1.日本の強みは3つあります。
1)SQDC(安全・品質・納期・コスト)をいかに社員に実行させるか。
2)環境・省エネ・最先端技術・改善手法・ブランドを強みとする企業へどう転換するか。
3)基礎となる5S(整理・整頓・掃除・清潔・躾)の哲学を持った社員をどう育てるか。
の3つです。
日本の世界に対するブランドは今後大きく変わってきます。それは「製造業」から「スマートシティ」創造への転換です。
ベンチマークする企業も替ります。
トヨタ、ソニーといった自動車、家電から、三菱、日立、東芝からセブンイレブンまでのスマートシティを創造できる企業から学ばなければなりません。
グローバル化には強みだけが重要です。弱みは無視し、強みに特化するという戦略があります。
2.今後のグローバル化における強みを整理すると
1)トヨタ生産方式
2)ロボット
3)アニメ・ゲーム
4)コンビニ
です。
3.最先端技術は独自ブランドを開発する意味でも重要です。
学ぶべき企業は次々登場しています。
日本の最先端ロボット技術とトヨタ生産方式が合わさった企業がコマツとも考えられます。
ロボットとアニメ・ゲームが結びつき世界を制覇しようとしたのがかつてのソニーという見方もあります。
4.中国上海で、世界でもっとも高いビルを建設したのは森ビルです。
これはただのビルではありません。
ビル1つが世界最先端のスマートシティとなっています。
ビルは建物ではなく都市であることを学ぶべきです。
このビルは「進化する」ビルです。日本のビルは改善チームを作って、建設後も環境・省エネを追求、進化していきます。
膨大な費用をかけて環境都市を創るより、すべてのビルをスマートにするほうが簡単だと思いませんか。
日本の建設業、清水建設、鹿島、大林から学んで世界にスマート「ビル」を作るという考え方もあります。
5.コンビニは街を変えます。
スーパーマーケットは街の一部を変えますが、コンビニは都市全体を変えます。
中国全体でコンビニは50万店できるかもしれません。
コンビニは3千点の商品が並んでいます。最先端の情報システムと金融機能を持ち省エネ技術もあります。
このコンビニも改善チ―ムを持っていて日々進化します。1年たてば3千点はまったく異なる商品がお客の好みに合わせて陳列されています。
6.新しい日本のグローバルな強みは、
環境・省エネ都市・最先端技術・物流が加わります。キーワードは「改善進化チーム」です。
2011年12月23日金曜日
組織加速の体系づくりが喫緊の課題
グーグルは検索の人工知能化、トヨタ自動車はトヨタ生産方式でスピードを向上させてきた。この原理の拡張で中国でのスピードに対抗できる6倍以上の「加速の体系」作りを試みてきた。トヨタ生産方式は可視化と停止(自働化)によって拙速を巧速に変える。リードタイム短縮は組織の細分化、最終的に一人作業、多作業・並列化へと進む「加速の体系」である。これに人口知能による加速化が加わる「ロボット経済」が未来の経済であり、その中で企業の加速化に成功した企業が未来の勝者となる。
日本企業の経営者のグローバル化支援のための加速手法は喫緊の課題である。経営者、幹部、管理者、本社スタッフの加速の手法が整備される必要がある。また加速がどのような影響を人材に与えるか、加速に向いた社員とはどのような資質を持つかがも問われなくてはならない。人材育成、社員の教育のためにも加速の体系作りが待たれる。
また加速の研究が一定の成果を収めれば、「遅くする経営の効果」といった興味深い研究も考えられる。スピード経営の本質は加速・減速・・・・の妙にある。
日本企業の経営者のグローバル化支援のための加速手法は喫緊の課題である。経営者、幹部、管理者、本社スタッフの加速の手法が整備される必要がある。また加速がどのような影響を人材に与えるか、加速に向いた社員とはどのような資質を持つかがも問われなくてはならない。人材育成、社員の教育のためにも加速の体系作りが待たれる。
また加速の研究が一定の成果を収めれば、「遅くする経営の効果」といった興味深い研究も考えられる。スピード経営の本質は加速・減速・・・・の妙にある。
系列におけるスピードと国内空洞化
日本の海外事業は、欧米企業の海外進出と異なり、進出後もネットワークは弱まらず、絆の強さがスピードでは負の効果となることも多い。
しかし、この系列は国内空洞化においては正の効果をもたらしているとの指摘がある。系列は、空洞化、高齢化・人口減少の日本と加速する海外を「仕事の連携」による信頼で強く繋ぎ、海外の成長を国内の成長へと結びつける絆になる。
吉川(2011)は戦後、経済成長率は人口の増加率と大きく離れているとして、元経済産業省次官望月(2011)は「積極的に海外投資した中小企業の国内の雇用はいったん少し減るが、数年後には元より増えるケースが多い」と述べ、空洞化・人口減少危機は杞憂との見解である 。
しかし、この系列は国内空洞化においては正の効果をもたらしているとの指摘がある。系列は、空洞化、高齢化・人口減少の日本と加速する海外を「仕事の連携」による信頼で強く繋ぎ、海外の成長を国内の成長へと結びつける絆になる。
吉川(2011)は戦後、経済成長率は人口の増加率と大きく離れているとして、元経済産業省次官望月(2011)は「積極的に海外投資した中小企業の国内の雇用はいったん少し減るが、数年後には元より増えるケースが多い」と述べ、空洞化・人口減少危機は杞憂との見解である 。
本社スタッフによるスピード型組織設計
1.スピード型組織
本社スタッフによる企業組織の加速化の体系について論じる。携帯電話の基地局など通信機器で中国最大手の華為は現場の事業に権限を委譲させ、経営層は事後承認で、事業の意思決定を早くし急成長している。本部で決定した後に現場で実行していた社内体制を改めた(華為副会長胡,2011)。今は現場で決定し、本部が追認するスタイルである。これにより迅速に市場のニーズに対応できる。
この華為の現場は、顧客・営業・商品企画・技術・生産・販売までの一貫した「一匹物」でなければならない。世界パソコン大手のレノボは、部品などを自社で手掛ける垂直統合的な企業には強みがある(レノボCEO楊,2011)。最終的な顧客のニーズを理解するだけでなく、同じ目標に向かって社内の各部門を革新へ向かわせることができる、と述べている。
