」と。要するに、こんな制度はやめたらどうだというサジェスチョンですね」

31回オーラル「企業サイドとしては、少なくとも私が見る限り、やっぱり鉄鋼は伸ばしたいという意識がありました。私のときが最高でしょう、48年度に12千万トン、49年度が11千万トンぐらい」

31回オーラル「韓国も、ちょうど私の時は第1基が完成するぐらいでした。」

第31回オーラル「私が関連したときの設備投資調整で言うと、稲山さんはどちらかというと、いわゆる関西三社(当時の住金、川鉄、神戸製鋼)の動きには非常に批判的でしたが、中国とか韓国の拡大にはわりと前向きに対応しておられた。逆に言うと、そういうところにあるのだから、あまりこっちでやらないほうがいいと思われた。私には、鉄鋼連盟の会長さんでもありますので、「どうも関西の三社には困ったものですよ」という言い方をされました。」

31回オーラル「その当時ですから、次官多いんですよね。新日鉄に徳永、日本鋼管に松尾〔金蔵〕、住金は熊谷〔典文〕さんの前で、石井秀平さんで、これは局長ではなく部長級でしたそれから川鉄に川出、(中略)月に1回、通産出身の鉄鋼の役員が集まる。そこに局長も来てくれと言われた。」

結果として、住友金属工業、神戸製鋼、川崎製鉄の順に着工された。第31回オーラル「結局、設備投資調整は私の代で終わってしまいました。」

5.レアメタル

特に、現在に繋がるレアメタルについて、レアメタル備蓄協会[13]への出資についてのオーラルは、鉄鋼業界の消費側からの行政として始まった。以下矢野氏オーラル第31回。

「レアメタルは本来は鉱山です。ただ鉄鋼は消費者の立場なんですね。(中略)これは特殊鋼を作るときの材料ですから、消費として確保したいというのが特殊鋼業界です。レアメタル備蓄協会というのは、できたレアメタルを消費をするための資材として、そこで備蓄しましょうという感覚です。」「資源エネルギー庁が、そんな必要ないよ、俺のほうでちゃんと備蓄をやる。自分たちが生産・輸入したものを備蓄。心配ないだろう、と言ってくれれば、それでもいいんですよね。ところが、鉄鋼グループとしてお金を出してレアメタルの備蓄協会を作っているんですね。(中略)要するに、備蓄協会を作るために鉱山からお金が出るかといったら、ほとんど出ないですよ、やっぱり資本力の差ですよね。」

レアメタルについて、生産についての視点が欠けていたことが、現在の中国依存の遠因となった。

6.結語

高度成長の牽引役となった通産省において、矢野俊比古氏は通産省産業資金課長を経て、基礎産業局長になった。基礎産業局長になった1974年、鉄鋼業の生産量は頂点に達した。ここで、矢野局長は、2つの選択肢があった。業界の増産体制の加速か、ストップか、の2択であった。その結果は業界の増産体制を止められなかった。

本オーラルは今回その点についてのデータとなった。過去の高度成長期の鉄鋼業の設備投資調整の成否が、その後の日本経済に大きな影響を与えた点について、矢野オーラルで、さらに検討が加えられると思われ、今後オーラルの内容を読み解き、研究を継続したいと考えている。また高度成長期の行動が、現在に影響を与えているといったレアメタルの事例などについても資料の公開を行った。

 

 

 

 



[1] 東京出身、192411日生、1948年東京大学法学部政治学科卒、同年商工省入省、通商産業省産業資金課長など、基礎産業局長、産業政策局長から、1980年通商産業事務次官に就任。19816月に退官し、1983年第13回参議院議員。

[2] オーラル第1回20091112日~422012127日×2時間聴取時間84時間を行った(伊藤隆東京大学名誉教授・近現代史と清家の2人で行い、国会図書館憲政資料室に保存)。

[3] 元国務大臣・元大蔵省事務次官相沢英之氏に対し、オーラル第1回200958日~342012611日まで34回×2時間=聴取時間68時間。

[4] 矢野俊比古(1982)『日本株式会社の反省 わが国産業の新しい活路』日本工業新聞社

[5] 相沢氏オーラルによると、昭和20年代主計局が予算、財投、銀行融資を全部掌握していた。主計官は、国家プロジェクトに関して、予算、財政投融資、銀行融資を使い分けていた。なお銀行の短期金利は日銀が担当し、長期金利は大蔵省が担当した。

[6] 第31回オーラル「いきなり斉藤さんが私に面会に見えた。あれは四時くらいに見えたと思います。だからアポイントは三時ぐらいにあったんでしょうか。それでいきなり話が出た。下から、鉄鋼業務課長を通じてこういう動きがありますという情報は何もなかった。ですから、私は鉄鋼業務課長も局長室に呼んでいません。一対一の話だった。そのときに彼が言うのは、「値上げの幅は、一万円台、五桁、それから九千円台と七千円台」。そんなことはうちの中では詰めていないわけです。(中略)「やっぱり、五桁はまずいでしょうね。と言って、四桁としたときに下のほうでは、それでもというご意見だけれども、まあできるだけ余裕を持ったほうがいいでしょう。それなら九千円台ですな」と、僕は何の知識もなしにぽんと返したんですよ。そうしたら、斉藤さんが「いやもう、それで結構です。局長にそのご了承をいただいたら結構です」と。

[7] 第31回オーラル「私からどうしても大臣にすぐ会いたいと伝えた。(中略)大臣が、「それじゃこれぐらい経ったら来い。そうすれば、委員会の出席をちょっとずらして控室で会おう」というので、控室で会って、私が話しました。もう大臣も「君の判断で結構」と言う。即決ですよ。」

[8] 第31回オーラル「斉藤さんに、大臣の了解をとったから、それで作業してくれと言った。」

[9] 第31回オーラル「帰ってから鉄鋼業務課長に話をした。それから小松〔勇五郎〕次官に話に行った。(中略)「鉄鋼が自動車と交渉するときには、初めに「通産省のご了承は、河本大臣までいただいています」とやるんですよ。」(中略)わざわざ斉藤さんがいきなり飛んできた。鉄鋼業界もそういう

 

[10] 住友金属工業㈱熊谷典文社長、鹿島3号炉の建設を求める。川崎製鉄㈱藤本一郎社長が千葉6号炉、神戸製鋼所㈱鈴木博章社長が加古川3号炉の建設を求めた。

[11] 31回オーラル「ある程度の規模を持つ企業は、みんな高炉メーカーに転換したいわけです。」

[12] 談合を招きやすいと公正取引委員会が問題視していたが、昭和416月通産省山本重信事務次官と公正取引委員会竹中喜満太事務局長との間で覚書が結ばれ、鉄鋼設備(高炉)についての投資調整のための官民の協議は独禁法上問題とならないことが確認された。

[13] 昭和51年度予算で、レアメタル備蓄協会 (仮称) の基金について