托卵型から環境シミュレーション成長経済へ
経済における長期ビジョン
1.中国からインドへの成長移転「托卵型経済発展」
世界経済における成長点は中国であるといわれ、2010年現在年率10%の成長を続けている。この中国の成長はインドへと波及している。中国13億人の経済の次に、インド他10億人の経済が成長、世界経済全体は、長期的な成長が期待できることになる。この時代は、今後10年ピークを迎えると思われ、現在30歳40歳代で、未来を今後担おうとしている欧米日、中国のエリートには生涯忘れられない時代となると思われる。
さて、中国の成長はかつての韓国、台湾、マレーシア他の成長と異なっている。これらの諸国の成長を説明する原理は、雁行型経済発展といわれる。その基本は学習であり、産業は学習と模倣によって、より先進地域な地域から発展途上国へと順次移転していく。模倣や学習は、後から行うほどより効率的、短期間に行われるので、後から追いつく国ほど早く成長できることもあり、次々より高い技術レベルの産業を模倣により創出していく。
また、より先進的な地域での低い技術レベルの産業は、追いつかれた国の産業にその座を譲り、衰退していく。このような産業の模倣による創出・衰退が連続的に起こり、そのイメージが雁の群れが飛んでいく姿に似ているということで、雁行型経済発展と呼ばれている。キーワードは学習で、社会のエリートが欧米日に依存しないで、自分自身で学習、模倣し、技術と産業を創造していく。主体はあくまでその国のエリートであることが多い。
中国の発展はこれと異なっている。中国の発展は、貿易依存型でありGDPの50%程度が貿易関連によって生み出されている。また、輸出入の半数は、外資系企業に大きく依存している。このことは、何を意味しているのか。実は、中国という場で、欧米日が勝手にビジネスを行っているのであって、中国は場所を提供しているに過ぎない、とも考えられる。日本企業は、中国の日系企業とビジネスをしている。日本人対日本人である。同様に米国も、米国人と米国人がビジネスを中国という場で行っている。欧州も同様である。中国という場で、日本と欧米間のビジネスも起こる。社会のエリートが主体をなしてのビジネスというよりは、海外人材に依存するビジネスである。
日本と欧米のビジネスの違いは、欧米企業の場合は、企業内に中国人が多いので、ビジネスの主体が欧米人とはいっても実際は、中国系であることが多い点にある。この点で中国では日本企業より好意を持って欧米企業は迎えられる。しかし、基本的には中国しか知らない現地の中国人にとって、これらのビジネスは、極めて参入しがたい無縁のビジネスであることが多い。
例えば、中国で、米国企業の東アジア担当副社長が、米国留学した中国人または米国生まれの中国人を現地法人の社長にして、ドイツ企業、日本企業とビジネスを中国で行うとしよう。この企業は、中国の現地政府の中国人エリートと交渉をし、工場従業員、事務スタッフ、営業スタッフに現地の中国人を雇用するが、やりかたは米国流で、本国の米国で仕事をするのと同じ感覚で意思決定を行う。現地採用の従業員は単純労働に従事し、意思決定は委ねられない。米国に留学して学位をとり、仮想に米国人になって帰ってこなければ、意思決定の輪には入れない。
また、上海では日本企業が日系企業とビジネスをすることは日常で、日本企業が溢れ、日本語も溢れる。このビジネスモデルには、中国しか知らない素朴な中国人は単純労働者としての意味しかない。米国と異なり、日本に留学して学位をとっても仮想に日本人になることは出来ない。意思決定に入れないことで、不満は大きい。
このビジネスモデルで、中国の多くの地域は成長している。日本企業、欧米企業は、貧しい中国の大衆を中国という場で単純労働者として雇用しているのであって、経営の中核は中国の大衆にとって無関係である。現地の中国人は単純労働者としてのみ意味を持ち、経営は欧米日の経営者、管理者が、日本企業は日本人が、欧米は留学経験者等の中国人が行う例が多い。現地の中国人が関わるのは単純労働で給料を貰うだけである。
