2011年12月23日金曜日

日本の強みはスマートシティ ベンチマークすべき日本企業

1.日本の強みは3つあります。

1)SQDC(安全・品質・納期・コスト)をいかに社員に実行させるか。
2)環境・省エネ・最先端技術・改善手法・ブランドを強みとする企業へどう転換するか。
3)基礎となる5S(整理・整頓・掃除・清潔・躾)の哲学を持った社員をどう育てるか。

の3つです。

日本の世界に対するブランドは今後大きく変わってきます。それは「製造業」から「スマートシティ」創造への転換です。

ベンチマークする企業も替ります。
トヨタ、ソニーといった自動車、家電から、三菱、日立、東芝からセブンイレブンまでのスマートシティを創造できる企業から学ばなければなりません。

グローバル化には強みだけが重要です。弱みは無視し、強みに特化するという戦略があります。

2.今後のグローバル化における強みを整理すると

1)トヨタ生産方式
2)ロボット
3)アニメ・ゲーム
4)コンビニ

です。

3.最先端技術は独自ブランドを開発する意味でも重要です。

学ぶべき企業は次々登場しています。
日本の最先端ロボット技術とトヨタ生産方式が合わさった企業がコマツとも考えられます。

ロボットとアニメ・ゲームが結びつき世界を制覇しようとしたのがかつてのソニーという見方もあります。

4.中国上海で、世界でもっとも高いビルを建設したのは森ビルです。

これはただのビルではありません。
ビル1つが世界最先端のスマートシティとなっています。
ビルは建物ではなく都市であることを学ぶべきです。

このビルは「進化する」ビルです。日本のビルは改善チームを作って、建設後も環境・省エネを追求、進化していきます。

膨大な費用をかけて環境都市を創るより、すべてのビルをスマートにするほうが簡単だと思いませんか。
日本の建設業、清水建設、鹿島、大林から学んで世界にスマート「ビル」を作るという考え方もあります。

5.コンビニは街を変えます。

スーパーマーケットは街の一部を変えますが、コンビニは都市全体を変えます。
中国全体でコンビニは50万店できるかもしれません。
コンビニは3千点の商品が並んでいます。最先端の情報システムと金融機能を持ち省エネ技術もあります。

このコンビニも改善チ―ムを持っていて日々進化します。1年たてば3千点はまったく異なる商品がお客の好みに合わせて陳列されています。

6.新しい日本のグローバルな強みは、

環境・省エネ都市・最先端技術・物流が加わります。キーワードは「改善進化チーム」です。

組織加速の体系づくりが喫緊の課題

グーグルは検索の人工知能化、トヨタ自動車はトヨタ生産方式でスピードを向上させてきた。この原理の拡張で中国でのスピードに対抗できる6倍以上の「加速の体系」作りを試みてきた。トヨタ生産方式は可視化と停止(自働化)によって拙速を巧速に変える。リードタイム短縮は組織の細分化、最終的に一人作業、多作業・並列化へと進む「加速の体系」である。これに人口知能による加速化が加わる「ロボット経済」が未来の経済であり、その中で企業の加速化に成功した企業が未来の勝者となる。
 日本企業の経営者のグローバル化支援のための加速手法は喫緊の課題である。経営者、幹部、管理者、本社スタッフの加速の手法が整備される必要がある。また加速がどのような影響を人材に与えるか、加速に向いた社員とはどのような資質を持つかがも問われなくてはならない。人材育成、社員の教育のためにも加速の体系作りが待たれる。
 また加速の研究が一定の成果を収めれば、「遅くする経営の効果」といった興味深い研究も考えられる。スピード経営の本質は加速・減速・・・・の妙にある。

系列におけるスピードと国内空洞化

日本の海外事業は、欧米企業の海外進出と異なり、進出後もネットワークは弱まらず、絆の強さがスピードでは負の効果となることも多い。
 しかし、この系列は国内空洞化においては正の効果をもたらしているとの指摘がある。系列は、空洞化、高齢化・人口減少の日本と加速する海外を「仕事の連携」による信頼で強く繋ぎ、海外の成長を国内の成長へと結びつける絆になる。
 吉川(2011)は戦後、経済成長率は人口の増加率と大きく離れているとして、元経済産業省次官望月(2011)は「積極的に海外投資した中小企業の国内の雇用はいったん少し減るが、数年後には元より増えるケースが多い」と述べ、空洞化・人口減少危機は杞憂との見解である 。

本社スタッフによるスピード型組織設計

1.スピード型組織

 本社スタッフによる企業組織の加速化の体系について論じる。携帯電話の基地局など通信機器で中国最大手の華為は現場の事業に権限を委譲させ、経営層は事後承認で、事業の意思決定を早くし急成長している。本部で決定した後に現場で実行していた社内体制を改めた(華為副会長胡,2011)。今は現場で決定し、本部が追認するスタイルである。これにより迅速に市場のニーズに対応できる。
 この華為の現場は、顧客・営業・商品企画・技術・生産・販売までの一貫した「一匹物」でなければならない。世界パソコン大手のレノボは、部品などを自社で手掛ける垂直統合的な企業には強みがある(レノボCEO楊,2011)。最終的な顧客のニーズを理解するだけでなく、同じ目標に向かって社内の各部門を革新へ向かわせることができる、と述べている。
 トヨタ自動車は、かつて愛知県に部品産業を集積させ、ジャスト・イン・タイムのスピード開発・生産を実現させた。現在は世界に拡散しすぎた。顧客に近いところに出来るだけ小規模な集積された完結されたクラスタを作り、それら現場の決定を本社が追認する華為のスタイルは決定が早い。

2.グループ経営における多能化と長期的関係強化による加速
 2011年3月11日の大震災、2011年秋のタイの大洪水は部品、組立企業の開発・生産において特定少数企業依存の体制が大きな問題であることを明らかにした。80年代日本国内に集積していたトヨタグループは、「ボディ・ローテーション」という開発・生産車種を取引企業間で頻繁に移動、生産能力を汎用化、標準化させるモデルであった。不況、市場変化に柔軟にスピード対処するシステムであった(清家,1995a)。車種・部品の移動をグループ内で行い、各企業を多能化、市場変化への対処速度を向上、災害に強い組織ともなっていた(清家,1995b)。このモデルは、トヨタの海外展開とともに機能が弱っていった。このモデルは将来、海外も含めて取引先間で機能させ、それで加速と「企業と取引先の安定」を図ることができる。
 これらの組織においては長期的信頼関係が加速の基礎となる。新日本製鐵会長の三村(2011)は、「ポスコ、宝鋼集団、ウジミナスの製鉄所建設へ全面協力した。彼らとは市場では激しく競合しているが、長い歴史を共有し深い信頼感がある」とした。信頼感と並んで「互いの技術がほぼ同じ、長期的経営など基本的なフィロソフィが同じ」がソフト・アライアンスの条件としている。同じ技術レベル、長期的経営、信頼感といった「絆」が日本の組織=系列の強みの要諦である。

2011年12月16日金曜日

孫子の兵法におけるスピードのイメージ

経営、経済におけるスピードについて常々考えているが、イメージは生物学、戦争論、スポーツ研究から求めることが多い。

例えば、戦争論でナポレオンが常に座右に置いたのが「孫子の兵法」であると言われている。孫子は、スピードとは「疾」と「勢」、「先」と「後」の2つのイメージで述べているのではないか、と感じている。今枝二郎(2004)『孫子のことば』斯文会は分かりやすい適書であると思い、そこからピックアップ列挙させていただくと

激水の疾くして石を漂わすに至る者は、勢なり。鷙鳥(しちょう)の撃ちて毀折(きせつ)に至る者は、節(=時機)なり。是の故に善く戦う者は、其の勢は険、其の節は短なり。勢は弩(ど)を彍(は)るが如く、節は機を発するが如し。紛紛紜紜(ふんぷんうんうん)、闘い乱れて乱すべからず、渾渾沌沌(こんこんとんとん)、形円くして敗るべからざるなり。P73

勇怯は勢なり。P75

故に善く戦う者は、之を勢に求め、人に責めず。故に能く人を択(えら)びて勢に任ぜしむ。勢に任ずる者は、其の人を戦わしむるや、木石を転ずるが如し。木石の性は、安ければ則ち静かに、危うければ則ち動き、方なれば則ち止まり、円なれば則ち行く。故に善く人を戦わしむるの勢い、円石を千仞(せんじん)の山に転ずるが如くなる者は、勢なり。P77

進みて禦(ふせ)ぐべからざる者は、其の虚を衝けばなり。退きて追うべからざる者は、速(すみや)かにして及ぶべからざればなり。P85

軍争(主導権争い=>機先)の難きは、迂(う)を以って直と為し、患(かん)を以て利と為せばなり。故に其の途(みち)を迂にして之を誘うに利を以てし、人に後れて発し、人に先んじて至る。これ迂直の計を知る者なり。軍争は利たり、軍争は危たり、軍を挙げて利を争わば、則ち及ばず、軍を委(す)てて利を争わば、則ち輜重捐(す)てられる。
 是(こ)の故に、甲(よろい)を巻きて趨(はし)り、日夜処(お)らず、道を倍して兼行し、百里にして利を争わば、則ち三将軍を擒(とりこ)にせらる。勁(つよ)き者は先だち、疲るる者は後れ、その法、十にして一(いつ)至る。五十里にして利を争わば、則ち上将軍を蹶(たお)す。其の法、半ば至る。三十里にして利を争わば、則ち三分の二至る。P99

故に兵は詐(さ)を以て立ち、利を以て動き、分合(分散と集合)を以て変を為す者なり。故に其の疾きこと風の如く、其の徐(しずか)なること林の如く、侵掠(しんりゃく)すること火の如く、動かざること山の如く、知り難きこと陰の如く、動くこと雷(いかずち)の震うが如くにして、嚮(むか)うを指(しめ)す衆を分かち、地を廊(ひろ)むるに利を分かち、権を懸けて動く。迂直の計を先知する者は勝つ。此れ軍争の法なり。P102

故に将に五危有り。必死は殺され、必生(ひつせい)は虜にされ、忿速(ふんそく=あせって怒り狂う)は侮られ、廉潔は辱められ、愛民は煩さる。P119

隘(せま)き形には、我れ先に之に居らば、必ず之を盈(み)たして以て敵を待つ。若し敵先に之に居り、盈つれば而ち従うこと勿(なか)れ。盈たざれば而ち之に従え。険なる形には、我れ先に之に居らば、必ず高陽に居りて以て敵を待つ。若し敵先に之に居らば、引きて之を去りて従うこと勿れ。P145

孫子曰く、用兵の法には、散地有り、軽地有り、争地有り、交地有り、衢(く)地有り、重地有り、圮(ひ)地有り、囲地有り、死地有り。諸侯自ら其の地に戦う者を、散地と為す。人の地に入りて深からざる者を、軽地と為す。我れ得れば則ち利、彼れ得るも亦(ま)た利なる者を、争地と為す。我れ以て往くべく、彼れ以て来たるべき者を、交地と為す。
 諸侯の地三属し、先に至らば天下の衆を得る者を、衢地と為す。人の地に入ること深く、城邑(じょうゆう)に背くこと多き者を、重地と為す。山林・険阻・沮択(そたく)を行き、凡そ行き難きの道なる者を、圮地と為す。由りて入る所の者は隘(せま)く、従(よ)りて帰る所の者は迂にして、彼寡にして以て吾が衆を撃つべき者を、囲地と為す。疾く戦えば則ち存し、疾く戦わざれば則ち亡ぶ者を、死地(後方と左右が険しく、前方に敵軍と相対している所)と為す。P159

先ず其の愛する所を奪えば、則ち聴かん。兵の情は速(すみやか)なるを主とす。人の及ばざるに乗じて虞(はか)らざるの道に由り、其の戒めざる所を攻むるなり、と。P164

敵人開闔(こう)すれば必ず亟(すみやか)に之に入り、其の愛する所を先にして微(ひそ)かに之と期し、践墨(せんぼく)して敵に随(したが)い、以て戦事を決す。是の故に始めは処女の如くにして、敵人戸を開くは、後は脱兎の如くにして、敵は拒(ふせ)ぐに及ばず。P181

課長の業務スピード化と未来イメージ

1.取引コストから、さらに2倍の加速を目標
 
 トヨタ生産方式のジャスト・イン・タイムの原理は製造現場から物流、他へと拡張、応用されている。ジャスト・イン・タイムは顧客が引取る(購入)ことにより実現される。顧客引取りの原理である。21世紀、ジャスト・イン・タイムは製造から小売・流通・サービス、情報通信、コンテンツビジネス、インターネットビジネスまですべての事業に共通の原理となりつつある。
 宣伝・営業・予測・戦略による販売と異なり、顧客引取りは系列取引に分類される。取引コストが低下する 。顧客が引取ることにより、予測時間・計画時間・商品・サービス企画が大幅短縮され、在庫が劇的に削減される。21世紀、在庫の概念は、製品、部品といったモノだけでなく、知識・情報といったコトまで拡張されている。コトの在庫の概念である。
 在庫減少は計画を単純化させ、さらに時間を短縮させる。顧客引取りの前提は顧客とのコラボレーションである、①顧客ソリューションと②ユーザーサプライヤーインタラクション(顧客共同開発:MITフォン・ヒッペル教授)が重要である。

さらなる加速

 日本型組織は、野中・徳岡(2011)の「心身一体となった融通むげの現場力、全体の利益を考える共通善の判断力」が強みで、学習と訓練によってさらなる加速が可能になる企業文化を醸成した。組織は、顧客とのコラボレーションを通じて個別対応・即応し、顧客同期化を行えば加速される。同期化の際、顧客動向の変化が少ないときは能力平準化で加速できる。顧客の動向が不透明なとき、顧客即応するには組織の小規模化(一人営業)とリードタイムの短縮が加速で有効である。
 
一人営業・一人事業・一人組立

 一人営業、一人事業、一人組立を行い、情報通信・知能化を並行させる「情報装備一人化」が加速の方向である(清家,1999)。リードタイム短縮は加速の有効な手段であり、投資、運転資金(棚卸資産、決済資金、手持資金)の削減に繋がる(田中,2009)。

ミドルの加速(前回)で4倍に、今回の課長の加速で2倍。ここまでで(4×2)8倍の加速が可能となる。

2.課長の加速の未来イメージ

 課長は、組織内でもっとも早く現場の変化の影響を受ける。現在職場には2つの現場が共存する。ひとつは現実の職場であり、もうひとつがインターネットを介在する「現場」である。現実の職場の変化とインターネットの変化を先取りしなければならない。
 インターネットの現場の変化とは何か。近未来インターネットで連結された機器(ソフト)が企業内外で普及、知能化していって、相互に人間に代わり高速で交信を始める未来企業社会は桁外れのスピード経済となる可能性が高い。これがインターネットの現場の変化である。株の高速取引が代表であり、グーグルのInternet of Thingsは「機器、家電、自動車などがインターネットに常時接続状態」になり、桁外れの加速のきっかけとなる。
 スマートメーターはツイッターで「電力使いすぎ」とつぶやき、企業や家庭で発電した電力の売買を人工知能で瞬時に仲介する。取引速度はナノ単位である。
 人工知能による取引加速が世界的規模で機器、家電・自動車間で起これば、取引速度は天文学的になり、経済は加速する。

2011年12月9日金曜日

ミドルによるビジネスプロセスのスピード化

1.プロセス短縮 自働化 4倍のスピード化

 日本型企業がグローバルに勝つには戦略に頼らずミドルマネジメントを中核としたひたむきな革新と訓練・努力しかない。中国企業の6倍速を超える8倍速のスピードを達成すれば負けない。
 
 プロセスを4分の1に短縮する。
① プロセスから外された4分の3を並行作業へ
② 並行作業は「自働化原理」によって停止機能を持った機械、知能ソフトの支援で加速する。
③ 多台持ち(多ソフト持ち)を行うことで並行作業を増やし、(逆算で)加速する。
 
 プロセスの4分の3は、外部化、枝分かれし、同時並行作業が行われることになる。トヨタ自動車は溶接、塗装、艤装、検査を残し、部品を系列企業へ外部化、並行作業とすることによって、プロセスが短縮されている。
 グーグルは世界の顧客のプロセスの「検索作業」のみをビジネスとし、プロセスは短い。トヨタ自動車は系列企業から自動車ディーラまでのプロセスのスピードを上げた 。グーグルはインターネットで検索を行う顧客のスピードを上げた。

2.グーグルとトヨタ自動車には類似点が見られる。

 グーグルは情報の流通を通じて関係者の創造のスピードを向上させた。自動車は顧客の活動のスピードを向上させる。特に自動車が普及していない新興国では顧客の活動のスピードアップは大きな役割である。トヨタ自動車はグーグルと類似な役割を担っている。トヨタ自動車はトヨタ生産方式により取引先のもの(部品・素材)の創造のスピードの向上を図っている。トヨタ自動車は社内の作業をスピード化させる組織である。グーグルは社外のスピードを向上させる組織である。
 プロセスの加速はトヨタ生産方式では、安全・品質・コストの拘束条件と制限条件の中で2つの方式で行われる。自働化とジャスト・イン・タイムである。自働化は不良品を出す前に停止する。これはトラブルを事前に防ぎ、検査作業、修正時間を無くし、修理時間のみとする。修正時間はトラブル発見までの時間に比例して大きくなり、プロセスを遅くする。自働化すると修正時間は無くなり、修理時間のみとなる。修正時間が無くなることは速度を向上させる。トヨタグループの創業者である豊田佐吉は豊田式自動織機を発明した。この織機は糸が切れると自動停止するため、作業者一人で数十台の管理・並行作業を行うようになり、数十倍のスピード化を実現した。

3.トヨタ方式自働化とインターネット

 自働化は多台持ち・多工程持ち・多能工化によるスピード化の基本的原理となっている。ソフトウェアの管理・並行作業においては豊田自動織機と同じ自働化原理が有効である。インターネットにおける知能化された検索、各種知能ソフト、クラウドに加えて、業務可視化の時代には企業内のほとんどの業務を「自働化」の原理で加速化することが可能となる。
 クラウド下の仕事では、社内文書をデータベースに整理するより、情報や文章を全文検索したほうが早い。
 部下の管理では、自働化の原理を応用できれば、部下への大幅な権限委譲により加速できる。商品開発、研究開発、事業開発も自働化の原理があれば、上位経営層は大幅な権限委譲が出来、開発の加速が実現できる。 
 ここまでで4倍の加速を狙うことが可能である。

2011年12月6日火曜日

CEOの意思決定のスピード化

①集団感覚による切迫感と慣れは中国企業の現在であり、②意思決定の早さは欧米、韓国企業が優位で、いずれも日本企業は劣る場合が多い。意思決定を早くするには、ミッションを作成し、意思決定における拘束条件と制限条件を事前に合意し、経営層は、下位の管理者、技術者に意思決定を委譲する。グーグルはミッションを少数で共有し、日本のYKKは全社員で共有し、意思決定を早めている。グーグルは「世界中の人が世界中の情報を整理してアクセスできて使えるようにする」スピード×人数×情報量であると単純明快である。グーグルはミッションの単純化、YKKはミッションの「分かりやすい言葉への置き換え(YKK社長猿丸,2011)」で早くしている。

 製品選択の単純化は意思決定を単純化する。IBMは事業進出の基準に分野ごとのコンピュータのトランザクション数の増加を使う。サムスンは顧客の徹底的調査、製品の選択集中、大量生産販売で成功した。グーグルは、コンテンツを保有しないことで事業を単純化、事業遂行における意思決定を早くしている。意思決定は「ミッションステートメート(レゾンデートル:投入の決定の早さ)×課金しない(ビジネスモデル:過程の決定の早さ)によって、2重の加速が行われる。拘束条件、制限条件の範囲内での意思決定は報告の必要はないため決定は早い。意思決定は勇気と度胸であり「拙速は巧遅に勝る60点で即決せよ」は土光敏夫元経団連会長の戒めである(清家,1980)。

 日本人CEOが意思決定を早めるには事前の準備、将来への布石作りが重要である。この点でグーグルから学ぶことが出来る。グーグルはパートナー企業の選定において自然に制限条件ができている。決定が早いということがグーグルのパートナー企業となる条件である 。日本企業がCEOに意思決定の早さを求めるなら意思決定が早い経営者がいる企業をパートナーに選ぶべきである。

 グーグルは将来のために現在へ投資をする 。Gmailは将来のメール検索の速度を速くできるようにと考えたグーグルの布石的な投資である。日本企業も同様な布石を打てば、自然にCEOの意思決定は早くならざるを得なくなる。

 産業自体の変質は加速を促す。コンピュータ、携帯、サービスなど従来の産業区分は無意味になった。変化の速さに対応できなければ、一瞬にして淘汰される(サムスン電子副会長李,2011)。区分が融合した産業ではもっともスピードが速い事業のモデルに他の産業は合わさざるをえない。経営層、社員すべての意識転換と教育が必要である。

2011年12月5日月曜日

中国のスピードは世界の6倍 日本企業の研究課題

世界において日本企業に課せられた課題は、①スピード化する時代への対応、②日本企業の得意技の発揮 、③国内空洞化・人口減への対策の3点である。中国では「世界の40年は中国の7年」(新華社)といわれている。
 日本が40年で進めてきた全国的新幹線網を中国は7年間で展開してきた。約6倍のスピードである。家庭用エアコン世界大手の中国の美的は、80年代から日本企業の経営手法を学び、リーン管理(トヨタ生産方式)で現場の無駄をなくしている(桑原,2011)。90年代にはゼネラル・エレクトロニクス(GE)などの米国企業の経営手法を導入し、事業部制など権限を分散させ、市場の変化に素早く対応する。事業撤退の意思決定は早い。トヨタ生産方式とGEのジャックウェルチによってスピードを上げた。  
 またIT産業はドッグイヤーと言われる。犬は1年で人間の7歳分歳を取る。7倍のスピードである。コンピュータの速さは、ムーアの法則では18ヶ月から2年で半分になるが、これが企業を加速させている。
 スピード化を実現するには、①集団感覚による切迫感と慣れ、②意思決定の早さ、③プロセスの短縮改善、④学習訓練による習熟の4つの方法が考えられる。本研究はグーグルを研究、トヨタ自動車と比較し、スピード化について「加速の体系」で日本企業の経営者のグローバル化の支援とする。目標は6倍のスピード化である。

2011年12月4日日曜日

グーグルの世界史的意味

社会、企業は創造人材と転写人材(東京大学藤本隆宏教授)を抱えている。転写人材はものと情報の転写に従事し転写スピードの向上で評価される。トヨタ自動車は少数の創造人材と多くの転写人材で成立する。グーグルは社内の創造人材のみを残し転写人材を無くした存在である。
 トヨタの課題は社内(系列を含む)の転写作業のスピード向上であり、グーグルは社外の創造作業のスピード向上である。膨大な転写人材を生み出したのは産業革命以降である。マルクス以来多くの論者が論じてきたのは転写人材で生き甲斐を多くの人は得られないという点のみである。体験上欧米、中国、インドなどの海外企業の経営指導を通じても転写人材の幸せな笑顔を見ることは少ない。グーグルは転写人材を解放し、転写人材が創造人材として生きる支援を行う。グーグルによって創造時間は短縮され調査コストは下がり、余暇を持って創造に勤しむことが促進された。スピードの向上によって転写人材が解放されたのである。これがグーグルの世界史的な意味であり、本質ではないかと思われる。
 グーグルの社外に対してトヨタは社内で人材を生かす。拘束と転写は高い専門性を育む条件でもある。どちらが人間を幸せにするか。これは哲学論争でもある。社外と社内、自由と拘束、創造と転写、世界は二分される。両社の世界史における評価は、係わる人間の幸せとスピードで測られる。

スマートシティスピード経営 新興国の強みはコストからスピードへ

21世紀、世界企業の競争の場は欧米日から新興国に移動した。新興国の競争力の中心は1990年代~2000年代前半の人件費の安さから、2000年代後半からスピードに変わりつつある。また競争業種も繊維・玩具から家電・自動車へと変わり、現在は生活インフラ産業へ変わってきた。かつて、中国はソニー、トヨタ自動車を待望したが、現在はソニー、トヨタはいらない。
 新興国の内需拡大、環境都市インフラブームにのって、世界は製造業から都市生活産業の時代へ移行しようとしている。もはやトヨタ、ソニーは求められず、日立製作所、東芝からセブンイレブン、ローソン、ダイソーが求められる。日本のすべての産業が世界の人々の生活向上のためにグローバル化する時代でもある。
2011年現在でも建設機械においては、中国での設備投資は日本の20分の1で済むといわれている(コマツへの日経新聞取材、2011年)。中国の三一重工のコマツに対する競争力はそこにあるとの考えである。しかし、実は新興国での競争の本質はスピードであった。
 中国での企業指導の体験を元にすると、「世界の40年は中国の7年」という新華社の記事が実感として感じられる。社会感覚、時代感覚として40÷7=約6倍のスピードである。中国社会は日本社会より変化が速い。どのような経営を行えばよいか、日本企業は、特に東京本社は理解が出来ない。例えば、中国三一重工とコマツの相違は産業のスピード理解が違う点にある。中国の建設業界の仕事は日本の建設業界より遥かに速い。日本の公共事業の遅さに慣れたコマツの経営者、特に東京の社員は付いていけない。新幹線を40年で建設した日本と7年で建設した中国とは建設業界の構造自体が日本と異なる。スピードはここでも約6倍である。
中国企業の最大の競争力は人件費の安さからスピードへと移りつつある。日本の電機産業は中国での敗退の主因を人件費の安さに挙げ、世界における韓国企業に対する敗退を模倣と技術漏洩などに求めたが、実は時代に置いていかれたスピードの遅さが敗退の原因である。

武田薬品工業社長長谷川(2011)の「世界市場が大きく動く中では何もしないこともリスクだということを忘れてはいけない」が世界企業の行動原理である。

参考文献
長谷川閑史(2011)「何もしないリスク認識を」『日本経済新聞』日本経済新聞社,2011年10月25日朝刊15面

世界のスピード化の歴史とグーグル

1. 問題意識と背景

 本研究は情報産業において世界を代表する企業であるグーグルのスピード経営について研究している。グーグルは、製造業のスピード経営として1980年代世界制覇をしたトヨタ自動車と共通点を持っている。本研究は両社の研究の中から日本企業が追求すべきスピード経営について考察する。
 グーグルは1998年、学生によるガレージ創業に対してベンチャーキャピタリストが投資したインターネットに関する小規模事業起業から始まった。グーグルにインターネット事業で先行したヤフーは1995年創業であり、グーグルはその3年後に起業したが、2011年現在は先行したヤフーを凌駕し、アップル、フェースブック、アマゾン、IBMと競争を行っている。インターネットの中の情報に対して、ヤフーは目次を作り、グーグルは索引を作ったといわれている。グーグルは起業後10年足らずで世界を代表する企業になり現在にいたっている。

2.世界のスピード化の歴史とグーグル

 世界の経済変化は確実に加速されてきている。韓国における成長は圧縮成長 といわれ、中国はさらに加速している。その大きな原因は情報化と金融産業であるとの説があるが、ここではそれについては考察しない。グーグルに代表される情報産業はそれを加速させる存在であった。
 1950年代からの日本の成長は、高い教育水準と勤勉さによって、欧米からの学習が速く、加速された成長となった(学習による加速)。1980年代のトヨタ自動車、トヨタ生産方式の世界への影響は自動車産業を中心に研究開発、工場生産、物流を加速させた 。トヨタ生産方式によって、世界の自動車産業は数倍加速され、他の産業へもそのスピード化は伝播した(システム改革による加速)。
 それをさらに加速させたのは1990年代のインターネットで、取引コストなどが低下したことにより、さらにスピード化が進展した。情報は物流の時間がゼロでコストが低く、社会を加速させる。また貨幣も同じように物流コストが低い。情報と貨幣は連動し、情報産業と金融投融資のグローバル化は経済を加速させた(情報・貨幣による加速)。
 グーグルは21世紀に入り、検索の知能化、クラウドを通じて、さらにビジネスを加速し、情報と貨幣は、国家経済、企業経営を加速させている。
 トヨタ生産方式、情報、貨幣が世界を加速したのである。世界は2011年現在、物流はトヨタ方式、情報は米国支配、貨幣は欧州主導といった状況である。

2011年11月19日土曜日

経済からの中国観

経済からの中国観

                   清家彰敏

 中国のGDP成長は30年間年平均10%が続いている(5年ごとの平均成長率)。かつて韓国も成長率が10%から半分に低下した。日本経済はかつて70年代10%から4%、そして1%へと低下した。このパターンを中国に適応すると、中国経済は日本の2.5倍でほぼサチュレートする?

