インドと中国を比較する
「ものづくりの現場」
久保田 洋志氏・広島工業大学工学部教授
「シー・モア」「シンク・モア」に反応するインド人
清家 彰敏氏・富山大学経済学部・大学院MBA教授
中国人には「ご存知のように」で気持ちをつかむ
清家 「BRICs」と呼ばれる新興諸国の中でも特に経済発展のめざましい中国に、四万社とも五万社とも数えられる多くの日本企業が進出しています。一方で中国についてはチャイナリスクということも言われ、同じように高成長を続け中国に次ぐ巨大市場としてインドに目を向ける企業も増えてきました。品質管理(TQM)、設備管理(TPM)が専門でデミング賞委員会の委員や、QCサークル本部幹事なども務められている久保田先生は、日系の進出企業をはじめタタグループなどのインド企業に対しても品質管理の指導をされておられて、インド人の考え方やビジネスのやり方にも詳しい。インドへ進出していく企業が富山県企業の中にも今後増えていくと思われますが、まずインドの現状をお話いただけますか。
久保田 インドは一九七九年に経済開放した中国に遅れること、十二年後の一九九一年から経済の自由化がスタートしました。国営企業を民営化し、市場が開放されるなかで、今まで輸入していたものを国内で生産するという民間主導の投資活動が活発化してきました。先にニッチ市場で先行し、さらに海外から技術を導入して自分たちのものにしていく。まず内需に対応し、さらに一部輸出にもっていくというパターンです。
清家 技術を導入する場合、外資企業に任せると言うやり方の中国とは違うのですね。
久保田 インドの場合、技術を単にコピーしたり、そのまま導入するということではない。自分たちで使いこなしながら、自分たちが納得した技術を広げていこうという意識が強いですね。最近までインドには国産の乗用車がなかったのですが、タタ自動車は今の自分たちの技術で乗用車を作れないはずがないといってチャレンジしたわけです。
ただ、インドはもともと社会主義でしたから、土地は今も全て国からのリースです。リースしてもらうには、地域住民との関係をよくしておかないといけない。用地を準備して公社をつくり、農地を整備して溜め池をつくる。健康の問題や水の問題も解決する。それらをうまくやらないとリースさせてもらえません。
清家 中国では中央政府や地方政府が絶大な権力を発揮して企業を誘致したり工業団地の開発を進めますが、インドの場合は住民の説得に時間がかかるようですね。
久保田 タタ自動車が「ナノ」を生産するため当初予定していた西ベンガル州の工場が地元の反対にあって建設断念を余儀なくされたことがありました。反対運動を煽動する野党の政治家がいたからですが、結局、住民たちは働き場がなくなるわけですから、今回の選挙では工場の建設を反対した人たちは票を落としたようです。民主主義の国だからこういうことも起きるわけです。
インドは全員参加型、中国は専門化集団
清家 企業経営における経営者の人に対する考え方も、中国とインドではかなり違うように思います。中国では欧米で教育を受けた層、あるいは大学を出た層と、それ以外とではっきり二分化されています。ワーカーは単純労働にしても改善にしても言われなければやりません。
久保田 企業が成功するには金、技術、人という条件がありますが、インドの経営者の多くは人がいちばん大事だと考えています。人材を育成して技術を習得させ、全体として組織を望ましい方向にしていこうとします。育てる対象はワーカー、スタッフ両方ともです。中国では人に投資することはありませんね。よく中国人は個人主義であり欧米人に近いと言われますが、間に合わなかったら人を替えればいい、という感じです。
清家 工場現場の中でも活発な議論が行われるのですか。
久保田 お客さんの品質やコストに対する要求は非常に厳しいので、そうしないと競争に勝てない。少なくともデミング賞とかTPMに取り組んでいる企業は、人が育って活性化することによって可能性を高めると考えています。世界中からいいものを集めてくる。当然、技術もそれに伴って入ってくる。いかに設備をうまく使い、品質のいいものをつくるかとなると日本的なやり方を導入するパターンが多い。
清家 日本では業務や作業の改善提案をQC活動の中で行っていく場合、例えばQC(品質管理)の七つ道具といわれる代表的な技法がありますが、こうした活動に対する抵抗感はありませんか。