トヨタ自動車は、かつて愛知県に部品産業を集積させ、ジャスト・イン・タイムのスピード開発・生産を実現させた。現在は世界に拡散しすぎた。顧客に近いところに出来るだけ小規模な集積された完結されたクラスタを作り、それら現場の決定を本社が追認する華為のスタイルは決定が早い。
2.グループ経営における多能化と長期的関係強化による加速
2011年3月11日の大震災、2011年秋のタイの大洪水は部品、組立企業の開発・生産において特定少数企業依存の体制が大きな問題であることを明らかにした。80年代日本国内に集積していたトヨタグループは、「ボディ・ローテーション」という開発・生産車種を取引企業間で頻繁に移動、生産能力を汎用化、標準化させるモデルであった。不況、市場変化に柔軟にスピード対処するシステムであった(清家,1995a)。車種・部品の移動をグループ内で行い、各企業を多能化、市場変化への対処速度を向上、災害に強い組織ともなっていた(清家,1995b)。このモデルは、トヨタの海外展開とともに機能が弱っていった。このモデルは将来、海外も含めて取引先間で機能させ、それで加速と「企業と取引先の安定」を図ることができる。
これらの組織においては長期的信頼関係が加速の基礎となる。新日本製鐵会長の三村(2011)は、「ポスコ、宝鋼集団、ウジミナスの製鉄所建設へ全面協力した。彼らとは市場では激しく競合しているが、長い歴史を共有し深い信頼感がある」とした。信頼感と並んで「互いの技術がほぼ同じ、長期的経営など基本的なフィロソフィが同じ」がソフト・アライアンスの条件としている。同じ技術レベル、長期的経営、信頼感といった「絆」が日本の組織=系列の強みの要諦である。
本社スタッフによる企業組織の加速化の体系について論じる。携帯電話の基地局など通信機器で中国最大手の華為は現場の事業に権限を委譲させ、経営層は事後承認で、事業の意思決定を早くし急成長している。本部で決定した後に現場で実行していた社内体制を改めた(華為副会長胡,2011)。今は現場で決定し、本部が追認するスタイルである。これにより迅速に市場のニーズに対応できる。
この華為の現場は、顧客・営業・商品企画・技術・生産・販売までの一貫した「一匹物」でなければならない。世界パソコン大手のレノボは、部品などを自社で手掛ける垂直統合的な企業には強みがある(レノボCEO楊,2011)。最終的な顧客のニーズを理解するだけでなく、同じ目標に向かって社内の各部門を革新へ向かわせることができる、と述べている。
トヨタ自動車は、かつて愛知県に部品産業を集積させ、ジャスト・イン・タイムのスピード開発・生産を実現させた。現在は世界に拡散しすぎた。顧客に近いところに出来るだけ小規模な集積された完結されたクラスタを作り、それら現場の決定を本社が追認する華為のスタイルは決定が早い。
2.グループ経営における多能化と長期的関係強化による加速
2011年3月11日の大震災、2011年秋のタイの大洪水は部品、組立企業の開発・生産において特定少数企業依存の体制が大きな問題であることを明らかにした。80年代日本国内に集積していたトヨタグループは、「ボディ・ローテーション」という開発・生産車種を取引企業間で頻繁に移動、生産能力を汎用化、標準化させるモデルであった。不況、市場変化に柔軟にスピード対処するシステムであった(清家,1995a)。車種・部品の移動をグループ内で行い、各企業を多能化、市場変化への対処速度を向上、災害に強い組織ともなっていた(清家,1995b)。このモデルは、トヨタの海外展開とともに機能が弱っていった。このモデルは将来、海外も含めて取引先間で機能させ、それで加速と「企業と取引先の安定」を図ることができる。
これらの組織においては長期的信頼関係が加速の基礎となる。新日本製鐵会長の三村(2011)は、「ポスコ、宝鋼集団、ウジミナスの製鉄所建設へ全面協力した。彼らとは市場では激しく競合しているが、長い歴史を共有し深い信頼感がある」とした。信頼感と並んで「互いの技術がほぼ同じ、長期的経営など基本的なフィロソフィが同じ」がソフト・アライアンスの条件としている。同じ技術レベル、長期的経営、信頼感といった「絆」が日本の組織=系列の強みの要諦である。
2011年12月16日金曜日
孫子の兵法におけるスピードのイメージ
経営、経済におけるスピードについて常々考えているが、イメージは生物学、戦争論、スポーツ研究から求めることが多い。
例えば、戦争論でナポレオンが常に座右に置いたのが「孫子の兵法」であると言われている。孫子は、スピードとは「疾」と「勢」、「先」と「後」の2つのイメージで述べているのではないか、と感じている。今枝二郎(2004)『孫子のことば』斯文会は分かりやすい適書であると思い、そこからピックアップ列挙させていただくと
激水の疾くして石を漂わすに至る者は、勢なり。鷙鳥(しちょう)の撃ちて毀折(きせつ)に至る者は、節(=時機)なり。是の故に善く戦う者は、其の勢は険、其の節は短なり。勢は弩(ど)を彍(は)るが如く、節は機を発するが如し。紛紛紜紜(ふんぷんうんうん)、闘い乱れて乱すべからず、渾渾沌沌(こんこんとんとん)、形円くして敗るべからざるなり。P73
勇怯は勢なり。P75
故に善く戦う者は、之を勢に求め、人に責めず。故に能く人を択(えら)びて勢に任ぜしむ。勢に任ずる者は、其の人を戦わしむるや、木石を転ずるが如し。木石の性は、安ければ則ち静かに、危うければ則ち動き、方なれば則ち止まり、円なれば則ち行く。故に善く人を戦わしむるの勢い、円石を千仞(せんじん)の山に転ずるが如くなる者は、勢なり。P77
進みて禦(ふせ)ぐべからざる者は、其の虚を衝けばなり。退きて追うべからざる者は、速(すみや)かにして及ぶべからざればなり。P85
軍争(主導権争い=>機先)の難きは、迂(う)を以って直と為し、患(かん)を以て利と為せばなり。故に其の途(みち)を迂にして之を誘うに利を以てし、人に後れて発し、人に先んじて至る。これ迂直の計を知る者なり。軍争は利たり、軍争は危たり、軍を挙げて利を争わば、則ち及ばず、軍を委(す)てて利を争わば、則ち輜重捐(す)てられる。
是(こ)の故に、甲(よろい)を巻きて趨(はし)り、日夜処(お)らず、道を倍して兼行し、百里にして利を争わば、則ち三将軍を擒(とりこ)にせらる。勁(つよ)き者は先だち、疲るる者は後れ、その法、十にして一(いつ)至る。五十里にして利を争わば、則ち上将軍を蹶(たお)す。其の法、半ば至る。三十里にして利を争わば、則ち三分の二至る。P99
