未来を拓くエンジニアたちへ
富山大学が、地元企業の若手エンジニアを対象に行うリーダー教育「次世代スーパーエンジニア養成コース」が4月に開講。今回は講師を務める清家彰敏富山大経済学部・大学院MBA教授に、世界で競争できる商品づくりをするために必要なMOT(技術マネジメント)について聞いた。
次世代のキーワードは
「地図」と「センサー」使いの達人
―富山のエンジニアの現状をどう見るか。
まじめ。しかしそのため、目の前の技術ばかりに目がいき、切り替えが下手。もちろん客の欲求を見ているが、客は時代とともに豹変する。客が変われば商品・サービスも変わる。時代の変化に応じ、客は誰なのかを再定義、多数の事業の中からどこに重点を置きどこを省くかを判断、開発を急加速する能力、これがマネジメントだ。それに成功したのがサムスンだ。
―今後のマネジメントのキーワードは。
「地図」と「センサー」だ。地図とは、市場を俯瞰して、戦略を立てるということ。例えばバイオの分野なら高齢者の遺伝子、年齢構成、健康状態の科学地図がある。今後どんな病気が増えるかなどがシミュレーションでき、どこでどんな薬が求められるかを予想できる。欧米は地図作りがとてもうまい。成功したのがアップル社。スティーブ・ジョブスは未来のデジタル社会と人間行動を俯瞰できる地図を持ち、iPod、iPhone、iPadを世界でヒットさせた。未来の地図をジョブスはゼロックスのパロアルト研究所で見つけ、屈辱的な事業の失敗から俯瞰のテクニックを体得した。地図だけではだめだということをジョブスの失敗は教えてくれた。ちなみに経営学の巨人ドラッカーは失敗をしない人間を信用してはいけないという名言を残している。さて、アップルは一つの商品が1兆円以上を稼ぐ。数多くの商品を販売して100億円の売り上げを積み上げる日本企業に比べ、経費は格段に小さく利益ははるかに大きい。
もう一つのキーワードが「センサー」だ。例えば建設機械メーカーのコマツは、建機にGPSと連動させたセンサーを付けて販売した。これにより、世界のどこに自社の建機があり稼働状況まで把握できる。このデータを顧客や代理店に提供できる。顧客は、稼働率の高い地域へ仕事を取りに行くことができ、コマツも稼働率の高い地域での販売強化ができた。
今、世界のエンジニアたちは、必死に自社の商品にセンサーを付けると、どんなサービスができるかを考えている。
―円高や国内市場の飽和などを背景に、今後、企業の海外進出はさらに進む。
中国企業や東南アジアの企業を指導するが、彼らは、その技術や商品は日本のナンバー1かどうか、欧米に比べてどうかを非常に気にする。オンリー1には関心がない。グローバル化というのは、ナンバー1同士のチームプレー。そこで海外で勝つためには、日本のナンバー1技術を武器にする必要がある。それは省エネ技術、環境技術、トヨタ生産方式、日本型サービスの4つ。これを意識して戦略を立てるべきだろう。
講義拝見「実践技術経営特論」より
講師 清家教授
これからはMOT+(プラス)
経営者―地図(マーケティング)―MOT―センサー―サービス―ソリューション
これをすべてまじめにやろうとするとお金がかかるので、どこを省くかがポイント
【成功例 韓国サムスン電子】
長大なMOTのステップを大胆に省き、マーケティング、工場生産、苦情処理サービスの3ステップのみに重点、事業を超加速。
商品を大量生産し、メンテナンスカーを街中に走らせる。顧客から故障の連絡が入ったらすぐに修理に向かうサービスを徹底。
↓
すぐに修理するため、客に不満が残らない。
客の声を広く聞き、商品開発にフィードバックできる。
※一方、日本の家電メーカーはMOTのステップ数が多くプロセスが長くスピードが非常に遅い。
製品が壊れないため、サービス体制は逆に弱体。修理が遅く客の不満はすごい。
何百点という商品は経費増の原因で、事業縮小を余儀なくされている。
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