現在は、中国での製品は輸出されることが多いが、これが内需主体に変わっている現在もビジネスモデルは変化しない。現地の中国人が関わるのは単純労働だけであったのが単純に消費も行うようになるというだけである。ビジネスモデルにおける作業を意思決定と単純労働の2種類に大きく分けるならば、意思決定は欧米日が行い単純労働は現地の中国人が行い、商品の購入も欧米風のファッションに誘導されて中国人が、単純消費させられるに過ぎない。
この説明はモデルを単純化して中国を捉えたものである。中国の現状はこれだけではもちろん捉えられない。現に家電産業を中心に、ハイアール、TCL等の現地の優れた企業と経営者が登場、海外に進出している。上海の日系企業には現地経営者に完全に経営を任せて成功する例が出てきている。国有企業の民営化、優れた創業者の選択、このような試みで、今後も次々に成功者が現れている。中国企業の進化は急速で欧米日の予測を超えており、韓国企業は先を行く欧米日企業と後から追い上げる中国企業の間でサンドイッチにされて消える可能性さえある。
しかし、基本的には、意思決定を欧米日が、単純労働を現地従業員が行うというビジネスモデルが初期に現れ、これが中国における経済発展の成功の中心原理であったと思われる。この初期を第1期と考えれば、次の第2期に現地企業のウエイトが増加し、第3期に現地での消費が始まるとの国家発展モデルが中国型と規定できそうである。第1期の中心が広東であり、第3期の中心が上海である。この国家発展モデルの中核をなすのは1期から3期まで通して、欧米日が意思決定、現地の中国人は単純労働・単純消費というビジネスモデルであった。
中国政府、広東、上海市の政府は、親として「企業」という子供を一生懸命育ててきた。しかし、実はこの子供は欧米日という親が産んだ卵が孵ったものであるのかもしれない。中国政府というウグイスはカッコーが産んだ卵を一生懸命育てているのかもしれない。この経済は「托卵型経済発展」とでも表現するなら、先進国が意思決定、発展途上国が単純労働・消費といったビジネスモデルによる国家発展モデルであった。
ところで、中国政府は国家戦略が素晴らしく、中国人の駆け引きにはかなわないといったことをいう識者が多い。しかし、それは本当だろうか。かつて、アヘンを国内にばら撒かれて、2回のアヘン戦争で半植民地に陥った過去を考えれば、中国政府が国家戦略で巧みとはまだ歴史が証明するところではない。中国政府の失敗は歴史でいくらでも指摘できる。むしろ、国家戦略で多くの学習課題を抱えた政府とも思える。
この托卵型経済発展モデルはそのままインド他、バングラデシュなどに対しても応用が可能である。現地の中国人が単純労働・消費という部分を、現地のインド人が単純労働・消費と言い換えれば、概ねこのモデルによる国家発展がインドでも可能であった。インド以外のパキスタン、バングラデシュでも托卵型経済発展モデルは成功しうる。
このような托卵型経済発展は中国政府、インド政府から見てあまり気分の良いものではない。しかし、先進国にとってもこれは困り者である。一番困るのは、徴税である。企業が中国、インドへ行ってしまえば、税金を払ってくれない。企業を育てるまでに国民の税金は少なからず、使われたはずである。ところが、育ったと思ったら中国、インドへ行ってしまって、税金を払わなくなるのでは先進国の財務省は不愉快で、なおかつ国民に申し訳ない。
