2012年11月29日木曜日

ビッグデータ活用統合医療ビジネスにおけるマップ(地図)と センサによるイノベーション


ビッグデータ活用統合医療ビジネスにおけるマップ(地図)と
センサによるイノベーション

清家彰敏(富山大学)


1.緒言
研究は、ビッグデータ活用統合医療ビジネスにおける、マップ(地図)とセンサによるイノベーションについて論じる。論点は、①ビッグデータにはゲノムなどのマップ(地図)を作成するデータと、センサから取り込まれた動画・信号などの時間軸上で形成されるデータの2種類に大別される。②ビジネスプロセスの中で、ビッグデータからのマップ(地図)は戦略、センサから生成されるビッグデータはボトムアップ的なイノベーションに関わる。3つの視点、①組織理論、②シミュレーションの可能性について論じる。キーワードは、ビッグデータ、統合医療、ビジネスプロセス、マップ(地図)、センサ、シミュレーション、内閣府環境未来都市政策である。

2.ビッグデータと内外政策課題
 喫緊の課題として、ビッグデータが個人、社会、経済、政治、法律、産業、技術、文化に与える影響と政策課題について網羅的かつ統合的に論じる場が必要である。ビッグデータとはインターネット上などで巨大かつ級数的に増加するデータを指している。ビッグデータは未来の希望であるが恐怖でもある。個人の全ゲノム解析は2013年には100ドル1時間以内で可能となる。シークエンサーも1機1000ドルである。ゲノムを知り病気を予見することは希望でもあり恐怖でもある。これはパンドラの箱(東京大学医科学研究所宮野悟教授)である。
 個人ゲノム解析の拡大は世界の医学・医療政策の転換からデータセンター、スーパーコンピュータによるシミュレーション、各種投資決定にまで変化が要求される。また生物資源のゲノム解析がもたらすビッグデータは農業、食品でのISO標準作りの鍵である。ビッグデータは生物ゲノム解析からだけなく、全分野に広がろうとしており、この動向分析は喫緊の課題となる。
 また情報ベンチャー起業ではアップル、グーグル、フェースブックなどの情報装備の卓抜した「個人」の機能を急激に拡大させたのもビッグデータで、これは未来の希望でもある。各省庁でもビッグデータの問題は取り上げられ、野村総合研究所など民間機関でも研究は行われている。世界に先駆けてビッグデータの動向を把握し、政策課題を提案できる場を日本が作るべきである。

3.ビッグデータ革命
あらゆる商品が「センサとマップ(地図)から作られるビッグデータ」によって革命を迫られている。商品開発プロセス(MOT)においてマップ(地図)はフロント、センサはエンドに位置付けられる。マップ(地図)はトップダウンで商品を変革させ、センサはボトムアップで商品を変革させる。マップ(地図)は空間軸上で、センサは時間軸上でビッグデータとなる。マップ(地図)は、例えば遺伝子情報(生命地図)で空間軸上に広がり、センサ情報は長時間の監視カメラの情報とかで時間軸上に並ぶ。マップ(地図)は広義の「地図」概念である。
あらゆる医療行為が「センサとマップ(地図)から作られるビッグデータ」によって革命を迫られている。創薬プロセス(MOT)においてマップ(地図)はフロント、センサはエンドになる。マップはモジュールがセンサは改善がキーワードである。

4.ビッグデータと企業組織

空間軸・時間軸上で級数的に増大するビッグデータにおいて、時間軸データの代表はDNAである。ビッグデータをトップダウンで政治的・戦略的に利用しようという欧米型組織の有名・少数エリートと、ボトムアップで世界の社会生活・ビジネスの現場において利活用する日本型組織の無名・無数の企業人たちの競争の中で世界の未来が開かれる。
日本の経営学者の世界への貢献は、ただ1点であると思われる。それは日本型組織の無名・無数の企業の従業員たちが欧米の有名・少数のエリートの政治的・戦略的な計画による競争優位によって犠牲にならないため、無名の従業員の貢献・努力が正当に評価されるための仕組み・理論の構築である。

5.ビッグデータ時代の経営プロセス

マップ(地図)戦略計画(シミュレーション)企画研究開発パイプライン試作ー生産技術治験ー工場薬品+センサ各種サービスコンサルティング(医療関係)―金融保険物流小売患者