久保田 それはないように感じます。例えば、自動車用のガラスメーカーの旭インディア硝子という会社は日本の旭硝子の技術を取り入れているのですが、日本から設備を買わずに自分たちの仕様で設備を発注しています。ガラスを運ぶときも日本でのやり方だと割れてしまうので、インドの道路事情に合った梱包や運送形態にするというようにいろいろ工夫してやっています。
清家 欧米のメーカーはどの国でもそうですが、勝手に仕様を変えられたくないので、なるべくブラックボックスにしようとします。コンピュータソフトもソースコードを公開しません。メンテナンスも自分の会社の駐在員にやらせるようにする。だから、欧米とリンケージできる一部の企業を除き、その輪に入れないという感じがありますね。
久保田 インド人は単なるコピーを嫌います。時間はかかるけど、確実に自分のものにしていきます。TQM(品質管理)、TPM(設備管理)、TPS(トヨタ生産方式)は3Tと呼ばれ、日本発の代表的なマネジメントシステムですが、それぞれが自覚して皆で知恵を出しながら改善を重ねるというやり方ですから、皆を教育しないといけない。全員参加でやっていると、従業員は問題意識、品質意識をもつようになり、スキルも上がります。ところが、中国では問題解決のための専門家集団を作ってそこにやらせますので、全従業が問題意識、品質意識を共有することがないのです。
欧米、日本からの「いいとこどり」
清家 インドと中国の比較で言うと、中国の経営者とか政府の人は意外と勉強していないのですね。欧米企業と日本企業を競争させて比べるだけなので、自分では勉強しなくていいわけです。表面的な勉強だから思い込みも激しい。当然わかっているだろうと思っていることがわかっていなかったりして、そこでトラブルになったりすることが往々にしてあります。日本の場合、戦略を立てるにしてもボトムアップで下から積み上げて年度計画にしていきますが、中国の場合は欧米流なので上から行きます。インドはどちらですか。
久保田 インドも基本的にはトップダウンですが、実際に展開するときに階層間のすり合わせをやります。そういう意味で一部ボトムアップとの融合を図る進め方です。そこが日本流と合っているところです。
しかもインドの人は勉強家です。インド工科大学も頭脳立国インドを目指してつくられました。そういう風土があるから、タタ製鉄で品質管理の指導に行っても五時で終わるはずが八時まで付き合わされるというようにものすごく熱心です。
清家 日本と欧米のハイブリッドということですか。
久保田 そうだと思います。タタをみていても、技術は欧米から、ITは米国から、マネジメント技術は日本から、そして戦略やM&Aは自分たちでやっていく。「いいとこどり」のスタンスですね。
清家 「いいとこどり」という点では中国もそういうところがありますね。設備はヨーロッパの国々に競争させて、いいものを買う。経営はアメリカモデルでやり、日本については工場現場を学ぶという感じです。
久保田 品質経営についていうと、米国流はあくまでも結果を重視するのに対し、日本はプロセスを重視します。インド企業はデミング賞に興味がありますから、日本的なやり方でやりたい。目標に対してどういう手段で達成するかを追求させ、PDCAを回します。
インドのトップは現場を熟知する
清家 経営の意思決定のスピードは、中国は非常に速い。経営層がものすごく力をもっていて、欧米の手法を導入を徹底してやります。金が集まるのも速いし、設備が入るのも速い。専門家チームを作って欧米に派遣して学ばせ、実際の仕事は下の連中に徹底してやらせます。
久保田 高速道路をつくるとか、トンネルを掘るとなると、中国はアセスメントがいらないからものすごく速くやれます。日本のように現地に合わせて杭を変えるということもなく、どこでも標準的な工法でやります。インドは地元との関係がありますから、そこまで速くできません。
しかし、企業は厳しい競争の中でやっていますから、企業レベルでの意思決定は速い。基本的なことはトップが決め、人事も大胆です。資金的な手当てにも思い切ってチャレンジします。そうした意思決定の速い経営は、日本よりもはるかに欧米に近いでしょう。特徴的なのはトップが現場をよく知っていることです。タタ自動車では工場長自らが現場を回っています。現実を知らないでマネジメントはできないという考え方です。
清家 その点で、インドの方が日本と合いそうですね。
