2010年9月28日火曜日

日本型経営と企業教育革新(1) 世界との相違

 日米欧企業の経営の理念型は大きく異なる。その相違は経営教育においても大きな相違をもたらしている。
日米欧の企業の競争力は1990年代以降ソリューションビジネスとICTを共通とし、経営教育と教育工学投資の重点はここにある。現在、日米欧、韓国、中国、インド企業は中国、インド他、世界のあらゆる地域で対峙している。日本企業は欧米他の世界の企業と経営原理、企業教育原理で大きな相違をみせる。欧米他の企業は市場戦略、日本企業は組織間関係の管理が基礎となる。また欧米企業他は計画に、日本企業は実行過程に成否が依存する。ここで、欧米企業を代表的な事例と考え、日本企業との相違に注目して、欧米企業と日本企業における経営原理と企業教育について論じてみよう。
 例えば中国、インドでの欧米企業と日本企業の振る舞いはまったく異なっている。中国企業やインド企業は日本企業より欧米企業に行動原理が似ている場合が多い。欧米企業は戦略に基づき、欧米で教育、訓練を受けた中国、インド人に計画を作らせ、実行は現地人に行わせる。中国企業、インド企業はそのためか欧米企業以上に欧米企業的行動をとることさえある。
 中国、インドなどにおいて、日本企業では経営戦略は事実上限定された意味しかなく、コストが低い進出地域を決めるだけといった場合さえある。計画は実態が分からない日本人が現地中国人のアドバイスで作成し、しばしば誤算が相次ぎ訂正と言い訳に満ちていてあてにならない 。実行は、現地人が中心であるがこれには日本人がつききりになる。実は実行が日本型経営の鍵で成否を決めるものだからである。
 そのため、欧米企業と日本企業の経営教育はまったく異なるものとなる。欧米企業の教育はトップには戦略を、ミドルには計画を教育する必要がある。その教育の場は社外である。一般従業員への教育は熱心ではない。
 日本企業はトップに対しては教育を行わない 。トップになる年齢が60歳程度なので年齢をとっていて教育投資が無駄だという説もある。日本企業では計画がずさんで、ミドルは実行段階での達成能力を問われ、実行指揮と部下の指導ノウハウの教育が求められる。ミドルへの要請は、部下に対してずさんな計画でも必死に達成させ、現場に合わない設備でも工夫して最適化させうる指揮能力である(現場最適化能力)。教育の場は多くは社内で、仕事上で行われるOJTである。
 日本企業ではトップのリーダーシップは不足 、計画立案過程は重視されないため 、常にプロジェクトは失敗の危機にさらされる。この理由は日本型組織の編成原理に遡り、企業のトップだけでなく日本の政治家のリーダーシップの不足も同根と思われる(清家(1995))。
 曖昧さを先送りして合意を得ようとするなど明確な計画立案を妨げる困難な要因がある(清家(1995))。それでも失敗しないためには従業員の個人能力の高さと責任感が頼りである。戦略、戦術で負けても忠誠心を持った従業員の起死回生の戦闘で打ち倒せばよい。したがって、実行の担い手である一般従業員への教育は極めて盛んである。
 上記のような違いは、グローバルな場において、欧米と日本企業の競争で際立った違いを見せる。日本企業では、顧客問題解決、現場最適化が求められ、教育内容は顧客の変化と従業員の成長に合わせて連続的に変化する。計画という名のずさんな形式知、現場に無理解な設備がマニュアル(形式知)と共に現場に届いたときそれを最適化する現場最適化能力が問われる。この教育においては従業員の成長、進化、暗黙知の伝承が重要である。
 欧米は戦略、計画厳守により、従業員はマニュアル実行のみであり、教育内容は計画により断続的に更新される。計画がずさんであれば、現場の努力に関わらず失敗が起こる。
グローバル化を比較してみると、日本は隣接領域(同質地域)進出である。その理由は現地で獲得できる顧客と従業員が同質なため、市場リスク、教育コストが低下し、異質地域進出よりもコストが低くなるからである。これは一般従業員の教育コストが高いことが理由であり、従業員の同質性は教育コストダウンの重要な要因である 。日本企業の組織間関係における情報における非対称性の解消は情報の共有と分散の条件で日本企業の最大の強みといわれ、そのために同質化が求められ、従業員教育が行われる。
 欧米企業は一般従業員の教育コストが低い。したがって、従業員の同質性は進出の基準としてウエイトが低く、収益、利益を期待できる地域を世界中から探すことになる。
 欧米企業は断続的な教育内容(形式知)の更新であるので、それに対応した教育機器、ソフトの開発は容易である。また断続的教育内容は断続的職務記述の更新と連携しており、断続的であるがゆえに他社の模倣の対象となり、教育機器、ソフトのパッケージ化を促進し、開発投資の回収が容易となる。
 日本においては、教育内容の更新は連続的であり、模倣は中核部分のみとかメタレベルとなり、教育機器、ソフト開発はオーダーメード的または細分化されたセグメントが対象となり、投資効率が悪い。

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