 医療技術経営ではマップ(地図)戦略計画のプロセスで、コンピュータの中のマップ(地図)上で、薬品仕様を順に変えてシミュレーションを数万回行い、その後薬品を販売する。

6.2種類のビッグデータ 

1)空間軸上のビッグデータとマップ(地図)
 解読されたゲノムのビッグデータは解析され、診断・治療・予後のガイドライン、治療のマップ(地図)となる。このマップ(地図)は人類70億人の上に広がる空間軸上のビッグデータである。

2)時間軸上のビッグデータとセンサ
 高齢者の見守りシステムなどのセンサが取るデータ、監視カメラの連続動画などは時間軸上でビッグデータとなる。

整理すると、マップ(地図)は空間軸上で、センサは時間軸上でビッグデータとなる。

マップとセンサ

マップ(地図)は、例えば遺伝子情報(生命地図)で空間軸上に広がり、センサ情報は長時間の監視カメラの情報とかで時間軸上に並ぶものである。 

7.ビッグデータ活用マネジメント

マップ(地図)はトップダウンで薬品を変革させ、センサはボトムアップで衣食住の場・医療現場・薬品を改善させる。日本の世界に対する競争力はセンサからの改善能力の高さにある。

マップ(地図)
 マップ(地図)とは、市場を俯瞰して、戦略を立てる。バイオの分野なら高齢者の遺伝子、年齢構成、健康状態の科学地図がある。今後どんな病気が増えるかなどがシミュレーションでき、どこでどんな薬が求められるかを予想できる。欧米は地図作りが優れる。欧米は戦略づくりが巧みである.成功した事例がアストロゼネカなどである。

センサ
 もう一つのキーワードが「センサ」である。例えば建設機械メーカーのコマツは、建機にGPSと連動させたセンサを付けて販売した。これにより、世界のどこに自社の建機があり稼働状況まで把握できる。このデータを顧客や代理店に提供できる。顧客は、稼働率の高い地域へ仕事を取りに行くことができ、コマツも稼働率の高い地域での販売強化ができた。 
 今、世界のエンジニアたちは、必死に自社の商品にセンサを付けると、どんなサービスができるかを考えている。医療関係者、製薬会社のセンサが求められている。

例えば医療と健康創造クラスターにおいては
1)マップ(地図)と現場の『関係』について考えてみよう。  
2)マップ(地図)が無く現場で地道に努力する日本の医療現場。

 薬品開発の砂漠で乾きに苦しみながら、実は山の向こうには川があるのに気づいていない。  

3)マップ(地図)は3段階
医師/技術者の経験によるマップ(地図)、
国際規格(ISO)、
科学マップ(地図)(ゲノム・有機化学) 

4)欧米の製薬会社は 医療/技術者の経験によるマップ(地図)ではなくもっと上位のマップで勝負しているから大きな利益を上げることができる。

5)マップで勝負して儲かった日本の製薬会社は少ない?

8.ビッグデータ時代の知的創造

現在の人類・企業は集中型が優位(巨大化:マップ主導・水平統合・垂直統合)。未来の人類・企業はネットワーク型(タコ足・センサ主導)が優位。タコは足に頭脳の一部がある。新しい世代のネティズンや、企業におけるグループ経営、シリコンバレーベンチャーはその移行途上にあると考えられる。
次世代のキーワードはマップ「地図」と「センサ」使いで優れた技術者の存在が競争優位の根幹となる。日本のエンジニアの現状は目の前の技術ばかりに目がいき、切り替えが下手である。
もちろん顧客の欲求を見ているが、顧客は時代とともに豹変する。客が変われば商品・サービスも変わる。時代の変化に応じ、客は誰なのかを再定義、多数の事業の中からどこに重点を置きどこを省くかを判断、開発を急加速する能力、これがビッグデータ時代のマネジメントである。それに成功した事例がサムスンである。
 今後のマネジメントのキーワードは、「地図」と「センサ」である。地図とは、市場を俯瞰して、戦略を立てる。例えばバイオの分野なら高齢者の遺伝子、年齢構成、健康状態の科学地図がある。今後どんな病気が増えるかなどがシミュレーションでき、どこでどんな薬が求められるかを予想できる。欧米は地図作りがとても巧みである。成功したのがアップル社である。スティーブ・ジョブスは未来のデジタル社会と人間行動を俯瞰できる地図を持ち、iPodiPhoneiPadを世界でヒットさせた。未来の地図をジョブスはゼロックスのパロアルト研究所で見つけた[1]
 もう一つのキーワードが「センサ」である。例えば建設機械メーカーのコマツは、建機にGPSと連動させたセンサを付けて販売した。これにより、世界のどこに自社の建機があり稼働状況まで把握できる。このデータを顧客や代理店に提供できる。顧客は、稼働率の高い地域へ仕事を取りに行くことができ、コマツも稼働率の高い地域での販売強化ができた。
 今、世界のエンジニアたちは、必死に自社の商品にセンサを付けると、どんなサービスができるかを考えている。