久保田 戦略とか戦術、M&Aではインドの方が日本よりすぐれているかもしれません。経営者は戦略の立て方がものすごく上手です。まずビジョンを作り、次にミッション、そしてバリュー。必ずこの三点セットがあって、それに対して戦略をとる。その中にM&Aも入ります。論理的な展開でもそうです。中国の企業家と比べて、インドの企業家は国際ビジネスの取り扱いに慣れている。ただ、トップの考え方に手足が付いていっていない、つまりまだまだ下まで徹底して実践できていないところが今のレベルです。それを意識しているからこそ彼らは日本的やり方を学ぶのです。
インド人は「印僑」といわれるほどですから、ものすごく商売はうまい。今度、タタ製鉄は新日鐡と技術提携して高炉からの一貫製鉄所をつくるのですが、出資比率は五一%対四九%でタタがマジョリティーを持ちます。クボタと一緒に行う道路建設でもタタが五一%を押さえています。
清家 下があまり考えていないから上が速いスピードでやれるという面もあります。下が考え出すと、上が好きなようにできなくなる。日本の場合もそれでスピードがどんどん遅くなっていったという意見もあります。中国は下の方には経営情報を全く教えません。そうするといつまでも速く動ける。
それに日本人やドイツ人は例えばエンジニアとして一生を工場で送ることに余り抵抗がありませんが、中国人には一生を工場だけで過ごすことには抵抗があって、今は工場にいるけど、ここにいたくないという意識がいつもあります。現場に限らず、中国企業の幹部や技術者を対象に社内講師の育成に行っても、次に行ったときにはもう辞めていたりします。勤労意識が違う。
インドでは、勉強して実力をつけていけば工場現場の中からでもキャリアアップしていける可能性はあるんですか。
久保田 現場力というのはやはり日本が特別強いと思います。インドはそこまで行かないので、ある程度トップが決めて動機付けします。だから現場の意見を聞いて民主的に決めるということはありませんが、頑張れば頑張ったなりに報われるし現場の監督、職長くらいにはなれるチャンスはあります。
清家 中国人は企業に対するロイヤリティよりも、学閥とか横のネットワークを非常に重視します。現場の人の教育はインド人がするのですか。
久保田 タタのように社内に教育施設をもち、コースやカリキュラムを作っているところもあります。そこでも私たちが呼ばれてスタッフを教育し、彼らが現場へ行って現場にやらせています。日本で学んだことをあちこちで指導することにやり甲斐を感じているから、すぐに辞めて行くというのはあまりありません。スタッフの場合、よりよいところへ移ったりしますが、あくまで個人的なレベルの行動です。
だから、組織として会社に対するロイヤリティは全体として高いと思います。スタッフの定着率はあまりよくないけれど、ワーカーは現地の人であり、そこに家もあるし家族もいるから、割と定着率が高い。いい会社であるほど生活が保障され、伸びている会社であればそれだけでモチベーションが高い。その意味で、インド人は工場労働者としての人生に満足できると思います。「活性化」という言葉があるのですから、彼らにもいきいき働きたい、成長したいという気持ちがあって、和の精神とか自己実現という言葉が通用します。
企業が学校をつくる
清家 中国では日本と異なり男性と女性で働く職場や地位に関して差はありませんが、インドではどうですか。
久保田 業種による違いはありますが、例えば国内でも大手のテックマンという従業員四万人規模のIT企業がありますが、ここではゼネラルマネージャーも含め幹部に女性がたくさんいます。女性のドクターも多い。女性の進学率も次第に高くなって知恵で勝負するところ、専門的なところで活躍する女性が目立ってきていると思います。製造業の分野ではまだ少ないかもしれませんが、タタ自動車では、本来の秘書業務をやっていたのは女性でしたし、教育訓練や福祉スタッフ、試験評価部門にも女性がいました。開発のマネジメントや技術講演会には女性も参加していましたから、男女差にそれほど開きがあるとは感じませんでした。
インド中西部のムンバイから百五十㌔のところにプネと言う町がありますが、今この郊外に中国の規模をはるかに超えるようなITパークが建設されていますけど、こうしたきれいなところだと安心して働けるし、住むのにもいい。きれいなところで働きたいと思うのは、どの国の女性でも思いは同じでしょう。