ただし、日本は70年代初め1ドル308円が現在75円台までなっている。

これを考慮すると元の動向によっては2.5倍になるかどうかは?

1.中国経済はどこまで成長するか?バブル崩壊は1970年代型か1990年代型か 1970年代型と思われる。
中国は日本の1970年代の成長によく似ており、おそらく今後数年内にバブルがはじけるがまた再成長する。 
参考:後述

2.アジア・太平洋における日中の対峙の遠因を経済の生産・流通で考える。
 中世以降の大型船物流の優位、寒冷化が海洋日本の登場の背景となり、現在の日中の対峙の構図の原理を作っている。未来も流通・物流の原理で考えることが可能である。前回のブログ参照

3.地球的視点での日本の位置づけ
 世界のコンテナ流通の3分の2を占める海の新幹線はシンガポールからホーチミン、香港、上海、釜山、日本海、津軽、アリューシャン、ロサンゼルス、パナマへと向かう。また北極海航路が温暖化で進むと日本海・アリューシャン、北極海、欧州・米国東海岸航路はスエズ周りに対して大幅短縮となる。アジアと米国、欧州の結節点としての日本海「日本」。日本海、釜山、上海に欧州の船が溢れる?  添付資料参照

参考1.中国経済はどこまで成長するか?バブル崩壊は1970年代型か1990年代型か 1970年代型と思われる。
中国は日本の1970年代
 1970年代田中角栄元総理大臣の列島改造論で、日本の都市部の工場は次々地方へ移転していった。工場移転は工場新設に比べてGDPへの貢献は小さいと考えられる。GDPは都市部でマイナス、地方でプラスとなる。
 1970年代に入って以降、現在まで日本は10%成長を2度とすることはなかった。地方へ移転するという選択肢と並行して日本では1970年代の終わりから家電産業が海外へ、1980年代は自動車産業も米国を中心に進出していった。海外進出は多くの場合GDPにはプラスにならない。この間1970年代以降の日本のGDPは4%程度(5年間平均)になっている。
 現在の中国は海外進出に熱心で、欧米からアジア、アフリカへと進出している。この多くはGDPにマイナスである?上記の見方は1980年代から30年続いた中国の10%程度急成長は終わりとなり、日本の2.5倍程度でサチュレートすると考えられる理由のひとつである(韓国も続かなかった)。
 国家の発展は三期に分かれる。第一期30年最初の30年は第一期名目GDP10%成長期であり、収穫逓増期でまったく新しいモジュール化しやすい理想的な生産が効率の良い都市部での人口集積にて行われる。情報化、インターネット社会では世界情勢、市場情報、最先端技術の隠蔽は困難であり植民地支配は論外であり、不可能である。まったく無いところで新たな投資が行われるため10%成長となる。
 加工貿易輸出入が主で世界経済でのウエストも低く低賃金と相まって30年成長は行われる。移転設備は単純なシステム主に工場である。移転技術は実験的にブラシュアップされ洗練され、移転元を上回ることも考えられる。
 第二期20年、第二期は名目GDP5%20年で工場の地方移転、全国的インフラ整備が行われる。移転は新設よりGDP貢献は小さくプラスマイナス。都市部と比べ地方は人口集積がないため収穫逓減となり効率は悪くマイナスとなる。この期はより生産コストが低い世界の後発である第一期国への海外進出が起こり、GDP的にはマイナスとなる。研究開発、知財、教育普及、インフラ住宅投資はプラス、上記の差し引きの結果が名目GDP5%成長である。
 第三期?年第三期は成熟経済1%成長。中国は第一期が終了し、現在第二期に移行中であると考えられる。韓国は第二期にある。日本は第三期。第一期の成長は、外的要因(外需)で起こるなお第一期の成長では、一般に考えられているほど国家、国民性、人口、地政は名目GDPに関係が薄いのではないかと考えている。
 第一期の成長は外部からの投資、生産委託などの需要への受動的対応にて開始され、国家の役割は現場管理者程度の限定されたものである。第二期国、第三期国の顧客からの要請を受けた株主、コンサルタント、専門経営者チームなどの意思決定の総和、社会風潮などによって第一期国が選ばれる。第一期国の政府の意思決定能力、決定主導権は弱く、受動的となりがちである。しかし、軍、共産党主導国家は決定主導権を確保しやすい。
 日本は占領軍、韓国は軍、中国は共産党支配から第一期が始まった。それが合理的であったかどうかはまた別である。一般に人口大国が第一期国として選ばれる。理由は同じルールで出来るだけ長く生産をおこないためである。理由は4つ。第1は、生産システムは巨大化しつつあり、順に移転していくとき出来るだけ全システムを共通ルール、同じ投資原理で管理したい。物質移送の際、複数の政府をまたぐと貿易となり国内輸送よりややこしさが急増する。
 第2は、専門家が育成しやすい。母数が多いと優秀な留学生を確保しやすい。第3は、将来第二期国になれば人口が大きいと市場としても期待できる。第4は、企業サイドからみると投資先決定の際は、国家名がよく知られていて社員の認知度が高いと、社内合意が容易という点も重要である。

もっと詳しい内容は過去のブログを参照

2011年10月9日日曜日

東アジアにおける日本と中国の対峙を経済と流通からみてみよう(1)

経済は交換のみですべて説明できる。経済は交換の量と回数で決まる。量は生産、回数は流通で決まる。経済は生産と流通である。作るか運ぶかである。どちらが市場において優位になるかで、歴史が変わる。どっちをやれば身が立つか、儲かるか、成功するかである。国家も生産国家と流通国家に分けられる。国家での権力争いも生産派、流通派の対立もある。源氏は生産派、平氏は流通派がベースであり、それが自らの運命と国家の歴史を決めた。
 流通原理でいうと、古代中国における春秋戦国の国家の国力を、流通に関わった人の数で考えてみよう。4km/h(歩行速度)×人口×40kg(運搬能力)=160×人口が「時間当たりの総流通能力」であった。秦、始皇帝の登場は、騎馬の速度(~20km/h)、駱駝の運搬能力(~500kg)によって、時間当たりの総流通能力160を1000以上へ向上させた。10倍近い向上は過去の政略、戦略、戦術をすべてリセットさせ覇業を達成させた。覇業後の短期間の帝国の崩壊は、10倍の時間当たりの総流通能力の差の構成員間のギャップを埋めえなかったことによる。次の漢帝国はまた160に戻ってしまった。それ以降の帝国はこの160と1000のギャップを長城と遠征で解決しようとする。
 流通が主役になった理由のもう一つは気温である。寒冷化すると流通は発展すると考えられる。世界的に11世紀まで温暖化が続きグリーンランドで放牧ができた。温暖化は農業・牧畜の生産力が一般に拡大し、生産の時代である。この時代までの大国は生産をベースとした。世界は12世紀から14世紀まで約300年間寒冷化していった。北に広がった人々は南に逃げ、空間は圧縮された。この寒冷化時代は流通の時代となった。流通が歴史を変える。北では寒冷化により森林の草原化が進み、騎馬の移動に有利になった。13世紀前半、モンゴル帝国の騎馬軍団がユーラシアを東から西に駆け抜け、流通支配の世界大帝国を作り上げた。
 海では大型船の時代が到来した。人、馬、駱駝の運搬能力を格段に上回る大型船は、運搬物の主役を金・絹・茶といった高価な軽量物から、陶器から鉄砲までの重量物に変えていった。経済の主役は海の大型船となった。ここで登場したのが強力な海洋国家である。  
 流通原理でいうと騎馬の速度(~20km/h)、駱駝の運搬能力(~500kg)によって、時間当たりの総流通能力1000は、4~10km/h(帆走・槽走速度)×流通人口×100000kg(運搬能力)=1000000×流通人口によって1000倍に向上した。
 ユーラシアの西、欧州では海洋国家はバイキングたちの小国のみであった。それがポルトガル、スペイン、オランダ、イギリスといった強力な海洋国家が登場し、大陸国家と対峙した。アジアで登場したのは日本であった。始まりは日宋貿易で平清盛を先駆とし、初期倭寇から日明貿易、東南アジアへ広がり、中国は、初めて海に自国を脅かす存在海洋国家「日本」があると認識した。中国史に日本が真剣に登場、取り上げられるのはこれ以降である。
 これ以降、現在まで中国は海を意識することになり、21世紀において「東アジアで初めて2大国」が対峙する構図の伏線はここから始まる。
 戦国時代末期、日本は世界最大の鉄砲生産国で輸出も行った。軍隊の鉄砲装備率は世界でもっとも高く、人口も欧州列強を上回った。極めて士気が高い海洋軍事大国であったと思われる。当時の日本のリーダーは織田信長であった。織田信長が早死にし、後継を僭称した豊臣秀吉は挫折し、東ユーラシアにおいては大型船による流通主導経済体制の形成の試みは頓挫した。海洋国家日本は、東ユーラシアで成立できなかった。東ユーラシアは、流通経済的には「空白」となった。

4.欧米の経済危機と中国のバブルの可能性を回避するには

4.欧米の経済危機と中国のバブルの危機?

 20世紀、米国とソ連(ロシア)が量産に移行し急成長した。米国は宣伝、ソ連は計画によって量産を行った。量産型国家は米国とソ連であり、欧州と日本の量産への移行は遅れた。特に日本は第二次世界大戦終了まで量産への移行ができなかった。

第二次世界大戦 
 ドイツ、日本は量産型国家である米国、ソ連に敗退、その後両国は敗戦を契機に量産に移行した。

1970年代 
 量産国家の限界か、米国、ソ連の成長は限界に達し、両国とも経済的低迷となる。米国企業の宣伝も市場の変化を捉えることはできず、ソ連政府の計画は市場の満足を得ることができなくなった。米国、ソ連ともに、経済の低迷を止めることはできなかった。 
 しかし、欧州はドイツの成長によって、全体として経済を成長させ、米国と世界は日本の成長によって、1980年代まで成長を継続させた。1980年代前半、自由主義圏は日本とドイツの成長によって全体として経済を繁栄させたが、共産圏はソ連の経済が低迷し衰退した。 

1980年代後半共産圏崩壊
 80年代後半、共産圏国家は崩壊、1990年代自由になった多くの国民は資本主義国家へ移民した。特に特権階級である高級官僚などは資産を伴い米国を目指し移民する。

1990年代 旧共産圏国家から米国への移民 
 米国は1990年代、移民がもたらす経済効果などによって成長を行う。1990年代からほぼ20年間で米国は人口が2億3千万人から3億人へ増加した。人口増はすべてが移民ではないが、7千万人という人口増は英国の全人口5千万人を凌ぐ、この人口増は成長に貢献する。特に豊かな移民の経済貢献は大きい。 
 資産とともに移民する元共産国家のエリートたちは、住宅・自動車・家電、家具、洋服など生活用品を必要とする。また都市インフラは増強されなければならない。これが移民経済であり経済成長へ貢献する。
 エリート移民は共産国家においても資産を形成し、海外へ移転させていることもある。彼らは資産とともに移民するので、購買能力があり、成長への貢献は大きい。

2001年9月11日同時多発テロ後、
 米国は移民規制を行い、海外に対して強権的政策を行った。1990年代、中国は徐々に成長し、1997年のアジア危機を乗り切った。このことで世界の投機筋の信頼が増加し、国家としての自信も出始めていた。投機筋は欧米留学エリートと連携し、エリートは新興国でも資産形成を始めた。それは中国における欧米輸出による成長である。
 2005年くらいから、中国国内で豊かになるほうが米国に移民するより有利であるとの見方も出てきた。逆に新興国などの国際化の進展と所得の上昇で移民は容易になり、低所得者、弱者の先進国への移民も多くなった。

2000年代 
 徐々に移民などの質が低下する中で、移民による経済成長モデルを維持するため、支払い能力の無い移民などへサブプライムローンを欧州投機家などが提供するモデルが主流になってきた。これは移民経済を支えてきた産業と金融機関の連携でもあった。
 リーマンショックで米欧経済危機(2008年8月世界で投機資金168兆ドル)

2008年リーマンショック以降、 
 中国はリーマンショック以降のインフラ建設などの内需関連資金が投じられた。2008年以降で推定500兆円の投融資が行われた。推定500兆円の内訳は金融200兆円、富裕層150兆円、地方政府100兆円、それが政府投資40兆元に加わった(日経新聞OB)。
 中国だけでなく、新興国、発展途上国などにおいて社会インフラ建設ブームが起こっている。多くの国で住宅・自動車・家電供給、都市インフラ建設が続く。「擬似移民」型経済成長(呼称・定義を考慮中、良い言葉があれば教えてくださいby清家彰敏)が米国外で広く世界で再現されている。
 2011年現在で世界の投機資金は200兆ドル以上といわれている。

Googleとトヨタ自動車のビジネス比較

    Googleとトヨタ自動車のビジネス比較

                     富山大学 清家彰敏 

1. 緒言
 トヨタ自動車は世界最大の企業としてもトヨタ生産方式によっても世界に知られている。 

2. 関係者生産性
 関係者生産性(現在呼称・定義を考慮中、良い言葉があれば教えてください:by清家彰敏)という概念を規定する。Googleもトヨタ自動車も究極の評価は関係者生産性の最大化により評価できる。生産性はものと情報の流通、創造によって規定される。企業は関係者生産性を向上させる。
 Googleは情報の流通を通じて関係者の創造を促進し関係者生産性を向上させた。Googleは情報の創造には関わらない。ものの流通と創造にも関わらない。Googleは取引先広告掲載企業、サーバー設置協力企業の創造を促進する。
 トヨタ自動車はものの創造によって関係者生産性を向上させた。トヨタ自動車は取引先のものの創造を促進することによっても関係者生産性を向上させた。トヨタ自動車は関係者の情報の創造、流通には関わらない。
Googleは社外の生産性を増大させる組織であり、トヨタ自動車は社内の生産性を増大させる。トヨタ自動車は社内に創造人材を抱えている。その創造人材を活性化させる組織である。Googleは社外の創造人材を活性化させる組織である。組織は創造人材と転写人材を抱えている。転写人材はものと情報の転写に従事し転写効率の向上で評価される。藤本によれば企業の概念は転写装置に単純化される。Googleは社内の創造人材のみを残し転写人材を無くしたウィルスのような存在である。ウィルスのように社外に大きく依存する。
 膨大な転写人材を生み出したのは産業革命以降である。マルクス以来多くの論者が論じてきたのは転写人材で生き甲斐を多くの人は得られないという点のみである。体験上欧米、中国、インドなどの海外企業の経営指導を通じても日本企業とドイツ企業以外に転写人材の幸せな笑顔を見ることは少ない。
 Googleは転写人材を解放し、転写人材が創造人材として生きる支援を行う。Googleによって創造時間は短縮され調査コストは下がり、余暇を持って創造に勤しむことが促進された。関係者生産性の拡大が達成された。
 トヨタ自動車は社内において創造人材をより生かそうとする。これは哲学の論争になりつつある。社外での自由な創造と拘束と目標の中での創造とどちらが人間を幸せにするか。世界は二分されている。両社の評価はひたすら関係者生産性をどちらがより大きくできるかにかかっている。
 関係者生産性は時間と空間の積で表される。従ってより寿命の長い企業、スピードの速い企業は関係者生産性が高い。Googleもトヨタ自動車もスピードに優れる。
 Googleは人工知能化によってスピードを向上させる。トヨタ自動車はトヨタ生産方式でスピードを向上させる。トヨタ生産方式は可視化と停止によって拙速を巧速に変える。リードタイム短縮は組織の細分化、最終的に一人作業、ついで多作業化と突き進む。

2011年10月8日土曜日

企業、第一地銀数を3分の1へ削減、日本海と太平洋に跨る大型地銀の創出

企業、第一地銀数を3分の1へ削減、日本海と太平洋に跨る大型地銀の創出

                              清家彰敏

1. 緒言
 日本海航路の活況、東日本大震災、日本企業のグローバル化を受けて日本の再設計を政産官金にて企画する。結論は、日本海と太平洋に跨る大型地銀を作り、日本企業の集約、統合を進める。目標は市町村合併の目標が3分の1であったといわれている(実際は2011年時点で減少53.3%)。目標は第一地銀数3分の1、企業数3分の1である。 

2. 日本海の海外にとっての重要性とインフラの日本海移転の要請
 日本海は世界にとって重要な海である。ところが、日本海は日本にとって重要な海ではない。地球儀でみると、シンガポール・ホーチミン・香港・上海・釜山・(日本海・津軽海峡・アリューシャン)・シアトル・ロサンゼルス・パナマは一直線上である(清家,2011a)。したがって、日本海航路は中国、韓国にとって米国への最短距離の重要な海である。また温暖化が進み北極海航路が盛んになってくると欧州と中国・韓国・極東ロシア間の距離は3分の2に短縮される(清家,2011b)。ロシアにとって日本海は重要である。ロシアは物流の42%を鉄道に依存する(辻久子)。世界の物流は9割が海運であるがロシアでは弱い。氷の海が広がるロシアにとっては北極海航路、海運に対する期待は大きい。日本海はロシアにとって北極海航路、シベリア鉄道の玄関である。
 日本海の環境は大型タンカーなどの事故に対して脆弱である。三海峡が浅く日本海の深度は千メートルをはるかに超えすり鉢状になっている。汚染は外洋に排出されにくい。ちなみに地中海はジブラルタル海峡が深いため、日本海よりタンカー事故には強い。日本海周辺国家が共同で、通過船舶に対して強制保険を義務付けることも将来的には考えられる。
 日本海通過船を警備するのは各国海軍の責務である。特に日本海に港の無い中国海軍にとって貿易船警備は悲願でもある。また日本海で交戦、被弾しても中国艦は軍艦を修理する港が無い。黄海の青島、大連まで曳航して修理していては戦時に間に合わない。日本は舞鶴で軍艦の修理ができる。
中国にとって港、軍港を北朝鮮から借り受ける意味は大きい。また北朝鮮の不凍港の重要性はロシアにとっても大きい。日本海を論じるとき北朝鮮は大きなキーワードとなる。北朝鮮の人件費は時給10円といったミャンマー、バングラデシュと並ぶ低賃金であるとの説がある。また資源国でもある。
 中韓ロシアに加えて当然貿易先の米国も日本海航路には大きな関心がある。また欧州が北極航路からのアジアの玄関として日本海へ関心持つのも自然である。ノルウェー、カナダ、デンマーク,には、北極海資源の資源を満載して日本海を通過する未来がある。中国にとって欧州は最大の貿易相手国である。イギリス、ドイツ、オランダ、フランスには日本、韓国が隣国となる。日本海から黄海、東シナ海の港にフランス、ドイツ、イギリスの船が溢れる時代である。
 この時代の到来を予見し、日本海側へ港湾、都市、研究開発・生産・消費拠点の移転を試みる必要がある。

3.第一地銀数の削減
 大津波の危機を考えても、日本海側へのインフラの移転は日本政府の喫緊の課題である。例えば、移転対象の工場とその移転先の両地域で営業している地銀があると移転計画は進めやすい。太平洋側の地銀にとって、投融資先である工場や研究開発拠点、ソフトウェア開発研究所などが日本海側へ移転すれば損失である。太平洋側と日本海側にまたがる地銀であれば、損失は無く工場移転などは容易になる。
 震災地域について考えると、日本海と太平洋側に跨る地銀は青森を除くと東北地域に無い。地銀が太平洋側から日本海側へのインフラ移転の中核となるべきなのに、移転の抵抗勢力、障害となる可能性がある。また地銀の規模が小さいとインフラ再構築の障害となることも考えうる。例えば、東北の第一地銀10行を4つにグループとして集約すると第一地銀上位10以内に4グループとも入り、3つに集約すると静岡銀行の規模、2つに集約すると横浜銀行を超え第一地銀1,2位の規模となる。
 グローバル化は企業規模の拡大、金融機関の大型化を必然とする。日本の中小企業は高齢化、後継者難、海外人材不足、利益不足の4重苦に苦しんである。規模がある程度ないと血族以外に後継者、技術継承を得ることは難しい。また規模が不足して利益が出ないため法人税も払えない企業が多い。合併し3倍の規模になれば後継者難、利益不足、海外展開の問題は解決する。
 企業、銀行は平成の地方自治体合併で市町村の規模が大きくなったように、大型化すべきである。なお市町村数の減少は1888年から1889年71314が15859と22.2%と4分の1以下に、1947年から65年10505が3392と3分の1以下に、1995年から2011年現在3234が1723と減少している。
 日本企業は統廃合して数が3分の1に減れば、規模が3倍になり、グローバル化人材を育成確保することが可能となり、規模の経済、範囲の経済により利益が出て、法人税を払う企業が増え、政府の法人税などの税収増となる。赤字国債削減に繋がる。
 平成の市町村統合で、市町村の数は1995年から2011年までに53.3%に減少した。町は37.8%、村は31.8%に減少した。地域が広域になった以上、金融も数が減少するのが自然である。この間地方金融も統合され1995年から信用組合は44.1%、信用金庫は67.1%、第二地銀は67.7%へと減少した。ところがこの間第一地銀は64行と数が変わっていない。この間企業数は1674465社から1515835社へと90.5%になったが、大きな変化は無い。
 この間米国の銀行数は1980年代半ば約14000行が約7000行に半減した。1995年からでも約2000行減少している(金融庁資料)。
 大手都銀は1976年の13行体制から6行へと統合が進み、現在大手企業の事業統合、企業統合も進んでいる。第一地銀は、統廃合、合併により市町村合併で市町村が半減したのに合わせ、数を2分の1へ減らせ統合するのが自然であり、道州制、グローバル化を先取りという意味でも目標を3分の1にすべきである。 
 三井住友銀行の成立では、旧財閥を超えた企業統合が増加したともいわれている。同じ業種なら旧三井系、旧住友系の企業が三井住友銀行と取引をするなら一社に統合するほうが銀行も企業も取引がスムーズに行く。企業支援、企業ソリューションが銀行、地銀の機能である。地銀が責任を持って投融資で企業を支援すると考えれば、第一地銀の数3分の1を目標にすると、全国の企業の数も3分の1へと集約されていくだろうと考えるのが自然である。

参考文献
清家彰敏「今こそ、太平洋側に偏った交通インフラを問う(上)」『海運』日本海運集会所,No.1005,2011年6月
清家彰敏「今こそ、太平洋側に偏った交通インフラを問う(下)」『海運』日本海運集会所,No.1006,2011年7月

2011年9月10日土曜日

ロボット経済シミュレータ アバターと仮想移民

ロボット経済シミュレータ アバターと仮想移民

                              清家彰敏
                              A(匿名)
                              B(匿名)

下記のシミュレータは2005年に限定的な条件下で試行的に検討し、最初のプログラムを作成し、シミュレーションしたものである。2005年の時点ではロボット経済は夢物語であった。その時点で少しでもイメージを感じてもらうための第1弾プログラムであった。その後、経済的理由などで、ストップして今日にいたった。しかし、先年のアバターの映画のヒット、スマートグリッドの中核となるinternet of thingsである「つぶやくスマートメーター」の登場で夢物語ではなくなりつつある。第2弾のシミュレーション計画を進めることで世界経済シミュレーションの「一助」としたい。
 どなたか同じ志の方でプログラミング能力のある方にHELPをしていただけることを期待する。
シミュレータは以下のURLで配布
http://www.mediafire.com/?993fbj8090u5kt8
モデル・数式は以下の記述を参照ください。
なお
GDPを売上高に代えれば経営戦略シミュレーションへ転換可能。
第2弾では
収穫逓減の内包・フィードバックなど多くの研究、工夫が必要。

1.序論
 ロボットには2つの機能がある。人間の支援と代替である。支援は人間の仮想年齢を低下させる機能があり、国民の平均年齢が下がれば、国民が仮想に若返り、生産、販売に励み、消費が増えることになりGDPが増加する。またロボットが人間に代わり、生産、販売、消費をすることになれば、これは移民と似た効果を持つことになり、移民経済的にはGDPが増加することになる。
 しかし、ロボットに関わる制度や技術の経済的効果を定量的に把握した上で将来的なロボットの普及が経済に与える影響を分析評価し、ロボット技術が産業として発展していくための経済的課題を明らかにする取り組みについては、ほとんどなされていない。そのため、制度的課題や技術的課題の検討においても、経済効果について具体的に踏み込んだ比較評価を行うことは困難な状況となっている。
上述の背景を踏まえ、本事業では、①ソフトウェア的なロボットを含む経済主体としてのロボット(ロボット)によって生じる新たな経済効果の定量的なモデル化について研究を行うとともに、②このモデルに基づく経済効果算定シミュレータの実現可能性について、調査研究を行うことを目的とする。