故に兵は詐(さ)を以て立ち、利を以て動き、分合(分散と集合)を以て変を為す者なり。故に其の疾きこと風の如く、其の徐(しずか)なること林の如く、侵掠(しんりゃく)すること火の如く、動かざること山の如く、知り難きこと陰の如く、動くこと雷(いかずち)の震うが如くにして、嚮(むか)うを指(しめ)す衆を分かち、地を廊(ひろ)むるに利を分かち、権を懸けて動く。迂直の計を先知する者は勝つ。此れ軍争の法なり。P102
故に将に五危有り。必死は殺され、必生(ひつせい)は虜にされ、忿速(ふんそく=あせって怒り狂う)は侮られ、廉潔は辱められ、愛民は煩さる。P119
隘(せま)き形には、我れ先に之に居らば、必ず之を盈(み)たして以て敵を待つ。若し敵先に之に居り、盈つれば而ち従うこと勿(なか)れ。盈たざれば而ち之に従え。険なる形には、我れ先に之に居らば、必ず高陽に居りて以て敵を待つ。若し敵先に之に居らば、引きて之を去りて従うこと勿れ。P145
孫子曰く、用兵の法には、散地有り、軽地有り、争地有り、交地有り、衢(く)地有り、重地有り、圮(ひ)地有り、囲地有り、死地有り。諸侯自ら其の地に戦う者を、散地と為す。人の地に入りて深からざる者を、軽地と為す。我れ得れば則ち利、彼れ得るも亦(ま)た利なる者を、争地と為す。我れ以て往くべく、彼れ以て来たるべき者を、交地と為す。
諸侯の地三属し、先に至らば天下の衆を得る者を、衢地と為す。人の地に入ること深く、城邑(じょうゆう)に背くこと多き者を、重地と為す。山林・険阻・沮択(そたく)を行き、凡そ行き難きの道なる者を、圮地と為す。由りて入る所の者は隘(せま)く、従(よ)りて帰る所の者は迂にして、彼寡にして以て吾が衆を撃つべき者を、囲地と為す。疾く戦えば則ち存し、疾く戦わざれば則ち亡ぶ者を、死地(後方と左右が険しく、前方に敵軍と相対している所)と為す。P159
先ず其の愛する所を奪えば、則ち聴かん。兵の情は速(すみやか)なるを主とす。人の及ばざるに乗じて虞(はか)らざるの道に由り、其の戒めざる所を攻むるなり、と。P164
敵人開闔(こう)すれば必ず亟(すみやか)に之に入り、其の愛する所を先にして微(ひそ)かに之と期し、践墨(せんぼく)して敵に随(したが)い、以て戦事を決す。是の故に始めは処女の如くにして、敵人戸を開くは、後は脱兎の如くにして、敵は拒(ふせ)ぐに及ばず。P181
例えば、戦争論でナポレオンが常に座右に置いたのが「孫子の兵法」であると言われている。孫子は、スピードとは「疾」と「勢」、「先」と「後」の2つのイメージで述べているのではないか、と感じている。今枝二郎(2004)『孫子のことば』斯文会は分かりやすい適書であると思い、そこからピックアップ列挙させていただくと
激水の疾くして石を漂わすに至る者は、勢なり。鷙鳥(しちょう)の撃ちて毀折(きせつ)に至る者は、節(=時機)なり。是の故に善く戦う者は、其の勢は険、其の節は短なり。勢は弩(ど)を彍(は)るが如く、節は機を発するが如し。紛紛紜紜(ふんぷんうんうん)、闘い乱れて乱すべからず、渾渾沌沌(こんこんとんとん)、形円くして敗るべからざるなり。P73
勇怯は勢なり。P75
故に善く戦う者は、之を勢に求め、人に責めず。故に能く人を択(えら)びて勢に任ぜしむ。勢に任ずる者は、其の人を戦わしむるや、木石を転ずるが如し。木石の性は、安ければ則ち静かに、危うければ則ち動き、方なれば則ち止まり、円なれば則ち行く。故に善く人を戦わしむるの勢い、円石を千仞(せんじん)の山に転ずるが如くなる者は、勢なり。P77
進みて禦(ふせ)ぐべからざる者は、其の虚を衝けばなり。退きて追うべからざる者は、速(すみや)かにして及ぶべからざればなり。P85
軍争(主導権争い=>機先)の難きは、迂(う)を以って直と為し、患(かん)を以て利と為せばなり。故に其の途(みち)を迂にして之を誘うに利を以てし、人に後れて発し、人に先んじて至る。これ迂直の計を知る者なり。軍争は利たり、軍争は危たり、軍を挙げて利を争わば、則ち及ばず、軍を委(す)てて利を争わば、則ち輜重捐(す)てられる。
是(こ)の故に、甲(よろい)を巻きて趨(はし)り、日夜処(お)らず、道を倍して兼行し、百里にして利を争わば、則ち三将軍を擒(とりこ)にせらる。勁(つよ)き者は先だち、疲るる者は後れ、その法、十にして一(いつ)至る。五十里にして利を争わば、則ち上将軍を蹶(たお)す。其の法、半ば至る。三十里にして利を争わば、則ち三分の二至る。P99
故に兵は詐(さ)を以て立ち、利を以て動き、分合(分散と集合)を以て変を為す者なり。故に其の疾きこと風の如く、其の徐(しずか)なること林の如く、侵掠(しんりゃく)すること火の如く、動かざること山の如く、知り難きこと陰の如く、動くこと雷(いかずち)の震うが如くにして、嚮(むか)うを指(しめ)す衆を分かち、地を廊(ひろ)むるに利を分かち、権を懸けて動く。迂直の計を先知する者は勝つ。此れ軍争の法なり。P102
故に将に五危有り。必死は殺され、必生(ひつせい)は虜にされ、忿速(ふんそく=あせって怒り狂う)は侮られ、廉潔は辱められ、愛民は煩さる。P119
隘(せま)き形には、我れ先に之に居らば、必ず之を盈(み)たして以て敵を待つ。若し敵先に之に居り、盈つれば而ち従うこと勿(なか)れ。盈たざれば而ち之に従え。険なる形には、我れ先に之に居らば、必ず高陽に居りて以て敵を待つ。若し敵先に之に居らば、引きて之を去りて従うこと勿れ。P145
孫子曰く、用兵の法には、散地有り、軽地有り、争地有り、交地有り、衢(く)地有り、重地有り、圮(ひ)地有り、囲地有り、死地有り。諸侯自ら其の地に戦う者を、散地と為す。人の地に入りて深からざる者を、軽地と為す。我れ得れば則ち利、彼れ得るも亦(ま)た利なる者を、争地と為す。我れ以て往くべく、彼れ以て来たるべき者を、交地と為す。
諸侯の地三属し、先に至らば天下の衆を得る者を、衢地と為す。人の地に入ること深く、城邑(じょうゆう)に背くこと多き者を、重地と為す。山林・険阻・沮択(そたく)を行き、凡そ行き難きの道なる者を、圮地と為す。由りて入る所の者は隘(せま)く、従(よ)りて帰る所の者は迂にして、彼寡にして以て吾が衆を撃つべき者を、囲地と為す。疾く戦えば則ち存し、疾く戦わざれば則ち亡ぶ者を、死地(後方と左右が険しく、前方に敵軍と相対している所)と為す。P159
