1.スピード型組織
本社スタッフによる企業組織の加速化の体系について論じる。携帯電話の基地局など通信機器で中国最大手の華為は現場の事業に権限を委譲させ、経営層は事後承認で、事業の意思決定を早くし急成長している。本部で決定した後に現場で実行していた社内体制を改めた(華為副会長胡,2011)。今は現場で決定し、本部が追認するスタイルである。これにより迅速に市場のニーズに対応できる。
この華為の現場は、顧客・営業・商品企画・技術・生産・販売までの一貫した「一匹物」でなければならない。世界パソコン大手のレノボは、部品などを自社で手掛ける垂直統合的な企業には強みがある(レノボCEO楊,2011)。最終的な顧客のニーズを理解するだけでなく、同じ目標に向かって社内の各部門を革新へ向かわせることができる、と述べている。
トヨタ自動車は、かつて愛知県に部品産業を集積させ、ジャスト・イン・タイムのスピード開発・生産を実現させた。現在は世界に拡散しすぎた。顧客に近いところに出来るだけ小規模な集積された完結されたクラスタを作り、それら現場の決定を本社が追認する華為のスタイルは決定が早い。
2.グループ経営における多能化と長期的関係強化による加速
2011年3月11日の大震災、2011年秋のタイの大洪水は部品、組立企業の開発・生産において特定少数企業依存の体制が大きな問題であることを明らかにした。80年代日本国内に集積していたトヨタグループは、「ボディ・ローテーション」という開発・生産車種を取引企業間で頻繁に移動、生産能力を汎用化、標準化させるモデルであった。不況、市場変化に柔軟にスピード対処するシステムであった(清家,1995a)。車種・部品の移動をグループ内で行い、各企業を多能化、市場変化への対処速度を向上、災害に強い組織ともなっていた(清家,1995b)。このモデルは、トヨタの海外展開とともに機能が弱っていった。このモデルは将来、海外も含めて取引先間で機能させ、それで加速と「企業と取引先の安定」を図ることができる。
これらの組織においては長期的信頼関係が加速の基礎となる。新日本製鐵会長の三村(2011)は、「ポスコ、宝鋼集団、ウジミナスの製鉄所建設へ全面協力した。彼らとは市場では激しく競合しているが、長い歴史を共有し深い信頼感がある」とした。信頼感と並んで「互いの技術がほぼ同じ、長期的経営など基本的なフィロソフィが同じ」がソフト・アライアンスの条件としている。同じ技術レベル、長期的経営、信頼感といった「絆」が日本の組織=系列の強みの要諦である。
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