2.ロボット移民(アバター)
 経済主体(economic agent、economic man、 economic unit)は、消費者と企業を一般に対象とする。これは、古典派経済論者、ロボット理論の学者、組織論者を問わず人間のみを対象としている。しかし、経済主体はプログラムの登場によって、人間だけではないと明確に認識できるようになってきた。このプログラムはインターネット上の生活、ビジネスではネットロボット(インターネット上で人間の機能を代替するソフトウェア)、現実社会では産業ロボット、ネット家電、インテリジェント自動車、民生ロボットと言った人間の機能の一部を代替、代行する「存在」に搭載される。
 例えば金融工学のプログラムの発展は、プログラム間の取引で、人間の介在を必要としなくなった。金融工学のプログラムは専門知識のない人間より、明らかに役に立つとも考えられる。本研究は、経済主体の定義や概念を人間以外に拡張する試みの一環である。「人間」のみを考える経済から「人間」と「プログラム(ネットロボット、ロボット等)」の2つの経済主体が形成する経済、それをロボット経済と規定する。この経済では、人間だけの社会へロボットが移民をしてくる。
 
3.ロボット移民とGDP押し上げ効果
 テーマは、20世紀、産業ロボットが自動車産業、電機産業へ導入されたのに対して、21世紀におけるアルバイト労働、高齢者に頼る販売・流通・サービスといった産業、“癒し”産業ともいわれる高齢者慰安、観光・ペット産業へのロボット導入である。移民にGDP押し上げ効果があることはよく知られているが、移民と代替的なロボット導入にどの程度のGDP押し上げ効果があるかが、本研究の狙いである。移民政策に国家、地方自治体が予算を使って、移民が増えればGDPが増加するのと同じように、ロボット開発に予算を使えば、ロボットが増えGDPが増加する。
 各産業に与える影響では、ソニーを初めとする電機業界、本田を初めとする自動車業界、産業ロボット業界、その他が4分の1ずつのロボットを供給すると仮定してみよう。ロボットは平均的な労働者の労働期間を40年間と考え40年のレンタルを行うと仮定すると、それぞれ2010年には300億円程度の売上増が見込める。関連消費がその約4倍と見込まれるので、その供給の30%を供給産業が行えると考えると各産業の産業規模はそれぞれ700億円程度となる。
 他の産業は情報サービス、情報通信産業、工作機業界、ファッション業界、玩具業界、ゲーム業界等がそれぞれ売上を享受することになり、500億円、300億円、300億円、200億円、200億円、200億円といった試算もできる。
 ロボット系が電機、自動車、産業ロボット業界から供給されるのに対して、ロボットやネットネットロボット連携商品は主に家電業界、建設業界、玩具業界から供給され、これは20X0年には100万セットの移民があると試算すると20x0年には1兆円のGDP効果が考えられる。ネットロボット系はハードの負担が軽くゲーム業界、玩具業界、携帯電話業界、情報サービス業界といった技術保持産業からだけでなく、コンテンツ保持産業からの供給が主流になり、これは予測が難しい。介護コンテンツを持った企業が、同業者に先駆けてネットロボットを製品化し、競争企業を排除する可能性がある。

4.ロボット移民の活躍
 現実社会では、家庭で掃除機、洗濯機は家庭の生産性を急上昇させ、家事労働時間は激減した。工場の機械、フォークリフト、産業ロボットは工場の生産性を高め、社員の何十人分の働きをする。工事現場では作業員がつるはしを振るう現場は無くなり、人間の30人分、100人分の能力といった重機が働く。人間以上に働く機械、ロボットは増加する一方である。人間を代替する内容も肉体から知能へシフトしてきている。
 インターネットの場でも同様で、多くのロボット(プログラム)が人間以上の活躍をし、人間以上の活躍をするロボットは級数的に増加している。インターネット証券取引ビジネスでの金融工学を応用したロボットは専門知識のない人間以上に役立つ。他にも多くの種類の人間を代行するロボットが登場している。これらのロボットはビジネス活動を人間と共同で行っているのである。また、ポータルサイトで販売を助けるロボットは販売能力でやがて人間を超えるかもしれない。人間の販売員は対応できる消費者の数で物理的に限界があるが、ロボットは無限の消費者を対象にできる。これらのロボットは人間と異なり、24時間働き、その能力は体調等で左右される事はなく安定している。
 また、消費者側もプログラムによって助けられる。検索ロボットは知識生産活動を支援する有力なプログラムであるが、消費活動を支援する有力なロボットでもある。インターネットショッピングは、検索ロボットなしには成立できない。消費者の活動を支援するロボットが発展すれば、初期の指示と最終消費以外はすべてロボットが代行できるようになる。例えば、来年の誕生日のパーティーを南欧風に行うという指示をすれば、来年の誕生日(最終消費)までの間、ロボットが様々なお膳立てができる。ロボットは徐々に人間を助ける存在から、人間に代わる存在へと変化しつつある。
 伝統的な経済学の完全競争のモデルでは個々の経済主体(消費者、企業)の意思決定は、他の経済主体に対して何らかの影響力をもたないし、他の経済主体の決定によって影響も受けない。

5.R to Rビジネスとロボットの進化
 無数のロボットが生活の場でインターネットに支援されビジネスを行う未来を考えてみよう。ロボットの機能は人間の支援(機能代替)と代替である。人間の増加に比べてロボットプログラムの増加が大きければ、やがて我々はロボットプログラムがほとんどを占める経済の中で生きる事になるかもしれない。R to R ビジネス(ロボット ツウ ロボット)であるこれをロボット経済学と規定することができるかもしれない。
 将来的にはトヨタ生産方式の多工程持ちがロボット利活用では有力な手法となる。googleはR to H をR to Rに転換し、現在のinternet of thingsではより高いレベルへ進化しようとしている。人間が知識を探索する場合、知識サイズ拡大に対する人間の探索能力に限界があるため、困難を要することとなる。
 経済主体としてのロボットの進化に貢献するのはゲーム理論である。ゲーム理論では、各個人の決定は他の人々に影響をもたらし、他の人々の決定によっても自分の利得が左右され、ナッシュ均衡に達する。ゲーム理論における人間は、伝統的な経済学における人間像と比べると、他の人々へ影響を与え、他の人々から影響を受ける、より「社会的な」存在であるといえる。さらに知識や情報が共有されていない状況をもカバーし、知識・情報の交換、伝達を行う存在でもある。また、自ら利益のためにさまざまな策略を張り巡らす、機会主義的な人間でもある。そのような機会を見つけ出し利用するための情報処理・類推・計算能力の面では、ゲーム理論の人間は、伝統的な経済学における人間以上に高度な能力を備えているといえる。ロボットプログラムの経済主体としての進化はこの方向で起こっている。
 人口の規模と市場規模の関係は断ち切れない。人口とは経済の基準原則である。経済=f(人口)である。例えば中国は人口が13億人、そして日本は1億2千万人程度である。人口が10倍ということは、市場規模は10倍にとどまらない。市場は人と人の間に成立するため、その規模は50倍にも100倍にも膨れ上がる。ネットワークの経済性である。これでは人口の数で日本は、中国には勝てない。従来、経済学とは「人口」をどう取り扱うかという考え方に立って展開される。しかし、ロボット経済学で説明される、来るべき世界において、人口の数が持つ意味はどんどん小さくなる。ロボットの創造を生産と消費において促進した国、企業、社会が世界の中心になるのであって、人口大国、政治大国が中心となる時代は終わりを告げるのである。

6.ロボット経済シミュレーションの概要
 本研究では、上記の議論を踏まえ、このような特徴を持ったロボットの経済効果について定量的なモデル化を試みる。経済主体は、生産、販売、購買、消費、賭博等の機能を持つが、ここでは簡単のために「販売(生産含む)」と「購買(消費含む)」機能のみの「売買行為」に限定してロボット支援・代替が起こるとしてシミュレーションを行う。簡単のために、収穫逓減の内包・フィードバックなどについても考慮していない。


 人間とエージェントによる混合経済において、経済主体を構成する人間の集合Hおよびエージェントの集合Aを経済活動の共通性の観点から複数のカテゴリに類別し、類別されたそれぞれの集合を「セグメント」と呼ぶことにする。エージェントはM個のセグメントに、人間はN個のセグメントに分類されるものとし、それぞれのセグメントに番号(エージェントのセグメントにはi=1,2,…,M、人間のセグメントにはj=1,2,…,N)を対応付け、エージェントのセグメントをAi(i=1,2,…,M)、人間のセグメントをHj(j=1,2,…,N)と表すことにする。つまり、

エージェント集合 A=∪Ai(i=1,2,…,M),Ai∩Aj=φ(i≠j)
人間集合 H=∪Hj(j=1,2,…,N),Hi∩Hj=φ(i≠j)

と表される。この時、各セグメントのサイズ(人間の場合は人数、エージェントの場合はエージェントインスタンス数)を、下記のように定義する。

|Ai|=ai :セグメントiのエージェントのインスタンス数(i=1,2,…,M)
|Hj|=hj :セグメントjの人間の人数(j=1,2,…,N)

これらのパラメータを用いて、混合経済における経済主体構成モデルmを次のような横ベクトルにより表すことにする。

エージェントセグメント構成 ma =(ai ): i=1,2,…,M
人間セグメント構成 mh =(hj ): j=1,2,…,N
経済主体構成モデル m=( ma mh )=( mk ): k=1,2,…,M+N

ここで、総人口|H|=hと表し、人間の各セグメントHjの総人口比率hj/h=rjと表すことにすれば、{hj|j=1,2,…,N}は総人口hと総人口比率{rj|j=1,2,…,N}から計算可能となる。総人口hについては将来の予測計算が可能であると考え、ここでは総人口比率rjの計算方法について考えることにする。

経済主体構成モデルmを特徴付ける各パラメータの値は時間tの関数となるため、経済主体構成モデルmも時間tの関数として表現される。これを明示的に考慮した経済主体構成モデルをm(t)と表す。つまり、経済主体を構成する各セグメントのサイズは時間の経過に伴い増減する。セグメントのサイズ増減に寄与する因子をセグメントの成長係数と呼ぶことにすれば、各セグメントの成長係数は次のように定義することができる。

成長係数 αi =∂ai /∂t:セグメントiのエージェントの成長係数(i=1,2,…,M)
成長係数 βj =∂rj /∂t:セグメントjの人間(人口割合)の成長係数(j=1,2,…,N)

これらの各セグメント成長係数をまとめた成長係数gは次のような横ベクトルの形で表すことができる。

エージェント成長係数ベクトル ga=( αi ) : i=1,2,…,M
人間成長係数ベクトル gh=( βj ) : j=1,2,…,N
成長係数ベクトル g=( ga gh )

これらのセグメントの成長係数ベクトルgも時間tの関数として表現される。これを明示的に考慮した成長係数をg(t)と表すことにする(各成分はαi (t)、βj (t)となる)。総人口h(t)については予測計算が可能であるとすれば、これらの成長係数を用いることにより、経済主体の各セグメントのサイズは時間軸に沿ってΔtを単位時間として反復的に次のように計算することができる。

ai (t+Δt ) =ai (t)+Δt・αi (t)
rj (t+Δt ) =ri (t)+Δt・βj (t)
hj (t) =rj (t)・h(t)

これにより、経済主体構成モデルm(t)は、各セグメントの初期値、総人口h(t)、セグメントの成長係数ベクトルg(t)に基づいて反復的計算によって求めることができる。
ただし、hj (t)については、βjに基づいてrj (t)を反復計算することにより求める方法以外に、将来人口構成予測等から直接求めることが可能な場合もある。実際には、人間のセグメントを具体的にどのように設定するかに応じて、いずれかより適切な方法を用いて算出するものと考える。

1.1.1. 混合経済における売買モデル
 本研究では、エージェントおよび人間から構成される経済主体が行う経済活動のうち、売買に着目して定量的なモデル化を試みる。前述のエージェントおよび人間の各セグメントは、同一セグメント内あるいは他のセグメントとの間で売買を行う。単位時間におけるの売買のサイズ(金額)は、統計的に売り方セグメントのサイズ、買い方セグメントのサイズに比例すると考えられる。この比例係数を「売買活動係数」と定義すると、この係数は売り方セグメントと買い方セグメントの経済的特徴に応じて決まると考えられる。売り方・買い方のそれぞれがエージェントであるか人間であるかによって場合分けを行えば、次の4種類の売買活動係数を定義することができる。

売買活動係数 caa(i, j):セグメントAiが売りAjが買う場合
売買活動係数 cah(i, j):セグメントAiが売りHjが買う場合
売買活動係数 cha(i, j):セグメントHiが売りAjが買う場合
売買活動係数 chh(i, j):セグメントHiが売りHjが買う場合

これら4種類の売買活動係数を次のように並べ、売買活動係数行列としてM+N行M+N列の正方行列Cを時間tに依存しない定数として次のように定義する。

A to A売買活動係数行列 Caa=( caa(i, j) )
A to H売買活動係数行列 Cah=( cah(i, j) )
H to A売買活動係数行列 Cha=( cha(i, j) )
H to H売買活動係数行列 Chh=( chh(i, j) )

            Caa Cah
売買活動係数行列 C=
            Cha Chh

これらの売買活動係数および経済主体構成Eのパラメータを用いることにより、単位時間におけるセグメント間の売買サイズ(金額)は、次のように定量化できる。

売買 saa(i, j)=caa(i, j)・ai・aj :セグメントAiが売りAjが買う場合
売買 sah(i, j)=cah(i, j)・ai・hj :セグメントAiが売りHjが買う場合
売買 sha(i, j)=cha(i, j)・hi・aj :セグメントHiが売りAjが買う場合
売買 shh(i, j)=chh(i, j)・hi・hj :セグメントHiが売りHjが買う場合

これらの売買についても、同様に、4種類の売買を次のように並べ、売買行列としてM+N行M+N列の正方行列Sを定義する。

A to A売買行列 Saa=( saa(i, j) )
A to H売買行列 Sah=( sah(i, j) )
H to A売買行列 Sha=( sha(i, j) )
H to H売買行列 Shh=( shh(i, j) )

        Saa Sah
売買行列 S=       =(si j ): i, j ∈{1,2,…,M+N}
        Sha Shh

経済主体構成Eの各パラメータはtの関数であるため、ここで定義した売買行列Sの各成分si jもそれぞれ時間tの関数として表現されることになる。これを明示的に考慮した売買行列をS(t)と表す。ミクロ経済モデルに基づくGDP(t)は、この行列S(t)の各成分si j (t)の和によって、次のように計算することができる。

GDP(t)=Σsi j (t): i, j ∈{1,2,…,M+N}


1.1.2. 混合経済における研究開発投資効果モデル
 エージェントおよび人間を経済主体とする混合経済の各セグメントの成長係数に対する研究開発投資の効果を定量的にモデル化するために、まず、研究開発投資の対象を成長係数に対する経済的効果の共通性の観点からK個のカテゴリに分類し、分類されたそれぞれの対象領域を「ドメイン」と呼ぶことにする。研究開発投資のドメインおよび各ドメインへの単位時間当たりの研究開発投資金額を次のように定義する。

研究開発投資のドメイン Dk(k=1,2,…,K)
Diへの単位時間投資額 dk(k=1,2,…,K)

各研究開発投資ドメインへの単位時間投資額をまとめて、研究開発投資額dを次のような横ベクトルにより表すことにする。

研究開発投資額 d=(dk ) : k=1,2,…,K

研究開発投資額dも時間tの関数として表現される。これを明示的に考慮した研究開発投資金額をd(t)と表すことにする。セグメントの成長係数に対する各ドメインへの研究開発投資の効果は、それぞれのドメインへの研究開発投資額に比例すると考えられる。その比例係数を「投資効果係数」と定義すると、この係数は研究開発投資ドメインと経済主体セグメントのそれぞれの経済的依存関係に応じて決まると考えられる。研究開発投資の影響を受ける経済主体セグメントがエージェントであるか人間であるかによって場合分けを行えば、次の2種類の投資効果係数を定義することができる。

投資効果係数 ea(k, i):ドメインDkへの投資がセグメントAiの成長係数に与える効果
投資効果係数 eh(k, j):ドメインDkへの投資がセグメントHjの成長係数に与える効果

これらの研究開発投資および投資効果係数の各パラメータをまとめた投資効果係数行列Eは次のような形で表すことができる。

エージェント投資効果係数行列 Ea=( ea(k, i) )
人間投資効果係数行列 Eh=( eh(k, j) )
投資効果係数行列 E=( Ea Eh )

本研究では、この投資効果係数行列Eは時間tに依存しない定数と考える。この投資効果係数行列Eに基づいて、セグメントの成長係数に対する各ドメインへの研究開発投資の効果を次のように考える。

エージェントセグメント成長係数 αi =Σea(k, i)・dk : k=1,2,…,K
人間セグメント成長係数 βj =Σeh(k, i)・dk : k=1,2,…,K

つまり、セグメントの成長係数ベクトルg(t)は、研究開発投資額d(t)を転置(縦ベクトル化)したdT(t)および投資効果係数行列Eに基づいて、次のように計算できる。

g(t)=( E・dT(t) )T


1.1.3. 混合経済における競争モデル
 エージェントおよび人間を経済主体とする混合経済の各セグメントの成長係数については、前述の研究開発投資の効果に加えて、経済主体者間の売買における競争を考える必要がある。このような経済主体のセグメント間の売買競争を定量的にモデル化するために、各セグメントに対して研究開発投資効果に加えて成長係数に寄与する要素として、次のような「競争力」を考える。

競争力 λi:セグメントiのエージェントの競争力(i=1,2,…,M)
競争力 μj:セグメントjの人間の競争力(j=1,2,…,N)

これらの各セグメント競争力をまとめた競争力fは次のような横ベクトルの形で表すことができる。

エージェント競争力ベクトル fa=( λi ) : i=1,2,…,M
人間競争力ベクトル fh=( μj ) : j=1,2,…,N
競争力ベクトル f=( fa fh )=(fk ) : k=1,2,…,M+N

この競争力ベクトルfも時間tの関数として表現される。これを明示的に考慮した競争力ベクトルをf(t)と表すことにする。この競争力ベクトルf(t)に基づいて、セグメントの成長係数ベクトルg(t)を次のように再定義する。

g(t)=( E・dT )T + f(t)

競争力ベクトルf(t)は各セグメントの単位サイズ当たりの売買利益に比例すると考えられる。その比例係数として、次のような「競争成長係数」を考える。

競争成長係数 ψi:セグメントiのエージェントの競争成長係数(i=1,2,…,M)
競争成長係数 ωj:セグメントjのエージェントの競争成長係数(j=1,2,…,N)

これらの各セグメント競争成長係数をまとめた競争成長係数wは次のような横ベクトルの形で表すことができる。

エージェント競争成長係数ベクトル wa=( ψi ) : i=1,2,…,M
人間競争成長係数ベクトル wh=( ωj ) : j=1,2,…,N
競争成長係数ベクトル w=( wa wh )=( wk ) : k=1,2,…,M+N

この競争成長係数ベクトルw=( wk )と、売買行列S=(si j )、経済主体構成モデル m=( mk )を用いて競争力ベクトルf=(fk )を次のように表すことができる。

経済主体セグメントkの販売 pk = Σsk i : i=1,2,…,M+N
経済主体セグメントkの購買 qk = Σsi k : i=1,2,…,M+N
fk =wk・(pk - qk )/mk : k ∈{1,2,…,M+N}

つまり、競争成長係数ベクトルwを与えることができれば、f(t)、g(t)を計算することができる。ここで、競争成長係数ベクトルwを時間tの関数と考えるか、時間tに依存しない定数と考えるかが、定量的モデル化を行う上でのポイントとなる。モデルの近似能力の観点からは、wを時間tの関数と考える方が現実の経済的挙動に対する近似精度は高まると考えられるが、シミュレーションによって予測計算を行う観点からは、wを求めるための合理的な条件が決まらなければwを時間tの関数と考えるメリットはない。

本研究では、競争成長係数ベクトルwについては、時間tの関数としての挙動を予測する上で必要な合理的条件を求めることが困難であるため、時間tに依存しない定数として初期値のみを与えてシミュレーションを考えるものとする。


2. 経済効果算定シミュレータの実現可能性調査

 本章では、エージェントネットの経済モデル化に関する研究結果を踏まえ、コンピュータ上で動作する経済効果算定シミュレータの実現可能性についての調査結果をまとめる。

2.1. シミュレータプログラムの実現可能性調査
 本節では、エージェントネットの経済モデル化に関する研究結果として得られた経済シミュレーションモデルに基づいてエージェントネットの経済効果シミュレータプログラムを実現する上での具体的な課題、および、課題を明確化するために行った経済効果算定シミュレータプログラムの試作実装・評価に関して調査結果をまとめる。
 
2.1.1. シミュレータの前提条件について
 エージェントネットの経済効果シミュレータプログラムを実現する上で、エージェントネットの経済モデル化に関する研究結果として得られた経済シミュレーションモデルを用いる場合の入出力情報に関する前提条件は次のように整理される。

(1) 事前設定パラメータ
事前設定パラメータについては、CSV形式のテキストファイルで記述を行い、シミュレータ起動前にテキストエディタ等により作成して与えるものとする。
 経済主体構成モデルのセグメント数:M, N
 研究開発投資のドメイン数:K
 シミュレーション開始時間:T0
 経済主体構成モデル初期値ベクトル:m(T0)
 総人口予測(時間tの関数):h(t) [ または各セグメントサイズhj (t) ]
 売買活動係数行列(定数):C
 投資効果係数行列(定数):E
 競争成長係数初期値ベクトル:w(T0)
 シミュレーション時間間隔:Δt (デフォルト値:半年)

(2) 入力パラメータ
入力パラメータについては、シミュレータ起動後にユーザインタフェイスから入力を行うものとする。
 シミュレーション終了時間:TE
 研究開発投資額ベクトル(時間tの関数):d(t)

(3) 出力パラメータ
出力パラメータについては、シミュレーション実行後にテキストファイル(CSV形式)への出力を行うものとする。また、GDP、経済主体構成モデル、売買行列等に基づいて、シミュレーション実行中に逐次ユーザインタフェイスへのグラフィカルな出力を行うものとする。
 GDP(時間tの関数):GDP(t)
 経済主体構成モデル(時間tの関数):m(t)
 売買行列(時間tの関数):S(t)
 競争力ベクトル(時間tの関数):f(t)
 成長係数ベクトル(時間tの関数):g(t)

本研究におけるシミュレーションでは、w(t)については事前設定パラメータとして与えられたw(T0)の値を取る定数関数とする。すなわち、任意のtに対してw(t)=w(T0)とする。事前設定パラメータとして関数w(t)を与えることができれば、それに基づくシミュレーションも可能となる。
また、人間の各セグメントを将来人口構成等から直接予測可能である場合には、総人口h(t)を与える代わりに人間の各セグメントサイズhj (t)を与えることによってシミュレーションを行うことも可能である。

2.1.2. シミュレータの性能について
 本研究では、実現可能性調査を目的としてシミュレータの試作実装を行い、試作シミュレータ上で実際にシミュレーションを実行し、規模およびそれに対する性能を評価することにより、今後の規模拡張および性能改善に対する課題を抽出することを目標としている。
 そのため、本研究の試作シミュレータ上で大規模なシミュレーションを実行することは範囲外とし、シミュレーション規模については、経済主体のセグメント数(M+N)最大20、ドメイン数(K)最大10、シミュレーション反復回数((TE -T0 )/Δt)最大100までを検証範囲とする。
 また、同様に、本研究の試作シミュレータ上で高速シミュレーションを実行することも範囲外とし、シミュレータの性能については、上記シミュレーション規模を前提に、Pentium1GHz程度のWindows PC上で5分以内にシミュレーションを実行できる程度とする。

2.1.3. シミュレータの提供機能について
 本研究で試作するシミュレータの提供機能は、次の通りとする。

2.1.3.1. 事前設定パラメータ読み込み
 シミュレータ起動時に、指定したファイル名(デフォルトは”Preset.csv”)のテキストファイル(CSV形式)で記述された下記の事前設定パラメータを読み込んでシミュレーション条件に設定する。
・ 経済主体構成モデルのセグメント数:M, N
・ 研究開発投資のドメイン数:K
・ シミュレーション開始時間:T0
・ 経済主体構成モデル初期値ベクトル:m(T0)
・ 総人口予測(時間tの関数):h(t) [ または各セグメントサイズhj (t) ]
・ 売買活動係数行列(定数):C
・ 投資効果係数行列(定数):E
・ 競争成長係数初期値ベクトル:w(T0)  [ または関数w(t) ]
・ シミュレーション時間間隔:Δt (デフォルト値:半年)

また、指定したファイル名(デフォルトは”Input.csv”)のテキストファイル(CSV形式)で記述された下記の入力パラメータが存在する場合は、それを読み込んでシミュレーション条件に設定する。
・ シミュレーション終了時間:TE
・ 研究開発投資額ベクトル(時間tの関数):d(t)

さらに、指定したファイル名(デフォルトは”Output.csv”)のテキストファイル(CSV形式)で記述された下記の出力パラメータが存在する場合は、それを読み込んでシミュレーション結果に設定する(シミュレーション時には計算を行わずに読込んだ結果をそのまま表示する)。
・ GDP(時間tの関数):GDP(t)
・ 経済主体構成モデル(時間tの関数):m(t)
・ 売買行列(時間tの関数):S(t)
・ 競争力ベクトル(時間tの関数):f(t)
・ 成長係数ベクトル(時間tの関数):g(t)

2.1.3.2. 入力パラメータ設定(画面入力)
(1) シミュレーション終了時間:TE
シミュレーション終了時間は、CSVファイルの事前設定値がない場合はデフォルトで30年となっており、10年単位(最大値は50年)で選択入力(変更)することができる。