先ず其の愛する所を奪えば、則ち聴かん。兵の情は速(すみやか)なるを主とす。人の及ばざるに乗じて虞(はか)らざるの道に由り、其の戒めざる所を攻むるなり、と。P164
敵人開闔(こう)すれば必ず亟(すみやか)に之に入り、其の愛する所を先にして微(ひそ)かに之と期し、践墨(せんぼく)して敵に随(したが)い、以て戦事を決す。是の故に始めは処女の如くにして、敵人戸を開くは、後は脱兎の如くにして、敵は拒(ふせ)ぐに及ばず。P181
課長の業務スピード化と未来イメージ
1.取引コストから、さらに2倍の加速を目標
トヨタ生産方式のジャスト・イン・タイムの原理は製造現場から物流、他へと拡張、応用されている。ジャスト・イン・タイムは顧客が引取る(購入)ことにより実現される。顧客引取りの原理である。21世紀、ジャスト・イン・タイムは製造から小売・流通・サービス、情報通信、コンテンツビジネス、インターネットビジネスまですべての事業に共通の原理となりつつある。
宣伝・営業・予測・戦略による販売と異なり、顧客引取りは系列取引に分類される。取引コストが低下する 。顧客が引取ることにより、予測時間・計画時間・商品・サービス企画が大幅短縮され、在庫が劇的に削減される。21世紀、在庫の概念は、製品、部品といったモノだけでなく、知識・情報といったコトまで拡張されている。コトの在庫の概念である。
在庫減少は計画を単純化させ、さらに時間を短縮させる。顧客引取りの前提は顧客とのコラボレーションである、①顧客ソリューションと②ユーザーサプライヤーインタラクション(顧客共同開発:MITフォン・ヒッペル教授)が重要である。
さらなる加速
日本型組織は、野中・徳岡(2011)の「心身一体となった融通むげの現場力、全体の利益を考える共通善の判断力」が強みで、学習と訓練によってさらなる加速が可能になる企業文化を醸成した。組織は、顧客とのコラボレーションを通じて個別対応・即応し、顧客同期化を行えば加速される。同期化の際、顧客動向の変化が少ないときは能力平準化で加速できる。顧客の動向が不透明なとき、顧客即応するには組織の小規模化(一人営業)とリードタイムの短縮が加速で有効である。
一人営業・一人事業・一人組立
一人営業、一人事業、一人組立を行い、情報通信・知能化を並行させる「情報装備一人化」が加速の方向である(清家,1999)。リードタイム短縮は加速の有効な手段であり、投資、運転資金(棚卸資産、決済資金、手持資金)の削減に繋がる(田中,2009)。
ミドルの加速(前回)で4倍に、今回の課長の加速で2倍。ここまでで(4×2)8倍の加速が可能となる。
2.課長の加速の未来イメージ
課長は、組織内でもっとも早く現場の変化の影響を受ける。現在職場には2つの現場が共存する。ひとつは現実の職場であり、もうひとつがインターネットを介在する「現場」である。現実の職場の変化とインターネットの変化を先取りしなければならない。
インターネットの現場の変化とは何か。近未来インターネットで連結された機器(ソフト)が企業内外で普及、知能化していって、相互に人間に代わり高速で交信を始める未来企業社会は桁外れのスピード経済となる可能性が高い。これがインターネットの現場の変化である。株の高速取引が代表であり、グーグルのInternet of Thingsは「機器、家電、自動車などがインターネットに常時接続状態」になり、桁外れの加速のきっかけとなる。
スマートメーターはツイッターで「電力使いすぎ」とつぶやき、企業や家庭で発電した電力の売買を人工知能で瞬時に仲介する。取引速度はナノ単位である。
人工知能による取引加速が世界的規模で機器、家電・自動車間で起これば、取引速度は天文学的になり、経済は加速する。
トヨタ生産方式のジャスト・イン・タイムの原理は製造現場から物流、他へと拡張、応用されている。ジャスト・イン・タイムは顧客が引取る(購入)ことにより実現される。顧客引取りの原理である。21世紀、ジャスト・イン・タイムは製造から小売・流通・サービス、情報通信、コンテンツビジネス、インターネットビジネスまですべての事業に共通の原理となりつつある。
宣伝・営業・予測・戦略による販売と異なり、顧客引取りは系列取引に分類される。取引コストが低下する 。顧客が引取ることにより、予測時間・計画時間・商品・サービス企画が大幅短縮され、在庫が劇的に削減される。21世紀、在庫の概念は、製品、部品といったモノだけでなく、知識・情報といったコトまで拡張されている。コトの在庫の概念である。
在庫減少は計画を単純化させ、さらに時間を短縮させる。顧客引取りの前提は顧客とのコラボレーションである、①顧客ソリューションと②ユーザーサプライヤーインタラクション(顧客共同開発:MITフォン・ヒッペル教授)が重要である。
さらなる加速
日本型組織は、野中・徳岡(2011)の「心身一体となった融通むげの現場力、全体の利益を考える共通善の判断力」が強みで、学習と訓練によってさらなる加速が可能になる企業文化を醸成した。組織は、顧客とのコラボレーションを通じて個別対応・即応し、顧客同期化を行えば加速される。同期化の際、顧客動向の変化が少ないときは能力平準化で加速できる。顧客の動向が不透明なとき、顧客即応するには組織の小規模化(一人営業)とリードタイムの短縮が加速で有効である。
一人営業・一人事業・一人組立
一人営業、一人事業、一人組立を行い、情報通信・知能化を並行させる「情報装備一人化」が加速の方向である(清家,1999)。リードタイム短縮は加速の有効な手段であり、投資、運転資金(棚卸資産、決済資金、手持資金)の削減に繋がる(田中,2009)。
ミドルの加速(前回)で4倍に、今回の課長の加速で2倍。ここまでで(4×2)8倍の加速が可能となる。
2.課長の加速の未来イメージ
課長は、組織内でもっとも早く現場の変化の影響を受ける。現在職場には2つの現場が共存する。ひとつは現実の職場であり、もうひとつがインターネットを介在する「現場」である。現実の職場の変化とインターネットの変化を先取りしなければならない。
インターネットの現場の変化とは何か。近未来インターネットで連結された機器(ソフト)が企業内外で普及、知能化していって、相互に人間に代わり高速で交信を始める未来企業社会は桁外れのスピード経済となる可能性が高い。これがインターネットの現場の変化である。株の高速取引が代表であり、グーグルのInternet of Thingsは「機器、家電、自動車などがインターネットに常時接続状態」になり、桁外れの加速のきっかけとなる。
