企業、第一地銀数を3分の1へ削減、日本海と太平洋に跨る大型地銀の創出
清家彰敏
1. 緒言
日本海航路の活況、東日本大震災、日本企業のグローバル化を受けて日本の再設計を政産官金にて企画する。結論は、日本海と太平洋に跨る大型地銀を作り、日本企業の集約、統合を進める。目標は市町村合併の目標が3分の1であったといわれている(実際は2011年時点で減少53.3%)。目標は第一地銀数3分の1、企業数3分の1である。
2. 日本海の海外にとっての重要性とインフラの日本海移転の要請
日本海は世界にとって重要な海である。ところが、日本海は日本にとって重要な海ではない。地球儀でみると、シンガポール・ホーチミン・香港・上海・釜山・(日本海・津軽海峡・アリューシャン)・シアトル・ロサンゼルス・パナマは一直線上である(清家,2011a)。したがって、日本海航路は中国、韓国にとって米国への最短距離の重要な海である。また温暖化が進み北極海航路が盛んになってくると欧州と中国・韓国・極東ロシア間の距離は3分の2に短縮される(清家,2011b)。ロシアにとって日本海は重要である。ロシアは物流の42%を鉄道に依存する(辻久子)。世界の物流は9割が海運であるがロシアでは弱い。氷の海が広がるロシアにとっては北極海航路、海運に対する期待は大きい。日本海はロシアにとって北極海航路、シベリア鉄道の玄関である。
日本海の環境は大型タンカーなどの事故に対して脆弱である。三海峡が浅く日本海の深度は千メートルをはるかに超えすり鉢状になっている。汚染は外洋に排出されにくい。ちなみに地中海はジブラルタル海峡が深いため、日本海よりタンカー事故には強い。日本海周辺国家が共同で、通過船舶に対して強制保険を義務付けることも将来的には考えられる。
日本海通過船を警備するのは各国海軍の責務である。特に日本海に港の無い中国海軍にとって貿易船警備は悲願でもある。また日本海で交戦、被弾しても中国艦は軍艦を修理する港が無い。黄海の青島、大連まで曳航して修理していては戦時に間に合わない。日本は舞鶴で軍艦の修理ができる。
中国にとって港、軍港を北朝鮮から借り受ける意味は大きい。また北朝鮮の不凍港の重要性はロシアにとっても大きい。日本海を論じるとき北朝鮮は大きなキーワードとなる。北朝鮮の人件費は時給10円といったミャンマー、バングラデシュと並ぶ低賃金であるとの説がある。また資源国でもある。
中韓ロシアに加えて当然貿易先の米国も日本海航路には大きな関心がある。また欧州が北極航路からのアジアの玄関として日本海へ関心持つのも自然である。ノルウェー、カナダ、デンマーク,には、北極海資源の資源を満載して日本海を通過する未来がある。中国にとって欧州は最大の貿易相手国である。イギリス、ドイツ、オランダ、フランスには日本、韓国が隣国となる。日本海から黄海、東シナ海の港にフランス、ドイツ、イギリスの船が溢れる時代である。
この時代の到来を予見し、日本海側へ港湾、都市、研究開発・生産・消費拠点の移転を試みる必要がある。
3.第一地銀数の削減
大津波の危機を考えても、日本海側へのインフラの移転は日本政府の喫緊の課題である。例えば、移転対象の工場とその移転先の両地域で営業している地銀があると移転計画は進めやすい。太平洋側の地銀にとって、投融資先である工場や研究開発拠点、ソフトウェア開発研究所などが日本海側へ移転すれば損失である。太平洋側と日本海側にまたがる地銀であれば、損失は無く工場移転などは容易になる。
震災地域について考えると、日本海と太平洋側に跨る地銀は青森を除くと東北地域に無い。地銀が太平洋側から日本海側へのインフラ移転の中核となるべきなのに、移転の抵抗勢力、障害となる可能性がある。また地銀の規模が小さいとインフラ再構築の障害となることも考えうる。例えば、東北の第一地銀10行を4つにグループとして集約すると第一地銀上位10以内に4グループとも入り、3つに集約すると静岡銀行の規模、2つに集約すると横浜銀行を超え第一地銀1,2位の規模となる。
グローバル化は企業規模の拡大、金融機関の大型化を必然とする。日本の中小企業は高齢化、後継者難、海外人材不足、利益不足の4重苦に苦しんである。規模がある程度ないと血族以外に後継者、技術継承を得ることは難しい。また規模が不足して利益が出ないため法人税も払えない企業が多い。合併し3倍の規模になれば後継者難、利益不足、海外展開の問題は解決する。
企業、銀行は平成の地方自治体合併で市町村の規模が大きくなったように、大型化すべきである。なお市町村数の減少は1888年から1889年71314が15859と22.2%と4分の1以下に、1947年から65年10505が3392と3分の1以下に、1995年から2011年現在3234が1723と減少している。
日本企業は統廃合して数が3分の1に減れば、規模が3倍になり、グローバル化人材を育成確保することが可能となり、規模の経済、範囲の経済により利益が出て、法人税を払う企業が増え、政府の法人税などの税収増となる。赤字国債削減に繋がる。
平成の市町村統合で、市町村の数は1995年から2011年までに53.3%に減少した。町は37.8%、村は31.8%に減少した。地域が広域になった以上、金融も数が減少するのが自然である。この間地方金融も統合され1995年から信用組合は44.1%、信用金庫は67.1%、第二地銀は67.7%へと減少した。ところがこの間第一地銀は64行と数が変わっていない。この間企業数は1674465社から1515835社へと90.5%になったが、大きな変化は無い。
この間米国の銀行数は1980年代半ば約14000行が約7000行に半減した。1995年からでも約2000行減少している(金融庁資料)。
大手都銀は1976年の13行体制から6行へと統合が進み、現在大手企業の事業統合、企業統合も進んでいる。第一地銀は、統廃合、合併により市町村合併で市町村が半減したのに合わせ、数を2分の1へ減らせ統合するのが自然であり、道州制、グローバル化を先取りという意味でも目標を3分の1にすべきである。
三井住友銀行の成立では、旧財閥を超えた企業統合が増加したともいわれている。同じ業種なら旧三井系、旧住友系の企業が三井住友銀行と取引をするなら一社に統合するほうが銀行も企業も取引がスムーズに行く。企業支援、企業ソリューションが銀行、地銀の機能である。地銀が責任を持って投融資で企業を支援すると考えれば、第一地銀の数3分の1を目標にすると、全国の企業の数も3分の1へと集約されていくだろうと考えるのが自然である。
参考文献
清家彰敏「今こそ、太平洋側に偏った交通インフラを問う(上)」『海運』日本海運集会所,No.1005,2011年6月
清家彰敏「今こそ、太平洋側に偏った交通インフラを問う(下)」『海運』日本海運集会所,No.1006,2011年7月
0 件のコメント:
コメントを投稿