(2) 研究開発投資額ベクトル(時間tの関数):d(t)
次のそれぞれのパラメータを選択入力して各投資関数を登録する(画面入力では数字を直接設定できなくて構わないが、設定数値の表示は行うものとする)。
・ 研究開発投資ドメイン(いずれかのドメインを選択)
・ 投資パターン(固定/減少のいずれかを選択)
・ 投資金額(大/中/小のいずれかを選択)
・ 投資開始年度(シミュレーション期間の中の年を選択)
・ 投資期間(1/3/5/10年のいずれかを選択)
投資関数は複数登録することができ(画面入力は研究開発投資ドメイン毎に1つずつ登録する形も可)、投資関数を選んで選択内容の修正を行うこともできる。

2.1.3.3. 出力パラメータ表示(画面出力)
(1) GDP(時間tの関数):GDP(t)
横軸を時間(t)とし縦軸を金額とするグラフ上にGDP(t)をtの経過に応じて逐次追記する形でグラフ表示する。

(2) 経済主体構成モデル(時間tの関数):m(t)
各セグメントのアイコンの大きさをセグメントサイズの相対比に応じて変化させて、逐次アニメーション表示する。セグメントはエージェントと人間にグループを分けて、エージェントと人間の相対比に応じてグループの大きさを変化させて表示する。

(3) 売買行列(時間tの関数):S(t)
各セグメントのアイコン間の矢印により、対応するセグメント間の売買の大小が分かるように、逐次アニメーション表示する。

(4) 競争力ベクトル(時間tの関数):f(t)
各セグメントのアイコンの境界等により、対応するセグメントの競争力の大小が分かるように、逐次アニメーション表示する。

(5) 成長係数ベクトル(時間tの関数):g(t)
各セグメントのアイコンの色等により、対応するセグメントの成長係数の大小が分かるように、逐次アニメーション表示する。

(6) 研究開発投資額ベクトル(時間tの関数):d(t)
横軸を時間(t)とし縦軸を金額とするグラフ上に各投資関数(ドメイン毎に合計して色分け)を逐次グラフ表示する。

2.1.3.4. 出力パラメータ書き出し
 シミュレーション完了時に、下記の入力パラメータおよび出力パラメータをCSV形式のテキストファイルで書き出すことができる。
・ シミュレーション終了時間:TE
・ 研究開発投資額ベクトル(時間tの関数):d(t)
・ GDP(時間tの関数):GDP(t)
・ 経済主体構成モデル(時間tの関数):m(t)
・ 売買行列(時間tの関数):S(t)
・ 競争力ベクトル(時間tの関数):f(t)
・ 成長係数ベクトル(時間tの関数):g(t)


2.1.4. シミュレータの事前設定パラメータについて
 エージェントネットの経済効果シミュレータプログラムの検証においては、今回は次の事前設定パラメータを利用する。

2.1.4.1. 基本的な事前設定パラメータ
 経済主体構成モデルのセグメント数、研究開発投資のドメイン数、シミュレーション開始時間、シミュレーション時間間隔については次のように事前設定値を定める。
・ 経済主体構成モデルのセグメント数:M=4, N=4
・ 研究開発投資のドメイン数:K=6
・ シミュレーション開始時間:T0 = 2005年4月
・ シミュレーション時間間隔:Δt = 1年

2.1.4.2. 経済主体構成モデルに関する事前設定パラメータ
 人口予測(時間tの関数)については、各セグメントサイズhj (t) を人口統計等に基づいて事前設定する。
 経済主体構成モデル初期値ベクトルについては、初期値ベクトルm(T0) の各エージェントセグメントサイズは0(ゼロ)に事前設定し、各人間セグメントについてはhj (t) に基づいて決定を行う。

なお、検証用の各事前設定パラメータ「投資効果係数行列」の各値については、次のような観点から設定値を定めた。

(1) ハードウエア「センサ系」について
センサとしては、CCD、GPS、エンコーダー、加速度計などがあるが、特殊なセンサを除きロボットやエージェントに必要なセンサは現状で既に存在しているため、研究開発投資を増やしてもエージェント増大にはつながり難いと考える。

(2) ハードウエア「駆動系」について
駆動系の主なものはアクチュエータ(特にモータ)と考えられるが、研究投資効果はセンサと同様に少ないと考える。

(3) ハードウエア「電子デバイス系」は特にエージェントシステムに適したCPUの開発や、処理高速化熱量を下げる電子技術の開発は全ての機器のレベルを持ち上げる可能性があり、研究開発の効果は大きいと考えられる。

ソフトウエア「音声・言語系」
ソフトウエア「映像・空間系」
本研究では、実現可能性調査を目的としてシミュレータの試作実装および評価を行うため、試作シミュレータは様々なPC上で単体プログラムとして実行可能であることが望ましい。将来的にはネットワーク上のWebアプリケーションとして提供することも考慮し、本研究で試作するシミュレータは、Flash実行PlugInを組み込んだWebブラウザ上で単体動作するFlashプログラムとして実装を行うものとする。シミュレータのシステム構成は、次の図の通りとする。


本研究で試作するシミュレータのシミュレーションアルゴリズムでは、事前設定パラメータおよび入力パラメータによって与えられたシミュレーション開始時間T0からシミュレーション終了時間TEまでの時間をシミュレーション時間間隔Δt毎に分割し、次の図に従って初期値から計算を繰返すことにより各パラメータを算出する。本研究で試作するシミュレータの画面遷移は、次の通りとする。


また、シミュレータの各画面の構成は、次の通りとする。


6.大規模シミュレーション化の研究課題
 シミュレータプログラムの実現可能性調査において試作実装したシミュレーションアルゴリズム等を拡張することにより、将来的にスーパーコンピュータを用いての大規模シミュレーションを行う際の課題等をまとめる。本研究のシミュレーションプログラムでは、Flash実行環境を用いてシミュレーション出力パラメータの表示を行っている。残念ながら、Flash実行環境においてはファイル等による入出力パラメータやメモリ上の計算パラメータのサイズに関するスケーラビリティに事実上の限界があり、数MB~十MBを超えると性能が著しく低下するという現象が観測された。元来、Flash実行環境はシミュレーションのような膨大な計算を行うという用途に対応したものではないため、スケーラビリティを考慮した実行環境としては、Flash以外の実行環境との組合せが必須になると考えられる。
 シミュレーションのような膨大な計算を行うことが可能なFlash以外の実行環境のうちで、FlashプログラムとHTTP通信等により連携を行うことが比較的容易だと考えられる環境には、Microsoftの.NET環境とJava環境を挙げることができる。このうち、Microsoftの.NET環境については、現時点ではOSがWindowsプラットフォームに限定されてしまうという問題がある。これに対し、Java環境はWindows以外にLinux等の各種UNIXプラットフォームでも利用することが可能であり、シミュレータの今後のスケーラビリティの向上を考える上では、FlashおよびJava環境の組合せが最適であると考えられる。
 本研究の試作シミュレータにおいては、大規模なシミュレーションを実行することは範囲外とし、シミュレーション規模については、経済主体のセグメント数(M+N)最大20、ドメイン数(K)最大10、シミュレーション反復回数((TE -T0 )/Δt)最大100までを検証範囲としている。しかし、今後のシミュレーション拡張を考えていく上では、シミュレーションモデルの詳細化が必要となり、各種エージェントを想定して研究開発投資分野をより細かく分類することにより経済主体セグメント数やドメイン数は増大し、時間精度を上げるために反復回数も増える(Δtが小さくなる)ことになると考えられる。

7.おわりに
 ロボット経済モデル化に関する研究結果として得られた経済シミュレーションモデルに基づいてロボットの経済効果シミュレータプログラムを実現する上での具体的な課題、および、課題を明確化するために行った経済効果算定シミュレータプログラムの試作実装・評価に関して、今後のシミュレーションアルゴリズムの進化、シミュレータの画面構成の工夫、地球シミュレータ等による大規模シミュレーション、アルゴリズムのスケーラビリティが課題となる。

2011年9月9日金曜日

アジアの未来

 現在、日本と韓国、台湾、タイ、中国などとは徐々に日常生活、ビジネスのやり方が似通ってきている。
 日常生活についてみてみよう。1980年代以降、日本のドラマへの関心が高まった時期があった。山口百恵、高倉健の中国での人気はいまだに根強い。21世紀、コミック、アニメ、クールジャパン、「秋葉原オタク」、韓国ドラマ「韓流」といった文化的な広がりがアジアで見られる。幼くして日本のコミック、アニメ、ドラマで育った世代、「ドラえもん」、「ポケモン」、「一休さん」・・世代が大人になった。中国の30歳代は「東京ラブストーリー」で育った世代で国家をリードする。それがアジアの現在、近未来である。
 さて、現在アジアに広がりつつある日本型コンビニエンスストアチェーンはアジアの街並みと生活を変化させている。米国のコカコーラ、マクドナルド、ケンタッキーなどがハンバーガーなどの一食品の変化に留まるのに対して、日本型コンビニエンスストアは生活全体を変化させる。既にファミリーマートは日本国内より韓国、台湾、タイ他の店舗数が多い。セブンイレブン、ローソンのアジア展開も進展中である。これはアジアの生活の日本化から始まり、韓国化などが加わるといった近接文化の交流で、欧米人の生活より日本人の生活のほうが文化的に近縁であるからかもしれない。この結果、ビジネスは日本で成功したものがそのままアジアで成功する時代になりつつある。アジア人は同じような服装で、同じようなお店に入り、同じようなサービスを受け、同じような食品を食べ、商品に関心を持つ時代である。
 アジアの商品は欧米と似ているが少しアジア的である。まったく同じなのは生活インフラ、機器である。これは米国型である。アジアには今後5億戸の家が建つとの説もある。つい最近までアジアには家がほとんど無かった。というと不思議な顔をする人が多い。家はあった。しかしそれは家ではなかった。アジア的な家はあった。しかし、米国的な家、エアコン、家電、洋風家具、ガレージがある家ではなかった。現在アジアの人にとって、家の概念とは「米国型」の家である。それ以外は家であって実は家ではない。自動車を置くガレージがあって、エアコンと液晶テレビ、洗濯機、電子レンジ、イタリア家具それが家である。それ以外は家ではない。その結果、アジアで大建設ブームが起こる。新幹線、地下鉄、高速道路、都市計画、大規模火力発電所、原子力発電所はすべてこの米国型の家を皆が持ちたいための投資である。日立製作所、東芝、三菱重工業、石川島播磨などの企業の海外進出の成否はこの米国型の家への希求の動向にかかっている。
 アジアの近未来は生活と日本型、インフラは米国型と規定できるかもしれない。もちろんこれは持続可能、環境対応の中で実現する。その日本型生活と米国型インフラを繋ぐリンクピンとなるのが日本型コンビニエンスストア(以下コンビニと略)である。近未来、コンビニはアジア全体に数十万店以上展開するだろうと思われる。このコンビニには1店舗あたり2000~3000商品が並ぶ。商品数が限られるため、多くがトップブランドだけとなる。マイナーなメーカーは商品を陳列してもらえない。オールスター商品となり陳列してもらうためには激烈な競争が起こる。狭いスペースに並べるためには、空間的な工夫に加えて時間的な工夫がある。情報通信をフル活用して、時間帯ごとに商品を入れ替える。午前と午後、夜で顧客層が代われば商品を入れ替える。これは商品陳列のジャスト・イン・タイムである。必要な時に必要なものをの考えで、これにもっともかなう経営手法がトヨタ生産方式である。その結果、アジアは日本型生活+米国型インフラ+トヨタ生産方式が原理となる。
 トヨタ生産方式にしたがって、アジアの日常生活と都市インフラは徐々に変化していき、各国の国民の意識は一体化が進むと仮定すると、アジアの生活から企業行動までのビジネスはどのように変化するだろうか?その点について考えてみたい。
 さて、トヨタ生産方式はジャスト・イン・タイムと顧客志向である。顧客志向は顧客の問題解決(ソリューション)にきめ細かく対応できる意識と組織設計が基本である。経営者は顧客志向型企業統治を行う。顧客志向型企業統治を行い成功しているトヨタ自動車を分析すると、日常的に、顧客から従業員は行動のほとんどを多側面に直接・間接的に監視されている。お客の前では変な行動はできない。満足してもらうためには努力と訓練が必要である。このため、常に目標が明確になり、組織防衛的な行動は起こりがたい。
 お客のためにディーラーの営業マンは努力をし、営業マンのために自動車出荷担当者は努力する。このとき出荷担当者にとっては営業マンがお客である。このことは大変重要である。最終顧客は直接的に営業マンを監視するが、営業マンをお客と考えることで出荷担当者も間接的に最終顧客の監視を受けることになる。
 企業が誰のものかが曖昧になる結果、組織防衛が起こることが多いが、顧客の立場に立って行動することは、従業員個々の職務の成果に直結しており、馴れ合いが起こらない。トヨタ等の顧客による従業員の監視は、米国の企業における株主の監視より、はるかに個別で具体的であり、時としてより厳しいと思われる。これは日本人以外の顧客、例えば北京におけるイトーヨーカ堂においても成立していると思われる。
 この結果、トヨタ等の顧客指向型企業統治では短期的、機会主義的に行動して、反社会的な行動を起こす可能性は少なくなる。上記の原理は、顧客の製品、サービス、ソリューションに対する評価能力が高く、自立し、顧客の損得が明示されているときほど、うまく機能する。良い顧客は良い従業員を育てるのである。
 良い顧客、良い従業員の社会へ未来のアジアは向かう?

2011年8月18日木曜日

世界戦略・・・考慮中(^^)

グローバル化とスピード経営

1.世界展開

1)太平洋管理開発:シンガポール・日本海・パナマ一直線

2)北極海航路:資源開発

2.投資の近未来

1)日本 グローバル企業が海外へ投資(国内は過当競争消耗戦:坂根) 国内投資が減る

2)欧州 ドイツからEU各国へ補助金? 投資が中国、新興国、資源国へ? 

3)米国 世界へビジネス拡大(アンプ機能) 中国、新興国、資源国へ?
 ベルリンの壁崩壊以来1990年代、旧共産圏諸国のエリートは先進国に移民して豊かになった。2000年代からは、新興国自国でも豊かになれる時代になった。そのきっかけがニューヨーク911テロであった。911以降、米国の移民規制で、移民を希望していた旧共産圏新興国のエリートは母国に留まるようになった。米国は移民などで90年代4000万人以上人口が増加し、経済成長につながった。2000年代中国は9000万人が豊かになったと思われる。

3.日本の輸出の近未来

1)中台経済一体化  日台連携事業 中国市場 顧客志向
 中国市場は台湾と制度的に一体化する。台湾が市場動向を把握し、日本が商品企画・研究開発し、基幹技術、基幹部品素材を日本で生産、中国で生産し中国で販売する。

2)韓国FTAの活用 日韓連携事業 世界進出 規模の経済
 韓国に進出して韓国から世界制覇製品を輸出する。

3)日本EPAの活用 日印連携事業 欧州進出 顧客選考
 米国に輸出する代替としてメキシコへ進出し、メキシコで生産し米国へ輸出する。フランス、ドイツへ進出する代替としてポーランドへ進出し、ポーランドからEU圏へ輸出する。

4.日中韓台東南アジアのビジネス一体化
 コンビニエンス生活ビジネス 80年代日流、90年代韓流で生活感覚共通化 日本の小売・飲食店チェーンが拡がる。日本型コンビニ、ドラッグストア、ファーストフードの東アジア展開によって、ほぼ日常生活は先進国型になる。物流はほぼトヨタ生産方式に東アジアはなっており、コンビニなどが顧客の満足を受けトヨタ生産方式型物流で東アジア全域製造業を連結させる。この連結の中で「部会」が小売製造連携の商品開発を行う。他地域の製品、欧米もこの「部会」の中に取り込まれていく。この連携は他地域のビジネスより競争力を持っており、やがて世界中を巻き込んでいく。

5.スピードが先進国と新興国で大きく異なり、同業種であってもビジネスモデルが異なる。
 インフラ建設・ライフプロセス・ビジネスモデル(リードタイム)・イノベーションプロセスにおけるスピードには早い・速い・疾いがある。4×3のマトリックスで考えることができる。
 例えば、ビジネスモデルにおける速いについて考えると、牛肉、豚肉、鶏肉は牛肉2年以上、豚肉半年以上、鶏肉3ヶ月以上で出荷できる。2年以上であれば季節変動、金利は当然大きな考慮要因である。しかし3ヶ月ならそれは大きな要因ではなくなる。
 例えば、自動車は現在4年でモデルチェンジする。これを2年でモデルチェンジすることができればどのように異なるか。モデルチェンジ期間が半分に短縮されたので、ビジネスとして流行、市場動向に対応しやすくなる。投資の回収期間が半分になるため、投資機会が2倍に増加する。工場を半分の規模に縮小しても対応できる。在庫が半分に減る。
 空港建設が20年から5年に短縮されるとスクラップアンドビルドが可能になる。20年前に投資した費用10億円は金利が加わり例えば20年間で20億円に増加する。建設期間が短縮5年であれば、になれば金利の影響はほとんど無視できる。
 アニメ産業はビジネスモデルが20年であれば人材育成に時間をかけられるが、3年であれば人材育成は機会主義的行動からいえば合理性を持たないとも考えられる。

6.高齢化、成人病防止、少子化

7.ロボット経済、ロボット化、人工知能ビジネス、

8.為替、株、商品先物・・・の高速取引

2011年8月16日火曜日

世界戦略 グローバル化とスピード経営への構想大枠づくりを模索中です・・・

グローバル化とスピード経営・・・

世界展開

太平洋管理開発:シンガポール・日本海・パナマ一直線
北極海航路:資源開発

投資の近未来

日本 グローバル企業が海外へ投資(国内は過当競争消耗戦:坂根) 国内投資が減る
中国 国有企業・個人が海外へ投資 国内投資が減る海外企業が中国投資
欧州 ドイツからEU各国へ補助金? 投資が中国、新興国、資源国へ? 
米国 世界へビジネス拡大(アンプ機能) 中国、新興国、資源国へ?
 先進国に移民して豊かになるから新興国自国で豊かになれる時代になった。911米国の移民規制で、移民した旧共産圏新興国の人材が母国に留まるようになった。米国の移民などで90年代4000万人以上?人口増加した。中国は9000万人が2000年代豊かになった。

日本の輸出の近未来

中台経済一体化  日台連携事業 中国市場 顧客志向
韓国FTAの活用 日韓連携事業 世界進出 規模の経済
日本EPAの活用 日印連携事業 欧州進出 顧客選考
 米国に輸出する代わりにメキシコへ、フランス、ドイツへ進出する代わりにポーランドへ進出するのモデル。

日中韓台東南アジアのビジネス一体化

 コンビニエンス生活ビジネス 80年代日流、90年代韓流で生活感覚共通化 日本の小売・飲食店チェーンが拡がる。

スピードが先進国と新興国で大きく異なり、同業種であってもビジネスモデルが異なる。

高齢化、成人病防止、少子化

ロボット経済、ロボット化、人工知能ビジネス、

為替、株、商品先物・・・の高速取引

2011年8月11日木曜日

『(人類の未来構想) エネルギー戦略編』〜ポスト原子力発電(2020危機と日本の役割・義務・責任)〜

 関係各位

 みなさまも『成長の限界(ローマ・クラブ』という本(1972年刊行)を聞き及んだことがおありかと思います。このシンクタンクでの研究は今もおこなわれており、この”限界”とは、2020〜2030年を想定しています。そして、温暖化係数(例:CO2 280⇒390ppm)や種の絶滅数(年に数万種が地球から絶滅している現状)などの各種指標は確実に地球の根源的危機を指し示しています! 
 またこの問題は、人類の加速度的なエネルギー消費と密接に関係しています。欧州などでは今、真剣にこの問題に取り組み始めていますが、日本ではまだあまり関心を持たれていないのが実情です。

 原子力発電の問題や再生エネルギーの可能性を含めて、この問題を考えてみたいと考えます。

テーマ 『(人類の未来構想) エネルギー戦略編』

〜ポスト原子力発電(2020危機と日本の役割・義務・責任)〜

講 師 : 清家 彰敏 先生 ( 富山大学大学院 教授 )

日 時: 8月26日(金) 午後6時50分 〜 8時半 (開場 午後6時40分) 
 ※ 後半30分程度は意見交換(討論)、終了後は有志による懇親会を計画しています。

清家研究室で関心のある人は参加希望を「清家」まで

海外進出の日中比較と子供たち&クールジャパンによる世界の子供への影響

Q1 中国と日本の海外進出の動機の違いから、将来を担う子どもたちの育成目標を考えよ。

 中国と日本という海外進出で対照的、対称的?な国家について、中国は個人主義、リーダー中心の海外進出、日本は集団主義、フォロアー中心の海外進出といった話でしょうか。
 中国では、海外進出の中核になる企業は、リーダーシップが強い企業であり、強いリーダーが求められます。中国型リーダーに育つ子供は、成人すると、個人の意志を強く反映した海外進出を行います。それに政治体制(国家による土地所有)によるモティベーションが加わります。中国型リーダーはフロンティア精神に富み、周囲に優越した存在であることが期待されます。フォロアーになることを選ぶ子供は一人っ子政策の影響もあって少ない。
 日本は海外進出において、①企業単位、②従業員の意思を反映した、③集団志向の進出になる傾向があると考えています。集団志向の企業では、フォロアーが中心の集団になる傾向があります。そこから、フォロアーはどのような要件が求められるかという点だと思います。
 日本型フォロアーになる子供は、周囲への配慮、能力の連続的な進化、集団全体としての競争力(チームプレイ)発揮への貢献意欲が期待されます。
 それを支援するのが日本型リーダーで、周囲に優越することは必ずしもプラスではなく、むしろマイナスのことさえあります。周囲に卓越するリーダーは強いカリスマと高い識見、尊敬される人格が求められます。したがって多くの日本型リーダーは優越するよりは、調整役に徹します。

Q2 クールジャパン、アニメ等の影響が、世界の子どもたちの性格形成にどのような影響を与えるか。

 クールジャパンの影響は、かつてのアンデルセン、グリムが世界の子供に与えた影響、20世紀ハリウッド映画、ディズニーが世界の子供に与えた影響(フランスにはあまり影響を与えませんでしたが)に匹敵するかどうかを論じられることを期待していました。
 世界の子供たちが共通の幼馴染(白雪姫、赤い靴・・・ミッキー)を持っていることは、欧米中心の前世期の特徴だと思っています。そのことが成人後、どのような影響を政治から文化まで与えたか、は計り知れないのではないでしょうか?
 クールジャパン、コミック、アニメのアンデルセン、グリム、ディズニーとの相違は?これは21世紀の未来政治から文化までを考えるキーファクターだと思っています。
 正義・仲間・努力・感動はアンデルセン、グリム、ディズニーにもありますが、特に仲間・努力は日本アニメは強い。このことは、世界への日本企業の進出の文化的支援になるといった直接的なことから、遠く国際法にまで影響を与えるかもしれませんね(^^)

2011年8月1日月曜日

スマートメーターが創るスマートシティとロボット経済政策とロボット経営戦略の未来(1)

ロボット経済が到来する未来について、清家は十数年提言してきた。
グーグルのInternet of Things、具体的にはスマートメーターの登場で、ロボット経済が日本より先に米国、欧州で到来する可能性が出てきた。
スマートメーターがスマートグリッド、スマートシティの中でどのような機能を果たし、それが社会をどのように変容させるかについては十分な説明が無い。
スマートメーターの起こす変化はロボット経済で説明が可能であり、無数のハード、ソフトがその結果研究開発される。米国の経済政策は帰納的に組み替えられる可能性があると思われる。これはロボット経済政策として規定できるかもしれない。それについて今後予見したい。
ロボット経済政策の登場と前後して企業の経営戦略も変容する。ロボット経営戦略の登場となる?

