日本海地域と地中海、欧州は近いというと不思議な顔をされるだろうか。中国東北部、モンゴル、カザフスタン、カスピ海、トルコの東西通路は、馬の移動に適した地形が多い。気候変動でこの地形は「馬のハイウエー」といった草原地帯に変わるときがある。このとき、一気に地中海と日本海は近づく。人間の陸上での移動は、南北方向では徒歩が中心となる。それに対して、東西方向には馬が活用できる。一気に日本海から地中海まで駆け抜けるのである。フン族がかつて東から西へ一気に駆け抜けた。その名残が欧州の国名に残っている。
アレキサンドロス大王に滅ぼされた紀元前のペルシャは2400キロを早馬7日間で駆け抜ける連絡システムを持っていたといわれており、平均時速14キロの速度であり、この速度では日本海と地中海は1ヶ月以内の連絡システムで結ばれる。馬での移動の速さは、古代より馬が主体の東西の交通、通信を徒歩が主体の南北に対してはるかに優越させていた。モンゴル族は、この草原をもっとも強力な騎馬での移動を可能にした。
日本海は、緯度35度から45度に主要部が位置し、地中海は32度から43度に主要部が位置する。馬による移動は、草原の道(毛皮の道)で緯度40度の北京をスタートとし、モンゴルのカラコルムを経て、新疆ウイグルのイーニン、カザフスタンのアラル海、カスピ海、黒海沿岸のオデッサ(緯度46度)、ロストフ(緯度47度)を経て、トルコ、地中海、欧州へ達する。中心部の緯度が40度あたりの日本海を発した草原ルート(ハイウェー)は、40度から50度あたりを地中海へ向かい緯度37度あたりの地中海へ達する。
例えば、人間の移動速度に対して、馬が3倍であると、物理的な位置関係は人間の感覚の中では大きく変化することになる。東西が南北に対して3分の1の距離に縮小する。馬が5倍であると仮定して、東西を5分の1に縮小して世界地図(馬の世界地図)を書いてみたことがあるが、地中海、欧州は他の地域よりはるかに近くなり、もっとも身近な異国のイメージになる。
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