2010年8月24日火曜日
美の観光経済学の試論 ロボット観光
1.“美の連鎖”を形成する“観光”
観光とはその地域を旅することである。しかし、旅は空間(現在)を楽しむだけで無く、同時に時間(歴史)も楽しむ。各地域には歴史があり、その歴史と出会う場は、かつては美術館、博物館にしかなかった。しかし、文化は知識遺伝子として、地域に住むあらゆる人と社会の中に存在する。この人間、社会の知識遺伝子のなかにこそ実は歴史がある。この知識遺伝子は繋がりを持って地域独特の産業を創造した。その繋がる糸が美意識である。知識遺伝子と美意識で結ばれた集団がつくりあげた美の連鎖を考えてみよう。美意識を共有し、評価しあう集団が形成され、完結性が高まり、美の連鎖を形成する。このような美意識の連鎖は、科学者、技術者、産業人にも共通するもので、この評価の輪に参加できた人は、この美の連鎖からの人脈、知識、技術によって支えられ、観光地は美を創造し、進化し続ける、どの地域にもない独自性を持った存在となる。
2.美の連鎖の場と創造過程 美のプラットフォーム
美とは俗語的から専門用語まで極めて広範囲に使用される用語である。情報化の進展は美の創造、活用(美の販売)における主体と客体を曖昧にしている。例えば、絵を趣味とする個人は美の創造主体であると同時に美を受容する客体(消費者)でもあり、そのサークルでの創造と売買においても主体と客体は区別できない。このような集団は非営利集団であり、かつての営利集団である絵画商、放送局、出版社と区別される。
彼らは、場(プラットフォーム)を共有し、創造された美をその場に投げ込む。その知識と行動は集団で共有され、その知識、行動様式は一種の極めてローカルな文化とでも呼べるもので、知識はその解釈と創造・編集が独特の感性・共有体験・文化的排他性を持つがゆえに、独占的に使用される。20世紀は営利集団が美の創造と活用(売買)を支配した。それに対し、21世紀は、非営利集団内での横断的・文化(知識)的枠によって、美の創造、活用は容易に世界的広がりを持つ。
この集団内では美の創造と活用は独占的・共有的知識が増加するほど、そのコミュニケーションの密度は高まり、美の創造と活用の効率は高まる。独占的であるがゆえに提供と使用の関係者は限定され、主体と客体に係わる者は限定されるがゆえに、一般的な美の商業的創造、活用(市場売買)における高い専門的熟練を多くの場合必要としない。したがって、主体と客体は曖昧になる。この中で、現実世界に加わえてインターネットという仮想世界が美の経済学のテーマとなる。
3.美の大衆化とインターネット
インターネットは社会における美の存在形式に大きな変化をもたらしている。美の存在形式として映像、音声、文章を考えてみよう。マス・メディアから一方向に個人が映像、音声、文章としての美を受けとる時代は終わり、双方向で個人、映像、音声、文章としての美を発信する時代になった。同様に個人が企業から一方向で商品・知識に転写された美を受けるのではなく、双方向の時代になった。個人は企業以上の存在となり、美の発信を行いうる。主婦が育児の傍ら日本や米国、中国、インド、ブラジルなど新興国の映像の決定的な創造をなしても不思議ではない。
普通の市民、若者や主婦や高齢者が美を創造する。本研究では、美の創造過程と美の活用過程をいかに経営するかを模索する。美の創造と活用では営利行動と非営利講堂も相互浸透、流動化しあう。美の創造を職業とする映像製作者が、主婦の趣味での創造に競争で負けることもありうる。また、放送局が美の活用過程で、インターネットの個人放送に場を譲ってきている。先進国におけるテレビの不振は今後ますます加速されるだろう。中国、インドなどのテレビ、映画の活況もやがて過去のものになる。
4.人間とアバターの共生 ネットロボット
インターネットでは、いつでも、どこからでもアクセスできる環境で、場所にとらわれない働き方や娯楽が実現しはじめている。
この概念「ユビキタス・コンピューティング」は、一人が複数のコンピュータを使う社会のイメージとしてマーク・ワイザー氏が提唱した。情報端末は、パソコンや携帯電話に限らず、冷蔵庫や電子レンジといった家電製品、自動車、自動販売機等もインターネット接続され、ウェアラブル・コンピュータと呼ばれる身に付けるコンピュータまでいたる。
ソフトウェア、人工知能ソフトの進化は著しい。これらはエージェントソフトとして人間の知的活動をサポートする。インターネット上では人間のキャラクターを代理する人格として多くのソフト上に登場している。
特に仮想大陸で第2の人生を送る自分の代理人「アバター」などはインターネット上で急速に増加している。
これらソフトは、サーバー、パソコン、携帯電話、自動車、家電のナビゲーション上で急速に人間の代替を行いつつある。
特にエージェントが進化し、人間を代替する人格「ネットロボット」になっていくと、このネットロボットと人間の共生がインターネットの課題となる。また機械ロボット(ロボット)は、このネットロボットが仮想世界から出て、現実世界で体を持ったと規定できる。
近未来はネットロボットとロボットに助けられ、物覚えが悪くなった高齢者が現役で働き、家事でネットロボットと電子レンジでの料理メニューを相談し、ロボット化した自動車のナビゲーションをドライバーの癖を知り尽くしたネットロボットがやってくれる。
このイメージは、インターネットで結ばれた家電、自動車へネットロボットが「憑依する」といった表現がぴったりすると思われる。
5.ロボットとネットロボットが創り上げるハイテク観光地
情報化がもたらす新しい時代、その場でも人工知能、ロボットとの人間の共生、そして「美の観光企画」まで以下で触れてみたい。
観光地への誘いはネットロボットがインターネット上で日常的に行う。これは学習型のネットロボットでお客となる都会の人々個人に、日常的に観光相談をする。声を特定の個人にして、その個人のノウハウを学習させ、お客を覚えておいて、相談に応じることが可能である。このネットロボットで対応できないときは、ネットロボットは顧客を待たせておいて、観光課の人間を呼びに行くことになる。観光課の人間もしくは、例えば、バーチャル県知事、バーチャル観光大使(ノーベル賞受賞者、芸能人、スポーツ選手、文化人・・・)は無数にネットロボットとしてクローンを作ることができる。バーチャル県知事は、県知事と違って、間違った発言をしても許されるとか、面白いキャラクターを与えることも自由に出来る。声は県知事と同じ声である。ほぼ、95%は応対できるので、後のどうしても県知事でないと答えられない内容のときだけ、県知事が対応すると考えると、県知事が例えば20名いるのと同じ観光誘致効果が出る。
このバーチャル県知事といったネットロボットが世界の人と友達になって(友達に誘われたら出かけないではおれない)、お客を世界中から探してくると、後は、観光案内ロボットが対応することになる。インターネットから出れば、ネットロボットはロボットに引き継ぐといった形になるので、お客はインターネット内の「友達」に導かれて、自然に観光地にやってきて、ロボットと会うことになる。
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