2011年7月27日水曜日

環境・都市・高齢化技術の日本と欧米の競争と新興国

環境・都市・高齢化技術の日本と欧米の競争と新興国



中国・インドにとっては200年以上続いた欧米主導のアジアから

早期に脱するカードは日本の技術だとの「意識」ではなく「心的傾向」があります。



中国経済が米国並みに拡大しても技術における欧米主導は10年以上変化しないと思います。
日本は欧米全体の技術の代替をすべての分野で行える唯一の国家(ドイツも米国も全体をカバーしきれない)?である。



中国・韓国で欧米の技術が手に入りにくい状況があれば、常に頭に浮かぶのは日本です。


日本に行けばあらゆる技術が企業を競争させる中から探せ、購入できる可能性がある。



これが世界の環境問題、都市開発、高齢化の未来を考える鍵です。

2011年7月5日火曜日

サイバースペースの中にロボットが次々に登場します

自分の後継ぎが子供的なイメージになるというのは、どういう感じかを説明したいと思います。
 アニメ「美女と野獣」──で家具が踊りだします。周りにいる種々の家具は、人間が魔法をかけられてこうなったという設定で、イメージ的にはペットと子供の中間みたいなものがたくさんいます。ロボット社会の未来をイメージするには、これが一番いいと思います。これが楽しいと感じるかどうかは、想像力の問題だろうと思います。
 このもうひとつのロボットがペットでもあり、自分の相談相手でもあります。そして最後に魔法が解けるとすべて人間に戻る。そうすると子供が成長して人間になるかもしれない。その点では、現在はこのあたりまで進んでいます。
 進んでいるといっても科学が進んでいるのではなく、人間の意識です。現在はどんなロボットでもつくれる時代になっていますが、いちばん変わらないのは人間です。自分のサポートをして欲しいとか、若返りをしたいという意識とか、そのときにどういうビジネスが始まるかといったイメージができないと科学が進んでもダメです。若返りたい、お手伝いのロボットが欲しいという意識のほうにいま、社会はなってきています。その点については皆の合意が得られます。そして、ここになってくると、「ペットが果して、どういう役割を自分たちの生活の中で持つことができるか」についてはまだ合意がないです。

 いろいろなペットがロボットとして登場するようになると、そこには多様な機能が入ってきます。相談相手とか、話し相手とか。そうなってくると遺言状を残すより、自分のペットロボットに遺言を覚えさせたほうがいい。遺言状にああだ、こうだと書くより、仏壇をロボットにしてしまって、仏壇に自分のノウハウを全部入れてしまう。たとえば財産分与の際は必ず自分=仏壇ロボットが立ち合うことになります。そして作家だったら、自分の著作の著作権管理を息子にやらせるよりはロボットにやらせるほうがいい、ということになります。
 有名人ロボットができれば、有名人は死んだ後も活躍できるんです。オードリー・ヘップバーンは亡くなりましたが、清純な女性というイメージから彼女の画像は今でも商品価値がものすごくあります。最近もCMで大活躍しています。その彼女の画像をロボット機能を持ったものがコントロールすれば、ヘップバーンは生前と同じように活動できます。まさに、永遠の女性になれるのです。人間が死んだかどうかということは、身近な人以外には関係ないんです。
 素晴らしい能力を持った俳優が自分の画像をロボットに管理させれば、自分は300年間でも俳優として機能できます。いまは優れたCGも使えます。自分の画像を最高に美しい状態に残すためのロボットをつくればいいんです。
 僕の友人にもCGの研究をしている人が大勢います。以前、バーチャル・アイドルというのがありました。伊達杏子という名前でした。それをつくった人を知っていますが、どんなにうまくつくっても本物の女の子にはかないません。女の子にはその人特有のアンバランスの美があります。バーチャルで理想的な表情をつくり、理想的な会話をさせても可愛くない。もうひとつ、もう一歩可愛くない。そのもう一歩が実際の人間が持っている魅力なんです。
 実際に持っている魅力を画像に残せるし、CGも残せます。それとロボット機能がうまく合体すれば、1,000年間女優をすることも可能です。自分は死ぬけれど、やったことを芸術として自分を残すことができます。
 ここまでくると最後は、テレビやインターネットという2つの場で見ていると、誰が死んでいるのか、誰が生きているか、わからない時代がきます。そして、こちら側の世界がどんどん大きくなっています。インターネットと画像がくっつく時代になってくると、いま自分が画像の前で会話をしている相手が生きているか、死んでいるかは関係がなくなります。
 場合によってはダーウィンやニュートンを再現することもできます。ダーウィンやニュートンを再現したような後継ぎロボットです。それができれば教育効果はすごく上がると思います。魅力のある、優れた経済学者の後継ぎをつくろうと思えばつくれます。つまり、ある一定の画像と一定の知識と一定のコンテンツがきちんと残っている人間ならば、それを再現することができます。
 そして、リアルな世界からインターネットの世界が大きくなってくると、その境目がわからなくなってきます。
 そうした時代に向かった場合、経済はどうなるのか。
 日本はいま、子供の数がどんどん減っていますが、その時代になると子供が減っても関係ないかもしれません。
 たとえば1万人コピーするのも可能です。これが数千万台のコピーとなってくるとグローバル・スタンダードになってしまう。そうするとコピーを輸出して儲けようという話になる。そうなると、輸出をして欲しいという人間が世界には意外といるんです。
 こんなことを含めて考えると、将来のビジネスはロボットをキーワードにした場合、政府の考えている未来とは、なんとなく違うのではないかと思います。要するに経済成長する場合についていろいろなことを考えているけれども、人間が若返るための経済成長、ペットという可愛い対象をたくさん増やすための経済成長、そして最後には、つくることができるかもしれない自分の後継ぎがグローバル・スタンダードになれば、世界が変わってしまうかもしれません。そういう時代の経済成長のイメージがそろそろ必要かもしれません。

 日本は世界で一番ロボット技術が進んでいます。世界にあるロボットの半分は日本製です。ペットロボットを売るためには可愛さが必要です。可愛さをつくるのはアニメであり、コミックです。日本にはアニメとコミックの進んだ文化があります。ポケモンが世界の子供たちに人気があるのは可愛いからです。ポケモンのいろいろなキャラクターがもし、本当の動物だったら世界中の子供が買うでしょう。日本はロボット技術においても、アニメにおいてもナンバーワンです。この2つで実現が可能ではないかと思います。
 
 ロボット経済では、いくつかの原則があります。

 ある意味で、自分のロボット、自分のクローンを残せない人は旧人類であり、自分のクローンをインターネットの中に大量につくっていく人が新人類です。新人類に入るか、どうか。これが1番目です。

 次に、新人類というのはサイバースペースの中に生き、たくさんの自分のクローンと一体になって存在する存在であるということ。つまり、サイバースペースの中に、自分(自分のロボット、自分のクローン)がたくさんいて、それと自分が提携する。さきほど申し上げた、講義はロボットがやって、質問に僕が答えるという形です。

 3番目は、サイバースペースの中にロボットが次々に登場します。その中はロボットが大量移民をする世界です。おそらくアメリカの西部開拓時代と同じような感覚になるのではないか。つまりアメリカ大陸に大量に移民が登場して、西部を開拓していったような時代になるのではないかと考えています。
 
そうすると4番目としては当然のことですが、サイバースペースの中では征服とか植民、場合によっては戦争という事態も起こりえます。

 そして5番目に、サイバースペースがどんどん大きくなって、リアルな世界より大きくなってしまいます。イギリスの経済よりもアメリカの経済が大きくなったように、です。そのうちに我々がふだん生活している経済は、サイバースペースの経済の一部になりうるのではないか。
 まだまだありますが、この先は皆さんも考えてください。

自分のクローンをインターネットの中に大量につくっていく人が新人類

 ロボットはお手伝い以外にペットの代わりになります。ペットの飼育にはかなりお金がかかります。たとえばシベリアンハスキーなどという犬は購入値段がミニバンとほぼ同じです。そして毎日の食費がかかります。安い肉はまず食べません。豚のこま切れなぞを与えるとフン!という顔をします。肉代だけでも1年間に40万円、50万円とかかります。10年飼うと400万円です。それに犬の保険も、ガン保険もあります。どんどんお金がかかります。
 なぜ、ペットを飼うのか。子供のいちばん可愛い時期は、何もわからないころです。子供が「パパ…」と初めてしゃべったころがいちばん可愛い。その後はだんだん小憎らしくなってくる。頭脳の働きは、犬は1歳児とほぼ同じくらい、チンパンジーはほぼ3歳児といわれています。そうすると、チンパンジーを飼うと3歳児の経験が10年続き、犬を飼うと1歳児の経験を10年間できるということになります。人間であれば1年しか経験できないものが10年経験できる。そうするとペットというものは非常に意味があるわけです。ペットはミニバンとか子供並みに消費しますから、そうなるとペットにロボットが役に立つ。それがひとつあります。

 では、なぜ、ペットが役に立つかということになります。

 高齢者のホームではペットを飼いたくても飼えません。ペットは病気を持っているからです。ですから、高齢者の施設ではペットを飼うことはできないのです。
 ちなみに日本の高齢者は世界で一番金持ちです。65歳以上の高齢者が持つ貯金は総額1000兆円を軽く超えます。その高齢者は一般に若い人の1/3しか消費しないとされています。経済的な意味からすると、高齢者3人は若い人1人分ということになります。このお金持ちの高齢者がペットを飼いたいといっても飼えないんです。
 もうひとつ、ペットをめぐってはこんな心理が働きます。自分より先にペットが死んでしまってはかわいそうという思いです。その一方では、自分の息子と喧嘩になったりすると、息子より長生きして息子には遺産相続をさせたくないという気持ち(笑)。そういう心理になるのがペットです。ところが、そのペットの代わりをロボットができますという話になります。

 では、ペットはどのような経済効果を持つか。

 ペットが増えると経済成長が起こります。そんなバカなと思われるかもしれませんが、ペットはミニバン並み、子供並みに消費します。現に上海や韓国の成長には、ペットブームがかなり貢献しているんです。上海でペットが飼えるのは「ステータスが高い」という証明です。だからこそ、税金が余分にかかるのにペットを飼っている。ペットを飼うということが経済成長につながるのです。
 当然ながら、子供も経済成長につながります。要するに子供をたくさん生めばいいのですが、日本の場合はそれが難しい。そこでロボットが子供の代わりをしたら、どうなるか。
 ここまでお話したことを整理すると、若返ると経済成長をするということ。次にペットが経済成長を助け、そのペットの代わりをロボットがするということ。3番目は、子供が増えれば経済成長をするので、これもロボットにやらせることが可能かどうか、そしてこれがどういう意味を持つかという話になります。
 僕の話は、このあたりまでは何となくわかるが、それ以降はわけがわからなくなると、よく言われます。
 
 ロボットがすごいのは学習することです。何度も試みているうちにどんどん進歩していきます。これは、歩くのを助けるロボットです。
 いま、膝の痛みを訴える人が多くいます。買い物をするのも億劫になります。ですから、歩行を支援するロボットとか、買い物を代行するロボットがあればいい。たとえばスーパーにたくさんのロボットが置いてあって、そのロボットに自分の買い物を命令する。すると、そのロボットがスーパーを歩き回って買い物をし、宅急便で送ってくる。そういうシステムがいま研究されています。
 ロボットが人間のいろいろな手伝いをして、バーチャルに平均年齢が10歳下がると、経済は5%ぐらい上がるとされています。つまり年間成長率の5%は平均年齢を10歳下げれば達成できるんです。これをバーチャルにやることができるのがロボットのひとつの意味です。
 このペットをどんどん本物に近づけるか、あるいは本物ではないにしても独特の可愛さを持たせることによって、その結果としてペットにお金を使ってもらう。ミニバン並みのお金となると年間40万円から50万円がかかります。たとえばラブラドールレトリバーは1年に39万円かかるそうです。10年で390万円です。たくさんの高齢者がペットを10年間飼えば、結果としてペットによる経済成長が起こります。
 このペットにいろいろな機能を持たせていく。そのひとつが医療機能です。高齢者はペットを抱いたりして接します。それによって精神的なストレスのモニタリングを続けることができます。また、高齢者はテレビをよく見ます。話し相手がいないとテレビがその代わりをしますが、話し相手をペットにさせるようにすればいい。このようにペットにモニタリング機能や診断機能、コンサルタント機能を付けることができます。そうするとペットの機能がよくなるたびにソフトを買ってもらえます。それも経済成長につながっていきます。

 次にペットが子供化しないかというおとぎ話です。子供というのは小さいころはペットです。逆にペットを大事にし、可愛がっていくとペットが子供になってしまうのではないか。そういうソフトをつくれば儲かるのではないかということです。つまり高齢者がペットを可愛がっているうちに、そのペットが「自分の代わりをやってくれたら…」と思うようになる。それが自分の後継者です。
 そして自分の知識を後継者=子供に譲りたいと考え、少しずつペットロボットに移していく。そうすると、ペットを15年間も育てたら、自分がもう一人できてしまうのではないか。それが可能か、どうか。いま挑戦しています。
 自分の後継者にそのノウハウを伝えたいと思う。そこにペットロボットが登場し、そのノウハウを吸収してくれる。そしてペットロボットがどんどん学習して、子供になってきたら、ピノキオみたいにちゃんとした人間の体を持ったロボットにソフトを入れればいい。ペットが子供になって、自分の後継ぎになるのではないかというわけです。
 さて、自分の後継ぎになるといっても、かつてのような肉体労働ばかりの時代では難しいですが、今はしゃべるだけで食っていける商売がけっこう多いです。
 たとえば、大学で僕の代わりにロボットが講義をする。講義が終わって学生が質問したとします。すると、アイボは僕のケータイに電話をしてきて、質問の内容を伝えます。そして僕がアイボに代わって答えれば、僕はその教室にいなくてもいいんです。アイボは僕の後継ぎが十分できます。そうなると、僕は複数の大学をかけ持ちで講義をすることができます。
 後継者といっても最初は応答もできないし、難しいです。営業マンが自分の代わりにロボットを出向かせて営業ができるか、これはなかなか難しいです。自分のロボットを宅急便で送る。相手先でロボットが「こんにちは」と、商品の説明をときどき冗談も交えてやる。そろそろお客さんの質問があるかなというころを見はからって、営業マンが顔を出せばいいんです。
 ロボットを自分の後継ぎにするのは情報化時代になるほど簡単です。しかし、これが経済成長につながるか、どうかです。これまではオデッセーが売れると経済成長する、ペットが売れると経済成長するという例がありますが、ここになってくると例がなく、怪しくなってきます。
 

経済の流れのなかで、私がなぜロボットに興味を持ったのか

 経済の流れのなかで、私がなぜロボットに興味を持ったのか。

 経済がだんだん落ち込んでいくのは消費をしなくなるからです。なぜ、消費をしないのかというと、歳をとると欲しいものがどんどん減っていく。若いころはやりたいこと、あるいは欲しいものがいっぱいあった。それが歳とともにだんだん減っていく。最近では糖尿病の心配とかで食べるものも控え目になっています。また、狭い家には物がいっぱいあって、もう置く場所がない。そんなことで人間自体が消費をしなくなっています。
 では、どのようにして消費を高めたらいいのか。その方法は多岐にわたり、いろいろ工夫ができます。その中のひとつ。欲しいという感覚を持たせるために流行をつくるということがあります。流行は非常に便利なもので、たとえば今年のカラーは黒だとすると、皆が黒の服を買う。次の年には白となると、黒はすべてリセットボタンが入ってしまい、白を買います。そのように黒、白、赤、とやっていけば常に欲しいものを喚起します。

 流行というのはリセットボタンなんです。

 消費をしなくなる層はリセットボタンを持たず、自分の誕生日が嬉しくない年齢になっている人たちです。
 では、どうするか。若返ってもらうことです。「桃太郎ははどのようにして生まれたか」という話があります。ひとつの説として「桃太郎は桃から生まれたのではなく、おじいさん、おばあさんが若返った結果、桃太郎が生まれたのだ」というのがあります。

 この「若返り」という感覚がキイワードです。

 若返るといろいろと欲しがります。欲しがると、買いに行くという行動になります。それにロボットがお手伝いができないかと考えたわけです。つまりロボットが人間の若返りをお手伝いするんです。
 歳をとって実際に買い物に出かけるのが億劫になったとき、代わりにロボットに買い物をしてもらう。そしてインターネット上のバーチャルな秘書のような存在が、その人の欲しがっている品物やバーゲンセールでの買い物を上手にチューニングして買ってくれる。ロボットがこのように人間の行動をお手伝いし、若返らせてくれたら、お年寄りに購買意欲が起きて経済が成長するだろうと考えたわけです。ロボットで平均年齢をバーチャルに引き下げ、その結果として欲しいものが生み出され、購買行動が増え、その結果、経済成長する、そういう考え方がまずひとつあります。その意味ではロボットはお手伝いです。
 

2011年6月27日月曜日

馬の世界地図 日本海と地中海欧州は近かった 

 日本海地域と地中海、欧州は近いというと不思議な顔をされるだろうか。中国東北部、モンゴル、カザフスタン、カスピ海、トルコの東西通路は、馬の移動に適した地形が多い。気候変動でこの地形は「馬のハイウエー」といった草原地帯に変わるときがある。このとき、一気に地中海と日本海は近づく。人間の陸上での移動は、南北方向では徒歩が中心となる。それに対して、東西方向には馬が活用できる。一気に日本海から地中海まで駆け抜けるのである。フン族がかつて東から西へ一気に駆け抜けた。その名残が欧州の国名に残っている。
 アレキサンドロス大王に滅ぼされた紀元前のペルシャは2400キロを早馬7日間で駆け抜ける連絡システムを持っていたといわれており、平均時速14キロの速度であり、この速度では日本海と地中海は1ヶ月以内の連絡システムで結ばれる。馬での移動の速さは、古代より馬が主体の東西の交通、通信を徒歩が主体の南北に対してはるかに優越させていた。モンゴル族は、この草原をもっとも強力な騎馬での移動を可能にした。
 日本海は、緯度35度から45度に主要部が位置し、地中海は32度から43度に主要部が位置する。馬による移動は、草原の道(毛皮の道)で緯度40度の北京をスタートとし、モンゴルのカラコルムを経て、新疆ウイグルのイーニン、カザフスタンのアラル海、カスピ海、黒海沿岸のオデッサ(緯度46度)、ロストフ(緯度47度)を経て、トルコ、地中海、欧州へ達する。中心部の緯度が40度あたりの日本海を発した草原ルート(ハイウェー)は、40度から50度あたりを地中海へ向かい緯度37度あたりの地中海へ達する。
 例えば、人間の移動速度に対して、馬が3倍であると、物理的な位置関係は人間の感覚の中では大きく変化することになる。東西が南北に対して3分の1の距離に縮小する。馬が5倍であると仮定して、東西を5分の1に縮小して世界地図(馬の世界地図)を書いてみたことがあるが、地中海、欧州は他の地域よりはるかに近くなり、もっとも身近な異国のイメージになる。
 

2011年6月25日土曜日

トヨタ思想の世界化と政策決定への影響と検証可能性

トヨタ思想の世界化と政策決定への影響

1. ソリューションビジネスとトヨタ生産方式
 世界でソリューションビジネスが全盛であるが、これは顧客主導型ビジネスであり、その原点はトヨタ生産方式にあるのではないか。トヨタ生産方式はトヨタ自動車の大野耐一元副社長が発明したビジネスモデルである。その特徴は4つに要約される。現在はインターネット上にSCM(サプライ・チェーン・マネジメント)として広がりつつある。また、工場でトヨタ生産方式の有力な手法である「多台持ち」がインターネット上でのプログラムの「多台持ち」へと発展する可能性があり、インターネットの世界はトヨタ思想で覆われていくと考えられる。

1) 顧客主導の注文生産の視点で量産を行うため、在庫が極めて少ない。
 顧客が買わなければ商品は作らない。商品がなくなれば、部品を集めて商品を作る。商品が作られれば部品がなくなる。部品がなくなれば部品をつくる。このようにすれば在庫は存在しない。デル・コンピュータ社のパソコン受注生産もこの考えである。これがジャスト・イン・タイム(JITシステム)である。
2) 社内であっても顧客は必ず存在し、その人のソリューションの助けを行うのが仕事である。
 企業内においても顧客に相当する人は必ずいる。いつもその人を助けるつもりで仕事をするのがトヨタ思想である。例えば、消しゴムを取ってといわれたとき、従来の米国企業の社員は消しゴムを渡せば仕事をしたと考えた。トヨタ思想ではその人の立場にたってなぜ消しゴムを必要とするかを考え、消しやすい位置と方向に置いてあげる。また、その人の立場にたって、消しゴムをここで使ったほうがよいとソリューションまで一緒に考える。パナソニックもこの点は同じである。トヨタとパナソニックの違いは、トヨタは「欲しい人がやる、やらせる」点である。「消しゴムを持ってきてと頼んで、いつまでたっても持ってこないので部下を怒鳴った」という経験をした人もいるかもしれない。なぜ持ってこないのだろうか。部下は消しゴムが欲しくない。だから持ってこない。欲しいならあなたが取りに行けばよい。欲しくない人に仕事をさせたらぞんざいになる。欲しくないから消しゴムを持ってくることも忘れる、不満も出る。社長であろうと部下であろうと一番欲しいと思う人がそれをすれば、不満は無く忘れもせず、ぞんざいにもならない。
3) カンバンという物の流れと逆な情報の流れを作り出したため管理が容易である。
 部品にはカンバンとよばれる紙の札がついている。その札は部品が作られればその部品に付けられる。そして、次の作業者のところへ部品と札が行く。次の作業者がその部品を使ってしまえば、札ははずされ、戻ってくる。その札が戻ってくると作業を始める。その札が戻ってくるまでは仕事はしてはいけない。札が戻れば仕事をして、戻らなければ仕事はしてはいけない。極めて単純で、計画も管理の不要である。作業者、管理者はカンバンがあるかどうかだけを見てればよい。部品という物の流れとカンバンという情報の流れは逆である。このカンバンのおかげで、作業者は煩雑な計画とか、複雑な管理とかから開放され、作業だけに専念できる。
4) マシンタイムではなく、マンタイムを100%発揮させる作業環境をつくる(多工程持ち)。
 工場では通常、機械が動いているのを作業者が見ている。これはマシン(機械)が主役である。マシンタイムを100%にすることばかり技術者は考えている。トヨタ思想ではそう考えない。マン(作業者)はほとんど働いていない。例えば、機械に材料をセットしてスイッチを押し、加工が始まり、終わり、できた部品を機械からはずす、この工程を考えてみよう。このうち、人間が仕事をしているのは材料セットとスイッチ、部品はずしだけである。後は機械がやっているだけである。トヨタ思想では人間中心の作業設計を訴える。作業者を100%働かせるためには、作業者の周りに機械を配置する。作業者は1台目の機械に材料をセットし、スイッチをいれる。その機械が加工し始めると後は機械に任せ、2台目の機械に向う。材料をセット、スイッチを押し、また3台目に向う。4台目を終えたときには、1台目の加工が終了している。そこで、1台目のできた部品をはずし、次の材料をセット、スイッチを押す。次は2台目へと・・・この繰り返しである。この結果、マンタイムは100%になり、通常の4倍の生産性が達成されたことになる。
 なお、この4つめをトヨタでは「多台持ち」と呼んでいる。この方式の原型は、トヨタ自動車は豊田自動織機から社内ベンチャーとして創業されたが、この織機工場の織機が1人の女工の自動織機多台持ちであり、これがルーツといわれている。これが、インターネット上でのプログラムの「多台持ち」へと発展することが考えられる。現在のNTTの番号案内サービスは多台持ちである。交換手は問い合わせ先に関する不確実性を伴う応対だけ行う。後はコンピュータ検索コンピュータメモリで自動応対する。この自動応対の時間に交換手は次の問い合わせ先に応対している。「多台持ち」である。番号案内サービスは赤字であるがこの「多台持ち」の“台数”をどのくらい多くできるかが黒字化の鍵となる。

 さて、特に米国が注目したのが1)、2)である。本研究では1)、2)が社会、世界にどのような影響を与えつつあるかを問題とし、この1)、2)が起こす企業人の意識革命を今後取り上げる。
 1990年代に米国で成功した多くのビジネスモデルは80年代の日本研究から派生したと言われている。上記のトヨタ生産方式は日本型経営を徹底的に現在、日本研究からでたSCM(サプライ・チェーン。マネジメント)が世界の企業のモデルを転換させようとしている。この米国の流通業を中心に広がり、ウォールマート等の成功はシアーズ、バミューダ、ドロシーレーン・マーケットといった顧客価値を高める流通という概念から企業を再構築させた。その影響で、米国では流通業以外の企業もビジネス活動全体を顧客価値で統合的に再構築しつつある。また、IBM、富士通、日本電気等が営業部門がモデルとして、職務再設計を進めているソリューションビジネスも顧客の視点に立って、顧客主導、顧客の問題を顧客の立場になって解決するそれがソリューションビジネスである。

2. サービス化とソリューションビジネス
 サービスビジネスはソリューションビジネスの登場で新しいモデルを見出し、GEは大きな成功を迎えた。

3. トヨタ思想(トヨティズム)と政策決定者
 企業トップと政府のトップは日米欧の多くの国においては同じ階層であった。エリートは政府と図り、社会、産業の発展に責任を持っていた。しかし、トヨタ生産方式は企業をかつてのエリート主導から顧客主導に変えた。つまり、企業トップの成功の原則は国家的視点に立った行動ではなく、顧客の視点に立ったトヨタ思想の行動に転換したのである。トヨタ以前は、政府は多くの政府が行うべき役割のかなりな部分を企業に期待できた。それは競争原理が支配するとされる米国でも例外ではなかった。ところが、トヨタ思想以降、企業は顧客原理である。したがって、政府はこの企業から消えてしまったエリートの代わりをしなければならない。これが米国の政府でさえ、産業化を将来的に目的とする研究開発に注力させることになった。

4. 新しい政府と企業の関係
 かつては、政府、国家的視点の企業、一般企業の3層構造が、政府、一般企業の2層構造になったのである。(国家的視点の企業がなぜなくなったか、不景気の時期政府と企業の関係はとくに景気サイクル対応型組織どのように解釈する?)

5. 欧米におけるナショナル・イノベーション・システムの史的展開
 米国は1800年代、欧州に対し、発展途上国としての位置であり、欧州の物真似を中心として工業を発展させた。多くの企業家は国家意識が強く、現に現在も中核となるATT、GE、フォード等の大企業は政府と競争関係(消費者をリードする点で?)にあったり、政府と対立することはあっても、国家意識に満ち満ちている。現在でもマイクロソフトのビル・ゲーツは大いに国家意識を持っていることを発言の中で強調している。(国家主導と国家意識の違い点?国家=政府?
 欧州の大企業は、ドイツの産業は極めて国家意識が強いことで知られている。周知のごとく、フランスは国有企業が大きなウエイトを持っている。英国においても、食品産業など、政治色の強い企業はおのずと国家意識が強い。日本も同様であった。(国家意識の概念がはっきりしていないかな!国有企業の国家意識と民営企業の国家意識の違いは?)21世紀に入りGEのジャック・ウェルチは欧州企業を大きく変容させたが・・・。
 これらの企業は、国家とともに、消費者=国民をリードする存在であり、常に啓蒙的理念を持った、政府と同じ階層のリーダーによって導かれた。この点で、ナショナル・イノベーション・システムのプレイヤーは同質の存在であった。
 1970年代、新しいプレイヤーが登場した。それが、消費者運動家(現在のNPO、NGO)、機関投資家であった。この2つのプレイヤーの監視のもとでの「出来レース」それが70年代までであった。
 そのレースは、日本企業の登場した80年代に新しい展開をみた。トヨタ生産方式により「顧客主導」という新しい原則で行動する日本企業による従来の国家志向の企業群の圧倒である。これらの企業が次々、敗退し、新しいトヨタの原理で行動できる経営者と置き換えられたのである。それは90年代、世界的な傾向となり、そのトヨタの生まれた日本さえ例外ではなかった。日本における国家主導の企業、日産の危機とトヨタの原理に立ったルノーによる再建はその象徴であった。ナショナル・イノベーション・システムは、国家とまったく異なる顧客主導の企業との対峙となったのである。(国家主導と国家意識、顧客主導と顧客意識の概念が統一したほうがいいかな)

実証の方法
1) 国をリードする大企業の経営原理がトヨタ思想に変わったという事例、最低4社、できれば8社
米国の大企業トップの発言をニューズウイーク等で読み、「国家・技術・社会」が国家主導、「顧客・利益・効率」が顧客主導、それ以外に「株価」・「環境」をどう考えるか、これをもとにグリッドに大企業を割り付ける。
1960年代、1970年代、1980年代、1990年代の4期。米国のGE、ATT、GM、ボーイング、フォード、といった具合に、できれば同じ企業、できなければトップ企業の発言を50社集める。
2) トヨタ思想に変わって、国を考えない企業が増えたとのインタビュー
3) 数値データ
4) サプライチェーンマネジメントを採用している企業の産業におけるウエイト

トヨタ型開発の問題と新しいモデルの模索

1. 世界の研究開発は従来のイノベーションモデルに対して、トヨタ型、ベンチャー型の新たな2つが登場して、その2つが鬩ぎ合っている。

2. ベンチャー型は情報産業から現れ、他の産業にその開発原理が拡大していっている。周辺産業は徐々にかつてのイノベーションモデルからベンチャーモデルへとパラダイム転換を迫られている。このモデルは基本的に市場において拡大している。産業マップを文部科学省(科学技術庁)で清家が1996年に作った報告書から作る(技術分野間の距離)。これ以降の研究が目玉商品になるかな?