スマートメーターはツイッターで「電力使いすぎ」とつぶやき、企業や家庭で発電した電力の売買を人工知能で瞬時に仲介する。取引速度はナノ単位である。
人工知能による取引加速が世界的規模で機器、家電・自動車間で起これば、取引速度は天文学的になり、経済は加速する。
2011年12月9日金曜日
ミドルによるビジネスプロセスのスピード化
1.プロセス短縮 自働化 4倍のスピード化
日本型企業がグローバルに勝つには戦略に頼らずミドルマネジメントを中核としたひたむきな革新と訓練・努力しかない。中国企業の6倍速を超える8倍速のスピードを達成すれば負けない。
プロセスを4分の1に短縮する。
① プロセスから外された4分の3を並行作業へ
② 並行作業は「自働化原理」によって停止機能を持った機械、知能ソフトの支援で加速する。
③ 多台持ち(多ソフト持ち)を行うことで並行作業を増やし、(逆算で)加速する。
プロセスの4分の3は、外部化、枝分かれし、同時並行作業が行われることになる。トヨタ自動車は溶接、塗装、艤装、検査を残し、部品を系列企業へ外部化、並行作業とすることによって、プロセスが短縮されている。
グーグルは世界の顧客のプロセスの「検索作業」のみをビジネスとし、プロセスは短い。トヨタ自動車は系列企業から自動車ディーラまでのプロセスのスピードを上げた 。グーグルはインターネットで検索を行う顧客のスピードを上げた。
2.グーグルとトヨタ自動車には類似点が見られる。
グーグルは情報の流通を通じて関係者の創造のスピードを向上させた。自動車は顧客の活動のスピードを向上させる。特に自動車が普及していない新興国では顧客の活動のスピードアップは大きな役割である。トヨタ自動車はグーグルと類似な役割を担っている。トヨタ自動車はトヨタ生産方式により取引先のもの(部品・素材)の創造のスピードの向上を図っている。トヨタ自動車は社内の作業をスピード化させる組織である。グーグルは社外のスピードを向上させる組織である。
プロセスの加速はトヨタ生産方式では、安全・品質・コストの拘束条件と制限条件の中で2つの方式で行われる。自働化とジャスト・イン・タイムである。自働化は不良品を出す前に停止する。これはトラブルを事前に防ぎ、検査作業、修正時間を無くし、修理時間のみとする。修正時間はトラブル発見までの時間に比例して大きくなり、プロセスを遅くする。自働化すると修正時間は無くなり、修理時間のみとなる。修正時間が無くなることは速度を向上させる。トヨタグループの創業者である豊田佐吉は豊田式自動織機を発明した。この織機は糸が切れると自動停止するため、作業者一人で数十台の管理・並行作業を行うようになり、数十倍のスピード化を実現した。
3.トヨタ方式自働化とインターネット
自働化は多台持ち・多工程持ち・多能工化によるスピード化の基本的原理となっている。ソフトウェアの管理・並行作業においては豊田自動織機と同じ自働化原理が有効である。インターネットにおける知能化された検索、各種知能ソフト、クラウドに加えて、業務可視化の時代には企業内のほとんどの業務を「自働化」の原理で加速化することが可能となる。
クラウド下の仕事では、社内文書をデータベースに整理するより、情報や文章を全文検索したほうが早い。
部下の管理では、自働化の原理を応用できれば、部下への大幅な権限委譲により加速できる。商品開発、研究開発、事業開発も自働化の原理があれば、上位経営層は大幅な権限委譲が出来、開発の加速が実現できる。
ここまでで4倍の加速を狙うことが可能である。
日本型企業がグローバルに勝つには戦略に頼らずミドルマネジメントを中核としたひたむきな革新と訓練・努力しかない。中国企業の6倍速を超える8倍速のスピードを達成すれば負けない。
プロセスを4分の1に短縮する。
① プロセスから外された4分の3を並行作業へ
② 並行作業は「自働化原理」によって停止機能を持った機械、知能ソフトの支援で加速する。
③ 多台持ち(多ソフト持ち)を行うことで並行作業を増やし、(逆算で)加速する。
プロセスの4分の3は、外部化、枝分かれし、同時並行作業が行われることになる。トヨタ自動車は溶接、塗装、艤装、検査を残し、部品を系列企業へ外部化、並行作業とすることによって、プロセスが短縮されている。
グーグルは世界の顧客のプロセスの「検索作業」のみをビジネスとし、プロセスは短い。トヨタ自動車は系列企業から自動車ディーラまでのプロセスのスピードを上げた 。グーグルはインターネットで検索を行う顧客のスピードを上げた。
2.グーグルとトヨタ自動車には類似点が見られる。
グーグルは情報の流通を通じて関係者の創造のスピードを向上させた。自動車は顧客の活動のスピードを向上させる。特に自動車が普及していない新興国では顧客の活動のスピードアップは大きな役割である。トヨタ自動車はグーグルと類似な役割を担っている。トヨタ自動車はトヨタ生産方式により取引先のもの(部品・素材)の創造のスピードの向上を図っている。トヨタ自動車は社内の作業をスピード化させる組織である。グーグルは社外のスピードを向上させる組織である。
プロセスの加速はトヨタ生産方式では、安全・品質・コストの拘束条件と制限条件の中で2つの方式で行われる。自働化とジャスト・イン・タイムである。自働化は不良品を出す前に停止する。これはトラブルを事前に防ぎ、検査作業、修正時間を無くし、修理時間のみとする。修正時間はトラブル発見までの時間に比例して大きくなり、プロセスを遅くする。自働化すると修正時間は無くなり、修理時間のみとなる。修正時間が無くなることは速度を向上させる。トヨタグループの創業者である豊田佐吉は豊田式自動織機を発明した。この織機は糸が切れると自動停止するため、作業者一人で数十台の管理・並行作業を行うようになり、数十倍のスピード化を実現した。
3.トヨタ方式自働化とインターネット
自働化は多台持ち・多工程持ち・多能工化によるスピード化の基本的原理となっている。ソフトウェアの管理・並行作業においては豊田自動織機と同じ自働化原理が有効である。インターネットにおける知能化された検索、各種知能ソフト、クラウドに加えて、業務可視化の時代には企業内のほとんどの業務を「自働化」の原理で加速化することが可能となる。
