2011年9月9日金曜日

アジアの未来

 現在、日本と韓国、台湾、タイ、中国などとは徐々に日常生活、ビジネスのやり方が似通ってきている。
 日常生活についてみてみよう。1980年代以降、日本のドラマへの関心が高まった時期があった。山口百恵、高倉健の中国での人気はいまだに根強い。21世紀、コミック、アニメ、クールジャパン、「秋葉原オタク」、韓国ドラマ「韓流」といった文化的な広がりがアジアで見られる。幼くして日本のコミック、アニメ、ドラマで育った世代、「ドラえもん」、「ポケモン」、「一休さん」・・世代が大人になった。中国の30歳代は「東京ラブストーリー」で育った世代で国家をリードする。それがアジアの現在、近未来である。
 さて、現在アジアに広がりつつある日本型コンビニエンスストアチェーンはアジアの街並みと生活を変化させている。米国のコカコーラ、マクドナルド、ケンタッキーなどがハンバーガーなどの一食品の変化に留まるのに対して、日本型コンビニエンスストアは生活全体を変化させる。既にファミリーマートは日本国内より韓国、台湾、タイ他の店舗数が多い。セブンイレブン、ローソンのアジア展開も進展中である。これはアジアの生活の日本化から始まり、韓国化などが加わるといった近接文化の交流で、欧米人の生活より日本人の生活のほうが文化的に近縁であるからかもしれない。この結果、ビジネスは日本で成功したものがそのままアジアで成功する時代になりつつある。アジア人は同じような服装で、同じようなお店に入り、同じようなサービスを受け、同じような食品を食べ、商品に関心を持つ時代である。
 アジアの商品は欧米と似ているが少しアジア的である。まったく同じなのは生活インフラ、機器である。これは米国型である。アジアには今後5億戸の家が建つとの説もある。つい最近までアジアには家がほとんど無かった。というと不思議な顔をする人が多い。家はあった。しかしそれは家ではなかった。アジア的な家はあった。しかし、米国的な家、エアコン、家電、洋風家具、ガレージがある家ではなかった。現在アジアの人にとって、家の概念とは「米国型」の家である。それ以外は家であって実は家ではない。自動車を置くガレージがあって、エアコンと液晶テレビ、洗濯機、電子レンジ、イタリア家具それが家である。それ以外は家ではない。その結果、アジアで大建設ブームが起こる。新幹線、地下鉄、高速道路、都市計画、大規模火力発電所、原子力発電所はすべてこの米国型の家を皆が持ちたいための投資である。日立製作所、東芝、三菱重工業、石川島播磨などの企業の海外進出の成否はこの米国型の家への希求の動向にかかっている。
 アジアの近未来は生活と日本型、インフラは米国型と規定できるかもしれない。もちろんこれは持続可能、環境対応の中で実現する。その日本型生活と米国型インフラを繋ぐリンクピンとなるのが日本型コンビニエンスストア(以下コンビニと略)である。近未来、コンビニはアジア全体に数十万店以上展開するだろうと思われる。このコンビニには1店舗あたり2000~3000商品が並ぶ。商品数が限られるため、多くがトップブランドだけとなる。マイナーなメーカーは商品を陳列してもらえない。オールスター商品となり陳列してもらうためには激烈な競争が起こる。狭いスペースに並べるためには、空間的な工夫に加えて時間的な工夫がある。情報通信をフル活用して、時間帯ごとに商品を入れ替える。午前と午後、夜で顧客層が代われば商品を入れ替える。これは商品陳列のジャスト・イン・タイムである。必要な時に必要なものをの考えで、これにもっともかなう経営手法がトヨタ生産方式である。その結果、アジアは日本型生活+米国型インフラ+トヨタ生産方式が原理となる。
 トヨタ生産方式にしたがって、アジアの日常生活と都市インフラは徐々に変化していき、各国の国民の意識は一体化が進むと仮定すると、アジアの生活から企業行動までのビジネスはどのように変化するだろうか?その点について考えてみたい。
 さて、トヨタ生産方式はジャスト・イン・タイムと顧客志向である。顧客志向は顧客の問題解決(ソリューション)にきめ細かく対応できる意識と組織設計が基本である。経営者は顧客志向型企業統治を行う。顧客志向型企業統治を行い成功しているトヨタ自動車を分析すると、日常的に、顧客から従業員は行動のほとんどを多側面に直接・間接的に監視されている。お客の前では変な行動はできない。満足してもらうためには努力と訓練が必要である。このため、常に目標が明確になり、組織防衛的な行動は起こりがたい。
 お客のためにディーラーの営業マンは努力をし、営業マンのために自動車出荷担当者は努力する。このとき出荷担当者にとっては営業マンがお客である。このことは大変重要である。最終顧客は直接的に営業マンを監視するが、営業マンをお客と考えることで出荷担当者も間接的に最終顧客の監視を受けることになる。
 企業が誰のものかが曖昧になる結果、組織防衛が起こることが多いが、顧客の立場に立って行動することは、従業員個々の職務の成果に直結しており、馴れ合いが起こらない。トヨタ等の顧客による従業員の監視は、米国の企業における株主の監視より、はるかに個別で具体的であり、時としてより厳しいと思われる。これは日本人以外の顧客、例えば北京におけるイトーヨーカ堂においても成立していると思われる。
 この結果、トヨタ等の顧客指向型企業統治では短期的、機会主義的に行動して、反社会的な行動を起こす可能性は少なくなる。上記の原理は、顧客の製品、サービス、ソリューションに対する評価能力が高く、自立し、顧客の損得が明示されているときほど、うまく機能する。良い顧客は良い従業員を育てるのである。
 良い顧客、良い従業員の社会へ未来のアジアは向かう?

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