しかし、むやみに他国内の活動から税金を取れば、中国政府、インド政府に叱られる。さて、困った。近い将来、既に現在、先進国の財務、経済産業関係省庁は、海外徴税システムの構想課題を抱え、悩むことになる。この構想課題を具体化する有力なヒントは、海外移民からの仕送り経済に依存している現在のフィリピン等、特に依存度が大きい太平洋の島国から得られる。これらの国々は、若者をオーストラリア、ニュージーランド等の先進国へ移民させる。彼らは2代くらいに亘って仕送りしてくる。ここから税金を取って、これら太平洋の島々は経済を維持しているのである。企業を法人と呼ぶ。海外進出を「法人移民」と言い換えれば、ここに徴税のヒントがあるのかもしれない。
2.20年後 ロボット経済発展モデル
托卵型経済成長モデルは、先進国が意思決定し、発展途上国が単純労働・消費するという仕組みであり、地球上を一巡し、現在の定義で言う発展途上国が消滅するまで続くと思われる。しかし、いつまでも続かない。発展途上国が主流でなくなる地球、その将来、その後の経済について構想してみよう。その時代は、単純労働・消費をする人的資源が消滅する、もしくは消滅しなくても、少なくとも経済的な意味が大きく減少している。その経済は20年後には到来するであろうと思われる。現在、30歳代で、欧米、中国、日本の未来を担おうという人材にとっては、20年後はもっとも働き甲斐のある年齢に達する時代である。この時代の経済モデルとはなんであろうか。その転換、革命に備えなければならない。
さて、単純労働・消費をする人的資源が消滅する時代である。その後を考える際、単純労働を行う人材に代わる存在として規定できるのがロボットである。ロボットは、現実世界でのロボットとインターネット上でのネットロボットの2つの型が存在する。
前者の代表は本田技研工業のアシモが21世紀に入ってすぐ登場した。受付ロボットとして、維持費が年間2000万円、受付機能として年間100万円の価値を産み出した(本田技術研究所平井常務、2002年インタビュー)。差し引き1900万円の赤字である。しかし、宣伝効果等を考慮すると黒字と判断する企業が多く、IBMを初め数社が使用した。これは、給与が100万円で年間2000万円も消費する不経済な単純労働者が生まれたと規定できた。また宣伝効果でアシモは黒字と考える場合は、2000万円以上の年収があり、2000万円消費する労働者とも考えられる。中国のパンダのカップルは世界中に貸し出されて年収1億円を稼ぎ出し、中国へ仕送りしている。このパンダをロボットに置き換えることが可能であれば年収1億円のパンダロボットが登場することになる。パンダロボットは人間以上に高収入で経済に貢献する。
ネットロボットではINAGO社のバーチャルアイドル伊達杏子以来、次々バーチャルアイドルは登場している。パソコン画面上で可愛く女子学生を演じ、会話、楽しいショッピング相談、ちょっとしたデートの相手だってできる。ちょっと、間違えると恋人としてのめりこみかねない魅力を備えている、彼女は画面内の人造人間であり進化し続けている。他にも、沢山のキャラクターをINAGO社はもっていて、オーダーメードで、君好みの人造人間を700万円で作ることが出来た。もちろん、君自身も複製できる。INAGO社はリクルート人脈の企業で、研究開発はカナダで行っている。最大株主ホリプロダクションによって創業された。
彼女バーチャルアイドルは、買い取りの「可愛い奴隷」で、パソコン上に希望の人に似せて作ることができる。数百万円で買える可愛い奴隷、ちょっと怖いイメージですね。でも可愛い。マイクロソフト社もこれと類似したとってもキュートな女の子ネットロボットを作って、世界的にはWebロボットともいわれ、これも変形、多様化、進化している。学者はエージェント、ソフロボットとも言っている。
さて、アフリカから黒人奴隷が買われてきたように彼女バーチャルアイドルは買い取ることができる。彼女の機能は多いが、例えばパソコン上でのインターネット私設秘書であり、学習計画、学習相談とか、特に観光ガイドとかをちょっと可愛い物知りのお友達としてこなしてくれる。観光ガイドはもっとも彼女が能力を発揮させやすい場で、インターネット上の観光サイトはそのうち可愛いネットロボットキャラクターで溢れるようになると思われる。