クラウド下の仕事では、社内文書をデータベースに整理するより、情報や文章を全文検索したほうが早い。
部下の管理では、自働化の原理を応用できれば、部下への大幅な権限委譲により加速できる。商品開発、研究開発、事業開発も自働化の原理があれば、上位経営層は大幅な権限委譲が出来、開発の加速が実現できる。
ここまでで4倍の加速を狙うことが可能である。
2011年12月6日火曜日
CEOの意思決定のスピード化
①集団感覚による切迫感と慣れは中国企業の現在であり、②意思決定の早さは欧米、韓国企業が優位で、いずれも日本企業は劣る場合が多い。意思決定を早くするには、ミッションを作成し、意思決定における拘束条件と制限条件を事前に合意し、経営層は、下位の管理者、技術者に意思決定を委譲する。グーグルはミッションを少数で共有し、日本のYKKは全社員で共有し、意思決定を早めている。グーグルは「世界中の人が世界中の情報を整理してアクセスできて使えるようにする」スピード×人数×情報量であると単純明快である。グーグルはミッションの単純化、YKKはミッションの「分かりやすい言葉への置き換え(YKK社長猿丸,2011)」で早くしている。
製品選択の単純化は意思決定を単純化する。IBMは事業進出の基準に分野ごとのコンピュータのトランザクション数の増加を使う。サムスンは顧客の徹底的調査、製品の選択集中、大量生産販売で成功した。グーグルは、コンテンツを保有しないことで事業を単純化、事業遂行における意思決定を早くしている。意思決定は「ミッションステートメート(レゾンデートル:投入の決定の早さ)×課金しない(ビジネスモデル:過程の決定の早さ)によって、2重の加速が行われる。拘束条件、制限条件の範囲内での意思決定は報告の必要はないため決定は早い。意思決定は勇気と度胸であり「拙速は巧遅に勝る60点で即決せよ」は土光敏夫元経団連会長の戒めである(清家,1980)。
日本人CEOが意思決定を早めるには事前の準備、将来への布石作りが重要である。この点でグーグルから学ぶことが出来る。グーグルはパートナー企業の選定において自然に制限条件ができている。決定が早いということがグーグルのパートナー企業となる条件である 。日本企業がCEOに意思決定の早さを求めるなら意思決定が早い経営者がいる企業をパートナーに選ぶべきである。
グーグルは将来のために現在へ投資をする 。Gmailは将来のメール検索の速度を速くできるようにと考えたグーグルの布石的な投資である。日本企業も同様な布石を打てば、自然にCEOの意思決定は早くならざるを得なくなる。
産業自体の変質は加速を促す。コンピュータ、携帯、サービスなど従来の産業区分は無意味になった。変化の速さに対応できなければ、一瞬にして淘汰される(サムスン電子副会長李,2011)。区分が融合した産業ではもっともスピードが速い事業のモデルに他の産業は合わさざるをえない。経営層、社員すべての意識転換と教育が必要である。
製品選択の単純化は意思決定を単純化する。IBMは事業進出の基準に分野ごとのコンピュータのトランザクション数の増加を使う。サムスンは顧客の徹底的調査、製品の選択集中、大量生産販売で成功した。グーグルは、コンテンツを保有しないことで事業を単純化、事業遂行における意思決定を早くしている。意思決定は「ミッションステートメート(レゾンデートル:投入の決定の早さ)×課金しない(ビジネスモデル:過程の決定の早さ)によって、2重の加速が行われる。拘束条件、制限条件の範囲内での意思決定は報告の必要はないため決定は早い。意思決定は勇気と度胸であり「拙速は巧遅に勝る60点で即決せよ」は土光敏夫元経団連会長の戒めである(清家,1980)。
日本人CEOが意思決定を早めるには事前の準備、将来への布石作りが重要である。この点でグーグルから学ぶことが出来る。グーグルはパートナー企業の選定において自然に制限条件ができている。決定が早いということがグーグルのパートナー企業となる条件である 。日本企業がCEOに意思決定の早さを求めるなら意思決定が早い経営者がいる企業をパートナーに選ぶべきである。
グーグルは将来のために現在へ投資をする 。Gmailは将来のメール検索の速度を速くできるようにと考えたグーグルの布石的な投資である。日本企業も同様な布石を打てば、自然にCEOの意思決定は早くならざるを得なくなる。
産業自体の変質は加速を促す。コンピュータ、携帯、サービスなど従来の産業区分は無意味になった。変化の速さに対応できなければ、一瞬にして淘汰される(サムスン電子副会長李,2011)。区分が融合した産業ではもっともスピードが速い事業のモデルに他の産業は合わさざるをえない。経営層、社員すべての意識転換と教育が必要である。
2011年12月5日月曜日
中国のスピードは世界の6倍 日本企業の研究課題
世界において日本企業に課せられた課題は、①スピード化する時代への対応、②日本企業の得意技の発揮 、③国内空洞化・人口減への対策の3点である。中国では「世界の40年は中国の7年」(新華社)といわれている。
日本が40年で進めてきた全国的新幹線網を中国は7年間で展開してきた。約6倍のスピードである。家庭用エアコン世界大手の中国の美的は、80年代から日本企業の経営手法を学び、リーン管理(トヨタ生産方式)で現場の無駄をなくしている(桑原,2011)。90年代にはゼネラル・エレクトロニクス(GE)などの米国企業の経営手法を導入し、事業部制など権限を分散させ、市場の変化に素早く対応する。事業撤退の意思決定は早い。トヨタ生産方式とGEのジャックウェルチによってスピードを上げた。
またIT産業はドッグイヤーと言われる。犬は1年で人間の7歳分歳を取る。7倍のスピードである。コンピュータの速さは、ムーアの法則では18ヶ月から2年で半分になるが、これが企業を加速させている。
スピード化を実現するには、①集団感覚による切迫感と慣れ、②意思決定の早さ、③プロセスの短縮改善、④学習訓練による習熟の4つの方法が考えられる。本研究はグーグルを研究、トヨタ自動車と比較し、スピード化について「加速の体系」で日本企業の経営者のグローバル化の支援とする。目標は6倍のスピード化である。
