2022年10月30日日曜日

脱日本型サプライヤー企業の世界制覇とメタサプライヤーネットワーク  ①メタサプライヤーネットワークとキーエンス ② メタサプライヤーネットワークによる日本型スタートアップ支援 ―― 清家彰敏

脱日本型サプライヤー企業の世界制覇とメタサプライヤーネットワーク 

    ――メタサプライヤーネットワークとキーエンス ――

――メタサプライヤーネットワークによる日本型スタートアップ支援――

 

  清家彰敏

 

1 サプライヤーの変化

日本型サプライヤーの顧客志向は、カスタマーへの「お客様は神様」に代表されるカスタマーが主役、日本型サプライヤーはきめ細かな開発・実行・改善過程による貢献が競争力であった。

それに対して、世界で覇権を握る脱日本型サプライヤーは、顧客であるカスタマーに対して、主役を演じて、カスタマーに先駆けた顧客志向を行っている。

 

2 相利共生

カスタマーが売上で得た利益をもらうかわりに、サプライヤーは自身のネットワークをを通じて市場の資源・知財をカスタマーに吸収させるという役割を果たしている。カスタマー自身が、自分のネットワークを広範囲に広げるよりも、その仕事をサプライヤーに肩代わりさせる方がずっと効率的であり、リスクも少ない。

カスタマーにも、サプライヤーにも、互いに利益のある共生方法で、生物学における相利共生(そうりきょうせい)と規定できる。

 

3 カスタマーとサプライヤーの両社の利益

サプライヤーは、得意な特化したに技術によって製品・サービスを作り、それを生長のためそれらを必要としているカスタマーへと提供する。

こうした仕事をしてくれるサプライヤーと提携、育成することで、カスタマーは効率よく資源を得られるようになる。

その対価として、カスタマーは販売をして得られた利益をサプライヤーへと与え、互いに利益を共有する。

多くのカスタマーがサプライヤーと共生している理由は、サプライヤーを持つことで、カスタマーにおける起業・事業創造と成長が飛躍的に容易になるからである。

 

4 トヨタ自動車のサプライヤーネットワークの効果

高度成長期、カスタマーが輸出・市場開拓を行うとき技術・資源不足やリスクの拡大といった大きな難題や障害を、サプライヤーとの共生という画期的な方法を採用することによって乗り切ってきた。

20世紀、米国はカスタマー中心の経済であった。やがてサプライヤーという、新しいタイプの企業を持ったカスタマーが日本で誕生した。

トヨタ自動車はグループの全体がサプライヤーのネットワークで覆われている。

そのため不況への耐性が向上した。さらに品質の悪い危険なサプライヤーがグループに入り込むことを防ぐという、防御作用も兼ねている。

 

5 アップルのサプライヤーと自動車のサプライヤー

この日本のサプライヤーは世界覇権を行い、世界のカスタマーの今日の繁栄は、日本のサプライヤーを得たことの結果ともいえる。

アップルはその典型である。

いろいろな種類のサプライヤーがあるが、一般にもよく知られているのが自動車産業のカスタマーのサプライヤーと電気電子産業のカスタマーのサプライヤーは種類分けできそうである。

求められる品質への要求は、自動車のカスタマーのサプライヤーは電気電子のカスタマーのサプライヤーに比較して一桁高度とも言われる。

 

6 脱日本型サプライヤー:サプライヤーのデジタル化への挑戦

①サプライヤー企業はカスタマーへの製品・サービス提供で顧客志向と効率化を追求し、成功を収める。

②「立案・システム構築・運用・保守」のデジタルソリューションを構築し、売上を拡大する(販売とサブスクリプション)。

③スピードを向上させることで、利益を拡大する。

④他のカスタマーへ製品・サービスとデジタルソリューションを提供し、規模の経済で利益を拡大する。

⑤他業種のカスタマーへ、製品・サービスとデジタルソリューションを提供し、規模の経済で利益を拡大する。

  サプライヤー覇権企業となる。

 

7 課題

残されたサプライヤーネットワークに関する研究課題の一つは,サプライヤーネットワーク間の相互作用、組織化である。

 

8 相利共生から産業共進化のネットワークとしてのメタサプライヤーネットワーク

サプライヤーのネットワークが互いにつながりあうようになってきている。

これはサプライヤーネットワーク間のネットワークである。産業全体が無数のサプライヤーネットワークが相互に繋がった、メタサプライヤーネットワークとみなすことができる。

特に世界を相手にする脱日本型サプライヤーがメタサプライヤーネットワークに参加、利活用しているとみなせる。

 