この観光ネットロボット市場には、可愛いだけでなく、個性的、野性的、変態的といったあらゆるキャラクターが登場し、ビジネスを競い、この競争に負けた旅行会社は大きくシェアを落とすことが考えられる。このイメージは、現在のテレビ局の競争が女子アナウンサーの魅力競争によっているのに近い。この市場は、近い将来大きな市場となる。
ところで、優れたバーチャルアイドルを購入する700万円として、個人にはかなり高い。もちろん、5年ローンを組めば、年間200万円でこの秘書を雇用できる。これは1ヶ月16万円相当で、これを高いと考えるかどうか。考えてみよう。購入後、君の奴隷として観光ネットロボットになるために彼女は厳しい訓練を君から受ける。彼女を徹底的に学習・教育し、JTB等と契約し、インターネット観光案内等で、キャラクターとして、稼がせるのが君の狙い。なんか、山椒大夫が安寿と厨子王を買ってきて、売り飛ばすお話を連想する。過酷に働かされるバーチャルアイドルちゃん。とっても可哀想。とっても嫌なイメージがするけど、これが実は20年後のロボット経済の本質である。
上記のロボットとネットロボットはあらゆるバリエーションを将来持つことが考えられ、大きく3つの領域に進出することが考えられる。日常(仕事と生活)、非日常(介護と娯楽)、脱日常(観光と冒険)の3つが、その領域である。当然、それぞれ、人間と同様に給与に相当する収入を得、消費に相当する支出をする。21席に初めに登場したホンダのアシモは、給与100万円、消費2000万円、これでは甲斐性なしの道楽亭主であった。しかし、このような甲斐性なしは昔友人の中にいた記憶がある。
六本木の防衛庁の裏のクラブ「ママジョーズ」でこの友人と一緒によく遊んだ記憶がある。面白かったね。彼は会社の社長の息子だったかな。しかし、やがて、真面目になった彼は、今は優れた経営者になっている。遊びを肥やしにしたわけである。
そのうちアシモ君も足を洗って、100万円の年収は600万円になって、2000万円の浪費が300万円ぐらいになって可愛い奥さんをもらって幸せな家庭を築く。それがサービスロボットビジネスの未来ビジネスモデルである。
サービスロボットは、現実には日常の仕事として、夜寝ない24時間ビルや住宅の警備を行うガードマンに就職することができる。セコムは機械警備=警備の機械化、電子化によって、出動回数を2桁減少させ、ガードマンの人件費を激減させた。同業の綜合警備保障は警備ロボット、テムザック社は、番竜といった警備用の恐竜型ロボットも開発し、進化させている。ロボット警備の中で、サービスロボットは高給取りになることができる。
家庭での日常の仕事では、サービスロボットに電子レンジを内蔵させれば優秀な料理の鉄人になれる。サービスロボットにタイヤをつければ、個人の専用タクシーにも変身できる。携帯電話、スマートフォンはサービスロボットへと進化している。サービスロボットは歩く必要などない。スマートフォンが優秀な秘書として1日中サポートしてくれる時代が始まっている。
生活では、子供の遊び相手、日曜大工などの機能を付加できる。どの仕事も、サービスロボットに高い給与を稼がせてくれそうである。
非日常の介護では、サービスロボットは話し相手からペットロボットにまで変身できる。ソニーのアイボは優れたペットロボットであった。可愛く小型にして抱き上げる度に医療データが採れるようにすれば、年寄りにとって不快な検査を省略することが出来る。ペットロボットは本物のペットと異なり、病原菌を媒介することはなく、死んで嘆くことも無い。この医療用ペットが進化して医者ロボットになれば、サービスロボットは桁外れの高給とりのロボットになることもできる。サービスロボットを医者ロボットとして教育して、多くの高齢者のところへ派遣し、奴隷ロボットとして毎月仕送りさせれば、君は大金持ちになれる。