日本が40年で進めてきた全国的新幹線網を中国は7年間で展開してきた。約6倍のスピードである。家庭用エアコン世界大手の中国の美的は、80年代から日本企業の経営手法を学び、リーン管理(トヨタ生産方式)で現場の無駄をなくしている(桑原,2011)。90年代にはゼネラル・エレクトロニクス(GE)などの米国企業の経営手法を導入し、事業部制など権限を分散させ、市場の変化に素早く対応する。事業撤退の意思決定は早い。トヨタ生産方式とGEのジャックウェルチによってスピードを上げた。
またIT産業はドッグイヤーと言われる。犬は1年で人間の7歳分歳を取る。7倍のスピードである。コンピュータの速さは、ムーアの法則では18ヶ月から2年で半分になるが、これが企業を加速させている。
スピード化を実現するには、①集団感覚による切迫感と慣れ、②意思決定の早さ、③プロセスの短縮改善、④学習訓練による習熟の4つの方法が考えられる。本研究はグーグルを研究、トヨタ自動車と比較し、スピード化について「加速の体系」で日本企業の経営者のグローバル化の支援とする。目標は6倍のスピード化である。
2011年12月4日日曜日
グーグルの世界史的意味
社会、企業は創造人材と転写人材(東京大学藤本隆宏教授)を抱えている。転写人材はものと情報の転写に従事し転写スピードの向上で評価される。トヨタ自動車は少数の創造人材と多くの転写人材で成立する。グーグルは社内の創造人材のみを残し転写人材を無くした存在である。
トヨタの課題は社内(系列を含む)の転写作業のスピード向上であり、グーグルは社外の創造作業のスピード向上である。膨大な転写人材を生み出したのは産業革命以降である。マルクス以来多くの論者が論じてきたのは転写人材で生き甲斐を多くの人は得られないという点のみである。体験上欧米、中国、インドなどの海外企業の経営指導を通じても転写人材の幸せな笑顔を見ることは少ない。グーグルは転写人材を解放し、転写人材が創造人材として生きる支援を行う。グーグルによって創造時間は短縮され調査コストは下がり、余暇を持って創造に勤しむことが促進された。スピードの向上によって転写人材が解放されたのである。これがグーグルの世界史的な意味であり、本質ではないかと思われる。
グーグルの社外に対してトヨタは社内で人材を生かす。拘束と転写は高い専門性を育む条件でもある。どちらが人間を幸せにするか。これは哲学論争でもある。社外と社内、自由と拘束、創造と転写、世界は二分される。両社の世界史における評価は、係わる人間の幸せとスピードで測られる。
トヨタの課題は社内(系列を含む)の転写作業のスピード向上であり、グーグルは社外の創造作業のスピード向上である。膨大な転写人材を生み出したのは産業革命以降である。マルクス以来多くの論者が論じてきたのは転写人材で生き甲斐を多くの人は得られないという点のみである。体験上欧米、中国、インドなどの海外企業の経営指導を通じても転写人材の幸せな笑顔を見ることは少ない。グーグルは転写人材を解放し、転写人材が創造人材として生きる支援を行う。グーグルによって創造時間は短縮され調査コストは下がり、余暇を持って創造に勤しむことが促進された。スピードの向上によって転写人材が解放されたのである。これがグーグルの世界史的な意味であり、本質ではないかと思われる。
グーグルの社外に対してトヨタは社内で人材を生かす。拘束と転写は高い専門性を育む条件でもある。どちらが人間を幸せにするか。これは哲学論争でもある。社外と社内、自由と拘束、創造と転写、世界は二分される。両社の世界史における評価は、係わる人間の幸せとスピードで測られる。
スマートシティスピード経営 新興国の強みはコストからスピードへ
21世紀、世界企業の競争の場は欧米日から新興国に移動した。新興国の競争力の中心は1990年代~2000年代前半の人件費の安さから、2000年代後半からスピードに変わりつつある。また競争業種も繊維・玩具から家電・自動車へと変わり、現在は生活インフラ産業へ変わってきた。かつて、中国はソニー、トヨタ自動車を待望したが、現在はソニー、トヨタはいらない。
新興国の内需拡大、環境都市インフラブームにのって、世界は製造業から都市生活産業の時代へ移行しようとしている。もはやトヨタ、ソニーは求められず、日立製作所、東芝からセブンイレブン、ローソン、ダイソーが求められる。日本のすべての産業が世界の人々の生活向上のためにグローバル化する時代でもある。
2011年現在でも建設機械においては、中国での設備投資は日本の20分の1で済むといわれている(コマツへの日経新聞取材、2011年)。中国の三一重工のコマツに対する競争力はそこにあるとの考えである。しかし、実は新興国での競争の本質はスピードであった。
中国での企業指導の体験を元にすると、「世界の40年は中国の7年」という新華社の記事が実感として感じられる。社会感覚、時代感覚として40÷7=約6倍のスピードである。中国社会は日本社会より変化が速い。どのような経営を行えばよいか、日本企業は、特に東京本社は理解が出来ない。例えば、中国三一重工とコマツの相違は産業のスピード理解が違う点にある。中国の建設業界の仕事は日本の建設業界より遥かに速い。日本の公共事業の遅さに慣れたコマツの経営者、特に東京の社員は付いていけない。新幹線を40年で建設した日本と7年で建設した中国とは建設業界の構造自体が日本と異なる。スピードはここでも約6倍である。
中国企業の最大の競争力は人件費の安さからスピードへと移りつつある。日本の電機産業は中国での敗退の主因を人件費の安さに挙げ、世界における韓国企業に対する敗退を模倣と技術漏洩などに求めたが、実は時代に置いていかれたスピードの遅さが敗退の原因である。
武田薬品工業社長長谷川(2011)の「世界市場が大きく動く中では何もしないこともリスクだということを忘れてはいけない」が世界企業の行動原理である。
参考文献
長谷川閑史(2011)「何もしないリスク認識を」『日本経済新聞』日本経済新聞社,2011年10月25日朝刊15面
新興国の内需拡大、環境都市インフラブームにのって、世界は製造業から都市生活産業の時代へ移行しようとしている。もはやトヨタ、ソニーは求められず、日立製作所、東芝からセブンイレブン、ローソン、ダイソーが求められる。日本のすべての産業が世界の人々の生活向上のためにグローバル化する時代でもある。
2011年現在でも建設機械においては、中国での設備投資は日本の20分の1で済むといわれている(コマツへの日経新聞取材、2011年)。中国の三一重工のコマツに対する競争力はそこにあるとの考えである。しかし、実は新興国での競争の本質はスピードであった。