業種や地域の違いはあれ、教育環境の向上も女性の社会進出が盛んになってきたという背景もあると思います。インドで特徴的なのは、企業には社会的責任として学校をつくることが気風としてあって、学校へ行く子どもが増えています。企業が学校をつくるのは一つは治安の維持のため、もう一つは将来の労働力のためです。インド工科大学(IIT)もタタ財団が資金を出していますし、タタに限らず企業には公益性の意識は強いのではないでしょうか。
小学校ではまず英語教育をし、高学年になってヒンズー語を教えます。インドでは英語ができるというのは必須条件なので、エリートだけでなく、タクシー運転手とかホテルマンも皆英語を話します。そうした英語力の高さを生かしてITで世界的評価を高めたわけで、IT企業は女性の職場進出でもIT産業は大きな役割を果たしたと言えます。
それと、インドの場合、植民地時代があり、生活の中で英語をしゃべる人が多いから自然と皆英語を話すようになります。地理的にも欧米の時間帯の中間にあるなど、先進国の企業にとってビジネス上のメリットが多い。特にIT企業にとって欧米相手に英語で話が通じるから、向こうでプログラム開発をしている技術者が休む時間にインドの技術者がそれを引き継ぐという、二十四時間体制で対応できるのが強みでしょう。
よく質問されるカースト制度に関しても、ITの職場ではほとんど影響がないし、製造の現場でも最初、指導に行ったころはカースト制の壁があってむずかしいところもありましたが、現場がちゃんとしないと品質的にいろいろ問題を起こしますから、昔ほどカースト制は表に出なくなりました。上の方もあまりカースト制を意識していません。学校もそうだし、選挙で最下層のカーストがどんどん議員に選ばれて、カースト制が崩れつつあります。
一人っ子政策のつけが来る
清家 英語教育は中国でも非常に熱心で、幼稚園でも英語を教えています。教育ママというか、儒教的な意味での熱心さがあります。そうはいっても学費がすごく高いので、いい学校へ行くにはお金がかかる。それでも大学を出ても就職できないことを覚悟のうえで親はいい大学へ進学させようとします。一部のエリート層は非常に恵まれていますが、所得によって将来受けられる教育に格差が出てきていますね。インドの場合はどうでしょう。
久保田 親というより国や地方がサポートする感じです。誰かが有名大学に入ると村あげて応援し、社会人として成功した時、彼らは大学へ行かせてくれた家族に感謝することはもちろん地域社会に対しても恩返しすることを当然のように行うという風土があります。
中国はこれから一人っ子政策のつけが来ると思います。最近、中国のアモイにできた新しい大学を見に行ったら、先生は一生懸命講義をしているのに、教室の後ろの方の学生は遊んでいるのです。勉強はしないのに、汚い仕事は嫌、いい仕事をしたいという。こういう人を採用したら企業は最悪です。一方、インドは人口が増えても抑制策をとっていません。もともと民主化が進んでいるし、インドそのものが成長過程にありますから、インドの方が安定していくかかもしれません。
進出の際に注意すること
清家 日本企業が中国へ進出する場合、トップと仲介者とスタッフを重点に置いて、工場労働者にあまり重点を置かない方がむしろ成功している場合が多いように感じます。誘致する側、つまり地方政府がОKといっているなら、現地の住民のことはほとんど考えなくていい。
契約に対する意識も違いますね。日本人は事前に慎重に調べますけど、中国人はあまり調べないでぱっと契約するから、進出条件とビジネス条件が違って後でトラブルになったりします。中国の法律はOECDでやっているものをそのままもってきます。細則とか事例がないので、人治でやっている部分がかなりあります。税法なども頻繁に変わります。
久保田 インドはヨーロッパ的な契約社会を踏襲していますから、最初の段階で特許の範囲で抑えておくとかきっちり詰めておく必要があります。ただし、インドも経済が開放されてから、いろいろぎくしゃくしながら再構築しているので、税法が変わったりしますね。この点でまだ途上にあります。
インドでは国との関係が大事です。土地をリースしないといけないし、住民ともうまくやっていかないといけないので、そういう意味のサポートやサジェスチョンが必要になります。インドはまだ生活環境が整っていないし、日本人に合う食べ物も限られますから、赴任するときに家族で行くのは大変かもしれません。どこかとアライアンスを組んで、その中でインド人を使いながら、場合によってはかなりの権限を与えながら共存していくという感じがいいのではないでしょうか。
