2019年3月25日月曜日

第3の意思決定モデルの組織間関係論The Third Decision Making Model


  第3の意思決定モデルの組織間関係論
     The Third  Decision Making Model

                 清家 彰敏

概要
 意思決定モデルの分類を意思決定主体から大きく3つに分類した。3つとは人間、人工知能、ネット上の不特定他者の3つである。このネット上の不特定他者の行う意思決定を採用する意思決定モデルを第3の意思決定と定義した。
 ドナルド・トランプのようなゼロベースから意思決定する独善的とも思われるリーダーを、クリケット、サッカーのストライカー(striker)になぞらえ、ストライカー型リーダーと定義した。
 ストライカー型リーダーに追随する人材が行いがちな意思決定がフリーライダーである。フリーライダーは第3の意思決定を行う傾向がある。フリーライダーの第3の意思決定とは、意思決定をネット内などの他者から借用し、あたかも自身が意思決定したかのように振る舞い、政策、経営方針、製品コンセプトなどを決定する。
 第3の意思決定は信頼性、隠ぺい性と言った問題を持っているが、必ずしも好ましくない意思決定とは言えない。
 
















1.意思決定の3つのモデル
意思決定のモデルは、主体とベクトルで3つに分類される。第1の意思決定モデルとしては、古典的意思決定モデルといえ、他者の意思決定を情報として受け取り、自身で意思決定をする。人間の意思決定である。主体である意思決定貢献者が意思決定表明者となる。
2の意思決定モデルは人間以外の人工の意思決定主体で、人工知能(AI)であり機械学習的意思決定を行う。AIが主体となり、他者の意思決定を情報として受け取り意思決定を行う。主体(意思決定貢献者)はAIである。
3の意思決定モデルは、ネット上の他者の意思決定を採用し、採用者が自身の意思決定として表明する。意思決定はネット上で選ばれた不特定他者が主に行い、意思決定者はその意思決定の選択と表明する存在でしかない。主体としての意思決定貢献者は不特定多数である。

2.ストライカー型リーダー
現代の経営においては、モジュール化の進展が進んでいる。モジュール化においては、ストライカー(striker)型リーダーが多くなっている。ストライカー型リーダーは政治、経営、技術においてみられる。サッカーのゴールを決めるように、多くのモジュールからの貢献を受けて、最終的な意思決定を行う。
サッカーのストライカーの機能は以下である。ストライカー(striker)は積極的にゴールにシュートするサッカーでもっとも得点力がある中心選手を指す、クリケット由来の言葉である。本稿では、ストライカーを組織、集団、ネットワークのリーダーでプロジェクトの中心的な経営者、商品企画者、技術者を指している。具体的にはソフトバンクCEO孫正義、アップルのスティーブン・ジョブスをイメージできる。かつてのソニーの創業者井深大、中興の祖盛田昭夫、本田技研の本田宗一郎もそのイメージである。誰の意見も聞かない。ベンチャー企業の起業者はストライカーのイメージが多い。ストライカーは、人間以外にAIもストライカーを演じることが可能である。

3.ストライカー型リーダーと追従者
ストライカー型リーダーは無批判にモジュールとして人材を扱う傾向がある。この傾向は追従者をストライカー型リーダーは好み、追従者が内部組織、組織間関係に満ちることになる。追従者はストライカー型リーダーの即決的意思決定に即応することを求められる。

4.追従者のフリーライダー化
ストライカー型リーダーは自身が理解しやすい意思決定を即座に行うことを期待する。即応のために、追随者は、ネット上の不特定他者の意思決定にフリーライド(free ride)する。

5.フリーライダーと第3の意思決定モデル
フリーライダーの第3の意思決定とは、意思決定をネット内などの他者から借用し、あたかも自身が意思決定したかのように振る舞い、政策、経営方針、製品コンセプトなどを決定する。このフリーライダーの意思決定を第3の意思決定と規定する。
大学入試でスマートフォンを使い不特定多数に問題をネット上で解かせる。無批判に最初に解いた不特定者の解法を採用する。これが第3の意思決定である。
組織間関係論では不特定者との関係を前提にした理論はまだ議論が不十分である。内部組織では第3の意思決定を行いがちな構成員を推定、特定することは可能であるが、組織間関係においては不可能である。
また第3の意思決定が、他の意思決定より劣っているとも言えない。むしろ、優れていることも多い。例えば、医療の診察画像をネットに送って、不特定多数の医者の診断を仰ぐ。不特定多数のうちもっともレスポンスが早かった診断を選んだとしよう。その診断は多くの場合信頼できる優れた診断内容であると考えられる。

6.ネット上の意思決定の信頼性問題
 ネット上の意思決定は信頼性に欠け、無責任である。ネット上の意思決定者が不特定で匿名であることは、責任を問えないことを意味し、意思決定の多くは信頼性がない。ネット上にはゴミが溢れている。本郷5丁目の2LÐKを購入したが、その購入を決定した際にネット上の意思決定を採用していたら、良い買い物は出来なかった。

7.ネットの誹謗中傷に相当する意思決定の組織人事への影響
 ネット上には誹謗中傷が溢れている。誹謗中傷ではなく真実であることも多い。世界中でパワハラ―、アカハラが大きな問題になっている。ネットの中で溢れる誹謗中傷に類する意思決定の借用は、組織構造、人事に影響を与える。

8.意思決定者隠ぺいの問題
3の意思決定において、部下が悪意で真の意思決定者の存在を隠ぺいする。組織のリーダーは部下が意思決定者を演じていることに欺かれることもある。大学院の修士論文をネット上から借用して、教授を欺くことがある。ローカルな言語で書かれた論文を翻訳して、修士論文として提出されてはチェックが困難である。

9.過去の意思決定の現在の第3の意思決定に与える影響
 現在、大学の事務は、問題を学生が起こしたとき、ネットでフェースブックなどを検索する。学生が過去フェースブックなどに書き込んだ意思決定が借用されて、第3の意思決定とされ、処罰の参考にされる。

結語
 意思決定モデルの分類を意思決定主体から人間、人工知能、ネット上の不特定他者の3つと規定し、ネット上の不特定他者の行う意思決定を採用する意思決定モデルを第3の意思決定と定義した。
 クリケット、サッカーのストライカー(striker)になぞらえ、ストライカー型リーダーを定義した。
 ストライカー型リーダーに追随するフリーライダーと規定、フリーライダーが第3の意思決定を行うとした。
3の意思決定は、意思決定をネット内などの他者から借用し、あたかも自身が意思決定したかのように振る舞い、政策、経営方針、製品コンセプトなどを決定する。
内部組織では第3の意思決定を行いがちな構成員を推定、特定することは可能であるが、組織間関係においては不可能である。
3の意思決定は信頼性、隠ぺい性と言った問題を持っており、今後の研究課題は多い。

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