中国での企業指導の体験を元にすると、「世界の40年は中国の7年」という新華社の記事が実感として感じられる。社会感覚、時代感覚として40÷7=約6倍のスピードである。中国社会は日本社会より変化が速い。どのような経営を行えばよいか、日本企業は、特に東京本社は理解が出来ない。例えば、中国三一重工とコマツの相違は産業のスピード理解が違う点にある。中国の建設業界の仕事は日本の建設業界より遥かに速い。日本の公共事業の遅さに慣れたコマツの経営者、特に東京の社員は付いていけない。新幹線を40年で建設した日本と7年で建設した中国とは建設業界の構造自体が日本と異なる。スピードはここでも約6倍である。
中国企業の最大の競争力は人件費の安さからスピードへと移りつつある。日本の電機産業は中国での敗退の主因を人件費の安さに挙げ、世界における韓国企業に対する敗退を模倣と技術漏洩などに求めたが、実は時代に置いていかれたスピードの遅さが敗退の原因である。
武田薬品工業社長長谷川(2011)の「世界市場が大きく動く中では何もしないこともリスクだということを忘れてはいけない」が世界企業の行動原理である。
参考文献
長谷川閑史(2011)「何もしないリスク認識を」『日本経済新聞』日本経済新聞社,2011年10月25日朝刊15面
世界のスピード化の歴史とグーグル
1. 問題意識と背景
本研究は情報産業において世界を代表する企業であるグーグルのスピード経営について研究している。グーグルは、製造業のスピード経営として1980年代世界制覇をしたトヨタ自動車と共通点を持っている。本研究は両社の研究の中から日本企業が追求すべきスピード経営について考察する。
グーグルは1998年、学生によるガレージ創業に対してベンチャーキャピタリストが投資したインターネットに関する小規模事業起業から始まった。グーグルにインターネット事業で先行したヤフーは1995年創業であり、グーグルはその3年後に起業したが、2011年現在は先行したヤフーを凌駕し、アップル、フェースブック、アマゾン、IBMと競争を行っている。インターネットの中の情報に対して、ヤフーは目次を作り、グーグルは索引を作ったといわれている。グーグルは起業後10年足らずで世界を代表する企業になり現在にいたっている。
2.世界のスピード化の歴史とグーグル
世界の経済変化は確実に加速されてきている。韓国における成長は圧縮成長 といわれ、中国はさらに加速している。その大きな原因は情報化と金融産業であるとの説があるが、ここではそれについては考察しない。グーグルに代表される情報産業はそれを加速させる存在であった。
1950年代からの日本の成長は、高い教育水準と勤勉さによって、欧米からの学習が速く、加速された成長となった(学習による加速)。1980年代のトヨタ自動車、トヨタ生産方式の世界への影響は自動車産業を中心に研究開発、工場生産、物流を加速させた 。トヨタ生産方式によって、世界の自動車産業は数倍加速され、他の産業へもそのスピード化は伝播した(システム改革による加速)。
それをさらに加速させたのは1990年代のインターネットで、取引コストなどが低下したことにより、さらにスピード化が進展した。情報は物流の時間がゼロでコストが低く、社会を加速させる。また貨幣も同じように物流コストが低い。情報と貨幣は連動し、情報産業と金融投融資のグローバル化は経済を加速させた(情報・貨幣による加速)。
グーグルは21世紀に入り、検索の知能化、クラウドを通じて、さらにビジネスを加速し、情報と貨幣は、国家経済、企業経営を加速させている。
トヨタ生産方式、情報、貨幣が世界を加速したのである。世界は2011年現在、物流はトヨタ方式、情報は米国支配、貨幣は欧州主導といった状況である。
本研究は情報産業において世界を代表する企業であるグーグルのスピード経営について研究している。グーグルは、製造業のスピード経営として1980年代世界制覇をしたトヨタ自動車と共通点を持っている。本研究は両社の研究の中から日本企業が追求すべきスピード経営について考察する。
グーグルは1998年、学生によるガレージ創業に対してベンチャーキャピタリストが投資したインターネットに関する小規模事業起業から始まった。グーグルにインターネット事業で先行したヤフーは1995年創業であり、グーグルはその3年後に起業したが、2011年現在は先行したヤフーを凌駕し、アップル、フェースブック、アマゾン、IBMと競争を行っている。インターネットの中の情報に対して、ヤフーは目次を作り、グーグルは索引を作ったといわれている。グーグルは起業後10年足らずで世界を代表する企業になり現在にいたっている。
2.世界のスピード化の歴史とグーグル
世界の経済変化は確実に加速されてきている。韓国における成長は圧縮成長 といわれ、中国はさらに加速している。その大きな原因は情報化と金融産業であるとの説があるが、ここではそれについては考察しない。グーグルに代表される情報産業はそれを加速させる存在であった。
1950年代からの日本の成長は、高い教育水準と勤勉さによって、欧米からの学習が速く、加速された成長となった(学習による加速)。1980年代のトヨタ自動車、トヨタ生産方式の世界への影響は自動車産業を中心に研究開発、工場生産、物流を加速させた 。トヨタ生産方式によって、世界の自動車産業は数倍加速され、他の産業へもそのスピード化は伝播した(システム改革による加速)。
それをさらに加速させたのは1990年代のインターネットで、取引コストなどが低下したことにより、さらにスピード化が進展した。情報は物流の時間がゼロでコストが低く、社会を加速させる。また貨幣も同じように物流コストが低い。情報と貨幣は連動し、情報産業と金融投融資のグローバル化は経済を加速させた(情報・貨幣による加速)。
グーグルは21世紀に入り、検索の知能化、クラウドを通じて、さらにビジネスを加速し、情報と貨幣は、国家経済、企業経営を加速させている。
トヨタ生産方式、情報、貨幣が世界を加速したのである。世界は2011年現在、物流はトヨタ方式、情報は米国支配、貨幣は欧州主導といった状況である。
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