9.ビッグデータ時代の経営は短縮・加速化

経営者地図(マーケティング)MOTセンササービスソリューション

ビッグデータの時代、これをすべてやろうとするとコストと時間がかかるので、どこを省くかがポイントとなる。

【成功例 韓国サムスン電子】
長大なMOTのステップを大胆に省き、マーケティング、工場生産、苦情処理サービスの3ステップのみに重点、事業を低コストにし加速し成功した。商品を大量生産し、メンテナンスカーを街中に走らせる。顧客から故障の連絡が入ったらすぐに修理に向かうサービスを徹底。すぐに修理するため、客に不満が残らない。顧客の声を広く聞き、商品開発にフィードバックできる。
 一方、日本の家電メーカーはMOTのステップ数が多くプロセスが長くスピードが非常に遅い。製品が壊れないため、サービス体制は逆に弱体。修理が遅く客の不満が大きい。何百点という商品は経費増の原因で、事業縮小を余儀なくされている。

ビッグデータビジネスにおける3つの戦略
 1)スピード化
 2)仮想化(インターネット+クラウド+センサ)センサがキーワード
 3)ミドル化(トステムの社長はかつては社長だった。今は住生活グループのミドル)

ビジネスプロセスへの要求
 1)強み NO1以外は世界で受け入れられない
 2)地図への欲求
 YKKAPは「100年間変わらない生活イメージ」の地図があると事業活動が優位になる。
 マップ(バイオは生命地図、化学産業・原爆はシミュレーション)
仮想化(センサ)
コマツ 
建機のロボット化 建機のセンサとGPS 需要予測・パーツ供給・中古市場
 2)トヨタ 
ワイパー天気予報(センサとしてのワイパーが動いているところが雨が降っている) タイヤ渋滞情報(タイヤの回転数がセンサ)

10.これからのビッグデータビジネス
 1)地図と現場
 2)地図が無く現場で地道に努力する日本の技術者。
砂漠で苦しみながら、実は山の向こうには川があるのに気づいていない。
 3)地図は3段階
社長の地図、国際規格(ISO)、科学地図(ゲノム・有機化学・原子核反応)=ビッグデータ

4)村田製作所はトヨタの地図(社長の地図)ではなくもっと上位の地図で勝負しているから儲かる。
トヨタ、パナソニックといった親会社の地図で勝負して儲かった企業は少ない?

ビッグデータマネジメントのプロセス
 地図戦略計画
企画研究開発試作生産技術工場物流小売顧客
           製品センササービスコンサル(相談)―金融保険
 企画研究開発試作生産技術工場物流小売顧客は旧来のMOT
 地図戦略計画はマッププル
製品センササービスコンサル(相談)―金融保険はソリューションビジネス      

11.結語
ビッグデータビジネスでは地図戦略計画のプロセスで、コンピュータの中の地図上で、製品仕様を順に変えてシミュレーションを数万回行い、その後製品を販売する。研究は、ビッグデータ活用統合医療ビジネスにおける、マップ(地図)とセンサによるイノベーションについて論じ、①ビッグデータにはゲノムなどのマップ(地図)を作成するデータと、センサから取り込まれた動画・信号などの時間軸上で形成されるデータの2種類に大別される。②ビジネスプロセスの中で、ビッグデータからのマップ(地図)は戦略、センサから生成されるビッグデータはボトムアップ的なイノベーションに関わる、組織理論、シミュレーションの可能性についても論じた。



[1]事業の失敗から俯瞰のテクニックを体得した。地図だけではだめだということをジョブスの失敗は教えてくれた。ちなみに経営学の巨人ドラッカーは失敗をしない人間を信用してはいけないという名言を残している。さて、アップルは一つの商品が1兆円以上を稼ぐ。数多くの商品を販売して100億円の売り上げを積み上げる日本企業に比べ、経費は格段に小さく利益ははるかに大きい。

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