ロボットは、娯楽においては、ゲーム、スポーツの相手ができる。また散歩のお供も、道路交通法さえ変われば得意中の得意技となる。脱日常では、観光ガイドとして観光地を案内できる。自動車の機能を併せ持ち、四国88箇所を、ガードマンを兼ねながら、弘法大師に成り代わり、説教しながら案内するロボットは高給取りのロボットになるのではないかと思われる。
次に、再度ネットロボットのバーチャルアイドルの教育、就職、君への仕送りについて考えて見よう。バーチャルアイドルは、日常における仕事として株式取引のプロになることができる。それは証券取引ソフトを内蔵させ、教育すれば出来上がる。また、図書館司書になることは、検索ソフトを内蔵させればよい。生活では、料理相談、洗濯相談といった「物知りさん」になることもできる。
非日常の介護では、ボケ防止の話し相手、健康チェックなどのソフトを内蔵できる。娯楽では、アミューズメント、ゲームソフトを内蔵させることでギャンブラにも変身できる。脱日常では、専属観光ガイド、冒険旅行のパートナーにもなれる。インターネットの中をとおれば、バーチャルアイドルは世界中どこへでも自由にいけるし、世界の誰とでも友達になれる。
多言語ソフトを内蔵させれば、フランスへ出かけていって、日本の魅力をPR、そこで誰かの話し相手になり友達となって、日本へ一緒に行こうよと、誘うことも出来る。旅は、一人旅よりも2人のほうが楽しい。四国88箇所回りは、弘法大師という頭の中の人物と一緒に歩くから、継続できる。頭の中の人物より、ネットロボットのほうが、楽しい人も多い。
宮崎県知事がパソコンにネットロボットとして登場、宮崎の魅力で、毎日話し相手になってくれて、ある日、僕と一緒に宮崎を歩こうよ、僕が案内するよ、といえば、ずっと魅力的な宮崎の旅をすることができる。給与を払うとしたら、宮崎県知事ロボットは、本物ほどではなくてもかなりな高給取りに相当すると思われる。もし、宮崎県が知事ロボットを世界中に100億台も派遣すれば、世界から毎年1000万人の観光客を宮崎に大量に集めることも可能である。何の根拠も無い数字です。忘れてください。宮崎県さん。でもハリウッドの数字くらいは意識しているのですよ。
ロボット、ネットロボットは人間と組み合わせることも可能である。人間を助けることで給料をもらえるこの新しい人間のパートナー(奴隷?)は、人間に援けてもらうことで、活動範囲、収入を増加させることができる。応対でネットロボットが答えに窮したとき、判断に困ったとき、ロボットの空間が変わり自分では動けなくなったとき、人間に援けてもらうことができる。携帯電話と繋がれば、答えに窮したとき、人間が代わりに答えてあげることが出来る。実は、このロボット・人間インタフェース技術の開発が、一番、ロボット経済を到来させる際のキーテクノロジーである。
例えば、ロボット清家君とネットロボット彰敏君を20台ずつ製作したとしよう。貧乏なくせに金遣いに荒い清家先生のために、ネットロボット彰敏君1号から20号は、揃ってまず講演を依頼されるように営業活動に入る。講演を頼んでくれそうな団体、企業の総務部のサイトへメールとともに登場する。
ネットロボットは初期投資が700万円×20台=14,000万円となる、これは高い。それで、旧知のINAGO社に因果を含める。20人分まとめて、2000万円に負けさせ、それを5年間の月40万円のローンにしてくださいと伊達杏子以来バーチャルアイドルを進化させてきたINAGO社にお願いする。さて、20台であるから、1台当り月2万円消費するぞと考える。ペットの猫のえさ代なみかな。どうしても1台月に4万円は稼がすぞ、それができないと奴隷市場に売ってしまうと清家先生は山椒大夫みたいな怖い顔して考える。