9 新しい産業イメージ

サプライヤーは、産業内に張り巡らせているメタサプライヤーネットワークを使って、製品・サービスを作り、それをカスタマーに提供している。新しい脱日本型サプライヤーの顧客志向マネジメントのイメージ

 

10.カスタマーへの新しい顧客志向のイメージ

脱日本型サプライヤーはメタサプライヤーネットワークを世界に拡大し、カスタマーに対して、新しい顧客志向マネジメントを行えるのではないか。

メタサプライヤーネットワークは自然発生的に形成され、世界に拡がっているのではないか。

メタサプライヤーネットワークを利用して、カスタマー同士が互いに資源のやり取りを行っているのはないか。

 

11.カスタマーはどのようにメタサプライヤーネットワークを利用しているのか

カスタマーとカスタマーはこれをもって、ある種の「伝達事項」もなども共有しているかも知れない。

違法なカルテルとか業界団体での談合といったコンプライアンス的に問題のある行動ではなく、

たとえば、産業における企業の業態転換が一斉に起こるといったような同調性は、メタサプライヤーネットワークによって起こっている、

 

12.メタサプライヤーネットワークとカスタマー

これらのサプライヤーネットワークは,カスタマーの売上・利益を助けその成長を促進することを通して,様々な貢献・機能を発揮している。

メタサプライヤーネットワークは,サプライヤー・カスタマー連合を支援することにより,カスタマーの起業や成長を助ける。

異なるカスタマーが,カスタマー間を繋ぐメタサプライヤーネットワークを通じて技術・素材・知財を受け渡し,互いに助け合っている。

 

13.キーエンス

ファブレス型サプライヤーで、世界50カ国に展開するキーエンスは、メタサプライヤーネットワークを利活用して、世界覇権を窺う脱日本型サプライヤーの一型として規定できる。

 

14.トヨタとテスラは産業として顧客へ貢献

トヨタ自動車という巨大カスタマーと、かつて起業したイーロン・マスクのテスラとは、メタサプライヤーネットワークでつながっている。

産業のリーダーカスタマーから新しく起業するカスタマーへと、メタサプライヤーネットワーク経由で、資源の受け渡しが行われたと考えられる。

さらに驚くべきことに、トヨタ自動車はこのメタサプライヤーネットワークを用いて、EVベンチャーを育成しているとの仮説も立てうる。

 

15.メタサプライヤーネットワークと日本的スタートアップ支援

開放的な米国、中国と異なり、閉鎖的とも言われる欧州、日本では起業間もないスタートアップカスタマーは資源に恵まれない。

自分の力だけでは、なかなか生き残ることができない。

しかし

サプライヤーを選び、メタサプライヤーネットワークからの資源の供給を飛躍的に向上させることができる。

 

16.日本型スタートアップ支援のイメージ

起業間もないカスタマーが稼げる利益など、いたってわずかなものであり、そこからサプライヤーに利益を支払ってしまったら、自分の生長のために回せる分が目減りしてしまう。

支払い能力がまだ十分ではない起業間もないカスタマーのために、日本の巨大カスタマーが、起業間もないカスタマーが払わなければならない分の対価を、メタサプライヤーネットワークを通じて「肩代わり」する。

 

17.日本型スタートアップ支援のイメージ

起業間もないカスタマーが稼げる利益など、いたってわずかなものであり、そこからサプライヤーに利益を支払ってしまったら、自分の生長のために回せる分が目減りしてしまう。

支払い能力がまだ十分ではない起業間もないカスタマーのために、日本の巨大カスタマーが、起業間もないカスタマーが払わなければならない分の対価を、メタサプライヤーネットワークを通じて「肩代わり」する。

 

18.政策提言

さらには、メタサプライヤーネットワークが、好ましくないサプライヤーが起業間もないカスタマーに入り込むことを防ぐという、防御作用も兼ねていると考えられる。

メタサプライヤーネットワークという名の巨大な有機体に助けられながら起業間もないカスタマーが成長していく、そのことを政策提言としたい。

 

19.結語

日本型サプライヤーの顧客志向は、日本型サプライヤーはきめ細かな開発・実行・改善過程による貢献が競争力であった。

世界で覇権を握る脱日本型サプライヤーは、デジタル化で変革を迫られている。

脱日本型サプライヤーの顧客志向マネジメントの新しい捉え方として、「メタサプライヤーネットワーク」概念を提案し、その機能を規定した。

メタサプライヤーネットワークを利活用して、脱日本型サプライヤーの新しい顧客志向マネジメントが考えられる。

またメタサプライヤーネットワークのスタートアップへの貢献についても政策提言を行った。

 

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