2012年6月29日金曜日

中国繊維企業の未来4戦略と日本の対応を模索

中国繊維企業の未来の4つの戦略と日本企業との連携を模索して                    


                        富山大学大学院MBA教授清家彰敏

 中国繊維産業は、欧州経済の低迷、国内人件費の高騰などにより大きな危機に直面している。この中で、中国繊維企業はどのような戦略を採用するか。それに対して、日本企業はどのような戦略をとるかを考えてみよう。
 戦略には模倣・学習と連結・創造の2つに分けることが出来る。それを衣料・家具用繊維と産業用繊維の2つに分けると4つの戦略を未来に関して構想することが出来る。
 この戦略を中国繊維企業が立案すると考えると以下の4つの戦略が行われることが予測される。それぞれについて、日本企業の対応を論じてみよう。
 なお( )の中は日本へのアドバイス。

1)模倣・学習
衣料・家具用繊維
  工場移転(低賃金国・バングラデシュ・ミャンマー・アフリカ)
産業用繊維
  選択集中・大量生産(特定製品に特化する韓国型)

2)連結・創造

衣料・家具用繊維

 製造小売業(ユニクロ)連結

 ブランド開発(イタリア)創造

産業用繊維
  技術開発(日本東レ・帝人)
解説

1. 衣料・家具は販売網を欧米日・中国に置いて。工場を低賃金国へ移転する。

(日本企業は中国企業、欧米企業とミャンマーなどで合弁工場を作り、欧米・中国などへ輸出すべきである。
 開発と工場は日本、商品化・営業は中国、欧米企業で分業すべきである。日本企業は営業力・商品化力が弱い。1980年代以降のメード・イン・ジャパンブームは日本商品の海外での販売力を強め、逆に人の力である営業力・商品化力を弱めてしまった。
 Jリーグで一時期よく言われた。日本のサッカーチームはゴール際までボールを持っていくのは優れているが、誰もボールをゴールに蹴り込まない。だから負ける。そこで、ゴール際に外国人選手を起用した。外国人は躊躇わず蹴り込む。それに刺激されて、そのうち日本人も蹴りこみ始めた。長友、本田たちの登場である。
 ミャンマー、バングラデシュ、アフリカで、商品化寸前までは日本が持っていって(日本人の組織プレー)、それを中国人が商品化して世界に営業して回る(中国人の卓越した個人プレー)。そのような未来を見てみたい。
 そのうち、日本人も躊躇わず蹴り込む、商品化するようになる。中国人、欧米人もゴール際まで持ち込む重要性に気づき、商品化寸前まで持ち込む地道な仕事の大切さを感じ、それに喜びを覚え、従事する人が出てくる。)

2. 選択集中は、航空機の炭素繊維、水処理の膜などに特化し、大量生産販売を行い先行メーカーから市場を奪う。

3. 製造小売業への転換。製造小売業は、販売と製造を連結し、市場動向を速くフィードバックし(最速1週間以内で)販売衣料のデザイン革新・販売方式の改善を行う。東京のエゴイストなどの企業群は1週間を実現させた。ユニクロは製造小売業で衣料開発から販売までを連結させ流行の創造・大量販売を行う。

4. ブランド開発はイタリア企業のデザイン・開発チームを中国へ誘致、利益は中国側とイタリアで折半。またはイタリアなどのブランド企業の買収を行う。

5. 技術開発企業への転換。日本の東レなどと合弁事業を通じて開発ノウハウを学ぶ。製品技術者と生産プロセス技術者・熟練技能者の2つの中核技術を持った集団からの事業多角化戦略。

6. 製品技術者集団からの事業多角化

 製品技術者集団から事業多角化を行う企業へ中国企業が転換するには、東レなどと合弁し、その技術を学ぶのが第1段階である。GMとトヨタの合弁、韓国企業と日本企業の関係はこの第1段階で止まり、前者は学習、後者は選択集中・大量生産への移行で終わった。両者とも日本型へ移行することなく、現段階ではGMも韓国企業も成功している。

 第2段階は日本企業の技術だけでなく開発戦略をも学ぶ必要がある。開発戦略は、取引先企業の購買担当者・技術者と共同開発で「企業間摺り合わせ技術」によってシームレス(オーダーメード)な新製品開発を行うことにある。この新製品開発はMITのヒッペル教授のユーザーサプライヤーインターラクションによるイノベーションで理論的説明はできるとされる。
 ヒッペルに加えてここでは戦略的・組織的視点での分析を重点に行う。戦略視点では、①取引先企業との関係の変更(共進化型関係への変更)、②取引先の購買担当者・技術者、当該企業の営業担当者・技術者の組織間関係の設計を行い(主に、取引先企業主導で開発は行われるが、取引先企業は製品評価能力、当該企業は技術改善能力が高いことが多い。リーダーは取引先企業の技術者が取る)、③フィードバック、データベースの作成、技術波及の評価、知財の分担まで行う必要がある。

7. 生産プロセス技術者・熟練技能者からの多角化

 生産プロセス技術者・熟練技能者は、衣料などから営業先を航空・宇宙などへ転換されることでイノベーションを強いられる。要求される製品の設計は製品技術者が行うが、その製品を実現するために、日本企業では生産プロセス技術者・熟練技能者は生産プロセスの連続的な改善を日進月歩で行う(プロセスの組織管理)。この日本型生産プロセスの組織管理を学ぶことにより、営業先を多角化することで製品を多角化することができる。


さて、
 日本企業は多角化に対してプロセスで対応し、ドイツ企業は製品設計で対応する。日本企業とドイツ企業の違い。これでワーゲンとトヨタの違いを考えてみよう。

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