2010年10月29日金曜日

企業が日本を見捨てる 政府の役割(1)

 国家と企業はかつて異なる存在だったが、今は非常に良く似てきている。かつては国家が企業を選んだが、今は企業が国家を選ぶ時代になった。企業に選ばれる国家という観点から見ると、経営戦略も国家戦略も、同じレベルで考えることができる。
 海外拠点を持つ企業に限ると、生産の約3分の1は海外で行われている。海外生産コストは国内より低いので、生産額ではなく個数単位、つまり実質でみると、この比率は逆転し、3分の2を海外で作っているとみて良い。優良企業、たとえば上位30社になると、海外生産比率は50%を超えるので、実質的な海外生産はもっと多くなる。
 こう考えると、これらの企業が日本で税金を払い続けてくれると考える方がおかしい。バブル期のピークに19兆円あった法人税は、いまや約10兆円を切るようになった。ある意味で、法人税が減った分は海外生産が増えた反映だと思った方が良い。それでも、トヨタ自動車、ホンダ、キャノンなど優良企業は、売り上げの大半を海外に依存しながら、なお税金の大半を国内で払い続けている。
 日本企業は海外現地法人を含め、重役やコア社員のほとんどが日本人なので、日本に本社を置いて税金を日本で払うなど、国内志向が強い。しかし、重役やコア社員の半数以上が外国人になってくると、より戦略的に、一番税金が安いのはどこか、一番情報が集めやすいのはどこか、どの国の市場で株式を上場するのが有利か、という発想が出てくる。そうなると、現在10兆円を切る法人税は将来、もっと減ってくる、と考えるのが自然だろう。

 国家政策とは
 日本の財政は、税収が歳出の半分に過ぎず、残りは借金である国債で賄っている。税収が一段と減ってくるとすれば、日本政府はどうしたら良いのか。そこで必要になるのが国家政策である。企業が海外に展開するのなら、一緒に世界に出ていって、そこでサービスを提供する。そうすることでしか日本政府は税収を確保できなくなる。企業に日本政府に対していかに「依存してもらうか」が鍵になる。

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