ネットロボット彰敏君は先生の顔をキャラクターにしているから、企業の総務部は、サイトを見て「あれ」と思う。まずは、企業の困ったことに相談に乗ろう。さて、先生はヘボなりに企業のガバナンス、戦略、組織、研究開発・・・に関しての大体のことは、実務経験、長年の企業人研修、トップ研修などで、やってきた。なんでも1秒以内で答える、早いだけが先生の特技。ネットロボットに、蓄えたQ&A集のソフト化、それを内蔵、学習させビジネスは始まる。
1号から20号まで20台いるから、ネットロボット1台は95%相手の相談に答えることができればOKである。清家先生が電話の前でスタンバイしていて、ネットロボットでは答えられないイレギュラーな相談5%に答えるようにすれば、20台×5%でOKである。複数のネットロボットの答えられないとき、そのときがかち合ったときは、ネットロボットは、首をかしげて、考える振りをする。電話が空くのを待っているようなソフトにしておく。
これで20倍の営業ができるようになれば、ネットロボットの稼ぎ・仕送りで年収は20倍である。それは無理である。やはり営業は本人が行くほうがうまく行く。でも10倍くらいは営業機会が増加するかもしれない。本人ではないとして成功確率が50%になったとして、5倍の売上増になる。ネットロボット彰敏君の次はロボット清家君の出番。これを20台使って講演を掛け持ちするぞ!これで、赤坂で飲める!嬉しいな!
ギリシャ時代は、奴隷時代でもある。アテネは紀元前、約40%の市民と40%の奴隷、20%の外国人で成り立っていた。経済活動の主体は奴隷と外国人であり、彼らは人権をかなり制限された存在であった。近い将来、人間はアテネで言う市民、奴隷をロボット、外国人をネットロボットで構成する社会が登場すると思われる。
ここでの徴税は人頭税がよいのかもしれない。現在の税制をベースにすれば、財務省は所得税と消費税の体系でも良いのかもしれない。ロボット、ネットロボットを人間に見立てて、年収と消費、そして奴隷所有者への仕送り額等をベースに徴税システムを構築できるかもしれない。貧富の差は大きく開くことも考えられる。
このとき、国家にとって人口が持つ意味はロボット、ネットロボットの普及とともに徐々に小さくなっていく。人口が大きくても、ロボット、ネットロボットの少ない国は小国であり、多い国は大国といったイメージが出来上がると思われる。人間+ロボット経済による成長である。
米国の90年代からの成長のかなりな部分は、2億3000万人から2億7000万へ人口が増加したことと無関係ではない(共産圏の崩壊からの人口移動などにより米国は年間300万人人口が増加している)。イギリスの人口に近い4000万人近い移民の移入などによる人口増で成長率のかなりな部分が説明可能であった。移民は生産と消費の両方でGDP増に協力したのである。この移民をロボット、ネットロボットに置きかえれば、成長は自由自在に行うことが可能かもしれない。
意識して、超高度成長を行う国家も出てくると思われる。ロボット、特にインターネット内で世界中どこにでもネットロボット兵士を送り込めるネットロボット軍隊を創り上げる国家の登場は注意ずる必要がある。これは、核よりも破壊力のある最終兵器の可能性もある。
財務省はどうなるのであろうか。経済成長率は、移民とGDPのデータからモデルを構築、シミュレーションモデルを作り上げ、それをロボット、ネットロボットに置き換えたシミュレーションモデルへと修正すれば、計算できる。ロボット、ネットロボットへどのくらい国費を投じれば、GDPがどのくらい、徴税がどのくらい上がるかというシミュレーションモデルが国家財政政策の基幹の一つとなると思われる。税金はシミュレーションで分かり、逆算することもできる。
日本は産業用ロボットで世界の半数を占めるロボット大国である。ネットロボットでも先進国家である。日本では民生用ロボットが話題になっている。米国ではイラク戦争はロボット兵器の実験場とも捉えられた。米国の軍事ロボットの進化は速い。このように、ロボット、ネットロボットの研究開発投資は世界で急速に増加して、次々成果が出始めている。この成果に平行して、政府は、ロボット経済発展に関する「政策用のロボット経済シミュレーションシステム」への研究開発も徐々に始める必要があると思われる。