清家 サプライチェーンでの取引は日本のような長期的な系列取引の傾向はありますか。
久保田 ある程度長い付き合いをするなかで共存共栄していこうというスタンスはあります。ビジネスとしていい関係ならお互いに大切にしていきますが、相手が悪いと思ったら切ります。日本のように情に流されることはありません。いい仕事が来れば、自分たちも力がついてくるのだから、そういう意味でほとんどがウィン・ウィンの関係です。
清家 地域的に工場立地するならここがおすすめというのはありますか。
久保田 インドは生産基地と大きな市場という二つの面をもっています。生産基地についてはマルチスズキが成功例で、部品メーカーもたくさん出てビジネスが成り立っています。生産基地であり、同時に市場になっている。工業団地のようにいろんな企業が集積している地域を選んで出るのであれば、それほど問題は起こりません。そういうところはインフラや治安の問題、生活の面からいって条件が整備されています。ロジスティクスも整っているし、地元との交流も盛んです。単独で行くのはしんどいので、やはりグループでアライアンスを組みながらやるのがいいと思います。ただし、ネックは電力事情が悪く、停電はしょっちゅうです。成長に対してインフラがついていっていないのです。
日本に足りないハングリー精神
清家 海外へ出る場合、良いパートナーを探すことになるのですが、本当に良いパートナーと長期的な関係をつくるのはむずかしいですね。
久保田 インド人は自分たちのビジネスのパートナーとして適切かどうか、見ていると思います。ビジネスの構造はどんどん変わっていきますから、その都度考え、評価していきます。もちろん競争はさせますが、それは入札のような競争でなくて、育てていくという意味の競争です。駄目だったらマネジメントを替えますから、結構プレッシャーです。
清家 サムスンやLG電子、現代自動車、ポスコ、斗山重工業など韓国企業のインド進出が目立っています。日本企業とどこに違いがあると思われますか。
久保田 韓国は自国の市場が小さいうえ、「ここで負けたら後がない」という気持ちが強いから最初から世界戦略をとっています。日本は小さく成功したら次第に大きくしていくのに対し、韓国は集中投資します。兵役があることも違います。韓国人は海外へ出て仕事することを兵役に比べたら「まし」だといいます。だから進出先には家族連れで行ってマネジメントをします。日本のように腰かけではありません。イメージづくりもうまい。だけど、品質管理についてはやはりメード・イン・ジャパンの評価は高いです。
清家 韓国は先を行く欧米と日本、そして後から追ってくる中国の間でサンドイッチ状態にあるから、サムスンなどは中国やインドに対しても先に進出となるわけでしょうね。その場合、私はこの中国、インドの二つの国はかなり違うということをどこまで勉強するかが大事だと思うんです。世界はどんどん変化しています。三年後、五年後にはまったく環境が変わっていると考えた方がいいかもしれません。
久保田 中国、インド、韓国に共通しているのは、豊かになりたいという健全なハングリー精神があることです。そのやり方とか社会構造は違いますから、その違いがこれからいろいろ表面化してくるのではないかと思います。
清家 日本は豊かになろうと思っていない。そこが一番の問題です。企業の方からよく耳にするのは、新入社員は「よく働くのだけど、上に言われて働くだけ」と聞かされることが多い。学生を見ていても自分からどんどん変えていこうとか、何かに挑戦しようという気概が足りないと感じます。
久保田 大学教育はあてにならないし、企業が採用した人を鍛えていくしかないのですね。大学へ行っただけでは通用しないとなると、大学も変わらざるをえないと思います。インド人はプライドが高いから、「シー・モア(もっとみろ)」「シンク・モア(もっと考えろ)」と言うと反応してくれます。今の日本には「モア」の概念がありません。
清家 プライドが高いのは中国人も同じですね。中国に行って指導するとき、彼らに「ご存知のように」というとしっかり聞いてくれます(笑)。有難うございました。
0 件のコメント:
コメントを投稿