3. その一方、トヨタ型モデルは大企業とグループの内部組織と市場を組織化した中間組織において浸透していっている。

4. それに対して、この両者を統合するモデルが2つ現れている。1つはIBMでサービス化戦略によって、ベンチャー企業を取り込もうとするものである。これは、ハードからソフト、サービス、コンサルタントと展開していくプロセスにおいてベンチャーを寄生させようとするものである。
ソニーはそれに対して、2つの産業間を面にすることによって、その面に自社の小規模事業グループ、ベンチャー企業を寄生させようとする。
この両者は基本的に組織を市場化するベクトルを持っている。その点で中間市場化(中間組織と逆)と規定できる。

5. GEはそれに対して、内部組織と中間組織の中でグループ経営をトヨタ型であるソリューションビジネスとして行おうとする。

6. 企業は1)ベンチャー型と2)ベンチャー型+大企業と3)大企業+子会社(トヨタ型とGE型)に分けられる。

7. ソニーとホンダの違いは多数の独立事業型組織のソニーと多数の独立製品型組織のホンダ。

8. ソニーとホンダの共通点は事業グループ、製品グループの独立性が高く、かつグループが小規模な点である。

9. 商品の魅力で購買者を誘惑する点もソニーとホンダの共通点である。

10. 多くの事業、製品はソニーとホンダにおいてはリーダーの執念で作り上げられ、独立性が高い。

11. その事業、製品はそれ自体で完結しており、その事業の成否はリーダーの個性にかかっている。

12. 事業・製品の成否は確率的に管理される。

実証の方法等

1. モデルをつくり分かりやすく説明する。
2. ソニーとホンダ以外にもそのような企業があるかどうか。
3. 確率によって計算される事業がソニー、ホンダ以外にもあることを事例で示す。
4. トヨタとの違いをはっきり表で示す(生産性本部のメンバーとの共同作業)。

一般には気づかれていないトヨタ思想の影響

日本が世界で勝っている事例を考えてみよう。日本の強みはソリューションビジネスを現場主導で行う。顧客の問題解決を助けるために顧客の日常的な変化をとらえ連続的に顧客対応を変化させ顧客に追随していく。これが真の日本型営業である。米国型のマニュアル営業は顧客の変化に連続的に追従できない。これを日本型顧客価値主導型ビジネスという。その原点はトヨタ自動車のトヨタ生産方式にある。また現在はリアルだけなく仮想インターネット上でもSCM(サプライ・チェーン・マネジメント)が急速に拡大しつつある。これもトヨタ生産方式が米国で仮想化されたものである。また今後、工場でのトヨタ生産方式の有力な手法である「多台持ち」がインターネット上でのプログラムの「多台持ち」へと発展する可能性があり、現実の世界だけでなく、インターネットの世界もトヨタ思想で覆われていくとも考えられる。また一般には気づかれていないがこのトヨタ思想の影響は生産、物流、インターネットだけでなく、生活、社会、世界の政策決定までも大きく変革させようとしている。これを今後考えていきたい。

2.トヨタ生産方式とトヨタ思想
トヨタ生産方式はトヨタ自動車の大野耐一元副社長が発明したビジネスモデルである。その特徴のうち特にトヨタ思想、トヨティズム、ジャパナイゼーションといった表現で世界に影響を与えたものは以下である。
1)受注生産で在庫を無くす
顧客主導の注文生産の視点で量産を行うため、在庫が極めて少ない。顧客が買わなければ商品は作らない。商品がなくなれば、部品を集めて商品を作る。商品が作られれば部品がなくなる。部品がなくなれば部品をつくる。このようにすれば原則的に在庫は存在しない。デル・コンピュータ社のパソコン受注生産もこの考えである。
 2)顧客価値の立場に立つ
 社内であっても顧客は必ず存在し、その人のソリューション(仕事の問題解決)の助けを行うのが仕事である。企業内においても顧客に相当する人は必ずいる。いつもその人を助けるつもりで仕事を行えというのがトヨタ思想である。例えば、消しゴムを取ってといわれたとき、従来の米国企業の社員は消しゴムを渡せば仕事をしたと考えた。トヨタ思想ではその人の立場に立ってなぜ消しゴムを必要とするかを考え、消しやすい位置と方向に置いてあげる。また、その人の立場にたって、消しゴムをここで使ったほうがよいとソリューション(仕事の問題解決)まで一緒に考える。「後工程は顧客であり顧客に品質を保証する。そのための労使協調がトヨタ・システムである。」という大野耐一等の考え方は世界によく知られている。トヨタ思想に立てば、企業内の構成員は営業員だけではなくすべて「顧客」を持って、繋がっている。企業内は顧客の連鎖構造となったのである。
本研究では上記の1)、2)が社会、世界にどのような影響を与えつつあるかを問題とし、この1)、2)が起こす企業経営者の意識の変化を取り上げる。

2011年6月21日火曜日

日本海側都市の発達と温暖化

20年30年で見るなら日本海側都市の発達では温暖化(北極海航路とロシア・中国・カナダの資源と農業の北上)は重要です。

周辺国の日本海側港と後背地についてはシベリア鉄道との関係が重要です。
釜山から欧州は海路ではスエズ回り諸手続き込みで30日から35日かかりますが、極東ロシアまで海運シベリア鉄道なら18日以内になります。
もちろんシベリア鉄道のほうが費用は高いのですが、海運は市況変動が激しいので価格比較は一概には言えません。現在は韓国が海路+シベリア鉄道を日本はスエズ回りを選択する傾向が強い。

日本海周辺人口で中国は1億人を超えます。

黒竜江省は人口3800万人
遼寧省も4300万人を超えます。
瀋陽は東京並みの大都会です。しかし日本海側の出口がない。北朝鮮の重要性

日本海側は欧米アジアの①十字路②ポータルサイトである。
豊臣秀吉が「瀬戸内海・大阪」と「日本海・琵琶湖・京都」の流通と都市を考え、十字路「伏見」に中心を持っていこうとした(日本史の研究者)

鍵は人と物の流通と十字路

現在のハブ港はがらんとして釜山も上海洋山も人っ子ひとりいない。コンテナとクレーンが延々と続くだけ
これはだめですね。

人と物を集積するのが都市と港
シンガポールだけは一部それが実現しています。

美の観光経済学の試論とGoogleのInternet of Things

美の観光経済学の試論とGoogleのInternet of Things

                        清家彰敏


1.“美の連鎖”を形成する“観光”
 観光とはその地域を旅することである。しかし、旅は空間(現在)を楽しむだけで無く、同時に時間(歴史)も楽しむ。各地域には歴史があり、その歴史と出会う場は、かつては美術館、博物館にしかなかった。しかし、文化は知識遺伝子として、地域に住むあらゆる人と社会の中に存在する。この人間、社会の知識遺伝子のなかにこそ実は歴史がある。この知識遺伝子は繋がりを持って地域独特の産業を創造した。その繋がる糸が美意識である。知識遺伝子と美意識で結ばれた集団がつくりあげた美の連鎖を考えてみよう。美意識を共有し、評価しあう集団が形成され、完結性が高まり、美の連鎖を形成する。このような美意識の連鎖は、科学者、技術者、産業人にも共通するもので、この評価の輪に参加できた人は、この美の連鎖からの人脈、知識、技術によって支えられ、観光地は美を創造し、進化し続ける、どの地域にもない独自性を持った存在となる。

2.美の連鎖の場と創造過程 美のプラットフォーム
 美とは俗語的から専門用語まで極めて広範囲に使用される用語である。情報化の進展は美の創造、活用(美の販売)における主体と客体を曖昧にしている。例えば、絵を趣味とする個人は美の創造主体であると同時に美を受容する客体(消費者)でもあり、そのサークルでの創造と売買においても主体と客体は区別できない。このような集団は非営利集団であり、かつての営利集団である絵画商、放送局、出版社と区別される。
 彼らは、場(プラットフォーム)を共有し、創造された美をその場に投げ込む。その知識と行動は集団で共有され、その知識、行動様式は一種の極めてローカルな文化とでも呼べるもので、知識はその解釈と創造・編集が独特の感性・共有体験・文化的排他性を持つがゆえに、独占的に使用される。20世紀は営利集団が美の創造と活用(売買)を支配した。それに対し、21世紀は、非営利集団内での横断的・文化(知識)的枠によって、美の創造、活用は容易に世界的広がりを持つ。この集団内では美の創造と活用は独占的・共有的知識が増加するほど、そのコミュニケーションの密度は高まり、美の創造と活用の効率は高まる。独占的であるがゆえに提供と使用の関係者は限定され、主体と客体に係わる者は限定されるがゆえに、一般的な美の商業的創造、活用(市場売買)における高い専門的熟練を多くの場合必要としない。したがって、主体と客体は曖昧になる。この中で、インターネットという新しい仮想世界が美の経済学の前に拓けている。

3.美の大衆化とインターネット
インターネットは社会における美の存在形式に大きな変化をもたらしている。美の存在形式として映像、音声、文章を考えてみよう。マス・メディアから一方向に個人が映像、音声、文章としての美を受けとる時代は終わり、双方向で個人、映像、音声、文章としての美を発信する時代になった。同様に個人が企業から一方向で商品・知識に転写された美を受けるのではなく、双方向の時代になってきている。個人は企業以上の存在となり、美の発信を行いうる。主婦が育児の傍ら日本や米国の映像の決定的な創造をなしても不思議ではない。
 普通の市民、若者や主婦や高齢者が美を創造する。本研究では、美の創造過程と美の活用過程をいかに経営するかを模索する。美の創造と活用では営利行動と非営利講堂も相互浸透、流動化しあう。美の創造を職業とする映像製作者が、主婦の趣味での創造に競争で負けることも考えられる。また、放送局が美の活用過程で、インターネットの個人放送に場を譲る。この状況はGoogle、Facebookなどの登場、ユーチューブ、スカイプなどの情報通信環境の高度化と共に加速されつつある。

4.ユビキタスと美のエージェントとしてのネットロボット
情報化はすべての技術と同様に真善美の順に社会に受容されていく。科学の寵児として情報はもてはやされ、それが社会のどこにでも行き渡ったとき、善が判断基準として登場し、社会は批判的にそれを受け入れていく。ユビキタスとは後述するように情報が町に溢れる時代で、善を価値として評価されると思われる。この次の時代が美であるが、その前に情報化がもたらす新しい時代、その場でもネットロボット、ロボットとの人間の共生、そして「美の観光企画」まで以下で触れてみたい。
ユビキタスの語源はラテン語で、いたるところに存在する(遍在)という意味であり、インターネットなどの情報ネットワークに、いつでも、どこからでもアクセスできる環境を指し、ユビキタスが普及すると、場所にとらわれない働き方や娯楽が実現出来るようになる。ユビキタス・コンピューティングは、一人が複数のコンピュータを使う社会のイメージとしてマーク・ワイザー氏が提唱した。アクセスに使う端末は、パソコンや携帯電話に限らず、冷蔵庫や電子レンジといった家電製品、自動車、自動販売機等もインターネット接続され、ウェアラブル・コンピュータと呼ばれる身に付けるコンピュータも開発中されている。自由度を高めるため、これらの情報端末間はケーブルではなく、無線LANやブルートゥースという無線ネットワークで接続される。ゼロックスのパロアルト研究所の「ユビキタス・コンピュータ・プロジェクト」によって注目されるようになり、高速広帯域のブロードバンドとは切り離せない概念になった。
ユビキタスにおけるソフトウェアの進化は著しい。これらはエージェント、ネットロボットとも呼ばれ、サーバー、パソコン、携帯上で急速に人間の代替を行いつつある。
情報通信技術において、エージェントソフトの開発とユビキタス環境の整備が急速に進んでいる。エージェントソフトの発達がもたらす経済の変化と経営の革新は政府、企業の大きな課題である。特にエージェントが進化し、人間を代替するネットロボットになっていくと、このネットロボットと人間の共生がユビキタスの課題となる。また機械ロボット(ロボット)は、このネットロボットがサイバー世界から出て、現実世界で体を持ったと規定できる。
ユビキタス社会においては、ネットロボットとロボットに助けられ、物覚えが悪くなった高齢者が現役で働き、家事でネットロボットと電子レンジでの料理メニューを相談し、ロボット化した自動車のナビゲーションをドライバーの癖を知り尽くしたネットロボットがやってくれる。このイメージは、インターネットで結ばれた家電、自動車へネットロボットが「憑依する」といった表現がぴったりすると思われる。
検索ロボットに代表されるネットロボット、アシモといったロボットはユビキタスの場で、人類と共生し新しい社会を拓くパートナーであり、この新しいパートナーが人類とどのように関わるかについて考察する。この研究は、技術、経済、社会、心理といった各分野、学際分野の学際であり、経済効果、産業創出、社会生活の提案、企業経営の改革、消費構造の改善がその目的となるが。また、ユビキタスの場における検索ロボットから歩行ロボットまでの共通OSの構築は今後のユビキタス社会の基盤技術となると考えられる。

5.米国におけるネットロボットの始まりとInternet of Things
Neopetは21世紀はじめ米国で話題となったネットロボットであり、インターネット上で集客から広告まで行った。これが米国におけるネットロボットのはしりと思われる。①ペットを育てる無料プログラムをユーザーは受け取り、②そのペットを育てるのは実在の企業の商品を与える必要がある。例えば、ある食品のメーカーの菓子をネットペットは欲しがり、バーチャルであるがその食品を画面上で食べさせると成長する、③このネットロボットにはスポンサー企業が運営に関わっており、④ユーザーは最低限企業へのメールアドレスの申請が必要であり、⑤企業からの情報受け取りの承認度の如何により、ゲームを有利に進めることができる。⑥またユーザーにダイレクトメール・メールマガジンを送るビジネスまで行える。
メールを通してのビジネスが発展している米国らしい発想でありその後の米国のビジネスモデルとなった。米国では日本のタマゴッチから始まった育成ゲームの市場や文化はなく、このネオペットというネットロボットによる「育成シミュレーション」は米国のユーザーには新鮮であった。インターネット上の急成長サイトであり、この広告手段はバナー広告の限界を破るもののひとつといった意見も多い。

ネットロボットはインターネット上から現実世界にでると体を持ってロボットとなる。ロボットがネット(携帯、パソコン=インターネット)の中に入るとネットロボットになり、ネットロボット(ソフトウェア)が家電、自動車、ホーム機器、オフィス機器、人間型ロボットに入るとロボット(ハードウェア)になる。上記の清家の未来予想は2011年スマートシティ(スマートグリッド)の中でスマートメーター(知的電力使用量監視器)が登場したことによって現実になりつつある。世界の家庭にスマートメーターが導入され、各家庭の太陽発電・電池、自動車発電・電池などを管理する。電気が不足する家庭は電気を余らせる家庭から電気を購入する。この電気の過不足測定と売買を行うのがスマートメーターいうネットロボットである。スマートメーターがインターネット上で会話し営業し合う。それがスマートシティの世界である。Googleではこのような「ものがインターネットする」Internet of Thingsと呼んでいる。すべての家庭用機器、都市内の機器が同様にインターネットで会話、売買などを行う。人間は60億人が80億人になっても有限である。しかし機器は無数に作られ社会に存在する。現在も家庭用機器と自動車などの総数は人間の数をはるかに超えている。そのような未来社会になれば、インターネット上の会話?の大半はInternet of Thingsになると思われる。その上、Internet of Thingsは人間のように秒とか分単位の会話ではない。ナノ単位の会話となるだろう。その結果、インターネットの中の99.9999%はInternet of Thingsになる。

6.ロボットとネットロボットが創り上げるハイテク観光地
 観光地への誘いはネットロボットがインターネット上で日常的に行う。これは学習型のネットロボットでお客となる都会の人々個人に、日常的に観光相談をする。声を特定の個人にして、その個人のノウハウを学習させ、お客を覚えておいて、相談に応じることが可能である。このネットロボットで対応できないときは、ネットロボットは顧客を待たせておいて、観光課の人間を呼びに行くことになる。観光課の人間もしくは、例えば、バーチャル県知事は無数にネットロボットとしてクローンを作ることができる。バーチャル県知事は、県知事と違って、間違った発言をしても許されるとか、面白いキャラクターを与えることも自由に出来る。声は県知事と同じ声である。ほぼ、95%は応対できるので、後のどうしても県知事でないと答えられない内容のときだけ、県知事が対応すると考えると、県知事が20名いるのと同じ観光誘致効果が出る。観光課の人のクローン化も同様の効果がある。
 このバーチャル県知事といったネットロボットがお客を世界中から探してくると、後は、アシモといった観光案内ロボットが対応することになる。インターネットから出れば、ネットロボットはロボットに引き継ぐといった形になるので、お客はインターネット内の友達に導かれて、自然に県内へ観光にやってきて、ロボットと会うことになる。

5.美の事業の理論 欲求・起業・雇用
 ここで観光事業の基礎になる事業の理論について分析してみたい。人間の欲求は時間で計られる。もっとも時間的に短いのは今日の寒さをしのぐ、明日の食事にも事欠くといった衣食住の生理的欲求の充足である。今日の寒さがしのげても将来が心配と思ったとき、安定的な生理的欲求の充足を人間は求める。貯蓄、防衛、保険といった考えがでてくる。次には、もっと長期的に安定するには相互扶助の仲間に認知されることが重要である。そこで、人間には社会認知の欲求がでてくる。集団生活をする動物にとって、集団に入れないことは危機的状況である。次にこの集団内で尊敬されることは、自分の行動原則で生きることが許されることを意味するためより集団内での生存が楽になる。しかし、集団内での評価は状況的であり、ストレスが多い。したがって、集団の短期的な評価を超えて、長期的な自己実現の欲求が出てくる。集団に合わせるより、自分の遺伝子から自分に継承された仕事を実現し、認知されたい。
 最後が、そのようなローカル場での評価ではなく、時空を越えた究極価値への探求が始まる。この究極価値が真善美であり、欲求は最終的に究極価値に到達する。
 欲求に対応して、事業が起業され、雇用が生まれる。衣食住の生理的欲求が、例えば漁業を起業し、漁業従事者を雇用する。究極価値の善への欲求が、教団を創造し、信徒が生じる(雇用)。中世は、究極価値の善が、多くの教団を創造し、多くの信徒が地域を反映させた。近代は、真が、科学技術を創造し、科学技術者を大量に雇用した。21世紀は、美が、美の事業例えばコンテンツ産業を創造し、美の従事者を雇用するとも考えられる。究極価値における事業化の変遷は、中世が善の事業、近代が真の事業、未来は美の事業という構図との提案が可能である。
真善美は究極価値として、位置づけられて来た。真は科学、善は宗教として知識体系、組織となり、科学は工業団地、善は寺の門前町として地域の雇用を支えてきた。善光寺、四国88箇所はその典型である。美は地域に何をもたらしてきたか。美しい風景に見せられる郷土画家、民芸品作家、彼らの活動は雇用をもたらしてきた。イタリアのローマ、フランスのパリ、日本の京都、中国の北京は大きな雇用をもたらす。
 真の事業による筑波の研究学園都市は、数十万の雇用、善の事業とみなせるアラブのメッカ巡礼も同様の雇用をもたらした。この真善美の究極価値は、長期事業を創造し、長期雇用を実現する。教団は1千年を超える長期雇用である。このような真善美は人間によって支えられる。京都は美の事業都市であると同時に、善(教団)の事業都市でもある、また真(科学)の事業都市でもある。京都大学はノーベル賞学者を輩出し、その輩出の条件は「頭脳+意志+風土」にあるといわれる。京都の真善美は、人材によって支えられる。同様に世界のあらゆる地域の人材のトップは、真善美に対して深い思い入れとその素養を持った人材である。そのような人材をいかに真善美の事業に参加させるか、が問われる。
 次に重要なのは合意形成であり、美の観光事業の最大の関門となる。

6.事業を進めるための合意の史的変遷
 事業、特に公共事業を進めるには合意が必要である。合意は状況的理由から合意を得ようとすると時間がかかる。その場、その時期の状況で合意への過程が大きく変わることになるため、多くの関係者の参加と意思決定の連鎖が必要となり、時間がかかる。この手間をなくし、早くかつ広い範囲でトップダウンにより行うためには、関係者の広い価値共有が期待される。このために選ばれたのが、かつては、宗教と科学であった。この2つは法律へと転化、または法律の裏づけとして、事業者、特に政府に利用された。
 宗教的価値を広く国民、特にエリート層に共有させ、従来の多様な行動原理、迷信といったものが、公共の利益に優先し、国家の再構築、新しい事業が行えない現状を打破するために宗教は利用されることが多々あった。この森は言い伝えがあって開発できないといった抵抗を排除するのに、優れた外来宗教を利用し、開発を断行するのが宗教導入の主目的であったとも考えられる。
このように宗教は、既成概念を打破する新たなパラダイムとして、古代に登場した。これは、究極価値である真善美のうち、善=宗教を利用した革命である。
 このように、事業を進めるための合意作りを簡略化、トップダウンにするために、リーダーは状況的価値から究極価値への転換を国民に求めた。その究極価値が真善美である。歴史的にはまず善としての宗教が求められ、それが法律として確立された事例としてはモーゼの十戒等がある。宗教による公共事業の推進と言い換えてもいい。これが日本における仏教導入であり、ローマのキリスト教導入、ムガール帝国のイスラム教も同様の意味が考えられる。
 しかし、中世における宗教対立、教団の武装化、政治への介入、労働者の教団への移動による生産人口の減少は、善=宗教の裏づけによる公共事業の遂行、組織改革への合意が困難になったことを示した。信長による比叡山の焼き討ち、一向宗徒の虐殺は、善=宗教による合意の時代が終わったことを意味し、焼き討ちされた教団からは多数の信徒が生産、農業の現場へ戻って新たな成長の時代を告げた。欧州ではこれはルネッサンス、科学の時代、つまり善=宗教から真=科学への合意の手段の革命を意味していた。価値は1つの真実のみへと集約されることをこれは意味していた。神の価値の対立は解消できなくても、観察、実験に基づく客観妥当性、再現性、写実といった科学的合意の前には、ニーチェのいうすべての神は死ぬしかなかった。神の死のあとに、真=科学による合意の時代が来た。科学(学問)による公共事業の推進が、かつて善=宗教によって行われたと同様に世界中で繰り返され、人類は地球を作り変え、20世紀の大繁栄を迎えた。これは大学、研究所を中心とした学問領域の拡大、成長を意味し、経済合理性は科学の裏づけのもと経済万能の合意形成を可能にした。
 しかし、20世紀後半に真=科学による合意は不可能になってきた。飛行場もリニアモータカーも建設できない。
 現在登場しようとしているのが、最後に残った美による合意である。美による合意は、真善と異なり、一元価値ではありえない。美は遺伝子としてすべての個人、民族が所有し、それぞれが異なる。真のように1つに定まらず、善のように他を排斥することもない。
美の遺伝子保存を考えてみると、美は、世界中で異なり、小さな村の美の遺伝子と、米国全体の美の遺伝子の差はない。世界中に分布する無数の個体からなる動物の持つ遺伝子の数と、ある特定地域にしか生息しない数百の個体しか生存しない動物と個体数の差は大きくても遺伝子の数は差がない。美の標準化、同質化が進んでいる地域、国ほど美の遺伝子の数は少ない。

7.おわりに 美のアセスメント
 最後になるが、すべての観光資産を男性とは異なる女性の視点でアセスメントすればどうだろうか。その県の価値はその県が一番知らない。男性の価値を知るものは女性であり、男性が一番知らない。真は一元価値であり、善は一元へ収斂させようとする危うさを持っている。美はそうではない。美はもっとも愛する人にその評価をゆだねることにより、美となる。美とは出会いであり、一元に収斂するものではないと思われる。風を愛でようと音楽を産み出し、色を愛でようと絵画が産まれた、しかし、美は無数に時間とともに刻まれ、留めること、一元化することはできない。20世紀までの経済学は一元価値の支配を受けた真と善の経済学であり、一元化は多くの不幸の元となった。多元がもつ豊かさ、美の経済学が持つ意味「多元の経済学」を、研究者たちは、私も含めて、いつ知ることが出来るのだろうか。

2011年6月19日日曜日

ドイツ人と日本人は似ている?

ドイツ人と日本人は似ているとよく言われる。

特に仕事を期日内に素晴らしい品質で終えるところは似ている。

しかしちょっと違う。

それは僕も一緒に学会などやって気付いたのだけど

ドイツ人は計画に強い(計画をしっかりやって、きっちり終わらせる)

日本人は実行に強い(日本人は計画はいい加減、実行しながら計画微修正を繰り返し最終的にはきっちり終わらせる)

タイタニック号、英国人、米国人、ドイツ人、フランス人、日本人、「中国人」のジョーク知っている?