さて、未来を考える鍵の一つは、環境、有限な地球である。インターネット内だけで人間を代替するネットロボットは材料、エネルギー消費が極端に少なく環境負荷が小さい。ネットロボットは循環型経済を志向する世界経済のキーワードになるかもしれない。
3.30年後 想像を絶するシミュレーション経済
ロボット経済の怖さは、取引速度にある。また、素晴らしさは、活動をすべて補足し、総和を求めることが容易であるという点である。地球の環境負荷から逆算して、ロボット、ネットロボットの活動を制御することが可能である。翌年のGDPもシミュレーションから自由自在に決めうる。この時代は30年後。現在10歳20歳代の頼り無さそうな生徒、学生、怒られっぱなしの新入社員たちが、中核をなす時代である。米国ではベンチャービジネスに命を賭ける大学生、中国ではお金儲けに野心満々の人民大学の学生さん、ガーナのプログラマー専門学校へいく女子学生、ドイツで大学教員になれないけど学位をとるのだと頑張っている女性研究者、すべてがこの時代のリーダーとなる可能性を持っている。
人間と人間のビジネスはどんなに効率よく行っても、秒単位である、築地の市場、ロンドンの証券市場でも人間がやれば、ナノ単位とはいかない。ところが、ロボット経済では、取引はロボットとロボットである。インターネット内のネットロボット間の取引はナノ単位、無限に小さくなる。人間が1回取引する間に、ネットロボットは1億回の取引、ビジネスを行う。
人間が物、情報、サービスを作り、取引することをビジネスと呼べば、これはすべて秒とか、分、時、日、年の単位で行われる。それに対し、ロボット、ネットロボットはナノ以下が単位である。人間の経済がロボットの経済へ移り始めたとき、人間はこのことに気付くことなる。ロボット経済が進行すれば、やがて人間の経済活動が占める割合は急速に収縮し、やがて無視できる規模になる。
このことが、すでに起こっているのは株式市場である。証券ソフトなどは一種のネットロボットである。このネットロボットによるプログラム売買の速度に人間はついていけない。大部分は、ロボット経済でこの世界は決まりつつあるのである。
しかし、このロボット経済が進行し、人間の経済がある量を下回ったとき、われわれは経済を見える手でコントロールできる時代に入る。地球環境を考慮し、環境破壊をシミュレーションし、その総枠を決め、その総枠を超えないようにロボット取引、ビジネスを制御できる。もっとも環境負荷が少ない経済モデルを何億回のシミュレーションの結果、決定し、そのとおりにロボットに経済活動を最適に行わせることが可能である。シミュレーション経済の時代である。
徴税も、年間予算から逆算して、目標額に合わせてシミュレーションして、経済活動の内容、支援方策を構築することから、徴税が行われるようになる。徴税方式を変えたとき、どのくらい経済が変化するかもシミュレーションで求められる。
ロボット、ネットロボットの数的増加は、取引数の級数的増加をもたらす。ロボットの数から求められる取引はロボット間の関係数に相関するからである。この取引数の増加は、ビジネスの増加と正の相関を持つと考えられ、経済成長は取引数と相関する。したがって、この経済は必然的に成長経済となることが予想される。特に環境負荷の小さいネットロボットへ、国家としての支援を行えば、環境制約下での急成長が可能である。したがって、このような経済は「環境シミュレーション成長経済」とでも表現できると思われる。
30年後に向かって、これらの経済シミュレーションモデル群は構想、準備されなければならない。未来は近く、そして遠い。
0 件のコメント:
コメントを投稿