民主党政府はなぜ機能しないのか? 日本政治の中核はミドルマネジメント無名?の代議士たち
東日本大震災が起こった。このとき、新しいママ民主党は思いやりの無い行動に出た。東京電力を新しいママは叱り飛ばしたのである。離婚されたママ自民党になら叱られてもそれは許せた。しかし、まだ新しいママを認めていない東京電力にとってそれは許せない。原子炉災害などで政府と東京電力の連携に齟齬が見られる理由はここにある。
自民党と経済産業省、文部科学省(旧科学技術庁)、東京電力などの業界は長年の密接な関係を築いてきた。この関係は日本型マネジメントの特徴である仲間意識、依存・育成関係である。その際、トップマネジメントが総理・内閣であり、ミドルマネジメント(中間管理職)が自民党代議士たちであった。実は日本政治の強さはミドルマネジメント無名?の代議士たちの存在であった。
ミドルマネジメント代議士らは党の政調部会などに所属し、官庁、業界、地方自治体などへの支援と圧力を繰り返しながら、成長していく。官庁、業界、地方自治体なども彼らとともに成長していく。原子力政策において、官庁、国立研究所、業界などの無数の人材は、ミドルマネジメント代議士と一緒に成長し、やがて定年、落選を迎え人生を終えてきた。
ミドルマネジメント代議士の役割は、ボトムアップに地方や業界の現場の声を積み上げ各省庁と調整し、省庁は財務省(大蔵省)主計局の9人の主計官へ予算要求する。次に主計局の3人の次長が山積みで日本の予算を形成し、国民の総意の政治をトップマネジメントである総理・内閣に行わせることにある。このようなボトムアップでの予算の山積みは日本企業においては広くみられる。
この点で欧米型のトップダウンの政治システムとはまったく異なるボトムアップの原理の政治となる。トップダウンの政治では大統領・総理・内閣が中核であるがボトムアップの政治ではミドルマネジメント無名の代議士が中核となる。これは日本型経営の研究と大蔵省事務次官のオーラルヒストリーを行った結果からの私見である。日本企業の経営と日本政府の政治が同じメカニズムを持っていると思われる。
なお自民党の政調部会などが機能する前は、トップダウンの政治と官僚をミドルマネジメントとするボトムアップの2つが機能した時期があるが、ここでは触れない。
さて、東京電力の幹部は、原子力政策に関心が高い自民党ミドルマネジメント代議士と交流を持ち、運命共同体とまではいかなくても共に成長してきた。東京電力の若手社員として代議士に従属する時は辛い時もあるが、代議士も落選すれば立場は逆転する。その中で、人生の辛酸をなめ合いながら過してきた仲間ともいえる。いわばミドルマネジメント代議士と東京電力などの「現場」たちは人生を共有してきたのである。この人生を共有する仲間意識といった感覚が日本型マネジメントの中核である。
ところが、その自民党代議士と東京電力などの現場の関係は民主党政権になって離別させられた。これは離婚と似ている。国民というパパが自民党という不出来なママを離婚した。不出来な時も多かったが、1955年以来連れ添ったママであった。東京電力という子供はある日ママが出て行ったことに気づいた。原子力政策に関わる自民党代議士というママとの関係は密接で、例え不出来なママだと、パパやご近所に馬鹿にされていても、大切な思い出も詰まっている存在であった。
東日本大震災が起こった。このとき、新しいママ民主党は思いやりの無い行動に出た。東京電力を新しいママは叱り飛ばしたのである。離婚されたママになら叱られてもそれは許せた。しかし、まだ新しいママを認めていない東京電力にとって新しいママの発言と行動は許せない。
日本型の組織では、構成員は仲間であると周囲に認知されて始めて発言権と行動が許される。日本型の組織は家族に擬制される原理で支配されていればいるほど大きな力を発揮する。責任も犠牲も奉仕もそのときに発揮される。世界で最も強力な組織ともなりうる。新しいママ民主党は東京電力に家族、仲間と認知される前に叱ってしまった。「あなたはママではない。家の中に何があるか?台所のどこに砂糖があるかも知らないくせに」といった思いが東京電力にはある。
衆議院選挙で小沢元代表の主導で当選した民主党代議士はトップマネジメント、ミドルマネジメントとして2重の問題がある。一つは、2大政党とは人材を2分することである。つまり一党支配状態であった自民党時代に比べると国会議員定数が変わらなければ2党ともに当選者の質は低下する。大臣ポスト数が変わらなければ大臣の半数は一党支配の時には大臣になれない能力の人が就任せざるをえない。次に、国会として、ブームの小泉、選挙の小沢と2回続けて素人代議士を大量に当選させた。現在の民主党は素人集団でミドルマネジメント代議士がほとんどいない。
余談であるが、国会議員削減論者からは批判されるが、日本型経営を研究してきた立場からみるとミドルマネジメントを削減して成功する事例と失敗する事例とがある。
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