2011年6月18日土曜日

芸術文化系ベンチャーは種を残す

芸術文化系ベンチャーは種を残す
 芸術文化系ベンチャーの経営は二重構造で行われる。

①芸術文化系ベンチャーの経営 
 世界的競争力を持つ日本ブランドであるAKB48のアイドルたちも漫画家もアニメ作家といった芸術文化系ベンチャーの経営
②芸術文化系ベンチャープロモートの経営
 それをプロモート、支援する秋元康氏集団、ジブリ鈴木氏集団など営業・経済的プラットフォームの経営、

の二重構造である。

 哺乳動物は適応能力の向上によって進化し、昆虫は自己複製能力の向上によって進化する

 プロモートする支援組織は哺乳類に似ている。プロモートは適応能力を進化させ、種ではなく個が生き残る道を探る。それに対して芸術文化系ベンチャーは昆虫に似ている。自己複製能力を進化させ個ではなく芸術・文化といった種を残するために、意図するしないに関わらずそれぞれのベンチャーが役割を果たす。
 自己複写能力進化を行う芸術文化系ベンチャー、個人(一人企業)、小規模の事業集団は、芸術愛好顧客、二次創作、フアン心理応援団などの顧客に対して確率的事業(何が当たるか売れるかわからない)を行う。
 市場を創造し、逆に支援事業プラットフォームは逆に適応能力を向上させ長期的にこの事業集団を支援し続ける。二重構造の経営モデルである。事業集団は次々消えていっても事業モデルという種は残りつづけて、進化し続ける。
 これを、公的機関と芸術文化系ベンチャーについて考えると、公的機関である「支援プラットフォーム」が適応能力の進化を目標とし、そこで創業される「芸術文化系ベンチャー」は自己複製能力の進化を目標にする。かつての芸能・映画・放送業界では国家保護も含め芸術文化組織は適応能力の進化が求められ、政策が行われた。しかし、ご存知のように、現在のアニメ・ゲーム業界からコミケなどでは、芸術文化を志す個人、集団(芸術文化系ベンチャー)に適応能力進化を期待してはいけない。支援組織は適応能力を進化させなければならないが、芸術文化系ベンチャーたちは自己複製能力を進化させたほうが良い結果を生む。
 かつてのシリコンバレーは、スタンフォード大学は適応能力を進化させたが、ベンチャーは伝説となった「パロアルト研究所」のパソコンキッズの遺伝子を大量に自己複製させた成果であった。

欧米への最短コースは日本海航路 物流大動脈日本海航路と北陸新幹線の夢

今こそ、太平洋側に偏りすぎている交通のインフラを問う
物流大動脈日本海航路と北陸新幹線の夢
         
       富山大学経済学部・大学院MBA教授 清家彰敏

1.中国から米国への最短コースは日本海航路
上海・釜山発のコンテナ船は対馬海峡を通り日本海へ、津軽海峡を抜け米国へ向かう。日本海航路は太平洋岸を通る航路に比べて1日から2日短縮される。地球が丸いためこれが最短距離である。その結果、日本海は中国、韓国にとってもっとも重要な海となった。富山沖を通るコンテナ船は増える一方である。
それに対して日本発着のコンテナ船はほとんど日本海を走らない。2010年の輸出入の実態をコンテナ数によって全国64港を調査した(清家彰敏・北陸先端科学技術大学院大学研究員清剛治)。米国へのコンテナ輸出入はほとんどが太平洋側である。中韓への輸出でさえコンテナの84.5%が太平洋側から出港、輸入も83.6%が太平洋側へ入港していた。
現在、キヤノン、本田技研工業の海外売り上げ比率は80%に達し、トヨタ自動車など大手企業の売り上げの半分は海外に依存している。戦後の日本では製品製造プロセスは国内で完結し、最終製品が米国へ輸出された。しかし、21世紀日本の海外での競争力は最終製品だけではなくなった。日本の強みは基幹部品・最先端材料輸出となりつつある。代表は新日本製鉄、村田製作所、コーセルなどである。世界的な中堅企業も多い。日本発の基幹部品は中国、韓国などで最終製品となりコンテナ船が仕立てられ米国へ輸出される。このとき最短距離の日本海を通過する。
北米行き3140隻、アジア行き2972隻について国土交通総合研究所が2009年分析した 。北米行き日本海経由1059隻33.7%、アジア行き739隻24.9%。北米行きは韓国発764中国北部232台湾37中国南部26日本0隻であった。アジア行きは韓国着449台湾160中国北部82中国南部25日本23隻であった。日本海は韓国、中国の大動脈である。日本発着は全体の1.4%に過ぎない。

2.米国へ直行する上海の大型コンテナ船
積み替えtransship 率は2008年でシンガポールが83.1%、韓国64.9%、台湾33.9%、中国21.7%、日本18.0% 。「大型船になると釜山、シンガポールに寄らず、上海から北米に直行する」「上海の洋山港の出現は東アジアにコンテナ物流において超大型ハブ港として機能し、域内においてはすべてフィーダーサービスで賄う可能性すら持っている」アジア・北米航路における中国発貨物量68%、日本発6%、アジア・欧州航路中国発70%、日本発5% 。東アジアは自国貨物中心(海で分離される)、欧州は全欧州から貨物が集まる 。オランダロッテルダム港はモスクワからミラノの範囲まで集まる。中国は港湾整備が遅れているため韓国・日本・台湾の港湾を利用しているが将来は自国港湾で賄う 。

3.コンテナ船を仕立てる適正港湾の条件
上海、釜山より米国に近い日本海側の港でコンテナ船を仕立てると燃料消費をより削減できる(中央大学理工学部助教鳥海重喜氏)。そうなれば、日本海航路は米中貿易において太平洋側を通るより1割%近い燃費と日数の削減をもたらし、省エネ効果はさらに高まる。
さて、製品創造プロセスは企画・開発・部品生産・組立・販売の5プロセスである。グローバル化の現在このプロセス内に世界の無数の企業、工業団地はいやおうなく組み入れられる。このプロセスは流通大動脈となり、アジア、米国、欧州の3地域を繋いでいる。スエズ運河、パナマ運河、マラッカ海峡、と並び日本海は重要ルートである。しかし日本政府の意識は低い。
なお、メルカトール図法の地図を見慣れているとにわかには信じられないだろうが、地球儀を辿るとマラッカ海峡~ベトナム~中国~韓国~日本~北米西岸~パナマ運河がほぼ一直線上の大圏コース上に位置している(航路帯)いる 。シンガポール、ホーチミン、香港、上海、釜山、日本海、津軽海峡、アリューシャン、ロサンゼルス、メキシコ、パナマは一直線上にある。
この直線最短距離航路帯を世界の海上コンテナの半分近くが流動している 。また航路上に関わるコンテナ取扱量の比重をみるとASEAN13.6%、北東アジア35.7%、北米10.0%、中南米7.0%と世界の66.3%を占める(2007年) 。高橋 はこの航路帯について世界の東海道新幹線といった表現をし、「北米1港と中国2港との間をシャトル運行しており、ロサンゼルス港で船積みされた海上コンテナは13日後には上海港で船卸しされている(寄港地が多いと25日間)。」2007年にフルコンテナ船4,239隻(Lloyd’s)。ちなみに、世界の全物流の9割が海上物流である。
また、この海上新幹線上の駅は赤道上シンガポール、緯度10度ホーチミン(旧サイゴン)、20度香港、30度上海、40度には無い。東京、阪神、釜山は35度。台北は25度。この4駅は停車駅としては中途半端かもしれない。

4.日本の優位性はアジアの玄関ポータルサイト
日本は北米に対するアジアの玄関、ポータルサイトであり、北海道(津軽海峡)東北はアジアの看板として、新駅(秋田・岩手・青森が緯度40度)を作りうるかもしれない。海上新幹線のイメージはアジアでは各駅に止まり、太平洋上は高速で通過し、シアトル、サンフランシスコ、ロサンゼルス、サンディエゴ、パナマで各駅停車もありうる。 
また温暖化により北極海航路が拡大すると日本海航路の使用はさらに増える。2008年には124隻の商業船が北極海を航行した(ロシア政府発表)。北極海航路では、韓国・中国船は日本海、ベーリング海、北極海、バレンツ海、欧州へ、スエズ運河を経由しないため距離はほぼ半減する 。オランダのロッテルダムと横浜の間はスエズ運河経由だと2万5千キロメートルなのが、北極海航路を使えば1万2千キロメートルで済み、大幅な距離の短縮になる(ノルウェー船級協会吉田伏見男副社長 )。
なおロシア側北東航路は欧州から北海、ノルウェー海、バレンツ海を通り、北極海、ベーリング海、太平洋、日本海へと入り、韓国、中国へ向かう航路となる。バレンツ海には欧州沿岸を北上したメキシコ湾暖流が流入するため冬季にも凍結することがない。北極海航路は、現在夏場4ヶ月だけの利用に限られるが、将来拡大すると欧州へのアジアのポータルサイトとしても北海道(津軽海峡)東北、日本海の重要性は高まる。
米国、ロシアなど8カ国の北極評議会は、北極海で30~40年以内に夏には海氷がなくなると予測する 。米国東海岸行きも日本海、北極海北西航路はパナマ運河を経由せず大幅短縮となる。上海-ニューヨーク間は1万9千キロメートルが1万3千キロメートルまで短縮する。
温暖化とともにアジアのポータルサイト北海道(津軽海峡)東北、日本海は年々賑わいを増す。韓国、中国、東南アジアのコンテナ船は日本海を通り、北米、欧州へ向かう。日本の裏庭である日本海、北海道(津軽海峡)東北を隣人が通行していくのに、日本政府は背を向けて太平洋側の玄関ばかり綺麗に飾ってきた。日本海側に玄関を作らないとお客は立ち寄らず挨拶もしないで素通りする。

5.北極海資源と日本
また北極海には金、銀、鉄、亜鉛、スズ、ニッケル、ダイヤモンドなどの鉱物資源をはじめ、石油・天然ガスにおいてはいまだ手付かず状態にある世界の資源量(未確認資源量)の4分の1に相当する量とも、あるいはサウジアラビアにおける埋蔵量の4割にあたる量が眠っているともいわれている 。またサムスン重工業は極地運行用前後方向砕氷船を開発、7万トン級砕氷タンカーを受注している 。砕氷タンカーはタンカーの3倍の価格といわれている。日本は北極海を前提とした外交へ移行する必要があり、北極海に加えて北海道からのオホーツク海資源の開発を前提にすべきである。

6.欧州航路とロシアシベリア鉄道の競争
人類の歴史は陸と海の物流効率の交替によって起こっている(清家)。古代は陸における駱駝、牛馬が、中世は海における帆船が物流効率で上回った。近代は陸の列車、自動車と海の動力船が競争し現在にいたっている。英国、米国は海を支配し世界の覇者になってきた。ちなみに現在物流の1割は陸、9割は海といわれている。日露戦争はロシアと英国(+日本)の中国をめぐる覇権争い、ロシアのシベリア鉄道と英国・香港航路の物流効率競争が主因になっているともいわれている。競争の勝者日英同盟が覇権を握った。
ロシアのシベリア鉄道はアジア・欧州航路の競争者である。北極航路の主役でもあるロシアは2005年鉄道が全貨物の約42%を占め、一番重要な輸送手段である(辻久子)。世界の貿易に占める海上輸送9割に比較すれば、ロシアで鉄道が大きな意味を持つことが分かる。また貨物は国内貨物67%、国際貨物33%である。国際貨物の内訳は海上13%、陸上20%であるから海上物流が弱い。ロシアが海上国際物流の強化策として北極航路に期待する理由はここにあるが、日本政府ではロシア資源・エネルギー戦略の陰に隠れほとんど議論されない。
さて、欧州・アジア物流において陸のシベリア鉄道はどの程度の競争力を持っているのだろうか。
フィンランド・トランジットは、極東ボストチヌイまで海路を経由してシベリア鉄道を使う所要日数が、諸手続きなどを含んで釜山18~22日、神戸24日、上海26日であった。シベリア鉄道の所要日数は、ボストチヌイ発フィンランド国境ブスロフスカヤ行きブロックトレインは約11日間でユーラシアを横断し2005年まで頻繁に運行されていた。
それに対して海のスエズ回り航路は諸手続きなどで35日である。運賃は海路経由シベリア鉄道がやや海のスエズ回り航路より高い。シベリア鉄道は、ソ連時代、政策的に低運賃に抑えられていたがロシアになって高くなった。しかし、海上運賃は上下動が激しく、シベリア鉄道は海上運賃が高騰すると競争力が高まる。ちなみに欧州向け海上運賃は日本が一番安く、次が韓国で、中国は高い(2007年)。
日本は旧ソ連時代シベリア鉄道を活用したが、1990年代以降は主役を韓国に譲った。韓国は自動車産業を中心に海路経由シベリア鉄道とスエズ回り航路の両方を併用している。韓国は小型車部品を蔚山から海路ボストチヌイへ運び、その後シベリア鉄道で黒海タガンログまで諸手続きなど含め23日間で輸送している(2007年)。これが陸である。海スエズ回りは、釜山からコンスタンツァ経由フィーダー船で諸手続きなど含め30日程度かかる(2007年)。
なお、現代自動車工場向け部品輸送に用いられているブロックトレインは24m(80フィート)コンテナ貨車が31-38両連結され、約1000m程度である(辻久子)。ちなみに東海道新幹線は16両、1両25m、約400mである。

7.太平洋側社会資本の日本海側への移転
日本の太平洋側の鉄道・道路・橋梁・港湾・空港・工場団地の中核は1960年代、70年代を中心に作られ老朽化・陳腐化が問題となっている。東日本大震災が2011年3月11日に発生、原子炉災害も加わり未曾有の災害となった。津波災害対策に社会資本の再建、再配置を考えるとき、世界的物流の大動脈となりつつある日本海側への社会資本の分散は意味を持っている。
日本が主役で最終製品、基幹部品を作っている限り、太平洋側から輸出しようが日本海側から輸出しようが大きな差は無い。相手が待ちわびているからである。しかし、今後新興国の技術が向上し、グローバル化が進むとそうとばかりは言っておられない。流通の大動脈の中に社会資本、工業団地を位置づけないと置いていかれる。裏通りでは仕事が来ない。そうなっていない工業団地は滅ぶ。
工業団地の役割は世界経済のサービス化への対応、スマートシティ建設プロセスの分業拠点と今後大きく変化しつつある。また国内のボーダーレス化が進む未来はメイドインジャパン化の拠点、海外商品・サービスの導入拠点としての意味も大きくなる。ますますリニューアルが必要となる。
太平洋側の工業団地は今後その重要性が急速に低下する。工業団地の再配置については3つの大きな問題が存在する。1つは日本海側と太平洋側のバランス、2つは港湾と陸上交通と産官学施設の融合、3つは規模の経済の発揮とソリューション物流である。
1つ日本海側と太平洋側のバランスである。過去、工業団地は太平洋側へ偏り日本海側軽視であった。よく言われたのが、米国重視は太平洋側重視という考えである。前述したように米国に近いのはむしろ日本海側である。しかし、田中角栄総理の列島改造論以来の1971年「農業地域工業導入促進法」1972年「工業再配置促進法」などにより工場の地方分散、80年代テクノポリス構想などでも、インフラの多くは結果的に太平洋側に偏った。さらに現在も工業団地の造成をおこなっている多くが太平洋側である。日本にとって日本海側は存在が薄い。日本の政策課題は「日本海航路周辺への社会資本の移転」である。
北米向け海上コンテナ輸送が日本海を経由する度合いが増え、日本海沿岸諸港の国際海上コンテナ取扱量の平均伸び率は日本全国平均の2倍を超えたとの政府の認識は遅いくらいである(平成20年7月閣議決定) 。今後、日本海側への移転が今回の東日本大震災を受けて試みなければならない。

8.日本縦断貨物新幹線
2つは港湾と陸上交通と産学官施設の連携である。日本海航路の港湾、工業団地などを陸上で結ぶ幹線として、既存および建設中の新幹線を連結させ、日本縦断貨物新幹線の構想を作り上げることが重要であると思われる。これは地震等の大災害対策ともなる。建設中の北陸新幹線は日本縦断貨物新幹線の一部として活用可能である。北海道から九州まで貨物新幹線が開通すれば当日配送圏は飛躍的に広がり、グリーンツーリズムからいってもトラック輸送の激減でもメリットは大きい。高齢化している日本では長距離トラック網の維持は困難である。
東海道新幹線を旅客輸送に特化させ、日本縦断貨物新幹線は、北海道、東北、大宮、北陸、大阪、中国、九州となるのがもっとも妥当と思われる。その駅にターミナルを作り短距離トラックシャトル便が郵便局、コンビニを結んで走れば即日配送圏の拡大で日本列島は大きく変化する。また貨物新幹線は製品として世界への輸出産業ともなる。
 ところで中国は土地が国有で社会資本の建設は極めて速い。金沢に新幹線が来る前に中国中に新幹線網が完成しかねない。ロシアも同様である。日本の社会資本建設が遅れると東アジアで取り残される可能性大である。

9.ソリューション物流と規模の経済の発揮
中国、韓国から見て、米国への商品輸出は帰り船の積載率が悪い場合がみられる。米国には売れる商品が無いという中国の経営者さえいる。米国の特産品である「ソフト」はコンテナに積む必要がない。したがって、帰り船を満載にするには、なるべくアジアの沢山の国の注文を取って回りたい。そして、帰りは出来るだけ米国の商品を積載して、日本、韓国、北朝鮮、ロシア、台湾の顧客へ分散して届けるスタイルを取ると帰り船の積載率が上がる。日本海航路の途上に港(京都舞鶴、富山伏木、新潟など)を完備し、各国の集荷に加え、日本の各地を加え積載率を上げるのが自然である。そのためには欧米行きはシンガポールから日本海までで範囲の経済の発揮、帰り船は顧客ソリューションの発揮が鍵となる。
なぜ、日本は1990年代以降停滞したのか。そのひとつの原因が大規模物流に応える大規模港湾、大規模工業団地、大規模施設の形成に失敗したからである。日本政府は49の地方自治体の要求にこたえる形で、1970年代以降投資を繰り返し、必然的に分散投資になった。その結果、1970年代1980年代までは周辺は日本だけが先進地域であったためこの分散投資は競争力の低下に繋がらなかった。むしろ競争の効果さえ見られた。しかし、周辺国が物流の急増、コンテナ船の大型化に合わせ、大規模投資を繰り返し始めた1990年以降急速に競争力が低下した。この流れを日本は転換しなければならない。
日本の各地と結ぶ日本海側の港の集中投資、規模の経済の発揮として浮かびあがってくるのが、①北海道・青森地域(津軽海峡・首都圏輸送)、②舞鶴(日本海中心位置・関西圏/中部圏輸送)、③北九州地域(関門海峡・九州圏輸送)、である。日本海側においては、北海道と青森は大規模な工業団地が空いており、日本海航路を活用する最適地である。福岡・北九州は韓国釜山とともに良い立地であるが、現在工業団地の空きは少ない。北海道と青森、それに秋田、岩手を組み合わせて、大規模港湾、物流新幹線、短距離トラックシャトル便、大規模工業団地、大規模官学施設のクラスターが東日本大地震の復興の上位構想として計画されなければならない。

10.おわりに
東日本大震災、大規模な社会資本の更新・修繕の時期をとらえ、主要な工業団地および道路や港湾等の社会資本を日本海側に構築(移転)・整備することによって、急成長する東アジア、日本海航路に合わせた流通(貿易)⇔製造(工業団地)の新しいシステムを創造していくことが望ましい。

新しいビジネスプロセス

将来的には、研究開発の前に、詳細な地図が登場しこのハイパーメディアで画期的にスピードが向上する可能性がある。バイオにおいてはDNAを基礎にした人体地図上で病気、治療、予後が特定、予測される地図ビジネスが既に成立しようとしている。かつてのようにやみくもに病気に対症療法で向かっていくのではなく、人体地図上で今何が起こっているか、何をなそうとしているか、特定できるのである。これを地図戦略と規定すれば、地図戦略は人体地図と市場地図の2つで構成されると考えられる。
 またこの地図と対になるのがバーチャル人体とバーチャル市場とシミュレーションである。開発された製品は販売されるまでに仕様をバーチャル人体に打ち込んで治療効果、予後がシミュレーションで予測される。次にバーチャル市場でシミュレーションし販売成果を予測する。この2つのシミュレーションは連結され、バーチャル市場で成功した製品をリアルな市場で販売する。また多くの製品についてシュミレーションした中から最大売上、最大収益の製品を選択販売する。逆にある売上額を決めてその製品の開発仕様を決めるといった「逆算製品開発」も可能となる。
 この結果、経営は、地図戦略、研究開発、生産技術、工場、製品、センシング、サービス、コンサルティング、金融、保険、バーチャル市場、リアル市場販売、のプロセスになり、また長くなった。
従来の経営は製造業であれば、内部組織を中心に研究開発、生産技術、工場、製品販売のプロセスで顧客へのビジネスを行った。しかし、1990年代ソリューションビジネスが登場し、経営は研究開発、生産技術、工場、製品販売、センシング(ソフト開発)、サービス、コンサルティング、金融、保険、顧客のプロセスを管理する必要が起こり、ビジネスプロセスは長くなった。これは必然的にスピードが低下した。
 ここで、経営の作業である、戦略、組織、人事をビジネスプロセスのどこへ入れるかで
ビジネスモデルは大きな変化をする。「戦略」、研究開発、生産技術、工場、製品販売、センシング(ソフト開発)、サービス、コンサルティング、金融、保険、顧客と研究開発、「戦略」、生産技術、工場、製品販売、センシング(ソフト開発)、サービス、コンサルティング、金融、保険、顧客、と戦略の位置を変えるだけで、まったく異なる経営の型が登場する。

2011年6月12日日曜日

人類の歴史は市場と組織のどちらが効率・スピードで選択されたかで作られた?

人類の歴史は市場と組織のどちらが効率で上回るかで作られてきた?
またスピードで市場と組織のどちらが上回るかで、歴史は作られてきた?

そうすると効率・スピードの2軸4グリッドで歴史を観察できるかな(笑)

組織の規模・境界・スピード

組織はマネジメントによって①事業②問題③顧客④人材⑤所有⑥環境の定義により①規模②境界③スピードが決定される。組織の境界は①Fuzzy②Crisp③Ambiguityの3種の定義が可能である。③Ambiguityは境界が複数存在し規模を特定できないといった観察に基づくが、今後の研究課題である。また組織におけるスピードとは①速度に加え②微分③積分(早い遅いの感覚)が観察される。①速度はルティーンの形成と改善によって向上し「速い」という語があてられる。②微分はagileといった柔軟性によってもたらされ「疾い」の語感がふさわしい。

起業プラットフォームと起業人材モニタリング装置スマホツイッター

クリエーターの方から大企業起業人材まで、日本型プラットフォームはシリコンバレー、東海岸ハーバード、ドイツなどとはちょっと異なると思っております。
プラットフォームに起業人材のモニタリングシステムを内包機能させるとしたら、どのようなセンサを人材につければいいのでしょうか?動物学でカメラ付きモニタリング装置をイリオモテヤマネコ、あほうどりやクジラに背負わせますが
起業人材のスマホやパソコンでツイッター+データマイニングで追跡し、的確な起業支援が可能かどうか、実験可能かどうか。

某世界を代表する情報通信会社ならそれは可能だろうか?

ハイパーメディア

フラッシュアニメの可能性大変興味深い
メディアの中が、Googleの元名誉会長村上さん(京都在住)のお話のようにinternet of thingsになっていけば、それに
+人工知能+アニメ+ゲーム技術によってハイパーメディア化していくとチューリング検定できない「ひともどき」が無数に溢れる。ひともどきはナノ単位で創造・ルーティング・購買を行う・・・・と考えている。

未来のMOT(技術経営)のイメージ(1)

 将来的には、研究開発の前に、詳細な地図が登場しこのハイパーメディアで画期的にスピードが向上する可能性がある。バイオにおいてはDNAを基礎にした人体地図上で病気、治療、予後が特定、予測される地図ビジネスが既に成立しようとしている。かつてのようにやみくもに病気に対症療法で向かっていくのではなく、人体地図上で今何が起こっているか、何をなそうとしているか、特定できるのである。これを地図戦略と規定すれば、地図戦略は人体地図と市場地図の2つで構成されると考えられる。
 またこの地図と対になるのがバーチャル人体とバーチャル市場とシミュレーションである。開発された製品は販売されるまでに仕様をバーチャル人体に打ち込んで治療効果、予後がシミュレーションで予測される。次にバーチャル市場でシミュレーションし販売成果を予測する。この2つのシミュレーションは連結され、バーチャル市場で成功した製品をリアルな市場で販売する。また多くの製品についてシミュレーションした中から最大売上、最大収益の製品を選択販売する。逆にある売上額を決めてその製品の開発仕様を決めるといった「逆算製品開発」も可能となる。
 この結果、経営は、地図戦略、研究開発、生産技術、工場、製品、センシング、サービス、コンサルティング、金融、保険、バーチャル市場、リアル市場販売、のプロセスになり、また長くなった。
従来の経営は製造業であれば、内部組織を中心に研究開発、生産技術、工場、製品販売のプロセスで顧客へのビジネスを行った。しかし、1990年代ソリューションビジネスが登場し、経営は研究開発、生産技術、工場、製品販売、センシング(ソフト開発)、サービス、コンサルティング、金融、保険、顧客のプロセスを管理する必要が起こり、ビジネスプロセスは長くなった。これは必然的にスピードが低下した。
 ここで、経営の作業である、戦略、組織、人事をビジネスプロセスのどこへ入れるかでビジネスモデルは大きな変化をする。「戦略」、研究開発、生産技術、工場、製品販売、センシング(ソフト開発)、サービス、コンサルティング、金融、保険、顧客と研究開発、「戦略」、生産技術、工場、製品販売、センシング(ソフト開発)、サービス、コンサルティング、金融、保険、顧客、と戦略の位置を変えるだけで、まったく異なる経営の型が登場する。

2011年6月7日火曜日

村上元グーグル名誉会長と研究室記念写真(^^)金沢にて



研究生の虞莹さん写真撮影ありがとう(^^)。

I-Media情報研究所主催えっ! 日本海側が、実はアメリカに近い?6月17日(金)18:00~NHK青山荘

I-Media情報研究所主催
第3回 I-Media情報サロン

『えっ! 日本海側が、実はアメリカに近い?
       ~“海上新幹線”のポータルづくりを~ 』

富山大学経済学部・大学院MBA教授
中国社会科学院(政府)特別高級研究員  清家 彰敏 氏

NHK情報ネットワーク(現NHKグローバルネットワーク)が主催する情報化メディア懇談会の月刊誌『I-Media』に、6年間一回も休むことなく論文を寄稿された清家さんは、何度かの講演を含めて、ユニークな観点と先見性で各界に注目されました。そろそろ“清家節”が聞きたいとの声も強いことから、仲間内ならではの気策(奇策?)な未来トークをお願いし、今回はどんな話が聞けるのかの質問に次のような答えがメモ書きで返ってきました。

1.災害のなぜに秘密で答える?
 原発災害について数々の分析・反省が行われ、復興構想が提案されている。清家は多くの省庁、海外での委員などを併任している立場からTVには出ない「なぜ」に答えたい。
2.日本海側が太平洋側よりアメリカに近い?
 コンテナ船で香港からロサンゼルスに行くには日本海を通って津軽海峡を抜けるのが一番近い。これは地球が丸いからである。中国・韓国にとって日本海はもっとも重要な航路である。日本海航路は世界の銀座通り。北極海航路が温暖化で拡大すると益々栄える。
3.シンガポールから日本を通ってロサンゼルス、パナマまで海上新幹線?
 日本海は、地球儀を辿るとマラッカ海峡~ベトナム~中国~韓国~日本海~北米西岸~パナマ運河がほぼ一直線上の大圏コース上に位置しており、ここを世界のコンテナの半数が通過する。
4.欧米とアジアの十字路、日本海にポータルサイトを!
温暖化とともにアジアのポータルサイト北海道(津軽海峡)東北、日本海は年々賑わいを増すはずである。韓国、中国、東南アジアのコンテナ船は日本海を通り、北米、欧州へ向かうのだ。日本の裏庭である日本海、北海道(津軽海峡)東北を隣人が通って行くのに、日本政府は背を向けて太平洋側の玄関ばかり綺麗に飾り立ててきた。日本海側に玄関を作らないでいると、隣人たちは立ち寄ることもなく、挨拶もしないで素通りするだろう。今後、太平洋側の港・都市は衰退? 日本海側の港・都市は大きなチャンス?

