2011年7月5日火曜日

サイバースペースの中にロボットが次々に登場します

自分の後継ぎが子供的なイメージになるというのは、どういう感じかを説明したいと思います。
 アニメ「美女と野獣」──で家具が踊りだします。周りにいる種々の家具は、人間が魔法をかけられてこうなったという設定で、イメージ的にはペットと子供の中間みたいなものがたくさんいます。ロボット社会の未来をイメージするには、これが一番いいと思います。これが楽しいと感じるかどうかは、想像力の問題だろうと思います。
 このもうひとつのロボットがペットでもあり、自分の相談相手でもあります。そして最後に魔法が解けるとすべて人間に戻る。そうすると子供が成長して人間になるかもしれない。その点では、現在はこのあたりまで進んでいます。
 進んでいるといっても科学が進んでいるのではなく、人間の意識です。現在はどんなロボットでもつくれる時代になっていますが、いちばん変わらないのは人間です。自分のサポートをして欲しいとか、若返りをしたいという意識とか、そのときにどういうビジネスが始まるかといったイメージができないと科学が進んでもダメです。若返りたい、お手伝いのロボットが欲しいという意識のほうにいま、社会はなってきています。その点については皆の合意が得られます。そして、ここになってくると、「ペットが果して、どういう役割を自分たちの生活の中で持つことができるか」についてはまだ合意がないです。

 いろいろなペットがロボットとして登場するようになると、そこには多様な機能が入ってきます。相談相手とか、話し相手とか。そうなってくると遺言状を残すより、自分のペットロボットに遺言を覚えさせたほうがいい。遺言状にああだ、こうだと書くより、仏壇をロボットにしてしまって、仏壇に自分のノウハウを全部入れてしまう。たとえば財産分与の際は必ず自分=仏壇ロボットが立ち合うことになります。そして作家だったら、自分の著作の著作権管理を息子にやらせるよりはロボットにやらせるほうがいい、ということになります。
 有名人ロボットができれば、有名人は死んだ後も活躍できるんです。オードリー・ヘップバーンは亡くなりましたが、清純な女性というイメージから彼女の画像は今でも商品価値がものすごくあります。最近もCMで大活躍しています。その彼女の画像をロボット機能を持ったものがコントロールすれば、ヘップバーンは生前と同じように活動できます。まさに、永遠の女性になれるのです。人間が死んだかどうかということは、身近な人以外には関係ないんです。
 素晴らしい能力を持った俳優が自分の画像をロボットに管理させれば、自分は300年間でも俳優として機能できます。いまは優れたCGも使えます。自分の画像を最高に美しい状態に残すためのロボットをつくればいいんです。
 僕の友人にもCGの研究をしている人が大勢います。以前、バーチャル・アイドルというのがありました。伊達杏子という名前でした。それをつくった人を知っていますが、どんなにうまくつくっても本物の女の子にはかないません。女の子にはその人特有のアンバランスの美があります。バーチャルで理想的な表情をつくり、理想的な会話をさせても可愛くない。もうひとつ、もう一歩可愛くない。そのもう一歩が実際の人間が持っている魅力なんです。
 実際に持っている魅力を画像に残せるし、CGも残せます。それとロボット機能がうまく合体すれば、1,000年間女優をすることも可能です。自分は死ぬけれど、やったことを芸術として自分を残すことができます。
 ここまでくると最後は、テレビやインターネットという2つの場で見ていると、誰が死んでいるのか、誰が生きているか、わからない時代がきます。そして、こちら側の世界がどんどん大きくなっています。インターネットと画像がくっつく時代になってくると、いま自分が画像の前で会話をしている相手が生きているか、死んでいるかは関係がなくなります。
 場合によってはダーウィンやニュートンを再現することもできます。ダーウィンやニュートンを再現したような後継ぎロボットです。それができれば教育効果はすごく上がると思います。魅力のある、優れた経済学者の後継ぎをつくろうと思えばつくれます。つまり、ある一定の画像と一定の知識と一定のコンテンツがきちんと残っている人間ならば、それを再現することができます。
 そして、リアルな世界からインターネットの世界が大きくなってくると、その境目がわからなくなってきます。
 そうした時代に向かった場合、経済はどうなるのか。
 日本はいま、子供の数がどんどん減っていますが、その時代になると子供が減っても関係ないかもしれません。
 たとえば1万人コピーするのも可能です。これが数千万台のコピーとなってくるとグローバル・スタンダードになってしまう。そうするとコピーを輸出して儲けようという話になる。そうなると、輸出をして欲しいという人間が世界には意外といるんです。
 こんなことを含めて考えると、将来のビジネスはロボットをキーワードにした場合、政府の考えている未来とは、なんとなく違うのではないかと思います。要するに経済成長する場合についていろいろなことを考えているけれども、人間が若返るための経済成長、ペットという可愛い対象をたくさん増やすための経済成長、そして最後には、つくることができるかもしれない自分の後継ぎがグローバル・スタンダードになれば、世界が変わってしまうかもしれません。そういう時代の経済成長のイメージがそろそろ必要かもしれません。

 日本は世界で一番ロボット技術が進んでいます。世界にあるロボットの半分は日本製です。ペットロボットを売るためには可愛さが必要です。可愛さをつくるのはアニメであり、コミックです。日本にはアニメとコミックの進んだ文化があります。ポケモンが世界の子供たちに人気があるのは可愛いからです。ポケモンのいろいろなキャラクターがもし、本当の動物だったら世界中の子供が買うでしょう。日本はロボット技術においても、アニメにおいてもナンバーワンです。この2つで実現が可能ではないかと思います。
 
 ロボット経済では、いくつかの原則があります。

 ある意味で、自分のロボット、自分のクローンを残せない人は旧人類であり、自分のクローンをインターネットの中に大量につくっていく人が新人類です。新人類に入るか、どうか。これが1番目です。

 次に、新人類というのはサイバースペースの中に生き、たくさんの自分のクローンと一体になって存在する存在であるということ。つまり、サイバースペースの中に、自分(自分のロボット、自分のクローン)がたくさんいて、それと自分が提携する。さきほど申し上げた、講義はロボットがやって、質問に僕が答えるという形です。

 3番目は、サイバースペースの中にロボットが次々に登場します。その中はロボットが大量移民をする世界です。おそらくアメリカの西部開拓時代と同じような感覚になるのではないか。つまりアメリカ大陸に大量に移民が登場して、西部を開拓していったような時代になるのではないかと考えています。
 
そうすると4番目としては当然のことですが、サイバースペースの中では征服とか植民、場合によっては戦争という事態も起こりえます。

 そして5番目に、サイバースペースがどんどん大きくなって、リアルな世界より大きくなってしまいます。イギリスの経済よりもアメリカの経済が大きくなったように、です。そのうちに我々がふだん生活している経済は、サイバースペースの経済の一部になりうるのではないか。
 まだまだありますが、この先は皆さんも考えてください。

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