【せいけ・あきとし】1950年愛媛県生まれ。筑波大学大学院修士課程修了。ベンチャー起業で倒産を経験後、民間企業から文部科学省へ出向という異例の経歴を持つ。北京大学客員教授、財務省財務総合政策研究所特別研究官、経済産業省ロボット政策研究会委員、科学技術庁科学技術政策研究所客員研究官などを歴任。現在は冒頭の肩書き以外に、中国国研・スタンフォード大学最高経営者教育計画特別顧問、名古屋大学、北陸先端科学技術大学院大学,法政大学講師を併任する。 
 *今回も「頭にガツンと一撃」を受け、発想展開の鍵にしたいものです。(加藤和郎)



◇日   時   2011年6月17日(金)18:00~20:50
◇会   場   NHK青山荘 2F『あじさい』(和室) ※お座敷
和室(畳敷き)での着席スタイルです。楽な格好でお越しください。
〒107-0062 東京都港区南青山5-2-20 
TEL:03-3400-3111
http://biztrip.livedoor.com/hotel/2004080047/access.html
(地下鉄「表参道」駅、A5出口より徒歩1分)
18:00~18:10 オープニング  加藤和郎
 18:10~19:10 ゲスト 講演『えっ! 日本海側が、実はアメリカに近い?
                 ~“海上新幹線”のポータルづくりを~』
富山大学経済学部・大学院MBA教授
中国社会科学院(政府)特別高級研究員  清家 彰敏 氏
19:10~20:50 情報 サロン  お飲み物など片手に、気の置けない交流会です。
参加メンバーの紹介を含め、時流に沿った話題や情報など “おとっときの話”が飛び出します。
◇今後の予定   7月15日(金) ※変更のある場合はご容赦ください。
I-Media 情報サロン事務局 
E-mail:info@i-media.jpn.com ★参加受付:TEL:03-6219-6055 Fax:03-6219-0056(担当:原)
   
 ★地下鉄「表参道」駅、A5出口より徒歩1分

2011年5月28日土曜日

日本は世界の3つのトップランナーになる トップランナーの先行者利得は膨大?

1.原子力社会のトップランナー
2.高齢化社会のトップランナー
3.コミックアニメ社会のトップランナー

世界の最先端を進んでいる。

この3つの社会の法律、仕組み(経済・ビジネス・コミュニティ)、インフラを「日本において完備させ」世界へお手本として、移転させることが世界へのトップランナーの義務である。

大航海時代のポルトガル、スペイン
産業革命のイギリス

など先行者利得は膨大なものになると思われる。

2011年5月25日水曜日

日本の未来イメージ(^^) 分かるかな?揚子江の延長?分かって欲しいね

モンゴル大都北京はアジア欧州の陸の玄関ポータルサイト・ルーター
19世紀英国シンガポール香港がアジア欧州の海の玄関ポータルサイト・ルーター
20世紀初、ロシアシベリア鉄道大連がアジア欧州の陸のルーター(失敗)
1920年代~中国上海(揚子江)が中国欧米日の玄関ポータルサイト・ルーター
戦後日本が欧米アジアの玄関ポータルサイト・ルーター
1990年代~中国上海(揚子江)が中国欧米日の玄関ポータルサイト・ルーター
未来 北極海航路欧州でスエズ回りは減少?シンガポール香港の衰退? 「揚子江の海へ延長拡大」の先は日本海?
日本(日本海側への社会インフラ転換)が中国アジア欧米の玄関ポータルサイト・ルーターへ

2011年5月16日月曜日

もしドラはなぜヒットしたか ドラッカーはなぜ日本のリーダーに愛されたか 高度成長期経団連名誉会長土光敏夫氏から現在までユニクロ柳井正氏・・・まで

ドラッカーはなぜ日本のリーダーに愛されたか 高度成長期経団連名誉会長土光敏夫氏から現在までユニクロ柳井正氏・・・まで

1.顧客から事業を再定義しよう(日本的リーダーは顧客を大事にする)
2.独裁ではなく組織を使って社会問題を解決しよう(日本人は従業員、職員仲間を大事にする)

もしドラはなぜヒットしたか 
1.現在忙しすぎて、日常の仕事、ノウハウ習得に追われて、基本の勉強をする余裕のないリーダーたち、おじさんたちが基礎学習に目覚めた?
2.本来、マネジメント理論は「リーダーたちのドラマのエッセンス集?」、最高に面白いはず(^^)難しい理論をやさしく語る「ストーリー」仕立てが入門に最高だった。これを成功させたのはさすが秋元康くん、AKBまでの秋元プロデュース
3.これからもどんどん同じプロデュースで成功できる?

富山の経営者、市町村長の学ぶこと
1.お客様(住民)は高齢化してきて大きくチェンジしてきている!
 イエローハット北陸 松原社長は 顧客定義を変えた 値段、納期狙いのお客ではなくイエローハットは安全、品質重視のお客
 事業定義を変えた カー用品の大量供給での社会貢献ではなく、イエローハットは安心カーライフのアドバイザー
 マーケティングも変えた チラシ重視ではなくイエローハットはお客との対話重視
2.日本の経営者はお客を大事にする。
 各業界ごとにそれぞれお客様が大きくチェンジしている。顧客定義、事業定義を変えよう。きっとマーケティングも変えないと、松原社長はいい手本。
3.内緒話 日本の経営者は独裁型が実は意外に多い。ご本人は気づいていない。ドラッカー読みのドラッカー知らず(笑)。組織を使う鍵は若いリーダーの自立促進と彼らの組み合わせ。「可愛い子供には旅をさせろ」
4.経団連名誉会長土光敏夫氏はトイレで若いリーダーのポケットにドラッカーのマネジメントを押し込んだ(臭いリーダーシップかな)。若いリーダーがドラッカーを読むと自然、経営は組織を使う、人材を活用できるようにチェンジしていく。若いリーダーと社長、首長は一緒にドラッカーを読んでみるのも楽しい

清家研究室他で富山大学東京ジュニアOB会開催 5月27日金曜日 参加大歓迎、名刺交換会

今度5月27日(金)夜

に東京の市ヶ谷で

清家研究室他で富山大学ジュニアOB会を開くよ。

実行委員長の北方君
幹事の宮田、三善君
によると

年齢35歳程度以下かな、精神的ジュニアも歓迎?とか

富山大学経済学部出身の東京で成功された大先輩の楽しい講演もあります。

参加大歓迎!!ド派手にやる?

現在20名程度かな。名刺交換会をやるそうです!!

富山大学OB、清家研究室他関係者で、参加希望の人は、清家までメールしてください。

今週火曜日 富山テレビ 18時ニュース 清家研究室ドラッカー経営で特番?

今週5月17日(火)富山テレビ 18時ニュースで

清家研究室ドラッカー経営についてで特番?があります。

清家ゼミ(イケメンと美女ぞろい)の様子から始まり

富山の経営者とドラッカー

若い富山のリーダーとドラッカー

などわいわいやりました

是非見てください(^^)。

富山大学経営組織論 講演トップマネジメント 水曜日18時5分~

第1回 イエローハット北陸 社長 松原隆光 先生
 
 富山・石川など7店の中堅企業型マトリックス組織(大企業とはどこが違うか)におけるソリューションビジネス

第2回 ヨコハマタイヤジャパン石川・福井 カンパニー社長 飯田昌作 先生
 若いリーダーを育て活かす自律創発型組織のパワーマネジメント
(かなり奥深いよ)

第3回 富山テレビ 取締役・報道制作局長 青柳良明 先生

清家、私見
青柳先生の熱血講義が魅力的でした。とくにフランスとワイン・・・

少しづつ整理して清家私見をまとめてご報告します。

今後が楽しみですね(^^)

2011年5月11日水曜日

富山大学中央図書館説明会だよ 院ゼミ長・学部ゼミ長

院ゼミ長
学部ゼミ長

清家

図書館の学術情報部図書館情報グループの赤祖父さんから、
下記の通り、中央図書館で行う文献の探し方・入手方法についての
説明会のご案内をいただきました。

学部生や文献検索が不慣れな大学院生等に、
お伝えいただけたら幸いです。
お忙しい中お手数をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします。

(対象は学部2、3年生ですが、学内者でしたら、
 興味のある方はどなたでもOKだそうです。
 添付ファイルにありますように、定員がありますので、
 先着順になります。)

添付ファイル:6月講習会のポスター.pdf

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図書館情報グループの赤祖父と申します。
いつもお世話になっております。


6月に開催する講習会の案内ができました。

今回は、主に学部2、3年生を対象に、文献の探し方と入手方法を説明します。
(昨年12月に行ったものとほぼ同じ内容です。)

  日時:(3回予定しています。)
     平成23年6月 1日(水)13:15~14:45(文系向け)
         6月15日(水)13:15~14:45(文系向け)
         6月29日(水)13:15~14:45(理系向け)

  場所:中央図書館6階マルチメディア研修室

基本的な内容は、3回とも同じです。文系向け・理系向け
それぞれで、紹介するデータベースが少し変わります。

詳細は添付ファイルのとおりとなっています。
学生の皆さんにお知らせいただければ幸いです。

お問い合わせ・お申込みは、図書館情報グループ
chuolib@adm.u-toyama.ac.jpまでお願いいたします。

2011年5月10日火曜日

マネジメントの対象とは?企業だけ?違うよ。なぜドラッカーがリーダーに共感を呼ぶか(^^)

 マネジメントは本来社会問題解決の事例から抽出された原則の体系であると思われる。したがって、企業経営だけでなく、国家、社会の問題解決が主眼となっている。プロイセン(北ドイツ)がナポレオンに勝つにはどうするか?発展途上国の米国が欧州列強に経済的にキャッチアップするにはどうするか?そのような社会問題解決の事例からマネジメント研究は登場した。したがって、米国の大統領の主な仕事はマネジメントである。
 日本においては江戸期の藩政改革、明治維新、戦前の満州国、戦後の日本株式会社といった表現がさまざまされているが、政治改革とか、官僚、政治家の話とかで、政治学、法学の対象と思われているものの多くはマネジメントである。日本、世界の政治家、官僚の多くはマネジメントを意識するか否かに関わらず行っている。その理論、手法、道具の大部分は企業経営者、非営利法人の経営者のものと同様である。
 ドラッカーはそのことをもっとも意識してマネジメントを構築しようと試みた。欧州や日本においてもそのような意識はあるが、「欧州という圧力が強かった、欧州からの知的移民も多かった米国」においては、特にマネジメントを構築しようとの意識が高かった。

美術館など巨大資産を抱える組織のマネジメント

美術館は運営費に比べて桁違いの巨大資産を抱えている。

このような組織のマネジメントはどのようにすればいいのだろうか?

 美術館の絵画、彫刻などの資産評価は簿価と時価があるが、おそらく簿価での評価が多いのではないか。もうひとつビジネス資産の評価が必要である。資産のビジネス価の評価はマーケティングの手法でまったく異業種の複数の営業系経営者によるものが、望ましい。その結果、ビジネス価が定まったら、ビジネス価で資産をビジネス的に再評価し、ビジネス企画を立てることができる。もちろん、美術館はビジネスを事業定義とする組織ではないので、ビジネス企画をすべて採用する必要はない。しかし、従来行われてきた企画に加えてビジネス企画を検討することは選択肢を増やす。一般にビジネス企画が増えると館長は選択肢が増えるだけでなく、マネジメントのスタイルも幅広くなる。
 あまりに資産価値とビジネス価の差が桁違いなら、それを相殺するためには市場を広げる必要がある。例えばチェーン化するというのは、市場の面積を広げる。子供も対象にするといった顧客定義を変えれば市場の面積は同じでも対象者を広げうる。高所得者を営業対象にすることは市場の質を高める。美術館の顧客定義、事業定義を変えると市場が拡大、質が高まる。事業活動の定義の変更、対象市場の拡大は、営業活動を活性化するとともに人材育成の定義の変更、採用する人材の要件の変更にもつながる。

今週水曜富山大学経営組織論 トップマネジメント講演シリーズ18:05~21時頃まで:301教室 第3回

以下は清家が勝手に解釈した
「組織型」と「マネジメント」です。
ご参考に。

(なお恐縮ですが社名、地位は学生に理解しやすく・・社長、取締役などで簡略に表現させていただいていますが、お名前など、公開方法について・・・今週社長に確認いたします。)

なおPPTが欲しいゼミ生は清家まで相談してね(社長がOK(^^)ならお見せします)

第1回 イエローハット北陸 社長 
 富山・石川など7店の中堅企業型マトリックス組織(大企業とはどこが違うか)におけるソリューションビジネス
第2回 ヨコハマタイヤ北陸 社長 若いリーダーを育て活かす自律創発型組織のパワーマネジメント
(かなり奥深いよ)

今週の第3回は富山テレビの取締役の予定です。

なお、21時以後清家ゼミもやっています。夜に強い清家研究室

2011年5月4日水曜日

マネジメントは問題解決 嘘の問題と真の問題

 現在、「もしドラ」から始まって、ドラッカーのマネジメントを金沢(北國新聞文化センター)と高岡(富山新聞文化センター)で社会人の方々と討議している。
 マネジャーとは社会の問題解決を行う存在である。その際、常に問題になるのは真の問題とは何か、である。今悩んでいることが、周囲が騒いでいることが実は真の問題ではない時が多々ある。
 町長は町民のためにと思って原子力発電所を誘致する。東日本大震災の後である、当然原子力発電所反対運動が起こった。そのとき町長の真の問題とは何だろうか?
 真の問題とは何かを考えさせられるお話がある。夜、ある男が街灯の下で何かを探している。通りかかった人が訊ねた。落し物ですか?ハイ。どのあたりに落されましたか。あのあたり。男が指さしたのは街灯からかなり離れた先。驚いてなぜ街灯の下を探しているのですか?いやここが明るいもので。
 企業や自治体においてよく見かけるのは、自分が得意な分野に繋がる問題解決以外はやりたがらない悪いマネジャーの事例である。得意な分野から問題を逆算?して、その問題を彼は周囲に押しつける。営業に自信のある人はすべての問題を営業から見つけ出そうとする。このとき、問題を決める前にすでに答えは決まっている。インチキである。このようにして解決された問題は多くの場合、まったく役に立たないだけでなく、害になる。
 原子力発電所を作るために問題を探す。問題を雇用にしよう。雇用を確保するためには解法は原子力発電所の設置だ。これは嘘の問題発見である。
 小売業で店長になりたい。店長になるには店を増やさないといけない。出店だ。出店をするためには売上を増やすことを課題にしよう。売上を増やすことを課題にするには、売り上げが少ないということを問題にしよう。これが嘘の問題発見である。
 トヨタ生産方式を勉強するとトヨタ生産方式からみた問題しか発見できなくなる。これも嘘の問題発見である。

2011年5月2日月曜日

5月19日(木)金沢市で元グーグル日本法人名誉会長村上憲郎氏講演13時半~16時半 

金沢市で5月19日(木)13時半~16時半 情報システムフェア 講演と展示があります。

講師/村上憲郎 氏(前グーグル日本法人 名誉会長)基調講演+シンポジウム+企業数十社が展示

北陸の活性化、新地平をグーグルの戦略を参考に討議し、多くの企業が出展します。

http://www.e-messe.info/emesse2011_leaflet.pdf

清家研究室(大学院・学部)での参加も考慮中

就職活動で4年生は無理かな(^^)。

2011年5月1日日曜日

民主党政府と日本型マネジメント不全? 離婚と新しいママ 清家彰敏

民主党政府はなぜ機能しないのか? 日本政治の中核はミドルマネジメント無名?の代議士たち

 東日本大震災が起こった。このとき、新しいママ民主党は思いやりの無い行動に出た。東京電力を新しいママは叱り飛ばしたのである。離婚されたママ自民党になら叱られてもそれは許せた。しかし、まだ新しいママを認めていない東京電力にとってそれは許せない。原子炉災害などで政府と東京電力の連携に齟齬が見られる理由はここにある。

 自民党と経済産業省、文部科学省(旧科学技術庁)、東京電力などの業界は長年の密接な関係を築いてきた。この関係は日本型マネジメントの特徴である仲間意識、依存・育成関係である。その際、トップマネジメントが総理・内閣であり、ミドルマネジメント(中間管理職)が自民党代議士たちであった。実は日本政治の強さはミドルマネジメント無名?の代議士たちの存在であった。
 ミドルマネジメント代議士らは党の政調部会などに所属し、官庁、業界、地方自治体などへの支援と圧力を繰り返しながら、成長していく。官庁、業界、地方自治体なども彼らとともに成長していく。原子力政策において、官庁、国立研究所、業界などの無数の人材は、ミドルマネジメント代議士と一緒に成長し、やがて定年、落選を迎え人生を終えてきた。
 ミドルマネジメント代議士の役割は、ボトムアップに地方や業界の現場の声を積み上げ各省庁と調整し、省庁は財務省(大蔵省)主計局の9人の主計官へ予算要求する。次に主計局の3人の次長が山積みで日本の予算を形成し、国民の総意の政治をトップマネジメントである総理・内閣に行わせることにある。このようなボトムアップでの予算の山積みは日本企業においては広くみられる。
この点で欧米型のトップダウンの政治システムとはまったく異なるボトムアップの原理の政治となる。トップダウンの政治では大統領・総理・内閣が中核であるがボトムアップの政治ではミドルマネジメント無名の代議士が中核となる。これは日本型経営の研究と大蔵省事務次官のオーラルヒストリーを行った結果からの私見である。日本企業の経営と日本政府の政治が同じメカニズムを持っていると思われる。
 なお自民党の政調部会などが機能する前は、トップダウンの政治と官僚をミドルマネジメントとするボトムアップの2つが機能した時期があるが、ここでは触れない。
 さて、東京電力の幹部は、原子力政策に関心が高い自民党ミドルマネジメント代議士と交流を持ち、運命共同体とまではいかなくても共に成長してきた。東京電力の若手社員として代議士に従属する時は辛い時もあるが、代議士も落選すれば立場は逆転する。その中で、人生の辛酸をなめ合いながら過してきた仲間ともいえる。いわばミドルマネジメント代議士と東京電力などの「現場」たちは人生を共有してきたのである。この人生を共有する仲間意識といった感覚が日本型マネジメントの中核である。
 ところが、その自民党代議士と東京電力などの現場の関係は民主党政権になって離別させられた。これは離婚と似ている。国民というパパが自民党という不出来なママを離婚した。不出来な時も多かったが、1955年以来連れ添ったママであった。東京電力という子供はある日ママが出て行ったことに気づいた。原子力政策に関わる自民党代議士というママとの関係は密接で、例え不出来なママだと、パパやご近所に馬鹿にされていても、大切な思い出も詰まっている存在であった。
 東日本大震災が起こった。このとき、新しいママ民主党は思いやりの無い行動に出た。東京電力を新しいママは叱り飛ばしたのである。離婚されたママになら叱られてもそれは許せた。しかし、まだ新しいママを認めていない東京電力にとって新しいママの発言と行動は許せない。
 日本型の組織では、構成員は仲間であると周囲に認知されて始めて発言権と行動が許される。日本型の組織は家族に擬制される原理で支配されていればいるほど大きな力を発揮する。責任も犠牲も奉仕もそのときに発揮される。世界で最も強力な組織ともなりうる。新しいママ民主党は東京電力に家族、仲間と認知される前に叱ってしまった。「あなたはママではない。家の中に何があるか?台所のどこに砂糖があるかも知らないくせに」といった思いが東京電力にはある。
 衆議院選挙で小沢元代表の主導で当選した民主党代議士はトップマネジメント、ミドルマネジメントとして2重の問題がある。一つは、2大政党とは人材を2分することである。つまり一党支配状態であった自民党時代に比べると国会議員定数が変わらなければ2党ともに当選者の質は低下する。大臣ポスト数が変わらなければ大臣の半数は一党支配の時には大臣になれない能力の人が就任せざるをえない。次に、国会として、ブームの小泉、選挙の小沢と2回続けて素人代議士を大量に当選させた。現在の民主党は素人集団でミドルマネジメント代議士がほとんどいない。
 余談であるが、国会議員削減論者からは批判されるが、日本型経営を研究してきた立場からみるとミドルマネジメントを削減して成功する事例と失敗する事例とがある。

2011年4月30日土曜日

グーグルのグローバルスピード経営24項目 清家私見:ご意見ください(^^)

グーグルとスピード概念

以下はグーグル「村上憲郎元名誉会長の下記の2つの玉稿」を資料とし、清家が「グローバルスピード経営」を構築するための資料作成を目的に私見と私観「スピードは早い・速い・疾い(清家彰敏)」でまとめたものです。これを受けて次のステップ「構造化」を試みたいと思います。
皆様ご意見をお持ちしています(^^)。

村上憲郎「INFOPRO2010特別講演 Googleの切り開く情報の世界 プロフェッショナルの仕事とは The world of information spearheaded by Google The work of professionals」『情報管理』53(12),651-664, doi:10.1241/johokanri.53.651(http://dx.doi.org/10.1241/johokanri.53.651)
村上憲郎「グーグルから見た日本ICT産業への苦言」電子情報通信学会誌Vol.94, No.1, 2011

グーグルとスピード概念

① 仕事の速さ 検索(索引)の速さ・・・ビジネス
② 成長の速さ(13年間)1998年
③ ベンチャーキャピタリストはグーグルへの投資は早い。
④ グーグルの起業の速さ(若い学生・ガレージ創業による小規模事業)起業の時期時代のタイミングはヤフーよりは早くない(1995年のヤフーより3年遅い)ヤフーは目次をつくりグーグルは索引を作った。
⑤ 「世界中の人が世界中の情報を整理してアクセスできて使えるようにする」スピード×人数×情報量
⑥ 意思決定の早さ・・・・選択と集中が2重に ミッションステートメート(レゾンデートル:投入の決定の早さ)×課金しない(ビジネスモデル:過程の決定の早さ)――>産出の2重の決定の早さ
⑦ コンテンツを保有しない 過程の決定を早くしている
⑧ 決定が早いということがグーグルのパートナー企業となる条件である。決定が早いグループは事業を早く行うことができる。Googleブックス。決定が遅い日本企業は参加できない。日本企業がいないと決定は早い?
⑨ 将来の検索を速くするために現在へ投資する Gmailは将来のメール検索の速度を速くできるようにと考えた準備的な事業でもある。
⑩ 検索速度は、検索対象量の増大と逆の相関を示す。この速度は検索対象量の増大を優先させながら加速させる(Googleブックス)。Youtube(1分に35時間分の動画が増え、未来永劫保存しなければならない)
⑪ Googleエディション 顧客の読書(情報獲得)を早める(明日まで待っていられない)
⑫ クラウドコンピューティングによる早さ 社内文書をデータベースにきちんと整理するより、情報や文章を全文検索したほうが早い。
⑬ 複数人で文章を作る場合に、同一のファイルを共有しながらコラボレーションで作っていくと便利(早い・速い・疾い)
⑭ どのようなデバイスでもどこででもプレゼンできる(早い・速い・疾い)クラウドコンピューティング年間社員一人当たり50ドル
⑮ コンピュータの速さは、ムーアの法則では18ヶ月から2年で半分になる=2倍に速くなる。
⑯ 1990年ごろのコンピュータが今(2010年)は1000分の1の価格で買える。速度は1000倍?
⑰ Internet of Things物がインターネットに常時接続状態になる。スピード化?物が人間とコミュニケーションを始める。(―――>清家:ロボット経済)
⑱ Googleパワーメーター:ドイツのスマートメーターはツイッターで「電力使いすぎ」とつぶやく。消費電力の見える化は、それだけで消費者側での省エネ意識の向上と実際の電力料金の具体的な提言につながっているという。社会の意思決定が早まる、疾い決定ができる。発電した電力が余ったAさんと電力が足らないBさんとの電力の売買を仲介するサービス。
⑲ Googleは、ケイタイからスマートフォンへの拡張に今一番注力しています。疾い。情報を探したくなるのは机の上だけではありません。今われわれがモバイルに非常に注力しているのはそれが理由です。
⑳ ITの世界の早さ=米国の早さ=オプトアウト社会
(21)ITというのはドッグイヤーと言われる進歩を遂げます。IT社会:犬は1年で人間の7歳分歳を取る。(7倍速社会)
(22)Webの上でも最終的には民主主義が機能する。民主主義(多数決他?)は決定が早い?
(23)動画検索“速い”今はオリジナルの動画をいただければ、その断片でも入っていた場合は削除できます。多少いじった程度の動画まで発見できます。つまり動画の検出がある程度可能になってきている。
(24)製品の部品が次々壊れようとも全体機能が何の支障もなく動かせるかどうかが、技術水準を決める。「ブレード型のサーバの数枚が次々と壊れようとも、データセンタ全体は何の支障もなく動かせるかどうかが、技術水準を決める」ムーアの法則ではハードウェアの性能は3,4年もたてば4倍になる。ハードウェアは4,5年働けばいい、4,5年ごとに取り替えたほうがいい。ハードウェアを4,5年かけて壊しながら使う。そういう技術が要請されている。最先端は壊しながら機能させる技術?

清家彰敏

富山大学経済学部・大学院MBA教授・中国社会科学院(政府)特別高級研究員。
メールseikeakit@aol.com 携帯09024351152seikeakit@ezweb.ne.jp
ブログhttp://seikeakit.blogspot.com
北京大学客員教授、財務省財務総合政策研究所特別研究官、経済産業省ロボット政策研究会委員、科学技術庁科学技術政策研究所客員研究官などを歴任 名古屋大学、北陸先端科学技術大学院大学,法政大学講師併任